米国景気指標「カンファレンスボード消費者信頼感指数」発表前後のUSDJPY反応分析(3訂版)

本稿は、米国景気指標「カンファレンスボード消費者信頼感指数」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:産業審議委員会(Conference Board:以下「CB」と略記)
  • 発表日時:毎月24日以降の23:00(冬時間24:00)
  • 指標内容:全米3000世帯の家計状況と世間の景気の見通しを総合的に指数化

特徴は次の通りです。

  • 住宅関連指標との同時発表が行われるときは取引を避けた方が良い
  • 事後差異判別式の解の絶対値が大きかった翌月は過大反動を起こしがちだが、取引の根拠としては弱い
  • 毎月ほぼ同時期・同内容で調査されるミシガン大学消費者信頼感指数速報値の改善/悪化は、本指標と関係ない(以下「ミシガン大学は「UM」と略記)

反応には次の傾向があります。

  • 反応方向はかなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率80%)
  • 反応程度はかなり小さいものの(直後1分足値幅の過去平均4pips)、毎年の平均値は事後差異判別式の解1ips当たり0.8pips付近で安定
  • 指標発表直後の反応が小さいときは追撃に適さない

指標内容について補足します。

CB消費者信頼感指数は、よくUM消費者信頼感指数と対比されます。

両指標ともに、5つの質問への回答から信頼感指数(ICS=Index of Consumer Sentiment)、そのうち2つの質問への回答から現況指数(ICC= Index of Current Economic Conditions)、残る3つの質問への回答から期待指数(ICE=Index of Consumer Expectations)が計算されます。
そして、両指標の調査はほぼ同時期に行われ、質問数や質問内容も似通っています。
本指標各指数の計算方法と質問内容をこちらにリンクしておきます

両指標の主な違いは、アンケート方法が郵送(CB)電話(UM)かという点と、サンプル数の多寡(CBは回答約3000世帯UM速報値はアンケート実施数が300世帯)という点です。
両指標の推移を見比べれば明らかなように、これらの違いによって本指標の毎月の変化には安定感があります(変化が極端でなく少しずつとなり、上昇基調や下降基調がわかりやすい)。

1.2 分析結論

本指標のの過去傾向に基づく取引方針は以下の通りです。

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、その解の符号と同方向にポジションを取得し、指標発表1分前までに解消(期待的中率67~68%)
  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.4以下のとき、その解の符号と逆方向にポジションを取得し、指標発表前までに解消(期待的中率67~78%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、指標発表直前にその解の符号と同方向にポジションを取得し、直後1分足終値がつくまでに解消(期待的中率69~71%)
  • 追撃は、直後1分足順跳幅が過去平均の2倍以上ならば、直後1分足終値がつくのを待って開始し、直後11分足終値がつくまでに解消(期待的中率100%)

以上の取引方針の論拠と解説を以下に示します。


Ⅱ.指標分析

以下の指標分析の対象期間は、特に断らない限り、2015年1月集計分から2019年10月集計分までの58回分です。
また、本分析の対象項目は信頼感指数だけとします。

2.1 指標推移記録

分析対象(指標グラフ)を下図に示します。
この図には、2.2.1項の移動平均線分析のため、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしています。

ボトムとピークの時期を下表に整理しておきます。

最初のボトム(90.4ips)とトップ(138.4ips)は、ともに修正前の発表結果での値です。

2.2 指標予想分析
2.2.1 移動平均線分析

先の信頼感指数のグラフにおいて、移動平均線は市場予想を赤太線、発表結果を青太線で示しています。
いま、赤太線が上になったら翌月・翌々月・3か月後から直後1分足を陰線と予想し、青太線が上になったら翌月・翌々月・3か月後から直後1分足を陽線と予想した、としましょう。
このとき、翌月・翌々月・3か月後からの予想的中率を下表に纏めておきます。

