米国実態指標「耐久財受注」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1訂版)

本稿は、米国実態指標「耐久財受注」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(The United States Census Bureau)
  • 発表日時:翌月下旬21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:製造業者約4000社を対象にした耐久財や資本財の受注状況速報値

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「耐久財受注前月比」「輸送機器を除く耐久財受注前月比」「航空機を除く非国防資本財受注前月比」の3項目
    これら3項目は、どの項目の改善/悪化が指標発表直後の反応方向に影響したか実績を調べた限り、どの項目のチャートへの影響力もほぼ同じ
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) GDP速報値・同改定値・CPI・金融政策関連との同時発表時は、本指標の特徴を踏まえた取引を避けた方が良い
    (2) 先に同月集計分発表が行われるISM製造業景況指数の新規受注指数とは、改善や悪化といった点で本指標との同期性が認められるものの、取引の参考になるほど強い相関はない
  • 発表結果は市場予想を挟んだ上下動が激しいものの、過大反動を起こすことは50%前後

反応には次の傾向があります。

  • 指標発表直後の反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率78%)なものの、反応程度の平均値は小さい(直後1分足値幅平均6pips)
  • 指標発表前の動きに一貫した傾向は見出せない
    直前10-1分足値幅が大きいときは、直後11分足値幅方向が直前10-1分足値幅方向と一致しがち
    そして、指標発表直後こそ素直に反応を伸ばしがちだが、そこで大きく跳ねるとその後は値幅を削りがち
  • もともと反応程度が小さいことに加え、指標発表直後に大きく跳ねるとその後の反応が伸びない傾向がある
    それに取引に適した場面発生頻度も少ないため、非常に稼ぎにくい指標だと言える

指標内容について補足します。

本指標は、指標名こそ「耐久財受注(Durable Goods Manufacture’s Orders)」となっているものの、発表内容は「出荷」「受注」「在庫」の多岐に亘ります。
我々がよく目にする「耐久財受注」の指標値は「耐久財の新規受注前月比」です。

調査対象は92業種の出荷額5億ドル/年以上の製造業者で、回答回収率は一説によれば約60%とされています。
耐久財というのは、通常は耐用年数3年以上の消費財のことを指しており、家具・家電・各種設備・武器・輸送機器(車輌・航空機・船舶など)を指しています。
資本財というのは、製造・生産に用いる機械・電機・化学設備を指し、本統計の趣旨に鑑み土地・建物等は含まないと推察されます。
そして、耐久財・資本財のいずれも中間財(その材料・部品・仕掛品など)を含むと推察されます。
(私の語学力不足のため、本指標における耐久財と資本財の厳密な定義は、本指標資料から明確に読み取ることができていません)

さて、多くの本指標解説記事では、「耐久財受注前月比」よりも「輸送機器を除く耐久財受注前月比」と「航空機を除く非国防資本財受注前月比」の重要度や注目度が高い旨の記述が散見されます。
これは、それらが当該期間のGDP集計における設備投資の最速先行指標という点を論拠にしていることが多いようです。
がしかし、後掲図示するように、本指標結果は後日発表される製造業新規受注で、ほぼ毎月修正が行われています。
そんなものがFXの指標取引に重要な訳がなく、だからこそ本指標への反応程度は小さいのです。
そして、3項目のどれも反応方向への影響力が同等だという事実は、これら3項目の重要度や注目度にFX取引の上の差がないことを示しています。

なお、参考までに本指標発表事例をこちらに、ネットでの回答書式例をこちらにリンクしておきます。

1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2019年10月集計分までの58回分です。
分析対象項目は、耐久財受注前月比(以下「前月比」と略記)・輸送機器を除く耐久財受注前月比(以下「コア前月比」と略記)・航空機を除く非国防資本財受注前月比(以下「コア資本財」と略記)、とします。

2.1 分析対象

以下、前月比コア前月比コア資本財の順に過去推移を示します。

どの項目もほぼ毎回修正が行われています。
分析対象期間の項目毎の修正回数を下表に纏めておきます。

そして、項目毎の統計値を下表に纏めておきます。

なお、標本群はいずれもほぼ正規分布状です。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、対象期間における本指標と他の指標が同時発表時の実績に基づき、どちらの指標がチャートへの影響力が強かったかを示しています。
影響力の強さ」は、各指標の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率の高さに基づき判定しています。

結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しました。

本指標は、GDP速報値よりチャートへの影響力が弱く、確定値よりは強くなっています。
また、CPIよりは弱く、PPIよりは強くなっています。
これらのことから、本指標はほどほど強い指標だということを実績が示しています。

なお、GDP改定値Phil連銀製造業景気指数金融政策関連とは、同時発表実績が少ないことから、現時点では方向一致率が等しくなっています。
けれども、そもそもGDP改定値は速報値からの改定幅が小さいことが多く、仮に改定幅がそこそこあったときにはGDP改定値の方が影響力が強い、と考察されます。
そして、金融政策関連は、内容次第でどれだけ反応するか予想がつかない怖さがあります。
そのため、ここでは本指標よりもGDP改定値や金融政策関連との同時発表時には、本指標での取引を勧めません。

一方、Phil連銀製造業景気指数は、影響力が弱いことがわかっています。
そのため、仮に本指標との同時発表が再び行われても、本指標の特徴を優先して取引しても良い、と推察いたします。

ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
よって、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の58回発表のうち46回の事例となります。

