米国実態指標「個人所得・個人支出」・物価指標「PCEコアデフレータ」発表前後のUSDJPY反応分析(4.1.4訂)

本稿は、米国実態指標「個人所得(Personal Income)・個人支出(Personal Consumption Expenditure:PCE)」・物価指標「PCEコアデフレータ(PCE Core Deflator)」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(BEA:The United States Census Bureau)
  • 発表日時:翌月第2週21:30(冬時間は22:30、年初時期は24:00となる場合がある)
  • 指標内容:家計における収支の月次指数化

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「個人所得前月比」「個人支出前月比」「PCEコアデフレータ前月比」「PCEコアデフレータ前年比」の4つで、いずれか単独の結果が指標発表後の反応方向を決めている訳ではない(2.3項参照)
  • 指標発表直後の反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率74%)なものの、反応程度の平均値は小さい(直後1分足値幅平均4.7pips)
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) 2015年以降の実績に基づき「週次失業保険申請件数」や「欧州消費者信頼感指数速報値」との同時発表時は、本指標での取引を避けた方が良い(2.2項参照)
    (2) 単月毎のCB消費者信頼感指数の良し悪しは、本指標結果の良し悪しと同期/連動性が見受けられない(2.4.3(1)項参照)
    (3) 単月毎の本指標の良し悪しは、小売売上高の良し悪しより1か月遅行している可能性がある(2.4.3(2)項参照)
  • 指標発表前後の反応の特徴は次の通り
    (1) 全体的に過大反動を起こしにくい指標であり、特に前月実態差異判別式の解の絶対値が1.2超のときは、過大反動を起こさないと見込むと良い(2.4.2項参照)
    (2) 事前差異判別式の解は、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の値幅方向を示唆している場合がある(3.3項参照)
    (3) 指標発表後の追撃は短時間に留めるべき(3.5項参照)

指標内容について補足します。

個人所得は、当該月の所得(収入)の増減を示しています。
所得は、給与・賃貸収入・利子・配当等の合計から社会保険料を控除した後の収入を指しています。

個人支出は、当該月の消費の増減を示しています。
支出先は、耐久財(自動車・家電製品等)・非耐久財(食品・衣料等)・サービス支出(旅行・外食等)に分類されます。
個人消費は、米国GDPの7割を占める話は有名です。

PCEデフレータは、個人支出の変動分から物価上昇分を差し引いた物価指数で、PCEコアデフレータPCEデフレータから食品とエネルギーの価格変動を除いた物価指数となります。

PCEコアデフレータは、FRBが政策決定の参考にしていることが知られています。
FRBが消費者物価指数CPI)よりもPCEデフレータを物価動向の参考にしている理由は、しばしば医療費を例に挙げて説明されます。
例えば、PCEデフレータは政府補助金や保険会社の医療費支払いを含めているのに対し、CPIにはそれらが含まれていません。
つまり、最も金額規模が大きいサービスへの支出が医療費であり、CPIでは過小評価されがちな高額医療費の価格変化を含めてPCEデフレータは把握できる訳です。

発表事例をこちらに示しておきます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は

個人所得前月比(以下「個人所得」と略記)
個人支出前月比(以下「個人支出」と略記)
コアPCEデフレータ前月比(以下「コアDF前月比」と略記)
コアPCEデフレータ前年比(以下「コアDF前年比」と略記)

とします。

指標分析の対象期間は、2018年12月集計分から2019年3月集計分を除く、2015年1月集計分から2020年2月集計分で58回分です。

本指標はかなりの頻度で前月結果が修正されています。
修正は翌月発表時に遡及改定されます。


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
配置は、個人所得(左上)・個人支出(左下)・コアDF前月比(右上)・コアDF前年比(右下)、となっています。

2018年12月集計分から2019年3月集計分までは、上記4指数の発表日が異なったり、2か月分が同時に発表されました(分析シート上の配列が乱れているため、上図の線が連続していません)。

各指数の統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、本指標ではほとんど意味がありません
むしろ、上記4指数と後記2.3項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定します。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の影響力が強く、赤太字ならば本指標の影響力が弱い、と判定しました。
判定結果から、本指標が「週次失業保険申請件数」と「欧州消費者信頼感指数速報値」と同時発表されるときは、本稿分析に基づく取引方針を適用できません

そして「本指標の反応方向に関わる分析対象から除くべき事例の抽出」という本分析目的に照らすと、前項記載の通り、2018年12月集計分から2019年3月集計分の発表は正常な発表とは言えません。
よって、この4か月分も分析対象から除くことにします。

すると、以下の反応方向に関わる分析対象は、2015年1月集計分から2020年2月集計分までの62回のうち51回、が結論です。


2.3 項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の指数が発表され、且つ、各指数が反応に与える影響が異なるとき、各指数の反応方向への影響力の強さを判別式の係数で表します
この判別式を求める分析が項目間影響力比較分析です。

本指標の分析対象項目は、個人所得個人支出コアDF前月比コアDF前年比、でした。
2.2項結論に基づく51回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

どの項目も反応方向との一致率が低いことがわかります。

そこで、各判別式を次のように立式します。

  • 差異判別式=A✕個人所得の差異+B✕個人支出の差異+C✕コアDF前月比の差異+D✕コアDF前年比の差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー前回結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー前回結果(修正があれば修正結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