判定数52回で場面発生頻度が100%となっているのは、6回移動平均線が引けた翌月から判定を行っている(最初の6回は判定なし)ためです。

この結果「一致率46~55%」は、指標推移が上昇中であれ下降中であれ、直後1分足が陽線になるか陰線になるかわからない、という結論になります。

2.2.2 過大反動/過小反動分析

ある月の市場予想と発表結果の乖離が大きかったとします。
その翌月に、市場予想と発表結果の大小関係が逆転していた回数を調べます。
これを、「乖離の大きさ」の客観視のため、事後差異判別式の解の絶対値をランク化して行います。

さて、後記3.3項の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は80%です。

指標発表直前にポジションを取得して直後1分足値幅方向が70%以上当たる的中率P%は、P✕80%+(100%-P%)✕+(100%-80%)>70%、を満たす必要があります。
この不等式を満たす的中率は83%で、上表からその的中率に達する条件はありません。

よって、本項分析結論は、

  • 本指標は過大反動を起こす場合があるものの、実績から言えば取引の期待的中率が70%超となるレベルには達していない

です。

2.2.3 同期/連動指標分析

米国の消費者心理の変化を表す景気指標には、本指標の他にUM消費者信頼感指数があります。
下表は、両指標(UMは速報値)の実態差異判別式の解の符号一致を調べた結果です。

両指標が単月毎に前月よりも改善/悪化したかは49~55%しか一致していません。
とても同じ消費者心理を扱っている指標とは思えない一致率です。

よって、本項結論は、UM消費者信頼感と本指標とは単月毎の改善/悪化が一致しがちとは言えない、です。

2.3 指標間影響力比較分析

下表は、対象期間に本指標と他の指標が同時発表されたときの影響力対比です。

青太字の指標は、本指標よりも影響力が弱い、と見なせます。
赤太字の指標は、本指標よりも影響力が強い、と見なせます。
赤太字の指標との同時発表は、対象期間において延べ12回行われています。

この結果は、消費に繋がる本指標のチャートへの影響力が、住宅指標に比べて弱いことを示唆しています。
但し、中古住宅販売件数とは、まだ同時発表回数が少ないため、今後この結論は変わる可能性があります。

本表から本項分析結論は、

  • 次項以下の指標発表時の反応に関わる分析では、上表赤太字指標との同時発表時を除いた46回を対象とすべき

です。

2.4 項目間影響力比較分析

対象項目は信頼感指数だけなので、項目間影響力比較分析は行いません。

判別式は、

  • 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
  • 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
  • 実態差異判別式=発表結果ー修正結果

です。

前述の通り実態差異判別式の「修正結果」は対象期間に53回改定されており、その他5回は「前回結果」に同じです。


Ⅲ. 反応分析

以下のそれぞれの分析方法はこちらに説明しています。

反応分析の対象は2.3項記載の46回です。

そして、2017年1月集計分への直前10-1分足が値幅37pipsと、他に比べて異常に大きく反応していました。
その原因は、米大統領発言「他国がUSDの価値を押し下げている」の影響で、本指標に関係なくこの夜USDが売られていたため、です。
このときを除外すると、反応分析の対象は45回となります。

毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2019年発表分は、2019年10月集計分までのカウントとなっています。

3.1 反応程度過去集計結果

過去の反応程度を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で6pipsで、反応程度は小さい指標です。
4本足いずれの順跳幅も過去平均の2倍を超えたことがほとんどなく、1足内での深追いは禁物だと言えるでしょう。
但し、直後11分足の順跳幅と値幅は、いずれも直後1分足のそれらを上回っています。
欲張らなければ、ほどほどの追撃には適しています

3.2 利得分析

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事後差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で0.9pips

です。

3.3 指標一致性分析

差異判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

どのグラフも相関係数(R^2)が低く、回帰式による反応程度の予測がアテにできないことがわかります。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が80%、実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率が69%と高く、本指標発表直後の反応はかなり素直なことがわかります。

