米国FOMC声明発表前後のUSDJPY反応分析(改訂版)

本稿は、米国FOMC(Federal Open Market Committee)声明発表前後と緊急会合終了前後のUSDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。


Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:連邦公開市場委員会FOMC:Federal Open Market Committee)
  • 発表日時:年8回開催27:00(冬時間28:00)
  • 指標内容:今後の公開市場操作の方針を公開

特徴は次の通りです。

  • 現在まで注目すべき項目は「FF金利」のみだが、いずれ量的緩和の規模変更にも関心が集まるだろう
  • 反応程度は大きく(FF金利変更時の直後1分足値幅の過去平均値19.9pips、変更なし時は16.9pips)、反応方向は素直ではない(FF金利変更時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が57%)(3.2項・Ⅱ節参照)
  • FRBの使命は雇用の最大化と物価の適正水準での安定だが、毎月の失業率やPCEコアデフレータの数値だけを見ても政策変更の理由を説明できない(Ⅱ節参照)
  • 市場予想がFF金利変更時の指標発表前後の反応傾向は次の通り
    (1) 好況期の実績から言えば発表前は陰線率が高く発表後は陽線率が高いものの、不況期も同様になるか逆になるかはわからない
    (2) 好況期の実績では、市場予想が利上げのときも利下げのときも陽線率が高い
    (3) 一足内反転率が高い
    (4) 直前10-1分足は、その後に形成されるローソク足と逆方向になりがち
    (5) 直後1分足値幅と直後11分足値幅は同値付近になりがち
    (6) 直後1分足順跳幅が大きいときが追撃に適する
  • 市場予想がFF金利変更なし時の指標発表前後の反応傾向は次の通り
    (1) 好況期の実績から言えば直前1分足は陰線率が高い
    (2) 一足内反転率が高い
    (3) 直後1分足順跳幅が大きいとき、直後11分足順跳幅は直後1分足順跳幅を超えて反応を伸ばしがち
    (4) 直後1分足順跳幅が小さいときは、直後11分足値幅は直後1分足値幅を削るか反転しがち

補足します。

FOMCは、FRBFederal Reserve Bankの理事7名と地区ごとの地区連銀総裁5名で構成され、米国の金融政策を決定します。
ここで金融政策とはFRBが行う公開市場操作の方針で、公開市場操作とは金融市場の資金量の調節を行うことです。
そして結果的に金融市場の資金量を調整すれば金利が変化します。
本稿における金融政策の変更とは、この金利の誘導目標を変更することを指しています

主要国の民間銀行は、預金残高等に応じた一部資金を中央銀行に預けることが義務付けられています。
米国では、FRBに預ける資金を「フェデラルファンド(Federal Funds:FF)」と言います。
そして、民間銀行がFFの過不足を調整し続けるため、無担保で資金を融通し合う金融市場が存在します。
けれども、無担保であっても貸借には金利が発生し、その金利がフェデラルファンドレート(Federal Funds Rate:以下「FF金利」と略記)です。
前述の金利の誘導目標とは、このFF金利の誘導目標です。

このあたりのことはちょっとわかりにくい気がします。

例えば、モノの市場で需給状況に応じて価格が変化することは広く理解されています。
金融市場も同じで、資金需要が旺盛なら金利が上昇し(高く買う・借りることになる)、そうでないときは金利が下降する(安く買う・借りることになる)現象が起きます。
ならば、その市場でFRBが資金の供給や吸収を行えば、金利上昇や下降の程度を緩和する等の操作が行えます。
この操作が金利の誘導です。
実際の資金の供給や吸収は、FRBの指示によってNY連銀が保有証券を売買することで行っています

さて、FRBの使命は雇用の最大化と物価の適正水準での安定でした。

ではなぜ、FF金利を目標に誘導することで、雇用の最大化と物価の適正水準での安定が図れるのでしょう。
市場に存在するモノとカネのバランスを変化するのだから、物価を制御することはできそうです。
但し「安くても要らない」という状況では、その制御力は弱まりそうです。
がしかし、それならもっと安くしてしまえば「今が買い時」という需要が起きることが期待できます。
で、需要の多寡と失業率は逆相関の関係があるから、雇用も制御できそうです。
何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」式にずいぶん回りくどいやり方です。

ではなぜ、雇用を直接創造したり物価を統制しないのかは「そうしない方がマシ」というのが歴史的結論です。
実需に基づかない雇用や物価の統制は、中世各国での徳政令に至る経緯や結果、現代でも固定相場制を採っている国の闇ドル屋等、却って統治が弱まる反動を起こすことが古今東西で枚挙に暇がありません。
結局は「当局が狙う方向に実需を誘導し得るように資金を調整すること」がベターなのだそうです。

これで、金融政策がだいたいわかった気がすれば幸いです。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

注記:期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記の利確や損切のpipsは参考値です(判定対象外)


Ⅱ. 指標分析

以下の分析対象項目は「FF金利」です。
分析対象期間は2014年6月発表分から2020年4月発表分までのFOMC緊急会合49回分です。

分析対象範囲の全容を以下にグラフで示しておきます(グラフを発表都度最新に更新していくことが目的ではありません)。
また、FF金利変更前に発表されていた失業率とPCEコアデフレータ前年比(表中には「PCEcdf前年比」と記載)を、その右に一覧しておきます。

