米国景気指標「CB消費者信頼感指数」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1.4訂)

本稿は、米国景気指標「カンファレンスボード(CB)消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index)」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:産業審議委員会(Conference Board:以下「CB」と略記)
  • 発表日時:当月最終火曜日の23:00(冬時間24:00)
  • 指標内容:全米3000世帯の家計状況と世間の景気の見通しを総合的に指数化

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「信頼感指数(=CB消費者信頼感指数)」のみ
  • 反応方向は素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率78%)反応程度はかなり小さい(直後1分足値幅の過去平均値3.9pips)
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) 住宅関連指標(中古住宅販売件数新築住宅販売件数・住宅販売保留指数)との同時発表が行われるときは取引を避けた方が良い(2.2項)
    (2) 先に発表が行われるUM(ミシガン大学)消費者信頼感指数速報値は、本指標取引の参考にならない(2.4.3項)
  • 指標発表後の反応には次の傾向が窺える
    (1) 指標推移の上昇/下降基調は、指標発表直後の反応方向を予想根拠となる(2.4.1項)
    (2) 発表結果に過大反動が見込まれる事例では、指標発表直後の反応方向は素直にならない傾向がある(2.4.2項)
    (3) 指標発表直後の反応が大きいときは、その後に反応を伸ばさない傾向がある(3.5項)

指標内容について補足します。

まず、Conference Boardというのは何者かと言えば、経済団体や労働組合などで構成された非営利民間調査機関です。
発表値は、調査サンプル数が約3,000 世帯となるように、対象世帯約5,000に毎月1日頃に調査票を郵送し、18日頃までに得られた回答に基づきます。
その後に回収された回答は、翌月発表時に前月結果の改定値(修正結果)が発表されます。

さて、CB消費者信頼感指数UM消費者信頼感指数と対比されます。
両指標の調査は、ほぼ同時期にほぼ同じ内容で行われています。
主な違いは、アンケート方法が郵送(CB)電話(UM)かという点と、サンプル数の多寡(UM速報値は約300世帯)という点です。
両指標の推移を見比べれば明らかなように、これらの違いによって本指標の毎月の変化には安定感があります。

ともに、5つの質問への回答から信頼感指数(ICS=Index of Consumer Sentiment)、そのうち2つの質問への回答から現況指数(ICC= Index of Current Economic Conditions)、残る3つの質問への回答から期待指数(ICE=Index of Consumer Expectations)を定義式に基づき求めています。
本指標各指数の計算方法と質問内容はこちらにリンクしておきます


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は「信頼感指数」のみです。
指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2020年3月集計分までの63回分です。

本指標は対象期間の発表でほぼ毎回、前月結果が修正されています(修正頻度94%:母数は最終回の未修正を踏まえて62回)。
本指標の修正は翌月発表時に行われます。


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
このグラフには、2.4.1項の移動平均線分析のため、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしています。

グラフは、大統領選(2016年11月)の頃から上昇基調が明確化し、右端の2020年3月の急減はコロナ禍に伴う影響です。

本指標統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、あまり意味がありません
むしろ、後記2.3項に示す本指標の判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

例えば、後記2.3項に示す本指標の事後差異判別式

  • 発表結果ー市場予想

です。
データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。


2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例から、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応に関わる分析から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。
本指標は、住宅関連指標金融政策関連よりもチャートへの影響力が弱いことがわかります。

ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
そのため、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の63回発表のうち46回の事例となります。


2.3 項目間影響力比較分析

対象項目は信頼感指数だけなので、項目間影響力比較分析は行いません。

判別式は、

  • 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
  • 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
  • 実態差異判別式=発表結果ー修正結果(修正が行われなかった場合は前回結果)

です。

前述の通り実態差異判別式の「修正結果」は対象期間に58回改定されており、その他5回は「前回結果」に同じです。


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です


2.4.1 移動平均線分析

移動平均線分析は、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさを定量化しています。

指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、と判断します。
そして、2つの移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向の検証を行っています。
指標推移が上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線、下降中に陰線ならば、「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。

