米国景気指標「UM消費者信頼感指数速報値」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1.4訂)

本稿は、米国景気指標「ミシガン大学(UM)消費者信頼感指数速報値」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:ミシガン大学サーベイリサーチセンター(University of Michigan Surveys of Consumers :以下「ミシガン大学」を「UM」と略記)
  • 発表日時:当月10日前後の金曜日23:00(冬時間24:00)
  • 指標内容:全米300世帯の家計状況と景気見通しを総合的に指数化

特徴は次の通りです。

  • 注目すべき項目は「信頼感指数」「期待指数」「現況指数」で、指標発表直後の反応方向への影響力が特に強いのは「信頼感指数」の予想乖離
  • 指標発表直後の反応方向はかなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率83%)で、反応程度は小さい(直後1分足値幅の過去平均値5.1pips)
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) 過去に同時発表された他の指標は影響力が弱い指標ばかりのため、本指標の特徴を捉えて発表直前直後に取引する機会は意外に多い
    (2) 前月集計分のCB(カンファレンスボード)消費者信頼感指数の改善/悪化は、本指標結果の改善/悪化と関係なく、本指標発表前後の反応方向も示唆していない
  • 指標発表後の反応には次の傾向が窺える
    (1) 驚くほど簡単なアンケートを電話で済ませてしまうため毎月の上下動が大きく過大反動を起こしがち(前月実態差異判別式の解の絶対値が16超のとき、過大反動発生頻度は67~75%)だが、そのことを論拠にした取引は勧められない(過大反動を起こすと見込んだときの直後1分足値幅方向の期待的中率50~59%)
    (2) 指標発表直後の反応方向こそ素直なものの、その後の追撃には向いていない

指標内容について補足します。

UM消費者信頼感指数(The University of Michigan Consumer Sentiment Index)は、消費者の現在の消費意欲の強さと、消費者が今後の景気の良し悪しをどう予想しているか、を指数化した指標です。

本指数の調査は電話でたった5つの質問で行われます。

「1年前と比べた現在の家計状況の良否」と「今が大きな家財道具が買い時か」という質問への回答から、家計の現況指数(ICC= Index of Current Economic Conditions)が計算されます。
また「現在に比べて1年後の家計状況の良否」と「今から1年間の世間全体の景気の良否」と「今後5年連続して世間は好景気が続くか、それとも不況や失業の時期が増えるか」という質問への回答から、景気への期待指数(ICE=Index of Consumer Expectations)が計算されます。
そして、これら5つの質問への回答から、現況指数と期待指数とは別の式で総合値にあたる消費者信頼感指数(ICS=Index of Consumer Sentiment)が計算されます。

質問内容と各指数の計算方法はこちらにリンクを貼っておきます。

さて余談ながら、いきなり電話で上記5つの質問を受けて、よく考えて回答できる人はどれぐらいいるでしょう。
少なくとも、職責に基づき毎月の売上や在庫や材料費を数字で把握している企業購買担当者らが文章を読んで回答するより、回答姿勢の一貫性や安定性に劣ることだけは間違いありません。
本指標が他の各種指標に比べて上下動が激しいのは当然です。

なお、本指標(速報値)はサンプルが約300世帯、後日発表される確定値は約500世帯となっています。
2.1項に後掲する指標推移のグラフを見ると、全体的にサンプルが多い確定値の方が速報値よりも僅かに変化が小さくなっているように見えます。
が、たいした違いではありません。
CB消費者信頼感指数(3000世帯、郵送)に比べ、本指標の上下動が激しくトレンドがわかりにくい理由は、サンプル数が少ない点と調査方法が電話アンケートという点に原因がある、と推察されます。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は「信頼感指数」「期待指数」「現況指数」の3つです。
指標分析の対象期間は、2015年1月集計分から2020年3月集計分までの63回分の発表とします。

