米国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPY反応分析(3訂版)

本稿は、米国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:商務省経済分析局(BEA:The United States Census Bureau)
  • 発表日時:当該四半期終了の翌月末21:30(冬時間は22:30)
  • 指標内容:米国内経済活動の付加価値総額の物価上昇分控除済・季節調整済前期比

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「四半期GDP前期比速報値」「四半期GDPデフレータ前期比速報値」「四半期PCEコアデフレータ前期比速報値」「四半期PCE前期比速報値」の4つ
    指標発表後の反応方向は「四半期GDP前期比速報値」の良し悪しだけでもほぼ説明できる
  • 2015年以降の実績に基づけば他の指標との同時発表を気にする必要がない

反応には次の傾向があります。

  • 指標発表直後の反応方向はかなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率81%)
  • 反応程度の平均値は中程度(直後1分足値幅平均15pips)
  • 指標発表後の反応方向を事前示唆しがちな指標だけに、発表後の反応は伸び悩む傾向がある

指標内容について補足します。

本指標の意義は、当該期の総合的な経済実態を表し、政府や中銀の政策に影響を与える点です。
主要国では、翌期以降に速報値改定値確定値が順次発表され、平均的な反応が最も大きいのは速報値です。
米国のGDP速報値は1・4・7・10月に発表されます。

わかりにくい点は、GDPが名目と実質の二種類あることです。
大雑把に言えば、名目GDPは財やサービスの付加価値を単純に合計した値です。
実質GDPは、名目GDPから物価変動分を除いたものです。
名目GDPを実質GDPで割ると、物価指標にあたる「GDPデフレータ」が算出されます。

GDPの構成要素は、個人消費設備投資住宅投資在庫投資政府支出純輸出、です。
先進国一般にGDPに占める個人消費の比率が高く、特に米国では個人消費がGDPの約70%を占めています。
個人消費(PCE)の名目値と実質値の比がPCEデフレータで、そこから価格変動の大きな食糧とエネルギーの影響を除いたものがPCEコアデフレータです。
PCEコアデフレータは、FRBのインフレターゲット対象指標です。

発表値は実質値で表示され、こちらにその発表事例をリンクしておきます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り2013年1-3月集計分から2019年7-9月集計分までの27回分です。
分析対象項目は「四半期GDP前期比速報値(以下「GDP」と略記)」「四半期GDPデフレータ前期比速報値(以下「GDPdf」と略記)」「四半期PCEコアデフレータ前期比速報値(以下「qPCEcdf」と略記)」「四半期PCE前期比速報値(以下「qPCE」と略記)」とします。


2.1 分析対象

以下、GDPGDPdfqGDPcdfqPCEの順に過去推移を示します。

項目毎の統計値を下表に纏めておきます。

2017年以前はGDPの1-3月集計分が毎年低下する傾向がありました。
その低下幅があまりに大きいため、1-3月期の季節調整が大きすぎるのではないか、との疑義がありました。
そして、2018年以降に季節調整値の見直しが行われ、2019年は1-3月期のGDPの低下幅が小さくなっていました。
かつてのように、毎年1-3月集計分がその年の最低値になるとは限らなくなりました。

なお、2017年10-12月集計分のqPCEはデータがありません。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例から、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力が強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定します。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の影響力が強く、赤太字ならば本指標の影響力が弱い、と判定しました。
本指標の影響力は強く、他の指標と同時発表があっても気にする必要がありません。
よって、以下の反応方向に関わる分析対象は、2013年1-3月集計分から2019年7-9月集計分までの27回、が結論です。


2.3 項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の指数が発表され、且つ、各指数が反応に与える影響が異なるとき、各指数の反応方向への影響力の強さを判別式の係数で表します
この判別式を求める分析が項目間影響力比較分析です。

本指標の分析対象項目は、GDPGDPdfqGDPcdfqPCE、でした。
2.2項結論に基づく27回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

指標発表後は、GDPだけを参考に取引しても問題ありません。
最初は素直に追撃し、数分後には逆張りが良さそうです。

もう少し詳しく知るために、各判別式を次のように立式します。

  • 差異判別式=A✕GDPの差異+B✕GDPdfの差異+C✕qPCEcdfの差異+D✕qPCEの差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー前期確定値結果
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー前期確定値結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

これら判別式で、指標発表10分前から指標発表11分後までの反応方向に説明がつきます


2.4 指標予想分析
本分析は省略します。

Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項結論の27回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。


3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で15pipsで、反応程度は中程度の指標です。
そして、直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅は、ほとんど反応が伸びていません。
また、過去70%強の事例では、直後1分足も直後11分足も順跳幅が過去平均値の0.5~1.5倍の範囲に収まっています。


3.2 利得分析

利得分析は、判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証します

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で14.9pipsです。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、各判別式の解が各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
そこで、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足反応方向は一致率が高く、素直に反応する指標だということがわかります。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に指標方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率68%)
  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が7.2超のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度19%、期待的中率67~100%)
  • 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が9.6超のとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度7%、期待的中率100%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が7.2以下のとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度81%、期待的中率67~80%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去の実績から検証します

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上左図・上中図は相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
上右図からは、直後1分足から直後11分足の値幅をそこそこ予想できるようです。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各実体部の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

上図からは、直前1分足の陰線率が76%と、偏りが目立ちます。
また、直前10-1分足と直前1分足の方向一致率が低く、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成されるローソク足との方向一致率を求めました。

結果、

  • 直前10-1分足値幅の大きさがどうあれ、直前1分足はその逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率68~83%)
  • 直前10-1分足値幅が過去平均値の0.5倍超のとき、直後1分足はそれと同方向になりがち(場面発生頻度56%、期待的中率67~80%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを、過去の実績から分析します

下図をご覧ください。

順跳幅の伸長率は56%、値幅の伸長率は44%で、これではとても追撃できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が過去平均値の1.5倍を超えたら直ちに逆張りし、直後1分足値幅を下回ることがあれば決済

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


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以上

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