C12 相対基準判断

指標間影響力比較分析は、複数の指標が同時発表されたときの実績に基づき、チャートへの影響力の強さを客観的且つ定量的に判断する方法です。
がしかし、過去に同時発表が行われた実績が少ないと、いくら客観的で定量的でも信頼度が低い判断ということになってしまいます。
特に、チャートへの影響力の強弱が微妙な指標同士を比較する場合、信頼度の低さは致命的です。
そこで、論理的に正しく実績を水増しし、結論の信頼度を高めるのが相対基準判断です。

相対基準判断」は、分析対象指標Aが相対基準指標Cよりも影響力が強く、その指標Cは比較対象指標Bよりも影響力が強いならば、指標Aは指標Bよりも影響力が強い、と判断することです。
大した話ではありません。
が、それを正確に記述するのはかなり面倒で、日常的に数式を扱わない人にはちょっと読みづらい内容です。

以下に順を追ってQCストーリーに沿って説明します。

C12-1  問題点の把握
C12-2  課題の明確化
C12-3  課題の解決方法
C12-4  解決方法の効果
C12-5  歯止め


C12-1  問題点の把握

指標間影響力比較分析が実績に基づく判断だと言っても、過去に同時発表が1回しか行われていない場合と10数回も行われている場合では、実績への信頼度が全く異なります。
が、一部の指標同士では、過去に同時発表が一定回数以下しか行われていない指標同士は実績不足と見なし、影響力の強弱を「相対基準指標」を用いて判断できる場合があります。

ちなみに、分析対象指標と比較対象指標の影響力の強弱を、指標間影響力比較分析の稿に記載手順で機械的に実績のみで判断することを「絶対基準判断」と呼び、相対基準指標を用いて分析対象指標と比較対象指標の影響力の強弱を判断することを「相対基準判断」と呼びます。


C12-2  課題の明確化

相対基準判断」は、分析対象指標Aが相対基準指標Cよりも影響力が強く、その指標Cは比較対象指標Bよりも影響力が強いならば、指標Aは指標Bよりも影響力が強い、と判断することです。
記号表記すると、A>C & C>B ⇒ A>B、ということです。

例えば、分析対象指標Aの方向一致回数をa1・方向不一致回数をa2とし、比較対象指標Bの方向一致回数をb1・方向不一致回数をb2、とします。
もし、指標Aが指標Bよりも影響力が強いなら、前項定義式に基づき、a1/(a1+a2)>b1/(b1+b2)、だったことになります。
ところが、(a1+a2)か(b1+b2)かそれら両方が、1とか2とか3とか…の小さな数しかなかったとします。
このとき、

a1/(a1+a2)>b1/(b1+b2)

という先の関係が実績不足で信頼がおけない、ということが課題でした。


C12-3  課題の解決方法

そこで例えば、指標Bよりも影響力が強いことが既知で、且つ、指標Aと同時発表されたことがある指標Cを相対基準指標とします。
そして、指標Cが指標Aと同時発表されたときの方向一致回数をc1・方向不一致回数をc2とします。
このとき、

(a1+c1)/(a1+a2+c1+c2)>b1/(b1+b2)

ならば、指標Aが指標Bよりも影響力が強い、ということの信頼度を高めたことになります。

一方、指標Cを導入したことによって、

(a1+c1)/(a1+a2+c1+c2)<b1/(b1+b2)

となってしまったら、先に挙げた

a1/(a1+a2)>b1/(b1+b2)

という強弱関係は信用できない、ということになります。

以上が、指標Aが指標Bよりも影響力が強いことを相対基準判断する方法です。
逆に、指標Aが指標Bよりも影響力が弱いことを相対基準判断するためには、指標Aよりも影響力が強いことが既知で、且つ、指標Aと同時発表されたことがある指標Cを相対基準指標とすれば良い訳です。

このように、相対基準判断は、思い込みによる誤判断を防止するため、実績を正しく水増しして行う判断です。


C12-4  解決方法の効果

応用例として、わかりやすい事例を挙げます。

米国NY連銀製造業景気指数(分析対象指標)は、2015年1月~2019年9月集計分までの57回の発表で、米国消費者物価指数コア前月比(比較対象指標)と7回の同時発表がありました。
ところが、この7回の発表結果の良し悪しと直後1分足の方向一致率を調べてみると、NY連銀製造業景気指数57%>消費者物価指数コア前月比50%、でした。

でも、NY連銀製造業景気指数の方が消費者物価指数コア前月比よりもチャートへの影響力が強いなんて信じられません
こんな結果になったのは、この間の消費者物価指数コア前月比の有効判定回数(=方向一致回数+方向不一致回数)がたった2回しかなかったから、と考えられます。

そこで、相対基準指標として、米国生産者物価指数コア前月比を用いることにします。

では、NY連銀製造業景気指数の方向一致率は57%でしたが、これは消費者物価指数コア前月比の実績と生産者物価指数コア前月比の実績を合算した方向一致率71%より小、となります。
よって、NY連銀製造業景気指数(分析対象指標)は、消費者物価指数コア前月比(比較対象指標)よりも影響力が弱い、が相対基準判断の結論になります。

この結論は、NY連銀製造業景気指数の方が消費者物価指数コア前月比よりも影響力が強いという、絶対基準判断の結論と矛盾しています。
ここが大事な点ですが、絶対基準判断の結論と矛盾しても、相対基準判断の方が「論理的に正しく実績を水増し」している分、結論の信頼度が高い、と考えるのです。


C12-5  歯止め

2点補足します。

ひとつは、上記説明が、NY連銀製造業景気指数消費者物価指数コア前月比を比べる、というわかりやすい事例を取り上げたことについてです。
ならば、相対基準判断はもっとわかりにくい事例で適用すれば、絶対基準判断よりも信頼性が減るのでしょうか?
ある分析対象期間に限って、そんなことが起きる可能性は0ではありません。
でも、それを言うなら絶対基準判断の方が、間違った結論になる可能性が高い、と言えます。
相対基準判断は、論理的に正しく母数を増やした分だけ、結論への信頼度を高めます。

もうひとつは、消費者物価指数のように影響力が強い指標では、多くの取引参加者が指標発表前に売買を終えており、指標発表後は「事実売り」のような現象が起きている可能性です。
だから、上の例で絶対基準判断が、NY連銀製造業景気指数消費者物価指数コア前月比、となっていたことは正しいのではないか、という疑問です。
もちろん、そんな事例もここに挙げたように、ある期間・ある指標同士の組み合わせで過去に遡って探せばいくらでも見つかるでしょう。
けれども、消費者物価指数自体の指標発表直後の反応方向は、発表結果の良し悪しに素直なことがわかっています。
「事実売り」みたいな現象は、指標発表直後すぐに起きる確率が低く、指標発表から少し経ってから起きがちなのです。
それなのに絶対基準判断で、NY連銀製造業景気指数消費者物価指数コア前月比、と矛盾した結果になっていたのは、やはり判断の対象事例が少なかったため、と考えた方が合理的です。

ともあれ、相対基準判断という方法は、たいした話でもないのにきちんと説明するのが面倒でした。


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以上

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