米国景気指標「ニューヨーク連銀製造業景気指数」発表前後のUSDJPY反応分析(3.1.5訂)
本稿は、米国景気指標「NY連銀製造業景気指数」発表前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。
※ ニューヨーク連邦準備銀行=Federal Reserve Bank of New York:以下「NY連銀」と略記
Ⅰ. 指標概要と分析結論
1.1 指標概説
- 発表機関:NY連邦準備銀行
- 発表日時:当月15日21:30(冬時間22:30)
- 指標内容:NY州製造業の事業環境の変化
特徴は次の通りです。
- 注目すべき項目は「前月に対する事業環境の変化(=NY連銀製造業景気指数)」のみ
- 直後1分足値幅の過去平均値が3.5pipsと、反応程度はかなり小さい(3.1項参照)
- 他の指標との関係は次の通り
(1) 本指標よりもチャートへの影響力が強い他の指標(小売売上高・消費者物価指数・生産者物価指数・金融政策関連)との同時発表が多く、それら指標との同時発表時は本指標での取引を避けた方が良い(2.2項参照)
(2) 本指標の単月毎の改善/悪化は、前月集計分のPhil連銀製造業景気指数やISM製造業景況指数の改善/悪化を追従しがち(2.4.3項参照) - 指標発表後の反応には次の傾向が窺える
(1) 事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は80%と、反応方向は素直(3.3項参照)
(2) 前月の実態差異判別式の解の絶対値が8.0以下と16.0超のとき過大反動を起こしがち(2.4.2項参照)
(3) 合理的な説明はできないものの、前月のPhil連銀製造業景気指数の実態差異判別式の解の符号は、当月の本指標発表直後1分足方向を示唆しがち(2.4.3項参照)
(4) 直後1分足順跳幅が大きくなるほど、直後11分足値幅は直後1分足値幅を削りがちなため、追撃は短時間に留めた方が良い(3.5項参照)
指標内容について補足します。
本指標は、狭い地域での調査の割に毎月の変動が大きい指標です。
これは、サンプル数の少なさに起因する、と考えられます。
NY連銀は「管轄NY州の約200人の製造業幹部(通常、社長またはCEO)に毎月1日に調査票を送付し、10日過ぎまでの回答約100件とその後の届く回答に基づき本指標を指数化する」旨、説明しています。
ともあれ、その調査回答における「事業環境が前月に比べて良い/同じ/悪い」を集計し、季節調整して指数化したものが本指標です。
調査票は、最初に結論にあたる「事業環境(General Business Conditions)」について答え、その後に11の個別項目に答える形式です。
最初の結論と11の個別項目のうち9項目で、1か月前と比較した「現在」と6か月後の「見通し」を、「増加・改善」「同じ」「減少・悪い」の3択で回答し、残る2項目は6か月後の見通しのみを3択で回答します。
よって、NY連銀による質問数は22項目で、それらが本指標の発表項目です。
我々が目にするNY連銀製造業景気指数とは、上記結論であり最初の質問への回答である「現在」の「事業環境」を集計・指数化したものです。
「現在」の「事業環境」の指数化にあたって、他の21の質問への回答は無関係です。
なお、我々にはNY連銀製造業景気指数という名称が知られていますが、NY連銀自身はHPで「Empire State Manufacturing Survey」というレポート名で本指標を公表しています(発表事例はこちらにリンクしています)。
さて、米国製造業の主な景気指標には、本指標の他に、Phil連銀製造業景気指数やISM製造業景況指数があります。
多くの指標解説記事において、本指標はそれら指標よりも先に発表される点と、翌月月初に発表されるISM製造業景況指数の結果を占う点に意義を見出しているようです。
実際、本指標とPhil連銀製造業景気指数がともに前月より改善/悪化したときは、ISM製造業景況指数も改善/悪化しがちです。
このことは『米国景気指標「ISM製造業景況指数」発表前後のUSDJPY反応分析』の稿に記しました。
がしかし、そこには「本指標とPhil連銀製造業景気指数がともに前月より改善/悪化したとき、ISM製造業景況指数も同じく改善/悪化すると見込んで取引しても、それほど高い勝率が得られない」という検証結果も併せて記しています。
ならば、本指標がPhil連銀製造業景気指数やISM製造業景況指数よりも先に発表される点や、ISM製造業景況指数の結果を占う点には、FX用指標解説として有用とは言えない、と考えます。
本指標解説の意義は、本指標での取引で勝ちやすいのはいつどんな場面か、という点に尽きるはずです。
それが本指標解説のテーマであるべきと信じます。
1.2 分析結論
次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。
注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)。
Ⅱ. 指標分析
以下の分析対象項目は「NY連銀製造業景気指数(先述の「現在」の「事業環境」)」です。
指標分析の対象期間は、特に断らない限り2015年1月集計分から2020年2月集計分までの62回分です。
本指標は対象期間に3回しか前月発表結果が修正されていません。
本指標の修正は翌月発表時に行われます。
2.1 指標分析対象
分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを最新に都度更新していくことが目的ではありません)。
このグラフには、2.4.1項の移動平均線分析のため、市場予想と発表結果の移動平均線(6回平均)も重ねてプロットしています。
市場予想(〇)と発表結果や修正結果(〇や●)のピークやボトムの位置をご覧ください。
市場予想が発表結果を追いかけているように見えます。
