米国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPY反応分析

本稿は、米国経済指標「四半期GDP速報値※1」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

発表機関
米国商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis, U.S. DEPARTMET OF COMMERCE:BEA
発表日時
当該四半期終了の翌月下旬21:30(冬時間は22:30)
発表内容
米国内経済活動の付加価値総額と物価上昇率の季節調整済前期比※2発表事例※3
反応傾向

  • 注目内容=「GDP前期比」「GDPデフレータ前期比」「PCE前期比」「PCEコアデフレータ前期比」の総合的な対予想乖離
  • 反応程度=中程度(直後1分足値幅の過去平均値14.2pips
  • 反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率83%
  • 伸長性=発表直後に20pips以下しか跳ねなかった場合はその後11分でそれを超えることが多いが、30pips超も跳ねたときはそれを超えられないことが多い

※1  BEA統計名は「Gross Domestic Product(Advance Estimate)」。がしかし、本稿では馴染のある名称「四半期GDP速報値」表記に統一する。

※2  米国GDPは、個人消費支出民間設備投資政府支出純輸出合計で計算される。それらの合計値は名目GDPと呼ばれ、名目GDPからインフレ分を差し引いた実質GDPが発表される。この面倒な話は、GDPが一定期間に発生した価値を計測する指標であるのに、その計測値を貨幣価値基準で表すことで生じる。同じ期間に貨幣価値はインフレ分だけ下落しているため、貨幣価値の下落分を除かなければ、過去から現在までの計測値を同列に論じられなくなる。結果、実質GDPを計測するためには、名目GDPとインフレ率がともに重要となる。実質GDPを計測するためのインフレ分がGDPデフレータ実質個人消費支出(PCE)を計測するためのインフレ分がPCEデフレータである。

※3  通例、BEA発表画面上部に「Real GDP:Percent change from preceding quarter(実質GDP:前期比)」のグラフが示され、その下に「GDPデフレータ」「PCE」「PCEコアデフレータ」等が文章と表形式で示される。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
下記成績に示す通り、今次改訂以前の的中率・勝率不十分のため取引方針改訂
指標発表直後の反応は、発表定時にいきなり大きく跳ねることもあり、狙えるときにその跳ねを狙うことを目指す。そして、その跳ねを逃した場合は、慌てて追撃せずに戻しを待って追撃した方が良い場合が多い。そのタイミングが難しいため、追撃で稼ぐことが難しい。
Ⅱ. 分析対象
2013年1-3月期集計分以降の29事例。通常、市場予想の精度が高く、それだけに発表結果の予想乖離幅によっては大きく反応する。一方、市場予想の精度が高いことは、発表後の事実売り(素直でない反応)が生じやすい。平均的な反応程度は中程度で、あまり一方向に反応を伸びない傾向がある。
Ⅲ. 指標分析
チャートへの影響力が強く、同時発表指標のことは気にしなくても良い。直後1分足値幅方向は事後差異判別式の解の符号と83%一致、直後11分足値幅方向は実態差異判別式の解と69%不一致。「GDP前期比」の判別式のみに注目しても、これら一致率・不一致率は74%74%と高い。
Ⅳ. 反応分析
事前差異判別式の解の符号は、指標発表前後の反応方向を示唆している場合が多い。また、指標発表直後の反応方向は、直前10-1分足値幅が大きいときほど、それと同方向になりやすく、判別式の解の符号との一致率も高い。直後1分足順跳幅が大きすぎるときは、ひとまず戻しを待ってから追撃した方が良い。
Ⅴ. 過去成績
方針適用率は79%、分析的中率は55%、実取引勝率は57%
1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

※4  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

分析対象は、2013年1-3月期集計分から2020年1-3月期集計分までの米国四半期GDP速報値における

  • GDP前期比(以下「GDP」と略記)
  • GDPデフレータ前期比(以下「GDPdf」と略記)
  • PCEコアデフレータ前期比(以下「qPCEcdf」と略記)
  • PCE前期比(以下「qPCE」と略記)

です。

上記4指数はそれぞれ「前年同期比」も発表されますが、「前期比」ほど反応方向に影響を与えません。
よって、本稿では「前期比」のみが分析対象です。

指標分析対象を下表に纏めておきます。

表中qPCEのみは、市場予想が見つからない事例が1回ありました(2017年10-12月期)。
また、4指数全てが確定値発表時に値が修正されており、GDPは対象期間全ての発表値が確定値と異なります。