本指標3指数は確定値発表時にほぼ全て修正されます。
本指標確定値は毎月月末頃に発表されます。


2.1 指標分析対象

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
配置は、信頼感指数(左)、期待指数(右上)、現況指数(右下)、となっています。
なお、信頼感指数のグラフには、2.4.1項の移動平均線分析のため、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしています。

上図に示した通り、上下動が大きい指標です。
この変動の大きさは、先述の通り、本指標が調査数が少なく一般世帯への電話アンケートによることが原因と推察されます。
がしかし、本指標への反応持続時間が短く反応程度が小さいものの、指標発表直後には素直な方向に反応します。

本指標の修正(改定)は確定値で行われます
よって、上図印の推移は、確定値の推移と読み替えることができます。

3指数の統計値を下表に纏めておきます。

書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、ほとんど意味がありません
むしろ、上記3指数と後記2.3項に示す本指標全体の各判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。

例えば、後記2.3項に示す本指標全体の事後差異判別式

  • 7✕信頼感指数の事後差異

です。
データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。

2.2 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例から、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応に関わる分析から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。
なお、指標名の後ろに⇅印がある指標は、数値減少を改善と見なしています。

この結果は、意外にも消費に繋がる本指標がチャートへの影響力が強いことを示唆しています。
但し、卸売在庫前月比労働市場情勢指数は、現時点において同時発表回数が少ないため、影響力強弱の判定ができず、慎重に取引を避けることにします。

ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
よって、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の63回発表のうち56回の事例となります。


2.3 項目間影響力比較分析

項目間影響力比較分析では、ひとつの指標で複数の注目すべき指数(項目)が発表されるとき、各指数(項目)が反応方向に与える影響力の強さと方向を求めます
各指数が反応方向に与える影響力の強さは、事前差異判別式の解の符号が直前10-1分足と、事後差異判別式の解の符号が直後1分足と、実態差異判別式の解の符号が直後11分足と、方向一致率が高くなるように判別式の各係数を求めます。
判別式の係数の値の大きさと符号が、各指数が反応方向に与える影響力の強さと見なせます。

さて、本指標の分析対象項目は、信頼感指数期待指数・現況指数、でした。
まず先に、2.2項結論に基づく56回の事例について、各項目毎の差異判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

そして、次のように各判別式を立式します。

  • 差異判別式=A✕信頼感指数の差異+B✕期待指数の差異+C✕現況指数の差異
    但し、
    事前差異=市場予想ー修正結果(前月発表結果が確定値で修正されなかった場合は前回結果)
    事後差異=発表結果ー市場予想
    実態差異=発表結果ー修正結果(前月発表結果が確定値で修正されなかった場合は前回結果)

本指標は、発表時に既に前回結果の修正結果が「UM消費者信頼感指数確定値」として公表されています

上式において、各差異判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、前記2.1項で用いた事後差異判別式は、

  • 事後差異判別式=7✕信頼感指数の差異
    但し、事後差異=発表結果ー市場予想

です。


2.4 指標予想分析

指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です

2.4.1 移動平均線分析

移動平均線分析は、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさを定量化しています。

指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、です。
そして、これら移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向の検証を行っています。
指標推移が上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線、下降中に陰線ならば、「仮説一致」と判定しています。

分析結果を下表に示します。

結果、2つの移動平均線のクロスした後の仮説一致率は40~41%です。
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表にて「翌月から」の「判定回数」は46回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。


2.4.2 過大反動分析

過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。

さて、2.3項記載の実態差異判別式を用いて(信頼感指数単独の判別式ではありません)、その解の絶対値を階層化したときの過大反動率と上記仮説一致率は下表の通りです。

結果、上表記載の通り、前月の実態差異判別式の解が16超のとき、過大反動が起こしがちなことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
但し、前月の実態差異判別式の解がどうあれ、直後1分足値幅方向はどちらになるかわかりません(上表「仮説一致率」参照)。
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表にて「全数」の「判定回数」が52回となっています。
理由要点を下表に示しておきます。