市場予想は相応の見識が認められた人たちが行っているにも関わらず、変化を先取りするような予想が難しいことがわかります。
本指標統計値を下表に纏めておきます。
書式に基づき、平均値と標準偏差を記載していますが、あまり意味がありません。
むしろ、後記2.3項に示す本指標の判別式の解を統計的に整理しておいた方が参考になります。
データ数が増えるほど、毎月の発表結果の分布形状は正規分布から外れかねませんが、判別式の解の分布は正規分布に近づくことが経験的にわかっています。
2.2 指標間影響力比較分析
指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います。
「影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。
対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。
指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。
なお、指標名の後ろに⇅印がある指標は、数値減少を改善と見なしています。
本指標は、小売売上高・生産者物価指数・金融政策関連よりチャートへの影響力が弱いことがわかります。
そして、本指標が生産者物価指数よりも影響力が弱いことから、生産者物価指数を本指標との相対基準指標とすると、消費者物価指数は本指標より影響力が強い、と推論できます。
なお、方向一致率が同率だった四半期非農業部門生産性とは、同時発表回数が少ないため今後も注目していくこととします。
ともあれ、本指標より影響力が強い指標との同時発表時に本指標の反応方向を分析しても意味がありません。
そのため、以降の反応に関わる分析は、上表赤太字指標と同時発表時を含まずに行うことにします。
すると、以降の反応に関わる分析対象は、対象期間の62回発表のうち31回の事例となります。
本指標は非常に有名にも関わらず、本指標の良し悪しの予想に基づく取引機会は意外に少ないのです。
2.3 項目間影響力比較分析
対象項目はNY連銀製造業景気指数(現在の事業環境)だけなので、項目間影響力比較分析は行いません。
判別式は、
- 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
- 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
- 実態差異判別式=発表結果ー前回結果(前回結果の修正が行われた場合は修正結果)
です。
2.4 指標予想分析
指標予想分析は、あわよくば指標結果の良し悪しを発表前に予想し、あわよくば発表直後の反応方向を予想するための分析です。
2.4.1 移動平均線分析
移動平均線分析は、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさを定量化しています。
指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、と判断します。
そして、2つの移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向の検証を行っています。
指標推移が上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線、下降中に陰線ならば、「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います。
分析結果を下表に示します。
結果、仮説一致率は37~42%で、実績が仮説を肯定するには一致率が全く足りません。
むしろ、指標推移が上昇中は指標発表直後に陰線、下降中は陽線での反応することの方が多いぐらいです。
結論、本指標は本分析の不適合事例です。
なお、上表にて「翌月から」の「判定回数」は27回となっています。
理由要点を下表に整理しておきます。
2.4.2 過大反動分析
過大反動分析は、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを定量化しています。
例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、市場予想もこの反動を見込んでいるならば、その反動が市場予想を超えるほど大きくなるかに関心を絞るべきでしょう。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、過大反動を見込んだときに指標発表直後に素直な方向に反応したならば「仮説一致」と判定しています。
分析の方法論等の詳細はこちらを参照願います
分析結果を下表に示します。
結果、上表記載の通り、前月の実態差異判別式の解の絶対値が8.0以下のときと16.0超のとき、過大反動を起こしがちです(上表「過大反動率」参照)。
そして、上記条件を満たすときに過大反動が起きると見込んで指標発表直前にポジションを取得すると、期待的中率(上表「仮説一致率」参照)は67~75%です。
「過大反動が起きると見込む」とは、前月実態差異判別式の解の符号と当月の直後1分足が方向不一致になることを見込む、ということです。
結論、本指標は本分析の適合事例です。
なお、上表にて「全数」の「判定回数」が30回となっています。
理由要点を下表に整理しておきます。
2.4.3 同期/連動型指標分析
同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを定量判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。
さて、米国の製造業の景気指標には、本指標の他にPhil連銀製造業景気指数とISM製造業景況指数があります。
これらは同期もしくは連動していると推察されるため、他の指標における同期/連動型指標分析のように数か月も先行/遅行している可能性は排除できます。