一方、反応分析対象も指標分析対象と同じです。


2.2  指標推移

分析期間における指標推移を下図に示します。
配置は、GDP(左上)・qPCE(左下)・GDPdf(右上)・qPCEcdf(右下)、です。

※5  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

さて、2017年以前はGDPの1-3月集計分が毎年低下する傾向がありました。
その低下幅が大きいため、1-3月期の季節調整値は大きすぎるのではないか、との疑問が広く呈されました。
そのため、2018年以降に季節調整値の見直しが行われ、2019年は1-3月期のGDPは2018年10-12月期よりも上昇しました。
今ではかつてのように、毎年だいたい1-3月集計分がその年の最低値になるとは限りません
もっとも、2020年はコロナ禍によって低下したため、季節調整値見直し効果はまだはっきりしていません。

なお、上図GDPqPCEの2014年1-3月期の大きな落ち込みは、寒波による消費落ち込み(速報値)に加え、オバマケア導入に伴う医療費支出が大幅に見直された(確定値)ことで生じた、と説明されています。
また、同年7-9月期の大きな上昇は、個人消費が前期比+1.8%(特に耐久財が同+7.2%)、住宅を除く設備投資が同+5.5%、輸出が同+11.0%で輸入が同△1.7%で純輸出がプラス寄与しました。
そして、2019年10-12月期の確定値の大きな上昇も、内需好調と、輸出増ー輸入減による純輸出増の寄与が大きくなっています。
2020年1-3月期は、コロナ禍によって世界的に人・物の移動が制限された結果、大きく落ち込みました。
こうしてGDPの大きな上昇や下降を見ると、個人消費中心の米経済とは言え、純輸出の良し悪しの影響が無視できない印象を持ちます。

さて、参考までに各指数の統計値を下表に示しておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、本指標ではあまり意味がありません
むしろ、上記4指数と後記3.2項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

事後差異の平均値や標準偏差は、事前差異や実態差異のそれらよりも低くなっています。
このことは、市場予想の精度が高いことを表しています。

なお、データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねないことが経験的にわかっています。
おそらくこれは、国力の長期的な変化や、好況/不況の波に対して財政/金融の支援に濃淡があるため、と思われます。
がしかし、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。
おそらくこれは、人為的な市場予想が絡むため、と思われます。


2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

直前1分足には陰線が目立つとともに、陽線側にヒゲを残すことも多いように見受けられます。
そして、直後1分足には逆ヒゲが目立たないものの、直後11分足にはそれが散見されます。
ざっくり利確や損切の目安を読み取れば、指標発表前は5pips程度、発表後は20pips程度、といったところでしょうか。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は14.2pipsで、反応程度は中程度です。
けれども、直後11分足の順跳幅平均値や値幅平均値は、直後1分足のそれらからほとんど伸びていないことを踏まえると、指標発表後の追撃で稼ぐことの難しさを示唆しています。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

上表「同時発表指標」名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。

四半期雇用コスト指数と本指標は、対象期間に1回しか同時発表されておらず、方向一致率は同率です。
がしかし、これはまぁ、四半期雇用コスト指数<本指標、と判断します。

本指標の影響力は強く、他の指標と同時発表があっても気にする必要がありません。
よって、以下の反応方向に関わる分析対象は、2013年1-3月期集計分から2020年1-3月期集計分までの29回全数、が結論です。


3.2  項目間影響力比較分析

分析対象は、GDPGDPdfqGDPcdfqPCE、でした。
各指数の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

指標発表後は、GDPの予想乖離方向だけを参考に取引しても問題ありません。
最初は素直に追撃し、数分後には逆張りが良さそうです。
但し、それでは、GDPにしか注目してなければ、発表結果が市場予想と同値だったときにどうしようもありません。
そこで、もう少し詳しく知るために、各判別式を次のように立式します。

  • 判別式=A✕GDPの差異+B✕GDPdfの差異+C✕qPCEcdfの差異+D✕qPCEの差異
    但し、事前差異=市場予想ー前期確定値結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前期確定値結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、本指標の事後差異判別式を例に挙げて、上表係数を上式に代入すると、