2.4.3 同期/連動指標分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。

さて、米国の消費者の景気指標には、本指標の他にCB消費者信頼感指数があります。
両指標は同期もしくは連動すべきため、他の指標における同期/連動型指標分析のように数か月も先行/遅行している可能性は排除できます。
下表をご覧ください。

上表は、前月のCB消費者信頼感指数と当月の本指標の実態差異判別式の解の符号の一致率が48%しかないことを示しています(上表「指標分析」の「方向一致率」参照)。
そして、当月の本指標発表直後1分足が前月のCB消費者信頼感指数の実態差異判別式の解の符号と51%しか方向一致していないことを示しています(上表「反応分析」の「方向一致率」参照)。
すなわち、本指標発表直後の反応方向を予想するために、先に発表された前月集計分のCB消費者信頼感指数を参考にすべきではありません

なお、上表には記載していませんが、当月の本指標発表直前10-1分足と前月のCB消費者信頼感指数の実態差異判別式の解の符号は、方向一致率が51%です。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の対象は2.3項記載の56回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

2020年発表分は、2020年3月集計分までのカウントとなっています。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
下図において歯抜けとなっている月は、2.2項結論により反応分析から除外した月です。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。

多くの主要国主要経済指標が2017年頃から反応が小さくなったものですが、本指標では2018年頃からそうした傾向が窺えます。

過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。

指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で7.5pips、同値幅は過去平均で5.1pipsと、反応程度が小さい指標です。

平均的には、直後11分足値幅が直後1分足順跳幅とほぼ同じになっています。
このことは、指標発表後に直ちに追撃開始し、直後11分足順跳幅が直後1分足順跳幅を超えて反応を伸ばすのを狙うべき、と示唆しています


3.2 利得分析

利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異と反応程度の期間推移を以下に示します。

反応程度を指標差異で割った利得分析の結果を下図に示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で0.3pipsです。
反応程度が毎年小さくなっている結果、利得も毎年小さくなっています(まだデータ数が少ない2020年を除く)。


3.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が小さく、回帰式を用いた分析は有効ではありません。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が83%と高く、本指標発表直後の反応はかなり素直なことがわかります。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
2.2項以降、分析対象は56回分の発表でした。
この56回の事例について、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

本項分析結論は、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が2.5以下のとき、その解の符号と直前10-1分足値幅方向は一致しがち(場面発生頻度31%、期待的中率67%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が10.0超のとき、その解の符号と直前1分足値幅方向は逆方向になりがち(場面発生頻度11%、期待的中率83%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が5.0超のとき、その解の符号と直後1分足値幅方向は同方向になりがち(場面発生頻度38%、期待的中率68~71%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が5.0超のとき、その解の符号と直後11分足値幅方向は逆方向になりがち(場面発生頻度38%、期待的中率67~100%)

です。


3.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰式を使った分析ではどっちにどれだけ反応するか予測できません。

上図から反応程度を無視して、反応方向だけを問題にして図示しておきましょう。

さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています
2.2項以降、分析対象は56回分の発表でした。
それぞれの場合において、直前10-1分足との方向一致率を下図に示します。

よって、本項分析の結論は、

  • 直前10-1分足値幅が6.8pips超(過去平均の2倍弱を超)のとき、直前1分足値幅方向は直前10-1分足値幅方向と同じになりがち(場面発生頻度11%、期待的中率71%)
  • 直前10-1分足値幅が5.1pips超(過去平均の1.5倍弱を超)のとき、直後11分足値幅方向は直前10-1分足値幅方向の逆になりがち(場面発生頻度17%、期待的中率83~88%)

です。


3.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

下図をご覧ください。

直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で47%、値幅で40%、でした。
この数字では追撃なんて勧められません

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まず順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

本項分析結論は、

  • 直後1分足順跳幅が大きくても小さくても、追撃すべきか否かわからない

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、取引数こそ少ないものの、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。


関連リンク

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改訂履歴

3.0訂(2019年11月7日) 新書式反映
3.1訂(2020年4月2日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示

以上

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