FRBの使命は前述の通り雇用の最大化物価の適正水準での安定です。

がしかし、上表記載の通り、実際にFF金利が変更された個々の事例では、FF金利変更と失業率やPCEコアデフレータの相関なんて見出せません
この理由について、FRBは分析対象期間以前のリーマンショック時に利下げを行い、上図期間における利上げは次の同様ショックに備えて利下げの余地を確保するためだった、との解説が多く見られます。
そして2019年7月会合で利下げに転じたことは「将来のリスクが下向き」との認識に基づくことがFOMC声明やその議事要旨で示されています。
但し、そのリスクとは現在のコロナ禍を想定していなかったはずです。
2020年3月には2度続けて緊急利下げが行われ、過去の利上げ分を一気に吐き出しました。

以上のことから、FRBは非常時に使命を果たすため、通常はそれに備えている、とも観察できます。
だから個々のFOMC声明で雇用や物価に関する文言があっても、そんなことで次回の金利変更が行われるか否かはわかりません。
でも大丈夫!
FRBは市場の混乱を避けるため「市場との対話重視」を表明しています。
対話の結果、FF金利の変更にあたって市場予想が外れたことはないのです(緊急会合のように市場予想が見つからない場合はあります)。

我々のようなアマチュアが利上げや利下げを予想するなら、声明や議事要旨を読むより市場予想をアテにするのが一番確実です。


なお、分析対象期間における14回のFF金利変更事例では、各事例での直後1分足値幅方向を調べると下表の通りでした。

利上げ発表直後に陽線で素直に反応した事例こそ多いものの、事はそう単純ではありません。
利下げにも関わらず陽線で反応したことも多いのです。
上表は、利上げで素直に陽線で反応した事例と利下げで素直に陰線で反応した事例は計8回、そうではなく素直とは言えない反応をした事例は計6回、と見ることもできます(方向一致率57%)。

市場予想によってFF金利の変更が行われるか否かはわかっても、政策発表直後に陽線か陰線かを決め打ちすることはできません


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

但し、2020年3月3日06:00の緊急会合への反応は、直前10-1分足と直前1分足がありません。
よって、以下の反応分析の母数は、直前10-1分足と直前1分足が48回、直後1分足と直後11分足が49回です。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を、分析対象開示のために示しておきます。

全体的には、2017年以前は大きなローソク足が目立つものの、2018年以降にはそうした反応が少ないようです。
2017年以前のFF金利変更回数は5回、2018年以降のFF金利変更回数は9回です。
よって、金利変更が多い時期に反応が大きくなる訳ではないことがわかります。


3.2 反応程度

以下に、FF金利変更時(14事例)・FF金利の変更なし(35事例)のそれぞれについて、過去の反応程度や、順跳幅の最大値と中央値一足内反転率を一覧しておきます。

上2表の通り、平均値を比べる限り、FF金利の変更があったときと変更がなかったときとで反応程度はほぼ同じです。
変更があってもなくても、直後1分足順跳幅の過去最大値は極めて大きく、発表時刻を跨いだポジション保有には慎重であるべきです。
そして、発表1分前からは一足内反転率が高く、気を抜けない時間が続きます。


3.3 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

FF金利変更時にせよ変更なし時にせよ、左図・中図は相関係数(R^2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
ただ、上右図(FF金利変更時)からは、直後1分足から直後11分足の値幅をかなりの精度で予想できそうです。
実績に基づけば、FF金利が変更されたときの発表1分後と11分後の値幅はほぼ同値となりがちです

次に、各差異判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足の方向一致率を下図に求めます。
反応程度の予想は捨てて、反応方向だけに分析目的を絞る訳です。

FF金利変更時には、声明発表前の陰線率と声明発表後の陽線率が高く偏りが目立ち、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高いことがわかります
そして、FF金利変更なし時には、直前1分足は陰線率が高く、偏りが目立ちます
このように、FF金利変更時と変更なし時では、だいぶ様子が違います。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象の13回の事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

FF金利変更時は、

  • 直前10-1分足はショート(場面発生頻度100%、期待的中率73%)
  • 直前1分足・直後1分足・直後11分足は、直前10-1分足値幅が2.7pips超(過去平均値超)のとき、それと逆方向になりがち(場面発生頻度100%、期待的中率71~86%)

です。

一方、FF金利変更なし時は、

  • 直前1分足は、直前10-1分足値幅が4.2pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき逆方向で、直前10-1分足値幅が4.2pips以下のときはショート(場面発生頻度100%、期待的中率77~79%)

です。


3.4 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表後に一方向に反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

下図をご覧ください。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

本項分析結論は、

  • FF金利変更時には、直後1分足跳幅が9.9pips超(過去平均値の0.5倍超)に達したら、直ちに同方向への追撃を開始して直後11分足順跳幅での利確を狙うべき(場面発生頻度64%、期待的中率78%超)
  • FF金利変更なし時には、直後1分足跳幅が22.7pips超(過去平均値超)に達したら、直ちに同方向への追撃を開始して直後11分足順跳幅での利確を狙うべき(場面発生頻度52%、期待的中率72~88%)

です。

次に、値幅方向です。

本項分析結論は、

  • FF金利変更時には、直後1分足順跳幅が19.9pips超(過去平均値超)のとき、直後1分足終値がついたら追撃ポジションをオーダーし、直後11分足終値がつくまでの解消(場面発生頻度21%、期待的中率67%)

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

発表時刻の関係で取引回数が少なく、まだ実績を示せていません。


関連リンク

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改訂履歴

2.0訂(2020年5月27日) 新書式反映、2020年4月集計分までを反映、3.1項に始値基準ローソク足を開示、

以上

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