米国経済指標「四半期GDP確定値」発表前後のUSDJPY反応分析(3訂版)

本稿は、米国経済指標「四半期GDP確定値」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(BEA:The United States Census Bureau)
  • 発表日時:当該四半期終了の翌々月末21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:米国内経済活動の付加価値総額の物価上昇分控除済・季節調整済前期比の確定値

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「四半期GDP前期比確定値」「四半期GDPデフレータ前期比確定値」「四半期PCEコアデフレータ前期比確定値」「四半期PCE前期比確定値」の4つ
  • 2015年以降の実績に基づけば、他の指標との同時発表をあまり気にする必要がない
    但し、Phil連銀製造業景気指数やPCEコアデフレータ(月次)との同時発表時は、過去事例が少なく注意しておいた方が良い
  • 指標発表前後の反応方向を事前示唆しがちな指標だけに、発表後の反応は伸び悩む傾向がある

反応には次の傾向があります。

  • 指標発表前の反応方向は素直(事前差異判別式の解の符号と直前10-1分足値幅方向の一致率67%)
  • 指標発表直後の反応方向は非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率84%)
    がしかし、指標発表後1分間に伸ばした反応は、その後10分間にほとんど伸びない(直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が反応を伸ばしていたことは過去50%、直後1分足値幅と直後11分足値幅の各平均値は各7pips・9pips)
  • 指標発表直後の反応程度は小さい(直後1分足順跳幅平均値は9pips)

指標内容について補足します。

多くの指標解説記事では「速報値は反応が大きいため市場の注目度が高い」と説明されています。
これはその通りなのでしょう。
2013年から2019年の速報値・改定値・確定値それぞれの発表時について、直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅の平均値を下表に整理しておきます。

速報値・改定値・確定値のいずれも、指標発表直後に跳ねたら、その後はほとんど反応を伸ばさないことがわかります。

次に、2013年から2019年の速報値・改定値・確定値それぞれの発表時について、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率を下表に整理しておきます。
そして、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばした否かを、順跳幅と値幅それぞれについて下表に整理しておきます。
これらのことは、指標結果の良し悪しにどれだけ素直に反応し、その素直な反応に乗じて追撃開始したときの勝ちやすさを示しています。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は、速報値・改定値・確定値のいずれも高いことがわかります。
よって、もし発表結果が市場予想を上回るか否かを事前に予想できれば、ほぼ初期反応方向を当てることができ、大きく稼げる指標です。

そんなことはできない、と思うなら、初期反応方向を見てからポジションをオーダーすることになります。
がしかし、改定値の直後11分足値幅が直後1分足値幅を削りがちな点を除けば、追撃するにせよ逆張りするにせよ自信が持てない数字となっています。
取引が容易な指標は、やはり指標発表後に一方向に反応を伸ばし続ける指標です。
けれども、米国GDPは速報値・改定値・確定値のいずれもそうではなく、そういう意味で米国GDPは取引が難しい指標です。

指標発表後に一方向に反応を伸ばし続けない指標は、発表結果と市場予想との乖離の大きさや初期反応の強さを参考にして、追撃すべきか逆張りすべきかを判断するしかありません。
では、それら判断を直観に頼って取引すべきか?
少なくとも初心者には難しいやり方です。

Ⅱ節以降に示すように、発表結果と市場予想の乖離幅や直後1分足の大きさを階層化し、これだけ乖離していれば追撃とか、これだけ初期反応が大きいときは逆張りとか、予め取引方針を決めておきましょう。
初心者が経験に代えて取引の根拠にするのは、それがベターです。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り2013年1-3月集計分から2019年7-9月集計分までの27回分です。
分析対象項目は「四半期GDP前期比確定値(以下「GDP」と略記)」「四半期GDPデフレータ前期比確定値(以下「GDPdf」と略記)」「四半期PCEコアデフレータ前期比確定値(以下「qPCEcdf」と略記)」「四半期PCE前期比確定値(以下「qPCE」と略記)」とします。


2.1 分析対象

以下、GDPGDPdfqGDPcdfqPCEの順に分析対象期間の推移を示します。

2018年10-12月集計分は改定値がありません。
同集計分は2019年2月28日に速報値、同年3月28日に確定値が発表されています。
本来、速報値は1月下旬に発表されるはずでしたが、政府債務上限問題で政府機関閉鎖が行われ、1月速報値が発表できなかった、ということがありました。
よって、上4図の2018年10-12月集計分の「改定値結果」は、「速報値結果」を前回結果としてプロットしています。

