米国経済指標「四半期GDP改定値」発表前後のUSDJPY反応分析(3訂版)

本稿は、米国経済指標「四半期GDP改定値」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(BEA:The United States Census Bureau)
  • 発表日時:当該四半期終了の翌々月末21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:米国内経済活動の付加価値総額の物価上昇分控除済・季節調整済前期比の改定値

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「四半期GDP前期比改定」「四半期GDPデフレータ前期比改定値」「四半期PCEコアデフレータ前期比改定値」「四半期PCE前期比改定値」の4つ
  • 2015年以降の実績に基づけば、他の指標との同時発表をあまり気にする必要がない
    但し、耐久財受注や金融政策関連会見との同時発表時は、過去事例が少なく注意しておいた方が良い
  • 指標発表後の反応方向を事前示唆しがちな指標だけに、発表後の反応は伸び悩む傾向がある

反応には次の傾向があります。

  • 指標発表前の反応方向は素直(事前差異判別式の解の符号と直前10-1分足値幅方向の一致率70%)
  • 指標発表直後の反応方向は非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率92%)
    がしかし、指標発表後1分間に伸ばした反応は、その後10分で値幅を削られがち(直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が反応を伸ばしていたことは過去21%しかない)
  • 指標発表直後の反応程度は中程度(直後1分足値幅平均10pips)

指標内容について補足します。

本指標の意義は、当該期の総合的な経済実態を表し、政府や中銀の政策に影響を与える点です。
主要国では、翌期以降に速報値改定値確定値が順次発表され、平均的な反応が最も大きいのは速報値です。
米国のGDP改定値は2・5・8・11月に発表されます。

改定値は、速報値を修正することになるため、速報値よりも市場予想の精度が良くなって当然です。
けれども、予想精度が良くても、そんなことは取引に関係ありません。
発表結果と市場予想の差異(事後差異判別式の解)のプラス率は69%で(2013年以降)、改定値は速報値より上方改定されがちです。
その結果、直後1分足の陽線率は68%で、きっと多くの本指標取引参加者がこの数字を知っているのでしょう。
同期間の直前10-1分足の陽線率も70%に達しています。

そういった点で、米国GDPの速報値は反応が大きくて稼ぎやすい、改定値は方向を当てやすくて勝ちやすい、と言えるでしょう。
こちらにその発表事例をリンクしておきます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り2013年1-3月集計分から2019年7-9月集計分までの26回分です。
分析対象項目は「四半期GDP前期比改定値(以下「GDP」と略記)」「四半期GDPデフレータ前期比改定値(以下「GDPdf」と略記)」「四半期PCEコアデフレータ前期比改定値(以下「qPCEcdf」と略記)」「四半期PCE前期比改定値(以下「qPCE」と略記)」とします。


2.1 分析対象

以下、GDPGDPdfqGDPcdfqPCEの順に過去推移を示します。

2018年10-12月集計分は改定値がありません。
同集計分は2019年2月28日に速報値、同年3月28日に確定値が発表されています。
本来、速報値は1月下旬に発表されるはずでしたが、政府債務上限問題で政府機関閉鎖が行われ、1月速報値が発表できなかった、ということがありました。

項目毎の統計値を下表に纏めておきます。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例から、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力が強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定します。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の影響力が強く、赤太字ならば本指標の影響力が弱い、と判定しました。

本指標と耐久財受注の同時発表は対象期間に2度行われています。
この2度の発表時の反応方向は、両指標結果にいずれも素直でした。
相対基準に週次失業保険申請件数を用いても、両指標ともに週次失業保険申請件数よりも影響力が強いことが判明しています。
ここでは、本指標>耐久財受注、と判断しましたが、これは後日修正となる可能性もあります。
ともあれ、本指標の影響力は強く、他の指標と同時発表があっても、本指標の良し悪しに反して反応したことはありません