下表をご覧ください。
最初の行は、前月のPhil連銀製造業景気指数と当月の本指標の実態差異判別式の解の符号(当月発表結果が前月発表結果よりも改善したか悪化したか)の一致率を調べています(上表「指標分析」の「方向一致率」参照)。
結果、本指標の実態差異判別式の解の符号は、前月のPhil連銀製造業景気指数の同符号との一致率が72%もあります。
それならば、本指標発表前に前月のPhil連銀製造業景気指数の実態差異判別式の解の符号を調べておけば、指標発表後の反応方向が予想できそうです。
実際、前月のPhil連銀製造業景気指数の実態差異判別式の解の符号と本指標発表直後1分足の方向一致率を調べると、それは70%でした(上表「反応分析」の「方向一致率」参照)。
すなわち、本指標発表直後の反応方向を予想するために、先に発表された前月集計分のPhil連銀製造業景気指数の改善/悪化は参考になります。
同様に、前月のISM連銀製造業景気指数と当月の本指標の関係を調べてみると、指標分析の方向一致率は57%、反応分析の方向一致率は47%でした。
この関係は取引上の参考になりません。
そして、前月のPhil連銀製造業景気指数と前月のISM製造業景況指数の実態差異判別式の解の符号が一致したとき、その符号と当月の本指標の実態差異判別式の解の符号の一致率は74%もありました。
けれども、前月のISM製造業景況指数の実態差異判別式の解の符号は、当月の本指標発表直後1分足との方向一致率は61%しかありません。
この関係は、指標の改善/悪化こそ高い確度で予想できるものの、その予想に基づく本指標発表直後の反応方向は高い確度で予想できない、ということになります。
さて、当月の本指標の良し悪しを、前月のPhil連銀製造業景気指数の良し悪しが先行示唆する合理的な理由があるでしょうか?
もし、そんな理由があり得るならば、NY連銀管轄下の製造業よりもPhil連銀管轄下の製造業はリードタイムが短い業種、ということの他に思い付きません。
NY州に拠点を持つ主な製造業には、IBM(コンピュータ)・Global Foundrise(半導体)・イーストマンコダック(印刷)等が挙げられます。
一方、Phil連銀管轄下のペンシルバニア州にはUSスチール(製鉄)・ジッポー(喫煙具)・ハーシー(製菓)等、ニュージャージー州にはジョンソンエンドジョンソン他の製薬大手・AT&T他の通信大手、デラウエア州にはデュポン(化学)等、が挙げられます。
これらを見比べても、NY連銀管轄下の製造業よりもPhil連銀管轄下の製造業の方がリードタイムが短い、とは言えません。
よって、結論は、
- 合理的な説明こそできないものの、本指標発表直後1分足の方向は、Phil連銀製造業指数の前月実態差異判別式の解の符号と一致しがち(場面発生頻度49%、期待的中率70%)
です。
なお、上表において「指標分析」と「反応分析」の「判定回数」に違いがあるのは、後者が2.2項結論に基づき反応分析の機会が限られるためです。
Ⅲ. 反応分析
以下の反応分析の対象は2.2項に挙げた31回で、毎年の対象数の内訳は下表の通りです。
2020年発表分は2月集計分までしか集計していません。
3.1 反応分析対象
反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を下図に示します。
下図において歯抜けとなっている月は、2.2項結論により反応分析から除外した月です。
こんな図を眺めても仕方ありませんが、分析対象開示のために示しておきます。
過去の反応程度とその分布を一覧しておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足値幅は過去平均でたった3.5pipsで、反応程度はかなり小さな指標です。
ちなみに、本指標への過去反応をもっと大きく集計している資料がネットには散見されます。
けれども、それは本指標がチャートへの影響力が強い他の指標と同時発表されたことが多いため、です。
そんな事例を含めて反応程度を集計しても、取引上の参考にはなりません。
次に、直後1分足の一足内反転率は0%で、順跳幅よりも逆跳幅が大きくなったことはありません。
よって、もしも指標発表直後に初期反応方向への追撃ポジションを取得したとき、逆方向への跳幅が大きくなったなら、直ちにその追撃ポジションは解消すべきことを、過去実績が示しています。
分布は、各ローソク足の順跳幅・値幅ともに平均値以下に50%以上が集まっており、自然な分布となっています。
3.2 利得分析
利得分析は、差異判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。
分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。
事後差異判別式の解1ips(=Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で0.5pipsです。
但し、毎年の平均では0~0.7pipsと大きくばらついており、事後差異判別式の解から直後1分足値幅を的確に予想することは難しいことがわかります。
3.3 指標一致性分析
指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。
各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。
一見して、事後差異判別式の解(発表結果と市場予想の差異)に対し、直後1分足値幅が素直な方向に比例的に反応していることが読み取れます。
そして、事前差異判別式の解(市場予想と前回結果の差異)と直前10-1分足の関係から、市場予想は発表前のチャートの動きに無関係なことがわかります。
次に、各差異判別式の解の符号と4本足各値幅方向の一致率を下図に纏めます。
