RBNZ金融政策発表前後のNZDJPY反応分析(3訂版)

本稿は、ニュージーランド中銀(※1)金融政策理事会(※2)オフィシャルキャッシュレート(※3)発表前後のNZDJPYの過去反応を分析し、同発表時の過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

(※1) Reserve Bank of New Zealand、以下「RBNZ」と略記。RBNZは、金融政策を通じて物価の安定を維持し、最大の持続可能な雇用を目指すことが使命。
(※2) Monetary Policy Committee、以下「MPC」と略記
(※3) Official Cash Rate、以下「OCR」と略記

 

Ⅰ. 指標概説と分析結論
1.1 指標概説
  • 発表機関:RBNZ
  • 発表日時:年7回6週間毎11:00(夏時間10:00)
  • 指標内容:金融政策方針を公開

特徴は次の通りです。

  • 現在まで注目すべき項目は「OCR」のみだが、今後は量的緩和の規模変更にも関心が集まるだろう
  • 直後1分足値幅の過去平均値は極めて大きく、「市場予想通り政策変更なし」でも30pips強、「市場予想通り金利変更」なら60pips弱、「市場予想と異なる発表結果」の場合には100pips強にも達する3.2項参照
  • 他の指標との関係は次の通り
    (1) RBNZはインフレターゲット採用を公言しているものの、直近の消費者物価指数前年比を見ても政策変更有無は予想できない2.3項参照
    (2) 例えば他の中銀(FRB)との金利差の拡大や縮小によって、RBNZ発表直後の反応方向を予想できない2.4項参照
  • 取引にあたっての注意点は次の通り
    (1) 市場予想が外れることがあり、そのときの反応は短時間のうちに極大化(100pips~200pips)してしまう3.2項参照
    (2) 必ずしも「利上げ時に陽線」「利下げ時に陰線」といった素直な反応とは限らず、声明文に含まれる今後の政策方針の解釈次第で発表後の反応方向が決まりがち2.1項2.5項参照
    (3) その解釈は他の主要国中銀ほど難解でなくアマチュアでも理解しやすい内容であることが多いものの2.1項参照、現実問題としては声明発表後の反応方向への短時間の追撃に取引方針を限っておいた方が良い3.3項参照
    (4) その短時間の追撃とは、市場予想通り現状維持だったときの成功率が80%、その他の場合の成功率が66%、と期待される3.4項参照

補足します。

RBNZの責務は、政府と結んだ政策目標協定によって決定します。
例えば、2018年3月に発行した政策目標協定では、従来通りの「インフレターゲット(平均2%、1~3%の範囲)」に加え、「持続可能な雇用の最大化」が追加されました(それまで、雇用の最大化はRBNZの責務ではありませんでした)。
そして、2019年以降は、それまで政策決定権限がRBNZ総裁に集中していた点を、5~7名で構成するMPCに移行しました。
また、以前は日本時間で早朝6時だった発表時刻を、2019年からは日本時間11時に発表時刻の変更しました(総裁会見は12時に変更)。

RBNZの金融政策は、OCRの誘導が主です。
OCRは市中銀行の翌日物金利で、この金利誘導はFRBによるFF金利誘導と同様の意味を持ちます。
そして、2020年3月のコロナ禍に際しては大規模資産購入(Large Scale Asset Purchase:以下「LSAP」と略記)を開始しました。
今後当面の政策は、マイナス金利導入の有無やQE規模の調整が関心事となります。

なお、RBNZは、四半期毎に金融政策声明(Monetary Policy Statement:以下「MPS」と略記) 、6週間毎にOCRの発表、年に2回の金融安定性レポートを発行しています。


1.2 分析結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します(私見)。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

本発表時の取引で無理する必要はありません。
主たる取引方針を発表後の追撃に絞っても十分にpipsは稼げます


Ⅱ. 指標分析

いずれ分析対象項目に「QE規模や内容」を含めるにせよ、以下は「OCR」が分析対象です。

分析対象期間は2013年1月発表分から2020年5月発表分までの54回です。
対象期間には計56回の発表が行われていますが、コロナ禍への緊急会合の2020年3月15日と同23日は、反応方向に関わる分析を行っていません。


2.1 政策金利の変更

分析対象範囲のOCR推移を以下に示します(グラフを発表都度最新に更新していくことが目的ではありません)。
コロナ禍に対応したQE政策(LSAP)は2020年3月に始まったばかりです。

上図の通り、対象期間にOCR変更は14回行われ、市場予想が外れたことが4回あります。
但し、2020年3月の利下げは前述の通り分析対象外です。

市場予想が外れた4回のうち2回(2015年6月・2016年3月)は「市場予想に反して利下げ」、1回(2019年8月)は「市場予想を超える利下げ」、1回(2019年11月)は「市場予想に反して変更なし」です。
これらの状況を整理すると、下表のようになります。