項目毎の統計値を下表に纏めておきます。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力が強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定します(プラスと陽線、マイナスと陰線、を一致と判定)。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の影響力が強く、赤太字ならば本指標の影響力が弱い、と判定しました。

Phil連銀製造業景気指数PCEコアデフレータ(月次)は、分析対象期間中に1度しか同時発表されていません。
よって、上表結論の「本指標の影響力が強い」は、今後も継続注視しておく必要があります。
そうした注記こそ必要なものの、本指標は他の指標との同時発表を気にしなくて良い、が結論です。


2.3 項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の指数が発表され、且つ、各指数が反応に与える影響が異なるとき、各指数の反応方向への影響力の強さを判別式の係数で表します
この判別式を求める分析が項目間影響力比較分析です。

本指標の分析対象項目は、GDPGDPdfqGDPcdfqPCE、でした。
2.2項結論に基づく27回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

直前10-1分足の方向は、GDPdfとqPCEcdfが事前差異判別式の解の符号との一致率が高いようです。
指標発表後(直後1分足や直後11分足)の方向は、GDPとqPCEが事後差異判別式の解の符号との一致率が高いようです。

もう少し詳しく知るために、各判別式を次のように立式します。

  • 差異判別式=A✕GDPの差異+B✕GDPdfの差異+C✕qPCEcdfの差異+D✕qPCEの差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー改定値結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー改定値結果
  • 但し、2018年1-3月のみは、上記改定値結果の代わりに速報値結果とする

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

これら判別式で、指標発表10分前から指標発表11分後までの反応方向に説明がつきます


2.4 指標予想分析
本分析は省略します。

Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象数は2.2項結論に基づき27回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。


3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で9pipsで、反応程度は小さい指標です。
そして、直後1分足順跳幅と直後11分足値幅の平均値はともに9pipsです。


3.2 利得分析

利得分析は、判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証します

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で7.0pipsです。
但し、毎年の平均では4.2~11.5pipsと大きくばらついており、事後差異判別式の解から直後1分足値幅を的確に予想することは難しいことがわかります。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、各判別式の解が各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足反応方向は一致率が84%と高く、本指標が発表結果の良し悪しに素直に反応することがわかります。

また、直前10-1分足方向は、事後差異判別式や実態差異判別式の解の符号(発表結果が市場予想や前回結果を上回るか否か)を70%以上の精度で示唆しています。
けれども、直後1分足や直後11分足が直前10-1分足と同方向になると見込むべきではありません。
次3.4項に示すように、直後1分足や直後11分足の直前10-1分足との方向一致率は各63%・58%で、十分信頼できるレベルには達していません。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に指標方向一致率を求めました。

上図から、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の符号と同じ方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率67%~100%)
  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.3以下のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度48%、期待的中率67%以上)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が1.2超のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度19%、期待的中率80%)

が本項分析結論です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図からは、直前1分足の陰線率が70%と、偏りが目立ちます。
また、直前10-1分足と直前1分足、及び、直前1分足と直後1分足の方向一致率が低く、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成されるローソク足との方向一致率を求めました。

よって、

  • 直前1分足は、直前10-1分足と逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率74~100%)
  • 直後1分足は、直前10-1分足値幅が過去平均値超のとき、直前10-1分足と同方向になりがち(場面発生頻度37%、期待的中率67~89%)
  • 直後11分足は、直前10-1分足値幅が過去平均値の0.5倍超のとき、直前10-1分足と同方向になりがち(場面発生頻度63%、期待的中率67~78%)

が本項分析結論です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析します

下図をご覧ください。

上図から、直後1分足順跳幅より直後11分足順跳幅が伸びたことは62%で、両者の値幅を比べて反応を伸ばしたことは50%しかありません。
これでは指標発表後の反応方向を確認しても、安心して追撃できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

よって、

  • 直後1分足順跳幅が過去平均値を超えたら直ちに追撃を開始し、指標発表後1分を過ぎたら早めに利確機会を窺うべき(場面発生頻度30%、期待的中率75%)

が本項分析結論です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


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以上

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