総合的な事後差異判別式=2✕GDPの(発表結果ー市場予想)+1✕GDPdfの(発表結果ー市場予想)+1✕qPCEcdfの(発表結果ー市場予想)+1✕qPCEの(発表結果ー市場予想)

です。

これら判別式で、指標発表10分前から指標発表11分後までの過去の反応方向に高い精度での説明がつきます


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で12.4pipsです。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  指標一致性分析

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上右図は相関係数(R2値)が低く、回帰式によって反応の方向と程度を予想することはできません
けれども、上中図は相関係数こそ低いものの、回帰式によって反応方向だけは予想できそうです

そこで、各判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は83%の一致率で、反応方向は市場予想乖離方向に非常に素直です。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

経験的に信頼度が高い傾向は、階層の変化方向に応じて方向一致率が変化しているパターンです。
がしかし、上図からはそうした傾向を示すローソク足は直前1分足だけです。

  • 事前差異判別式の解の絶対値が6.9超(過去平均値の2倍超)のとき、その解の符号と直前1分足値幅方向は67%逆方向(場面発生頻度17%)

それほど信頼度が高くなくても、過去の一致率だけに注目すると、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が2.3超6.9以下(過去平均値の0.5~2倍)のとき、その解の符号と直前10-1分足値幅方向は67~83%同方向(場面発生頻度49%)
  • 事前差異判別式の解に依らず、その解の符号と直後11分足値幅方向は67~80%逆方向(場面発生頻度100%)

となっています。


4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上左図・上中図は相関係数(R2値)が低く、回帰式によって反応の方向と程度を予想することはできません
上右図からは、直後1分足値幅から直後11分足の値幅をそこそこ予想できるようです。

そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

上図から、直前1分足の陰線率が74%と、偏りが目立ちます。
また、直前10-1分足と直前1分足の方向一致率が低く、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります。
但し、直後1分足と直後11分足の値幅方向の一致率は高くても、直後1分足と直後11分足の始値は直前1分足終値で同一のため、それだけでは取引の根拠としては不十分です。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

経験的に信頼度が高い傾向は、階層の変化方向に応じて方向一致率が変化しているパターンです。
例えば、直前10-1分足値幅が大きいときほど、直後1分足値幅方向との一致率が上昇しています。

取引上の参考指針として、

  • 直前10-1分足値幅の大きさがどうあれ、直前1分足はその逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率67~75%)
  • 直前10-1分足値幅が3.2pips超(過去平均値超)のとき、直後1分足はそれと同方向になりがち(場面発生頻度35%、期待的中率70~80%)

が見出せます。


4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は76%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは73%、値幅が同方向に伸びたことは59%でした。
初期反応方向への追撃は数分以内に終えた方が良さそうです。
が、これら数値だけを信じない方が良いのです。

というのも、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が大きすぎるとき、うかつに追撃すべきではありません。

次に値幅方向です。

驚いたことに、直後1分足順跳幅が大きすぎるときしか追撃できません。

結論は、

  • 指標発表後に直ちに追撃開始し、数分以内にそのポジションを解消すべき(場面発生頻度100%、期待的中率73%)
  • 直後1分足順跳幅の大きさが30pips超えたときは、直後1分足終値がつく前に逆張りの機会を窺う(場面発生頻度17%、期待的中率75%)
  • 直後1分足順跳幅の大きさが30pips超えたときは、直後1分足終値がついた時点で追撃開始し、指標発表後11分以内に解消(場面発生頻度17%、期待的中率75%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。
よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率は79%
  • 方針適用時の分析的中率は55%、そのときの実取引勝率は57%
  • 1発表当たりの平均獲得pipsは△0.01、同平均取引時間は9分39秒

です。

結論、以前の取引方針に基づく限り勝てないため、改訂見直しが必要があった。
今次改訂後の成績に注視する。

※6  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示しています。


関連リンク

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改訂履歴

3.0訂(2020年1月26日) 新書式反映
3.1訂(2020年4月27日) 2.4.3項は分析方法を変更、始値基準ローソク足を開示
3.2訂(2020年7月28日) 2020年1-3月期集計分までを反映の上、成績不良に伴い取引方針を再考・改訂

以上

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