本指標は、指標発表直後こそかなり素直に反応するものの、発表から暫く経つとどっちに反応するのかわかりません


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です


2.4.1 移動平均線分析

本分析は省略します。


2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います

分析結果を下表に示します。

上表記載の通り、どちらかと言えば過大反動を起こしにくい指標です(「過大反動率」を参照)。
そして、前月実態差異判別式の解の絶対値が1.2超のとき、過大反動を起こさないと見込んで取引すると、71%の期待的中率があります(「仮説一致率」を参照)。
「過大反動を起こさないと見込んで取引する」とは、指標発表直前に前月実態差異判別式の解の符号と同方向にポジションを取得する、ということです。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が38回となっています。
その理由を下表に整理しておきます。


2.4.3 同期/連動指標分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。

本指標よりも先に発表が行われている関連指標には、CB消費者信頼感指数小売売上高があります。
両指標は本指標に先立ち、それぞれ消費者の購買意欲と実際の購買額を集計しています。
以下に、それぞれ本指標との同期/連動指標分析を行います。


(1) CB消費者信頼感指数との対比

消費者の購買意欲について、CB消費者信頼感指数UM消費者信頼感指数は、ほぼ同時期にほぼ同内容の調査を行っています。
但し、UM消費者信頼感指数は、CB消費者信頼感指数よりも、約1桁少ないデータ数に基づく上、電話アンケートで済ませています。
そのため、UM消費者信頼感指数は、結果のブレが非常に大きい上に、同月集計結果が前月よりも改善したか悪化したか、CB消費者信頼感指数とあまり一致しないことがわかっています。
よって、消費者の購買意欲が上向きか下向きかは、CB消費者信頼感指数の方がアテにできる、と考えています。

単月毎のCB消費者信頼感指数と本指標の実態差異判別式の解の符号を比べた結果を下図に示します。
下図横軸は、本指標がCB消費者信頼感指数よりも何か月先行/遅行したか、を表しています。
下図縦軸は、両指標の実態差異判別式の解の方向一致率です。

さて、上図で灰線よりも左側は偶然の一致率を表し、灰線より右側が両指標の一致率を表している、と考えても良いでしょう。
ところが、灰線より右側で左側の上下動よりも大きくブレた月は見当たりません。
よって、単月毎の実態差異判別式の解の符号を見比べる限り、両指標の改善や悪化の同期や連動を抽出することはできません

次に、同月集計分と1か月前のCB消費者信頼感指数の良し悪し(実態差異判別式の解の符号)と、本指標発表前後の反応方向の方向一致率を求めておきます。

上表から、CB消費者信頼感指数がどうあれ、本指標発表前後の反応方向に影響はない、ということがわかりました。

なお、上表の判定回数は、本指標よりも影響力が強い他の指標との同時発表時13回を除外、直前10-1分足値幅が0の9回、を除外してます。


(2) 小売売上高との対比

個人支出小売売上高の増減と、きっと相関があるに違いありません。

参考までに両指標の単月毎の実態差異判別式の解の符号の方向一致率を下図に示します。
この図から、小売売上高の増減と本指標の増減は、時差1か月(方向一致率70%)もしくは2か月(同23%)で連動している、ということがわかります。

次に、同月集計分から本指標が2か月遅行まで、小売売上高の実態差異判別式の解の符号と、本指標発表前後の反応方向の方向一致率を求めておきます。

上表から、本指標発表直前10-1分足の方向は、前々月の小売売上高の実態差異判別式の解の符号と逆方向になりがち(期待的中率67%)、ということがわかります。

なお、上表の判定回数は、本指標よりも影響力が強い他の指標との同時発表時13回を除外、直前10-1分足値幅が0の9回、を除外してます。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項記載の51回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2020年2月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で4.7pipsで、反応程度は小さい指標です。
けれども、直後11分足値幅の平均値は直後1分足順跳幅の平均値を超えています。
後記3.5項の伸長性分析の本指標発表後の反応の伸びやすさを参照願います。


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

2015年~2017年に比べ、2018年・2019年は利得が小さくなっています。
これは、他の米国指標と同様に2018年・2019年の反応が小さくなっているためです。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で11.6pipsです。
毎年の変化を見ても7.0~22.3pipsでばらつきが大きく、予想乖離幅の大きさで反応程度を見込むことはできません。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、各判別式の解が各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足反応方向は一致率が高く、素直に反応する指標だということがわかります。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に指標方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.3以下のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度40%、期待的中率72%)
  • 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.3超のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度42%、期待的中率68~75%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.6超のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度23%、期待的中率67~71%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。

そこで、4本足各実体部同士の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図からは、直前1分足と直後11分足の方向一致率が低いことがわかります。
また、直前1分足の陰線率は67%、と偏りがあります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成されるローソク足との方向一致率を求めました。

結果、

  • 直後11分足は、直前10-1分足値幅が3.0pips超(過去平均値超)のとき、その逆方向になりがち(場面発生頻度27%、期待的中率69~73%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析します

下図をご覧ください。

順跳幅の伸長率は60%ですが、値幅の伸長率は44%です。
これではとても追撃できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が3.4pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、直ちに追撃を開始し、直後11分足順跳幅での利確を狙う(場面発生頻度56%、期待的中率68~89%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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改訂履歴

2.0訂(2020年1月19日) 新書式反映
2.1訂(2020年4月21日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

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