米国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1.4訂)

本稿は、米国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(BEA:The United States Census Bureau)
  • 発表日時:当該四半期終了の翌月末21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:米国内経済活動の付加価値総額の物価上昇分控除済・季節調整済前期比

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「四半期GDP前期比速報値」「四半期GDPデフレータ前期比速報値」「四半期PCEコアデフレータ前期比速報値」「四半期PCE前期比速報値」の4つ(2.3項参照)
  • 反応程度の平均値は中程度(直後1分足値幅平均14.7pips)で、指標発表直後の反応方向はかなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率82%)
  • 2015年以降の実績に基づけば他の指標との同時発表を気にする必要がない(2.2項参照)
  • 指標発表前後の反応の特徴は次の通り
    (1) GDPとqPCEの予想乖離方向が反応方向に影響し、ふたつのデフレータは反応方向への影響力が小さい(2.3項参照)
    (2) 全体的に過大反動を起こしにくく、前期の実態差異判別式の解の絶対値が4.2超のとき、過大反動を起こさないと見込んで取引すると良い(2.4.2項参照)
    (3) 直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅の平均値がそれぞれ伸びておらず、追撃には向かない(3.5項参照)

指標発表後の反応方向を事前示唆しがちな指標だけに、発表後の反応は伸び悩む傾向がある

指標内容について補足します。

本指標の意義は、当該期の総合的な経済実態を表し、政府や中銀の政策に影響を与える点です。
主要国では、翌期以降に速報値改定値確定値が順次発表され、平均的な反応が最も大きいのは速報値です。
米国のGDP速報値は1・4・7・10月に発表されます。

わかりにくい点は、GDPが名目と実質の二種類あることです。
大雑把に言えば、名目GDPは財やサービスの付加価値を単純に合計した値です。
実質GDPは、名目GDPから物価変動分を除いたものです。
名目GDPを実質GDPで割ると、物価指標にあたる「GDPデフレータ」が算出されます。

GDPの構成要素は、個人消費(68%)設備投資(12%)住宅投資(3%)在庫変動(1%)政府支出(19%)純輸出(△3%)、です。
先進国一般にGDPに占める個人消費の比率が高く、特に米国では個人消費がGDPの約70%を占めています。
個人消費(PCE)の名目値と実質値の比がPCEデフレータで、そこから価格変動の大きな食糧とエネルギーの影響を除いたものがPCEコアデフレータです。
PCEコアデフレータは、FRBのインフレターゲット対象指標です。

発表値は実質値で表示され、こちらにその発表事例をリンクしておきます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は

四半期GDP前期比速報値(以下「GDP」と略記)
四半期GDPデフレータ前期比速報値(以下「GDPdf」と略記)
四半期PCEコアデフレータ前期比速報値(以下「qPCEcdf」と略記)
四半期PCE前期比速報値(以下「qPCE」と略記)

とします。
分析対象期間は2013年1-3月集計分から2019年10-12月集計分までの28回分です。


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
配置は、GDP(左上)・qPCE(左下)・GDPdf(右上)・qGDPcdf(右下)、となっています。

2017年10-12月集計分のqPCEcdfはデータがありません。

さて、2017年以前はGDPの1-3月集計分が毎年低下する傾向がありました。
その低下幅があまりに大きいため、1-3月期の季節調整が大きすぎるのではないか、との疑義がありました。
そして、2018年以降に季節調整値の見直しが行われ、2019年は1-3月期のGDPの低下幅が小さくなっていました。
かつてのように、毎年1-3月集計分がその年の最低値になるとは限らなくなりました。

各指数の統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、本指標ではほとんど意味がありません
むしろ、上記4指数と後記2.3項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定します。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の影響力が強く、赤太字ならば本指標の影響力が弱い、と判定しました。
本指標の影響力は強く、他の指標と同時発表があっても気にする必要がありません。
よって、以下の反応方向に関わる分析対象は、2013年1-3月集計分から2019年10-12月集計分までの28回、が結論です。


2.3 項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の指数が発表され、且つ、各指数が反応に与える影響が異なるとき、各指数の反応方向への影響力の強さを判別式の係数で表します
この判別式を求める分析が項目間影響力比較分析です。

本指標の分析対象項目は、GDPGDPdfqGDPcdfqPCE、でした。
2.2項結論に基づく28回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

指標発表後は、GDPの予想乖離方向だけを参考に取引しても問題ありません。
最初は素直に追撃し、数分後には逆張りが良さそうです。
但し、それでは、GDPが予想同値だったときにどうしようもありません。
そこで、もう少し詳しく知るために、各判別式を次のように立式します。

  • 差異判別式=A✕GDPの差異+B✕GDPdfの差異+C✕qPCEcdfの差異+D✕qPCEの差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー前期確定値結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー前期確定値結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

これら判別式で、指標発表10分前から指標発表11分後までの反応方向に説明がつきます


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です


2.4.1 移動平均線分析

本分析は省略します。


2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います

分析結果を下表に示します。

上表記載の通り、どちらかと言えば過大反動を起こしにくい指標です(「過大反動率」を参照)。
そして、前月実態差異判別式の解の絶対値が4.2超のとき、過大反動を起こさないと見込んで取引すると、75%の期待的中率があります(「仮説一致率」を参照)。
「過大反動を起こさないと見込んで取引する」とは、指標発表直前に前月実態差異判別式の解の符号と同方向にポジションを取得する、ということです。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が26回となっています。
その理由を下表に整理しておきます。

その他理由の1回は、qPCEcdfはデータがない2017年10-12月集計分です。


2.4.3 同期/連動指標分析

本分析は省略します。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項結論の28回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2019年10-12月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で14.7pipsで、反応程度は中程度の指標です。
そして、直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅は、ほとんど反応を伸ばしていません。


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で14.5pipsです。
毎年の変化を見ても2.0~23.6pipsでばらつきが大きく、予想乖離幅の大きさで反応程度を見込むことはできません。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、各判別式の解が各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足反応方向は一致率が高く、かなり素直に反応する指標だということがわかります。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に指標方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式が4.8超7.2以下のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度25%、期待的中率83%)
  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が7.2超のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度18%、期待的中率67%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率67~80%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上左図・上中図は相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
上右図からは、直後1分足から直後11分足の値幅をそこそこ予想できるようです。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図からは、直前1分足の陰線率が77%と、偏りが目立ちます。
また、直前10-1分足と直前1分足の方向一致率が低く、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成されるローソク足との方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足値幅の大きさがどうあれ、直前1分足はその逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率69~75%)
  • 直前10-1分足値幅が3.2pips超(過去平均値超)のとき、直後1分足はそれと同方向になりがち(場面発生頻度32%、期待的中率78~80%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析します

下図をご覧ください。

順跳幅の伸長率は54%、値幅の伸長率は47%で、これではとても追撃できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

結果、追撃に適すると言える場面は見受けられません


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。


関連リンク

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改訂履歴

2.0訂(2020年1月26日) 新書式反映
2.1訂(2020年4月27日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

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