米国住宅指標「新築住宅販売件数」発表前後のUSDJPY反応分析(4.1.4訂)

本稿は、米国住宅指標「新築住宅販売件数」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(The United States Census Bureau)
  • 発表日時:翌月24日~月末23:00(冬時間は24:00)
  • 指標内容:土地付きの新築住宅の売買契約書署名件数(季節調整済年換算件数)とその前月比

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「年換算販売件数」でも「前月比」でも良い(わかりやすい方に注目すれば良い)
  • 反応程度がかなり小さい(直後1分足値幅平均3.8pips)ものの、反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率72%)
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) 過去の実績から言えば、金融当局の会見開始時刻と同時発表でない限り、同時発表指標があっても気にする必要がない(2.2項参照)
    (2) 本指標単月毎の増減は、先に発表された中古住宅販売件数の増減からは予見できない(2.4.3項参照)
  • 本指標発表前後の反応傾向は次の通り
    (1) 上昇/下降基調の指標推移が続いても、そのことを根拠に取引すべきではない(2.4.1項参照)
    (2) 前月の増減が大きくても過大反動を起こさないと見込んで取引すべき(2.4.2項参照)
    (3) 指標発表後は初期反応方向に追撃するよりも、初期反応が大きいときに逆張りする機会を窺う方が良い(3.5項参照)

次節以下の本稿分析内容について補足します。

後記2.1項の新築住宅年換算販売件数のグラフをご覧ください。
本指標は分析対象期間においてほぼずっと上昇しています。

そのことは現時点においてわかることですが、もし2015年始めの時点でそのことが予見できていたとしましょう。
そんな超能力があれば、それからは本指標発表毎に発表直前にロングを注文し、発表直後1分足終値か直後11分足終値で決済を繰り返す、という取引方針はあり得ます。
がしかし、そんな方法では過去4年強の取引で、直後1分足では43pips、直後11分足では37pips、しか稼げなかったはずです。

このように未来の指標推移を正しく予見できても、それだけでは大して勝てないのです。
上記程度のpipsなら、本稿末Ⅳ節に示した通り、過去の傾向に基づく取引方針でたまに取引する方が約半分の期間で2倍以上稼げるのです。

指標取引を行う上で大事なことは、指標発表結果の良し悪しを的中することが手段であって目的ではないことを強く意識することです。
指標解説は、指標分析と反応分析が揃っていなければ意味がない、とまでは言わないまでも、もったいないのです。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は「販売件数前月比(以下「前月比」と略記)です。
一部分析のためと、参考までに「年換算販売件数(以下「件数」と略記)」のデータも示すものの、それらは過去実績を見る限り(後記2.3項)、反応方向への影響が前月比とほぼ同じ傾向となることがわかっています。
指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2020年2月集計分までの62回分です。

修正は翌月以降の発表時に遡及改定され、ほとんど毎月修正されています。


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
配置は、件数(左)、前月比(右)、となっています。
なお、件数のグラフには、2.4.1項の移動平均線分析のため、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしています。

細かな点を無視すれば、件数とその前月比はどちらの表現が扱いやすいかの違いしかありません。
けれども、見た目の印象はかなり違うことがわかります。
少なくとも、件数のグラフを見て、前月比のグラフ形状をパッと推察できる人なんていないでしょう。

FRBは、2015年12月に利上げに転じ、2019年7・9・10月は景気後退への予防的利下げを行いました。
コロナ禍に伴う緊急利下げは2020年3月に行われたため、上図にはまだ反映されていません。

本指標統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、ほとんど意味がありません
むしろ、上記各指数と後記2.3項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しました。
なお、指標名の後ろに⇅印がある指標は、数値減少を改善と見なしています。

まず、CB消費者信頼感指数(以下「CB」と略記)は本指標と方向一致率が同じなのに、本指標>CB、と判断しました。
これは、CBが当月の消費意欲を表す指標に対し、本指標は一般的に消費に先行する指標と位置づけられています。
ともに消費実態に先行するなら、住宅販売契約後の消費の方が先々が期待できます。
そのため影響力の強さは、本指標>CB、と考えました。
今後も両指標の観察を続けることで、上記結論が正しいか否かはいずれ実績で決着がつくでしょう。

次に、欧州消費者信頼感指数速報値は本指標と方向一致率が同じです。
とりあえず、上表では、本指標>欧州消費者信頼感指数速報値、と判断しています。
これは、本指標が良ければUSDが買われがち、欧州消費者信頼感指数速報値が良ければEURが買われがち、です。
そして、EURが買われがちならば、USDが売られがち、になります。
今後も両指標の観察を続けることで、影響力の強さを、本指標>欧州消費者信頼感指数速報値、と結論づけたことが正しいか否かは、いずれ実績で決着がつくでしょう。

あと、ISM非製造業景況指数(以下「ISM」と略記)は本指標と方向一致率が同じです。
今後また、両指標が同時発表される機会がそうそうあるとは思えませんが、ISM>本指標、と判断しました。
理由は、ISMが金融政策に影響するため、です。
重要度も注目度も、ISMは本指標と比べものになりません。

ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
よって、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の62回発表のうち57回の事例となります。


2.3 項目間影響力比較分析

対象項目は前月比のみとし、項目間影響力比較分析は行いません。

判別式は、前月比を用いて

  • 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
  • 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
  • 実態差異判別式=発表結果ー修正結果(修正が行われなかった場合は前回結果)