事後差異判別式の解の符号と直後1分足の値幅方向の一致率が80%と高く、本指標発表直後の反応はかなり素直なことがわかります。
さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません。
2.2項以降、分析対象は31回分の発表でした。
この31回の事例について、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致性分析を行った結果を下図に示します。
先に「市場予想は発表前のチャートの動きに無関係」と記したものの、市場予想と前回結果の乖離幅(事前差異判別式の解の絶対値)を階層化すると、違う結論が見えてきました。
市場予想と前回結果の乖離が大きいとき(事前差異判別式の解の絶対値が大きいとき)には、指標発表前はもとより、指標発表後の反応方向さえも示唆していた訳です。
本項分析結論は、
- 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が1.5を超えているとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度31%、期待的中率74~86%)
- 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が4.5を超えているとき、その解の符号と逆方向になりがち(場面発生頻度11%、期待的中率86%)
- 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が3.0を超えているとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度18%、期待的中率71~73%)
- 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が3.0を超えているとき、その解の符号と同方向になりがち(場面発生頻度18%、期待的中率71~73%)
です。
3.4 反応一致性分析
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。
各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。
いずれも相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません。
そこで、4本足各実体部同士の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想を諦め、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。
直前1分足の陰線率は75%で、かなり偏りが目立ちます。
がしかし、直前1分足は2017年後半から反応程度が小さくなっており、取引には注意が必要です。
さて次に、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しています。
2.2項以降、分析対象は31回分の発表でした。
直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎の他のローソク足との方向一致率を下図に示します。
先に「回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできない」と記したものの、直前10-1分足値幅を階層化すると、違う結論が見えてきました。
直前10-1分足値幅が大きいときには、指標発表後の反応方向を示唆していた訳です。
本項分析結論は、
- 直前1分足は、過去陰線率が75%と偏りがあり、また、直前10-1分足値幅が1.9pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、その逆方向になりがち(場面発生頻度34%、期待的中率67%)
- 直後1分足は、直前10-1分足と同方向になりがち(場面発生頻度50%、期待的中率67%)
- 直後11分足は、直前10-1分足値幅が1.9pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、それと同方向になりがち(場面発生頻度34%、期待的中率67%)
です。
3.5 伸長性分析
伸長性分析は、指標発表1分後から反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。
下図をご覧ください。
直後1分足より直後11分足が同じ方向に伸びていたことは、順跳幅で53%、値幅で50%、でした。
この数字では追撃なんて勧められません。
さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。
まず順跳幅方向です。
次に値幅方向です。
よって、本項分析結論は、
- 直後1分足順跳幅が8.4pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、直後11分足は直後1分足を削りがち(場面発生頻度10%、期待的中率67%)
です。
注意すべき点は、直後1分足が直後11分足で反転することは少なく、この逆張りは狙うpipsが小さいことです。
Ⅳ. 過去成績
分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。
上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・平均取引時間のいずれも悪くありません。
関連リンク
改訂履歴
3.0訂(2019年10月14日) 新書式反映
3.1訂(2020年4月22日) 2020年2月集計分までを反映、1.2項表を最新に更新、2.4.3項は分析方法を変更、3.1項に始値基準ローソク足を開示、その他文言修正
以上