分析結果を下表に示します。

結果、2つの移動平均線のクロスした3か月後から仮説一致率は70%です。
結論、本指標は本分析の適合事例です。

なお、上表にて「翌月から」の「判定回数」は43回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。


2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います

分析結果を下表に示します。

結果、上表記載の通り、前月の実態差異判別式の解がどうあれ、過大反動が起きるかどうかはわかりません(上表「過大反動率」参照)。
むしろ、前月実態差異判別式の解の絶対値が9.2超のときは、過大反動が起きにくいことがわかります。
そして、前月実態差異判別式の解の絶対値が9.2超のときは、過大反動を起こさないと見込んだ方向に反応しがちです(上表「仮説一致率」参照)。
「過大反動を起こさないと見込む」とは、前月実態差異判別式の解の符号と当月の直後1分足の方向が一致することを見込む、ということです。
結論、本指標は本分析の不適有効事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が46回となっています。
理由要点を下表に整理しておきます。


2.4.3  同期/連動型指標分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。

さて、米国の消費者の景気指標には、本指標の他にUM消費者信頼感指数があります。
両指標は同期もしくは連動すべきため、他の指標における同期/連動型指標分析のように数か月も先行/遅行している可能性は排除できます。
下表をご覧ください。

下表は、本指標とUM消費者信頼感指数速報値の同期関係を調べた結果です。

上表から、両指標の実態差異判別式の解の符号の一致率は54%しかないことを示しています(上表「指標分析」の「方向一致率」参照)。
そして、当月の本指標発表直後1分足が当月のUM消費者信頼感指数速報値の実態差異判別式の解の符号と40%しか方向一致していないことを示しています(上表「反応分析」の「方向一致率」参照)。
すなわち、本指標発表直後の反応方向を予想するために、先に発表されたUM消費者信頼感指数速報値は参考になりません


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.2項記載の46回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2020年3月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
下図において歯抜けとなっている月は、2.2項結論により反応分析から除外した月です。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

多くの主要国主要経済指標が2017年頃から反応が小さくなったものですが、本指標ではそうした様子は明確に窺えません。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均で6.5pips、同値幅は過去平均で3.9pipsと、反応程度が小さい指標です。

平均的には、直後11分足の順跳幅と値幅が直後1分足のそれらを上回っています。
このことは、指標発表後に直ちに追撃開始し、直後11分足順跳幅が直後1分足順跳幅を超えて反応を伸ばすのを狙うべき、と示唆しています


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で0.9pipsです。
毎年の変化を見ても0.7~1.2pipsで、0.9pipsを中心に安定しています。
本指標発表結果の市場予想との乖離幅は、指標発表直後1分足値幅の予想に役立つ可能性があります


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

どのグラフも相関係数(R^2)が低く、回帰式による反応程度の予測がアテにできないことがわかります。
上左図にいたっては、いくつかの大きすぎる事前差異判別式の解の絶対値と反応によって、何が何だかわかりません。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が78%、実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率が70%と高く、本指標発表直後の反応はかなり素直なことがわかります。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
2.2項以降、分析対象は46回分の発表でした。
この46回の事例について、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が1.6以下のとき、その解の符号と直前1分足は逆方向になりがち(場面発生頻度49%、期待的中率67~68%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が1.6超のとき、その解の符号と直後1分足は逆方向になりがち(場面発生頻度24%、期待的中率70~73%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が0.8超2.4以下のとき、その解の符号と直後11分足は逆方向になりがち(場面発生頻度57%、期待的中率67~73%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、どっちにどれだけ反応するかの回帰式での予測が困難です。

上図から反応程度を無視して、反応方向だけを問題にして図示しておきましょう。

さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
2.2項以降、分析対象は46回分の発表でした。
それぞれの場合において、直前10-1分足との方向一致率を下図に示します。

本項分析の結論は、

  • 直前10-1分足値幅が5.7pips超(過去平均の1.5倍弱を超)のとき、直後11分足値幅方向は直前10-1分足値幅方向と同じになりがち(場面発生頻度10%、期待的中率67%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

下図をご覧ください。

直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で59%、値幅で54%、でした。
この数字では追撃なんて勧められません

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が大きくなるほど、直後1分足順跳幅を超えて直後11分足順跳幅が反応を伸ばさなくなりしがちです。

次に値幅方向です。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が8.9pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、直後1分足順跳幅か値幅が確定するのを待って逆張りし、直後11分足終値がつくまでに決済(場面発生頻度6%、期待的中率75%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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改訂履歴

3.0訂(2019年11月8日) 新書式反映
3.1訂(2020年4月5日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

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