米国実態指標「耐久財受注」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1.4訂)

本稿は、米国実態指標「耐久財受注(Durable Goods Manufacture’s Orders)」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(The United States Census Bureau)
  • 発表日時:翌月下旬21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:製造業者約4000社を対象にした耐久財や資本財の受注状況速報値

特徴は次の通りです。

  • 「耐久財受注前月比」「輸送機器を除く耐久財受注前月比」「航空機を除く非国防資本財受注前月比」の3項目は、指標発表直後のチャートへの影響力が拮抗(2.3項参照)
  • 指標発表直後の反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率75%)なものの、反応程度の平均値は小さい(直後1分足値幅平均5.3pips)
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) GDP速報値同改定値消費者物価指数・金融政策関連との同時発表時は、本指標での取引を避けた方が良い(2.2項参照)
    (2) 先に同月集計分発表が行われるISM製造業景況指数の新規受注指数や中古住宅販売件数とは、同期/連動性が見受けられない(2.4.3項参照)
  • 指標発表前後の反応は次の通り
    (1) 事前差異判別式の解の絶対値が過去平均値の2倍を超えるか、直前10-1分足が過去平均値の1.5倍を超えると、指標発表後の反応方向に偏りが生じているものの、そうしたことが起きる頻度は1・2回/年に留まっており取引機会が少ない(3.3項・3.4項参照)
    (2) 直後1分足順跳幅が過去平均値の1.5倍を超えると、逆張り有利の実績がある(3.5項参照)
    (3) 市場予想に比べて発表結果の上下動が大きい指標にも関わらず、過大反動(市場予想と発表結果の大小関係が前月と入れ替わる)を期待する取引方針では稼げない(2.4.2項参照)

指標内容について補足します。

本指標は、指標名こそ「耐久財受注」となっているものの、発表内容は「出荷」「受注」「在庫」の多岐に亘ります。
我々がよく目にする「耐久財受注」の指標値は「耐久財の新規受注前月比」です。

調査対象は92業種の出荷額5億ドル/年以上の製造業者(約4000社)で、回答回収率は一説によれば約60%とされています。
耐久財というのは、通常は耐用年数3年以上の消費財のことを指しており、家具・家電・各種設備・武器・輸送機器(車輌・航空機・船舶など)を指しています。
資本財というのは、製造・生産に用いる機械・電機・化学設備を指し、本統計の趣旨に鑑み土地・建物等は含まないと推察されます。
そして、耐久財・資本財のいずれも中間財(その材料・部品・仕掛品など)を含みます。

さて、多くの本指標解説記事では、「耐久財受注前月比」よりも「輸送機器を除く耐久財受注前月比」と「航空機を除く非国防資本財受注前月比」の重要度や注目度が高い旨の記述が散見されます。
こうした説明は、それらが当該期間のGDP集計における設備投資の最速先行指標という点を論拠にしていることが多いようです。
がしかし、後掲図示するように、本指標結果は後日発表される製造業新規受注で、ほぼ毎月修正が行われています。
そんなものがFXの指標取引に重要な訳がなく、だからこそ本指標への反応程度は小さいのです。
そして、3項目のどれも反応方向への影響力が同等だという事実は、これら3項目の重要度や注目度にFX取引の上の差がないことを示しています。

なお、参考までに本指標発表事例をこちらに、ネットでの回答書式例をこちらにリンクしておきます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は

耐久財受注前月比(以下「前月比」と略記)
輸送機器を除く耐久財受注前月比(以下「コア前月比」と略記)
航空機を除く非国防資本財受注前月比(以下「コア資本財」と略記)

です。
指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2020年2月集計分までの62回分です。

本指標は、改定値が毎月上旬の「製造業受注」発表時に公表されます


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
配置は、前月比(左上)、コア前月比(右上)、コア資本財(右下)、となっています。

市場予想の変化は発表結果の変化よりも小さく、特にコア前月比とコア資本財の市場予想はほぼ変化がありません。

本指標統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、ほとんど意味がありません
むしろ、上記各指数と後記2.3項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

データ数が増えるほど、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。
なお、指標名の後ろに⇅印がある指標は、数値減少を改善と見なしています。

本指標は、GDP速報値よりチャートへの影響力が弱く、確定値よりは強くなっています。
また、CPIよりは弱く、PPIよりは強くなっています。
これらのことから、本指標はほどほど強い指標だということを実績が示しています。

なお、GDP改定値Phil連銀製造業景気指数金融政策関連とは、同時発表実績が少ないことから、現時点では方向一致率が等しくなっています。
けれども、そもそもGDP改定値は速報値からの改定幅が小さいことが多く、仮に改定幅がそこそこあったときにはGDP改定値の方が影響力が強い、と考察されます。
そして、金融政策関連は、内容次第でどれだけ反応するか予想がつかない怖さがあります。
そのため、ここでは本指標よりもGDP改定値や金融政策関連との同時発表時には、本指標での取引を勧めません。

一方、Phil連銀製造業景気指数は、影響力が弱いことがわかっています。
そのため、仮に本指標との同時発表が再び行われても、本指標の特徴を優先して取引しても良い、と推察いたします。

ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
よって、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の58回発表のうち51回の事例となります。


2.3 項目間影響力比較分析

項目間影響力比較分析では、ひとつの指標で複数の注目すべき指数(項目)が発表されるとき、各指数(項目)が反応方向に与える影響力の強さと方向を求めます
各指数が反応方向に与える影響力の強さは、事前差異判別式の解の符号が直前10-1分足と、事後差異判別式の解の符号が直後1分足と、実態差異判別式の解の符号が直後11分足と、方向一致率が高くなるように判別式の各係数を求めます。
判別式の係数の値の大きさと符号が、各指数が反応方向に与える影響力の強さと見なせます。