2.3 項目間影響力比較分析

対象項目は、前月比・コア前月比・コア資本財、でした。

2.2項結論に基づく46回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

個々の項目毎では、あまり一致率が高くありません。
そこで、次のように各差異判別式を立式します。

  • 差異判別式=A✕前月比の差異+B✕コア前月比の差異+C✕コア資本財の差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー修正結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー修正結果

本指標は、発表時に既に前回結果の修正値(修正結果)が「製造業受注」の項目として公表されています

上式において、各差異判別式の係数と、各差異判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

各差異と各ローソク足の方向一致率が高くなり、特に事後差異判別式の精度が向上しました。

2.4 指標予想分析
2.4.1 移動平均線分析

省略します。

2.4.2 過大反動分析

本分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを検証しています。

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすと見込むことは自然です。
但し、市場予想もこの反動を見込んでいると考えられるため、市場予想を超えるほど大きな反動を起こすかが、取引上の関心事となります。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います

分析結果を下表に示します。

結果、上表記載の通り、前月の実態差異判別式の解がどうあれ、過大反動を起こしやすいとは言えません(上表「過大反動率」参照)。
また、過大反動が起きると見込んで指標発表直前にポジションを取得しても、期待的中率(上表「仮説一致率」参照)は47~57%です
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が46回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。

2.4.3 同期/連動指標分析

本指標よりも先に発表が行われている指標に、ISM製造業景況指数の新規受注指数があります。
そこで過去に遡って、本指標とISM製造業景況指数の新規受注指数が、前月より改善したか悪化したかの方向一致率を調べました(それぞれの実態差異判別式の解の符号一致率を調べました)。

下図をご覧ください。

横軸は「本指標の改善や悪化がISM製造業景況指数の新規受注指数の改善や悪化よりも〇か月先行/遅行」と読みます。
縦軸は、それぞれの実態差異判別式の解の符号一致率を表しています。

結果、同月集計分の両指標の一致率が最も高く、62%でした。
結論、両指標の改善や悪化には同期性が認められるものの、先に発表されたISM製造業景況指数の新規受注指数を参考にして本指標での取引を行えるほど強い同期性ではない、です。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項記載の46回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2019年発表分は、2019年10月集計分までのカウントとなっています。

3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で9pipsで、反応程度は小さい指標です。

平均的には、直後11分足値幅が直後1分足順跳幅よりも小さくなっています。
このことは、指標発表後の安易な追撃は避けた方が良いことを示唆しています。

3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で3.6pipsです。
但し、毎年の平均では2.1~5.6pipsと大きくばらついており、事後差異判別式の解から直後1分足値幅を的確に予想することは難しいことがわかります。
一方、事前差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で0.6pipsで、毎年の平均も0.5~0.7ipsで安定しています。

3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証しています。

差異判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません

2.2項以降、分析対象は46回分の発表でした。
この46回(頻度79%)のうち、事前差異判別式の解の絶対値が過去平均の3.2超だったことは29回(頻度50%)、6.4超だったことは20回(頻度34%)、9.6超だったことは9回(頻度16%)、12.8超だったことは5回(頻度9%)、でした。
「事前差異判別式の解の絶対値」とは、解が+1でも△1でも「大きさが1」と見なすことです。

それぞれの場合において、事前差異と4本足の指標一致性分析を行った結果を下図に示します。

分析の狙いを方向だけに絞っても、残念ながら取引に有益な示唆は得られませんでした
そういうこともあります。

3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証しています。

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、4本足各実体部同士の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

反応方向率(上左図)から、直前1分足の陰線率が85%と、かなり偏りが目立ちます。
実際の直前1分足の始値基準ローソク足を確認しておきましょう。

上図で歯抜けとなっている月は、本指標よりも影響力の強い指標との同時発表があった月なので、分析対象に含めていません。

上図を一見、全体的に陰線率が高いことがわかるものの、最近に限ればそうともは言えません。
よって、陰線率の高さをアテにして取引するのを当面は控え、今後しばらくは観察を続けた方が良いでしょう。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています

2.2項以降、分析対象は46回分の発表でした。

この46回(頻度79%)のうち、直前10-1分足値幅が過去平均値の0.5倍を超えたことは30回(頻度52%)、過去平均値を超えたことは18回(頻度31%)、過去平均値の1.5倍を超えたことは9回(頻度16%)、過去平均値の2倍を超えたことは2回(頻度3%)、でした。

それぞれの場合において、直前10-1分足との他のローソク足の方向一致率を下図に示します。

上図から、直前10-1分足値幅が過去平均の1.5倍超のとき、直後11分足と直前10-1分足は同方向なりがち(期待的中率78%以上)、です。

3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析しています。

下図をご覧ください。

順跳幅も値幅も伸長率が同一です。

さて、指標発表によって雪崩を打ったように一方向に反応が伸びるなら、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。

2.2項以降の分析対象46回(頻度79%)のうち、直後1分足順跳幅が過去平均の0.5倍を超えたことは33回(頻度57%)、過去平均を超えたことは17回(頻度29%)、1.5倍を超えたことは9回(頻度16%)、2倍を超えたことは5回(頻度9%)、でした。
それぞれの場合において、伸長性分析を行った結果を下図に示します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

直後1分足順跳幅が過去平均値の1.5倍を超えると、それと逆方向に直後11分足の順跳幅や値幅が伸びたことはありません。
但し、そのとき直後11分足順跳幅は直後1分足順跳幅を超えて伸びたことが多いものの、直後11分足値幅は直後1分足値幅を削りがちです(期待的中率67%)。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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以上

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