とします。

前述の通り実態差異判別式の「修正結果」は対象期間に55回改定されており、その他2回は「前回結果」に同じです。


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です

2.4.1 移動平均線分析

移動平均線分析は、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさを定量化しています。

指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、です。
そして、これら移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向の検証を行っています。
指標推移が上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線、下降中に陰線ならば、「仮説一致」と判定しています。

分析結果を下表に示します。

結果、仮説一致率は37~48%で、実績が仮説を肯定するには一致率が不足しています。
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表にて「翌月から」の「判定回数」は48回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。


2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。

さて、2.3項記載の実態差異判別式を用いて、その解の絶対値を階層化したときの過大反動率と上記仮説一致率は下表の通りです。

結果、上表記載の通り、前月実態差異判別式の解の絶対値が20を超えると、過大反動を起こしにくいことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
そして、そのときの「仮説一致率」は33%なので、過大反動を起こさないと見込んで指標発表直前にポジションを持つと、期待的中率が67%です。
「過大反動を起こさないと見込んで指標発表直前にポジションを持つ」とは「前月実態差異判別式の解の符号と同じ方向にポジションを持つ」ということです。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が53回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。


2.4.3 同期/連動指標分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。


中古住宅販売件数との対比

過去実績に基づく本指標と中古住宅販売件数との対比は『米国住宅指標「中古住宅販売件数」発表前後のUSDJPY反応分析』の2.4.3(1)項に詳説しているので、そちらを参照願います。

結論は、単月毎の増減を比較する限り両指標間の同期/連動はない、です。

本指標が契約書署名時点で集計されるのに対し、中古住宅販売件数は所有権移転完了時に集計されています。
そのため多くの指標解説記事で「本指標は中古住宅販売件数より1・2か月の先行性がある」という話を見かけます。
けれども、そんなことは少なくとも単月毎には起きていません。

この話は、例え単月毎に両指標間の増減の同期/連動が起きていなくとも、N回移動平均線では上記先行性が確認できる可能性はあるので、もしそうならば(N+n)か月の長期ポジションを保有する人には有効な助言かも知れない、ということです。
そんな馬鹿々々しい話があるか、と思うなら「本指標が中古住宅販売件数より1・2か月の先行性がある」という話も馬鹿々々しいと思うことでしょう。

念のため、反応方向についても下表に整理しておきます。
もしも「新築住宅販売件数の増減が中古住宅販売件数の増減と同期すると信じられるなら、当月の新築住宅販売件数発表前後の反応方向は、同月の新築住宅販売件数の増減方向との一致率が高まる」はずです。
残念ながら、新築住宅販売件数の増減が中古住宅販売件数の増減よりも6~8週間先行するとしても、当月の新築住宅販売件数の取引時点で、それより6~8週間後(1~2か月後)の中古住宅販売件数はまだ発表されていません。
下表は、本指標と同月集計分の中古住宅販売件数の増減と、本指標の直前10-1分足や直後1分足の「方向一致率」に纏めています。

結果、ほとんどの月で数日前に発表された中古住宅販売件数が改善しても悪化しても、本指標発表前後の反応方向との相関は窺えません。
実際の取引において「本指標が中古住宅販売件数より1・2か月の先行性がある」という話を信じてポジションを取得する人は、きっと少数派なのでしょう。

なお、上表における「判定回数」が49回となっているのは、2.2項結論に基づく判定除外(6回)と、直後1分足値幅が0だったときの判定除外(3回)と、本指標が中古住宅販売件数よりも後で発表された4回を除外しているためです。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項記載の57回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2020年2月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
下図において歯抜けとなっている月は、2.2項結論により反応分析から除外した月です。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

他の多くの主要指標で2017年頃から反応が小さくなっています。
本指標でも指標発表後の反応にそうした傾向が窺えます。

後記3.4項に示すように、直前1分足の陰線率は80%、と偏りが目立ちます。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で3.8pipsで、反応程度はかなり小さい指標です。


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で0.7pipsです。
但し、毎年の値を見ると、0.5~1.6とばらつきが大きく、取引の参考にするのは難しそうです。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
2.2項以降、分析対象は57回分の発表でした。
この57回の事例について、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が4.0超のとき、その解の符号と直前10-1分足値幅方向は同方向になりがち(場面発生頻度61%、期待的中率60~88%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上図から反応程度を無視して、反応方向だけを問題にして各ローソク足の関係を図示しておきます。

直前1分足は陰線率が80%、と反応方向に偏りが目立ちます。

さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
2.2項以降、分析対象は57回分の発表でした。
それぞれの場合において、直前10-1分足との方向一致率を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 直前10-1分足値幅が4.1pips超(過去平均値超)のとき、直前1分足値幅方向はそれと逆方向になりがち(場面発生頻度31%、期待的中率64~71%)
  • 直前10-1分足値幅が6.2pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、直後11分足値幅方向はそれと同方向になりがち(場面発生頻度19%、期待的中率67~71%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

下図をご覧ください。

直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で43%、値幅で36%、でした。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が22.3pips超(過去平均値の1.5倍超)に達したら、直ちに逆方向にポジションを取得(場面発生頻度10%、期待的中率67%)
  • 直後1分足順跳幅が22.3pips超(過去平均値の1.5倍超)に達したら、直後1分足終値がついた時点で逆方向にポジションを取得(場面発生頻度10%、期待的中率83%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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改訂履歴

4.0訂(2019年11月26日) 新書式反映
4.1訂(2020年4月12日) 2020年3月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

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