米国住宅指標「新築住宅販売件数」発表前後のUSDJPY反応分析(4.1訂版)

本稿は、米国住宅指標「新築住宅販売件数」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(The United States Census Bureau)
  • 発表日時:翌月24日~月末23:00(冬時間は24:00)
  • 指標内容:土地付きの新築住宅の売買契約書署名件数(季節調整済年換算件数)とその前月比

特徴は次の通りです。

  • 反応程度の小ささからすれば意外にも、過去の実績から言えば、金融当局の会見開始時刻と同時発表でない限り、同時発表指標があっても気にする必要がない
    但し、CB消費者信頼感指数と欧州消費者信頼感速報値と同時発表が行われるときは、まだ過去の同時発表実績が少ないため、本指標との影響力強弱を注視し続けておく必要がある(慎重になら、それら指標との同時発表時には取引を避けた方が良い)
  • 本指標単月毎の増減は、先に発表されたNAHB住宅市場指数や住宅着工件数や中古住宅販売件数の増減からは予見できない
  • 本指標に上昇や下降のトレンドが発生していた場合、指標発表直後の反応方向を予想できることがある
    一方、本指標結果が急増/急減した翌月の過大反動率は高くないものの、前月の実態差異判別式の解の絶対値が20超ならば、そのことを逆手に取った取引が可能

反応には次の傾向があります。

  • 反応程度がかなり小さい(直後1分足値幅平均4pips)ものの、反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率75%)
  • 過去5年弱の平均値で、事後差異判別式の解1ips(Index Points)当たりの直後1分足値幅は0.7pipsだが、ここ3年は0.5pipsで安定している
  • 指標発表時刻を挟んだボラティリティの変化が小さく(直前10-1分足と直後11分足の過去平均値幅が4→6pipsとほぼ同じ)、本指標のチャートへの影響持続時間は短い
    その結果、指標発表直後の反応こそ指標結果の良し悪しに素直なものの、どちらかと言えば指標発表後は逆張りの機会を窺うべき
    指標発表後の反応が一方向に伸びにくく逆張りを狙う以上、利確や損切のpipsが小さなつもりで取引に臨んだ方が良い
1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2019年9月集計分までの57回分です。
また、対象項目は、年換算販売件数(以下「件数」と略記)・前月比、とします。

2.1 分析対象

以下、件数・前月比の順に過去推移を示します。
件数は、後記2.2.1項の移動平均線分析のために、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしてあります。

本指標は、ほぼ毎月、前月の発表結果修正が行われ、対象期間に54回もの修正が行われています(修正頻度95%)。

細かな点を無視すれば、件数とその前月比はどちらの表現が扱いやすいかの違いしかありません。
けれども、見た目の印象はかなり違うことがわかります。
少なくとも、前月比のグラフを見て、件数のグラフ形状をパッと推察できる人なんていないでしょう。

件数の推移を大きく見れば、2018年にローン金利上昇と先行き不安から販売が減少したものの、他の時期は好景気を背景に高い水準で推移しています。
このように、市場背景と指標結果を結びつけて考察するためには、件数の推移を見る必要があります。

一方、前月比は大きな上下動を繰り返し、個々の上下動に意味を見出すのは難しい、と思います。
それでも、他の実態指標は主なサイトで前月比を表示することが多いため、本指標と他の指標の相関を掴むためには前月比の方が便利です。

2.2 指標予想分析
2.2.1 移動平均線分析

本分析は、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさ、を検証しています。

指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、です。
そして、これら移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向の検証を行っています。
指標推移が上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線、下降中に陰線ならば、「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。

分析結果を下表に示します。

上表「全数」の「判定数」が42回で、対象期間の57回集計分発表より15回も少なくなっています。
これは、対象期間の最初の6回移動平均値が2015年6月集計分発表後なので、最初の6回が判定されていないためです。
そして、2015年7月集計分発表以降、本指標より影響力が強い他の指標(後記2.3項参照)との同時発表が5回、直後1分足値幅が0pipsで方向判定不可だったことが3回、当初予定日の発表が延期されて分析対象から除いたことが1回あったためです。

結果、2つの移動平均線がクロスして3か月後からの仮説一致率は32%(不一致率68%)で、実績が仮説を否定しました。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

2.2.2 過大反動分析

本分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを検証しています。

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすと見込むことは自然です。
但し、市場予想もこの反動を見込んでいると考えられるため、市場予想を超えるほど大きな反動を起こすかが、取引上の関心事となります。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います

分析結果を下表に示します。

上表「全数」の「判定数」が47回で、対象期間の57回集計分発表より10回も少なくなっています。
これは、対象期間外の2014年12月集計分の実態差異が必要な2015年1月集計分の判定を行っていないためです。
そして、同年2月以降に本指標より影響力が強い他の指標(後記2.3項参照)との同時発表が5回、直後1分足値幅が0pipsで方向判定不可だったことが3回、当初予定日の発表が延期されて分析対象から除いたことが1回あったためです。

結果、上表記載の通り、仮説一致率は33~48%で、実績が仮説を否定しました。
但し、前月の実態差異判別式の解の絶対値が20.0超のとき、仮説一致率が33%(不一致率67%)となっています。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