但し、金融政策関連との同時発表が過去1度(2013年10-12月集計分=2014年2月28日発表)あります。
そのときは、本指標結果に素直に反応したものの、金融政策関連との同時発表時は当局の発言次第で大きく反応してしまいます。
危ないので、そういう場面では取引しないことにしています。

よって、以下の反応方向に関わる分析対象は、2013年1-3月集計分から2019年7-9月集計分までの25回、が結論です。


2.3 項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の指数が発表され、且つ、各指数が反応に与える影響が異なるとき、各指数の反応方向への影響力の強さを判別式の係数で表します
この判別式を求める分析が項目間影響力比較分析です。

本指標の分析対象項目は、GDPGDPdfqGDPcdfqPCE、でした。
2.2項結論に基づく25回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

上表から、反応方向への寄与はGDPとGDPdfが担っており、qPCEcdfやqPCEは担っていないことがわかります。

そして、「事前差異:直前10-1分足」の「GDPdf」の項は、方向一致率が20%しかありません。
けれども、GDPdfの市場予想が速報値結果と違っていたことは、2013年以降の発表で5回しかないのです。
それでは今後、ほとんどの改定値発表時に事前差異判別式が活用できません。

もう少し詳しく知るために、各判別式を次のように立式します。

  • 差異判別式=A✕GDPの差異+B✕GDPdfの差異+C✕qPCEcdfの差異+D✕qPCEの差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー速報値結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー速報値結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

これら判別式で、指標発表10分前から指標発表11分後までの過去の反応方向に説明がつきます
前述の事前差異判別式も、A・B・C・Dを上表のように割り当てることで、解が0となることがなくなります。


2.4 指標予想分析
本分析は省略します。

Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項結論の27回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。


3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で12pipsで、反応程度は中程度の指標です。
そして、直後1分足と直後11分足の値幅平均値は、ともに10pipsです。
また、直後1分足順跳幅の分布は、過去平均値の0.5倍以下と1.5倍超2倍以下にほぼ2分されています。

これらのことは、本指標発表後の追撃の難しさを示唆しています。


3.2 利得分析

利得分析は、判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証します

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で9.3pipsです。
但し、毎年の平均では1.1~15.3pipsと大きくばらついており、事後差異判別式の解から直後1分足値幅を的確に予想することは難しいことがわかります。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、各判別式の解が各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足反応方向は一致率が92%と高く、非常に素直に反応する指標だということがわかります。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に指標方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.4以下のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度60%、期待的中率70~71%)
  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.2超のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度56%、期待的中率80~100%)
  • 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.6超のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度15%、期待的中率75%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度93%、期待的中率67~87%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上左図・上中図は相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
上右図からは、直後1分足から直後11分足の値幅をそこそこ予想できるようです。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図からは、直前10-1分足と直前1分足の方向一致率が低く、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成されるローソク足との方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前1分足は、直前10-1分足値幅が過去平均の1.5倍以下のとき、それと逆方向になりがち(場面発生頻度78%、期待的中率79~92%)
  • 直後1分足は、直前10-1分足値幅が過去平均の1.5倍超のとき、それと同方向になりがち(場面発生頻度15%、期待的中率75%)
  • 直後11分足は、直前10-1分足値幅が過去平均値超のとき、それと逆方向になりがち(場面発生頻度33%、期待的中率67~75%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析します

下図をご覧ください。

上図から、直後1分足順跳幅より直後11分足順跳幅が伸びたことは54%で、両者の値幅を比べて伸びたことは21%しかありません。
これは、逆張りの機会を窺った方が良さそうです。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が過去平均値の1.5倍を超えたら、直ちに追撃を開始するか、直後1分足終値を待って追撃すれば良い(場面発生頻度40%、期待的中率70%)
  • 直後1分足がどうあれ、直後1分足終値がついたら逆張りし、直後11分足終値がつくまでに直後1分足値幅を削るのを待って決済すれば良い(場面発生頻度93%、期待的中率79~87%)

です。

直後1分足順跳幅が過去平均値を超えた場合、直後11分足が反転したことはありません
よって、逆張りは欲張らないことが大事です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


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以上

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