さて、本指標の分析対象項目は、前月比・コア前月比・コア資本財、でした。
まず先に、2.2項結論に基づく51回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

個々の項目毎では、あまり一致率が高くありません。
そこで、次のように各判別式を立式します。

  • 差異判別式=A✕前月比の差異+B✕コア前月比の差異+C✕コア資本財の差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー改定結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー改定結果

本指標は、発表時に既に前回結果の修正値(改定値)が、毎月上旬の「製造業受注」発表時に公表されています

上式において、各差異判別式の係数と、各差異判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

事前差異判別式や実態差異判別式は方向一致率が高くありません。


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です

2.4.1 移動平均線分析

本分析は省略します。

2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。

さて、2.3項記載の実態差異判別式を用いて、その解の絶対値を階層化したときの過大反動率と上記仮説一致率は下表の通りです。

結果、上表記載の通り、前月の実態差異判別式の解がどうあれ、過大反動を起こしやすいとは言えません(上表「過大反動率」参照)。
また、過大反動が起きると見込んで指標発表直前にポジションを取得しても、期待的中率(上表「仮説一致率」参照)は49~57%です
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が49回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。


2.4.3 同期/連動指標分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。


(1) ISM製造業景況指数の新規受注指数との対比

単月毎のISM製造業景況指数の新規受注指数と本指標(全体)の実態差異判別式の解の符号を比べた結果を下図に示します。
下図横軸は、本指標がISM製造業景況指数の新規受注指数よりも何か月先行/遅行したか、を表しています。
下図縦軸は、両指標の実態差異判別式の解の方向一致率です。

さて、本指標がISM製造業景況指数の新規受注指数よりも先行することはないと考えれば、もし一致率が高くても偶然に一致率が高かったと言えます。
上図では、灰線よりも左側が偶然の一致率を表し、灰線より右側が両指標の一致率を表している、と考えられます。
結果、灰線より右側で多少一致率が高いときがあっても、それは灰線より左側の偶然の一致率と同程度以下しかありません。
よって、単月毎の実態差異判別式の解の符号を見比べる限り、両指標に同期/連動関係は窺えない、が結論です。

次に、同月集計分のISM製造業景況指数の良し悪し(実態差異判別式の解の符号)と、本指標発表前後の反応方向の方向一致率を求めておきます。

同月集計分のISM製造業景況指数は本指標よりも先に発表されています。
けれども、ISM製造業景況指数の結果がどうあれ、そのことは本指標発表前後の反応方向に影響を与えていないようです。

なお、上表の判定回数は、本指標よりも影響力が強い他の指標との同時発表時12回を除外、直前10-1分足値幅が0の5回、を除外してます。


(2) 中古住宅販売件数前月比との対比

単月毎の中古住宅販売件数前月比と本指標(全体)の実態差異判別式の解の符号を比べた結果を下図に示します。
下図横軸は、本指標が中古住宅販売件数前月比よりも何か月先行/遅行したか、を表しています。
下図縦軸は、両指標の実態差異判別式の解の方向一致率です。

さて、本指標が中古住宅販売件数前月比よりも先行することはないと考えれば、もし一致率が高くても偶然に一致率が高かったと言えます。
上図では、灰線よりも左側が偶然の一致率を表し、灰線より右側が両指標の一致率を表している、と考えられます。
結果、灰線より右側で多少一致率が高いときがあっても、それは灰線より左側の偶然の一致率と同程度以下しかありません。
よって、単月毎の実態差異判別式の解の符号を見比べる限り、両指標に同期/連動関係は窺えない、が結論です。

次に、同月集計分の中古住宅販売件数前月比の良し悪し(実態差異判別式の解の符号)と、本指標発表前後の反応方向の方向一致率を求めておきます。

同月集計分の中古住宅販売件数前月比は本指標よりも先に発表されています。
けれども、中古住宅販売件数前月比の結果がどうあれ、そのことは本指標発表前後の反応方向に影響を与えていないようです。

なお、上表の判定回数は、本指標よりも影響力が強い他の指標との同時発表時12回を除外、直前10-1分足値幅が0の5回、を除外してます。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項記載の51回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2020年2月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で僅か5.3pipsで、反応程度は小さい指標です。


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で3.4pipsです。
但し、毎年の平均では1.8~5.8pipsと大きくばらついており、事後差異判別式の解から直後1分足値幅を的確に予想することは難しいことがわかります。
一方、事前差異判別式の解1ips毎の直前10-1分足値幅は過去平均で0.6pipsで、毎年の平均も0.5~0.8ipsと安定しています。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式や実態差異判別式の解の符号と、指標発表後の反応方向は素直なことがわかります。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

結果、

  • 直前10-1分足・直後1分足・直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が12.4超のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度10%、期待的中率67%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、4本足各実体部同士の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

反応方向率(上左図)から、直前1分足の陰線率が87%と、かなり偏りが目立ちます。

さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで、4本足各値幅を階層化し、階層毎に各ローソク足と直前10-1分足との方向一致率を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 直前1分足は、直前10-1分足値幅が5.4pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、同値幅と同方向になりがち(場面発生頻度18%、期待的中率67%)
  • 直後11分足は、直前10-1分足値幅が5.4pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、同値幅と同方向になりがち(場面発生頻度18%、期待的中率73%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

下図をご覧ください。

順跳幅も値幅も伸長率が58%で同一です。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が12.6pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、直後1分足終値がついたら逆張りし、直後11分足終値がつくまでに解消(場面発生頻度15%、期待的中率67%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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改訂履歴

4.0訂(2019年12月11日) 新書式反映
4.1訂(2020年4月17日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

以上

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