2.2.3 同期/連動指標分析

別途追記します。

2.3 指標間影響力比較分析

下表は、対象期間に本指標と他の指標が同時発表されたときの影響力対比です。
なお、ここでの「影響力」とは、各指標の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率の高さを、その指標の発表結果のチャートへの影響力、と見なしています。

青太字の指標は、本指標よりも影響力が弱いか同等、と見なしています。
赤太字の指標は、本指標よりも影響力が強い、と見なしています。

CB消費者信頼感指数と欧州消費者信頼感速報値は、過去実績を見る限り、本指標と方向一致率が同値です。
がしかし、これら2指標は米国中古住宅販売件数よりも、方向一致率が低いことが確認できています。
そして、本指標と米国中古住宅販売件数を比較すると、本指標の方が影響力が強い、と考えています。
そのため、上表で方向一致率が同値のCB消費者信頼感指数と欧州消費者信頼感速報値は、今後同時発表回数が増えるに連れ、本指標よりも方向一致率が低くなっていくと推察します。

また、方向一致率という尺度では、米国ISM非製造業景況指数や金融政策関連の会見等との同時発表時の本指標成績は悪くありません。
がしかし、本指標が米国ISM非製造業景況指数や金融政策関連の会見等よりもチャートへの影響力が強いとも思えません。
結論、それらと本指標の同時発表があるときは、本指標での取引を控えます。

なお、ISM非製造業景況指数との同時発表は2018年12月集計分で、このときは連邦予算絡みでの米政府機関閉鎖によってISM発表が延期されていました。
こうしたことは、今後なかなか起きないでしょう。

よって、本項分析結論は、

  • 金融政策関連の発表や会見があるときを除き、本指標発表時に他の指標発表を気にしない
  • 但し、CB消費者信頼感指数と欧州消費者信頼感速報値と同時発表が行われるときは、本指標との影響力強弱を注視しておく
  • 次項以下の指標発表時の反応に関わる分析では、上記赤字指標との同時発表を除いた51回を対象とする

です。

2.4 項目間影響力比較分析

対象項目は前月比のみとし、項目間影響力比較分析は行いません。

判別式は、前月比を用いて

  • 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
  • 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
  • 実態差異判別式=発表結果ー修正結果

とします。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.3項記載の51回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2019年発表分は、2019年9月集計分までのカウントとなっています。

3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で4pipsで、反応程度はかなり小さい指標です。

直後1分足順跳幅が平均値超だったことが50%あるという珍しい指標です(他の指標は50%未満となり、多くは35~45%になります)。

3.2 利得分析

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で0.7pipsです。
但し、毎年の値を見ると、1.6・0.7・0.5・0.5・0.5と、ここ3年間は利得が小さくなっています。

3.3 指標一致性分析

差異判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません

2.3項以降、分析対象は51回分の発表でした。
この51回(頻度89%)のうち、事前差異判別式の解の絶対値が過去平均の4.5超だったことは36回(頻度63%)、9.0超だったことは20回(頻度35%)、13.5超だったことは11回(頻度19%)、18.0超だったことは4回(頻度7%)、でした。
「事前差異判別式の解の絶対値」とは、解が+1でも△1でも「大きさが1」と見なすことです。

それぞれの場合において、事前差異と4本足の指標一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が4.5超のとき、その解の符号と直前10-1分足値幅方向は同方向になりがち(期待的中率63~76%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が18.0超のとき、その解の符号と直後1分足値幅方向・直後11分足値幅方向は事前差異判別式の解の符号と逆方向になりがち(期待的中率75%)

です。

3.4 反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

反応方向は、直前1分足の過去陰線率が80%と、異常に高くなっています。
対象期間の直前1分足始値基準ローソク足を下図に示しておきます。

以前は、陽線側への大きな跳ねも目立つものの、2017年頃からそうした跳ねは目立たなくなっています。
いずれにせよ、直前1分足値幅方向は、対象期間において異常に陰線が多いことに気づきます。

さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています

2.3項以降、分析対象は51回分の発表でした。
この51回(頻度89%)のうち、直前10-1分足値幅が過去平均値の0.5倍を超えたことは28回(頻度49%)、過去平均値を超えたことは22回(頻度39%)、過去平均値の1.5倍を超えたことは12回(頻度21%)、過去平均値の2倍を超えたことは6回(頻度11%)、でした。

それぞれの場合において、直前10-1分足との他のローソク足の方向一致率を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 直前10-1分足が過去平均の1.5倍超のとき、直前1分足値幅方向はそれと逆方向になりがち(期待的中率73~83%)
    また、直前1分足の陰線率は異常に高い(期待的中率80%)
  • 直前10-1分足が過去平均の1.5倍超のとき、直後11分足値幅方向はそれと同方向になりがち(期待的中率67~83%)

です。

3.5 伸長性分析

下図をご覧ください。

直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で44%、値幅で40%、でした。

さて、2.3項以降の分析対象51回(頻度89%)のうち、直後1分足順跳幅が過去平均の0.5倍を超えたことは34回(頻度%)、過去平均を超えたことは24回(頻度%)、1.5倍を超えたことは5回(頻度%)、2倍を超えたことは3回(頻度%)、でした。
それぞれの場合において、伸長性分析を行った結果を下図に示します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が過去平均値の1.5倍超のとき、直後1分足終値がついた時点でそれとは逆方向にポジションを取得(期待的中率71~80%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

➡ 米国指標の目次に移動

以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です