さて、指標発表前に差異判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません

本節以降、分析対象は45回分の発表でした。
この45回(頻度78%)のうち、事前差異判別式の解の絶対値が0.8超だったことは29回(頻度50%)、1.6超だったことは21回(頻度36%)、2.4超だったことは8回(頻度14%)、3.2超だったことは5回(頻度9%)、でした。
「事前差異判別式の解の絶対値」とは、解が+1でも△1でも「大きさが1」と見なすことです。

それぞれの場合において、事前差異と4本足の指標一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、その解の符号と直前10-1分足は同方向になりがち(期待的中率67~68%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が2.4以下のとき、その解の符号と直前1分足は逆方向になりがち(期待的中率67~78%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、その解の符号と直後1分足は同方向になりがち(期待的中率69~71%)

です。

3.4 反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、どっちにどれだけ反応するかの回帰式での予測が困難です。
ただ、直後1分足と直後11分足は相関係数こそ低いものの、回帰線に沿ってドット分布しており、回帰式の傾きも1を超えています。

上図から反応程度を無視して、反応方向だけを問題にして図示しておきましょう。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています

2.3項以降、分析対象は45回分の発表でした。
この46回(頻度78%)のうち、直前10-1分足値幅が過去平均値の0.5倍を超えたことは27回(頻度47%)、過去平均値を超えたことは19回(頻度33%)、過去平均値の1.5倍を超えたことは13回(頻度22%)、過去平均値の2倍を超えたことは7回(頻度12%)、でした。

それぞれの場合において、反応一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析の結論は、

  • 直前10-1分足値幅は、その後形成されるローソク足方向を示唆しない

です。

3.5 伸長性分析

下図をご覧ください。

直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で67%、値幅で60%、でした。

さて、2.3項以降の分析対象46回(頻度79%)のうち、直後1分足順跳幅が過去平均の0.5倍を超えたことは35回(頻度60%)、過去平均を超えたことは19回(頻度33%)、1.5倍を超えたことは11回(頻度19%)、2倍を超えたことは2回(頻度3%)、でした。
それぞれの場合において、伸長性分析を行った結果を下図に示します。

まず順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が大きくなるほど、直後1分足順跳幅を超えて直後11分足順跳幅が反応を伸ばさなくなりしがちです。

直後1分足順跳幅が過去平均の0.5倍以下ならば、直後1分足順跳幅を超えて直後11分足順跳幅が反応を伸ばしがち(期待的中率67%)ですが、直後1分足形成中に順跳幅が0.5倍以下に留まるか否かは、その時点でわかりません。

次に値幅方向です。

直後1分足順跳幅が過去平均の2倍を超えたら、その方向に反応を伸ばしがちです。
しかも、この条件を満たすとき、直後1分足と直後11分足は反転したことがありません。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が過去平均の2倍以上ならば、直後1分足終値がつくのを待って追撃を開始し、直後11分足終値がつくまでに決済(期待的中率100%)

です。


Ⅳ. 取引方針の整理
4-1 直前10-1分足

直前10-1分足は、3.3項で「事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、その解の符号と直前10-1分足は同方向になりがち(期待的中率67~68%)」の結論を得ています。

4-2 直前1分足

直前1分足は、3.3項で「事前差異判別式の解の絶対値が2.4以下のとき、その解の符号と直前1分足は逆方向になりがち(期待的中率67~78%)」の結論を得ています。

4-3 直後1分足

直後1分足は、3.3項で「事前差異判別式の解の絶対値が0.8を超えて2.4以下のとき、その解の符号と直後1分足は同方向になりがち(期待的中率69~71%)」の結論を得ています。

4-4 直後11分足

直後11分足は、3.5項で「直後1分足順跳幅が過去平均の2倍以上ならば、直後1分足終値がつくのを待って追撃を開始し、直後11分足終値がつくまでに決済(期待的中率100%)」の結論を得ています。


Ⅴ. 取引成績

今回の改訂以前の本指標の分析成績と取引成績を下表に纏めておきます。


関連リンク

➡ 米国指標の目次に移動

以上

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