上表の「陽線で反応」「陰線で反応」は直後11分足の反応方向です。
とりあえず「利上げで陽線、利下げで陰線」と単純に考えれば、上表青数字は反応方向が理解でき(9事例)、赤数字(5事例)はそんな単純な理屈で反応方向の説明がつきません。
このとき説明がつく青数字率64%でぱっとしません。

赤数字の5事例について、RBNZ声明の「結論(状況を含む)」「(直後11分足の)反応方向」「(今後の)政策見通し要点」は次の通りです。

2014年7月は、4会合連続の利上げしての声明で、当面の利上げ無しを意味するため、陰線での反応は納得できます。
2015年7月は、2会合連続の利上げしての声明で、前会合で「追加利下げが必要」との文言に「ある時点」が加わったため、当面の利下げなしとの解釈され、NZDが買われました。
2015年12月も、「現在の政策金利でインフレ目標を達成できる」という文言は、当面の利下げなしと解釈できます。
以上のように上表青太字のときは、利上げ/利下げの「結論」よりも「政策見通し要点」に記された内容に応じて直後11分足方向が決していたようです。

一方、2016年8月と11月の会合での赤太字の声明からは、利下げなのに陽線で反応した理由がわかりません
がしかし、OCRの利上げ/利下げという結論だけでなく、声明文内容まで踏まえて反応方向を解釈すれば、先の14事例のうち12事例が説明できる訳です(86%
とは言え、英文で回りくどい表現を発表直後に素早く正確に読み取ることは、我々アマチュアにとってかなり難しいはずです。

よって、本項結論は次の通りです。

  • 市場予想に基づきポジションを得ることは、外れたときのダメージの大きさから薦められない(期待的中率64%)
  • 声明文内容も踏まえて発表後のポジション方向を決めれば良い(期待的中率86%)ものの、そんなことは現実問題として難しい

です。


2.3 インフレ率の影響

RBNZは、インフレターゲットを採用している、と公言してます。
ターゲットは消費者物価指数前年比(以下「CPI前年比」と略記)2%で、1~3%の幅を持たせています。
けれども下図をご覧ください。

確かに、OCRを変更すればCPIが遅れて変化しているように見えます。
但し、その追従は逆方向で、OCRを高くすればCPIは下がり、OCRを下げればCPIが上がっているように見えます。
ともあれ、CPIの変化に応じてOCRを変更しているはずなのに、実際にはOCRの変更に応じてCPIが変化しているように見えます。

これでは、CPIの変化に着目しても、それがOCR変更の予想には役立たない、ということになります。


2.4 他の中銀との政策方向の違いによる影響

下図は、RBNZRBA(豪中銀)・FRB(米中銀)の各政策金利の推移です。

各国政策金利は、大別してその差が拡大/縮小/一定の3つに分類できます。
例えば、RBNZとFRBの政策金利差に着目して下表のように分類し、直後11分足方向を調べました。

結果、対米金利差がどうあれ、そのことがNZDJPYに影響しているようには見えません


2.5 RBNZ声明要点記録

下表は、RBNZ声明の「結論」「(声明に記載された今後の)政策見通し要点」「反応(直後11分足)」を参考までに一覧しておきます(上の行ほど最新)。
朱記の行は、市場予想と発表結果が異なった事例です。

もちろん、下表の結論や政策見通しを原語で素早く掌握できたとしても、必ずしもその後の反応方向が当てられる訳ではありません。
声明の文言解釈は難しく、我々は発表後の反応方向についていく方が間違いなく無難です。


Ⅲ. 反応分析

以下の反応分析の毎年の対象数の内訳は下表の通りです。

前述の通り、2020年3月の2回の発表時は含めていません。

また、2018年以前の4月~9月のMPCは、発表時刻の関係で主なFX会社がメンテナンス休止中のため、直前10-1分足・直前1分足の記録がありません。


3.1 反応分析対象

反応分析対象の直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)の各始値基準ローソク足を、分析対象開示のために示しておきます。

2018年月以前の4月~9月のMPCは、発表前の直前10-1分足・直前1分足の記録がありません。
そのため、それら期間の反応分析は、発表後の直後1分足・直後11分足のみについて行っています。


3.2 反応程度

下表に「市場予想と異なる発表結果」「市場予想通り金利変更」「市場予想通り現状維持」だった各場合について、過去の反応程度平均pips、順跳幅の最大値・中央値、一足内反転率、を整理しておきます。

当然「市場予想と異なる発表結果」だったとき、発表後の反応程度が極端に大きくなっています。
直後1分足に注目すると、「市場予想通り金利変更」だった場合はその半分程度、「市場予想通り現状維持」だった場合は更にその半分程度、になっています。
また、直後1分足と直後11分足を比べると、「市場予想と異なる発表結果」と「市場予想通り金利変更」は順跳幅・値幅とも伸びていません。


3.3 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

下図は「市場予想と異なる発表結果」「市場予想通り金利変更」「市場予想通り現状維持」だった各場合について、4本足チャート各ローソク足の方向一致率を下図に求めます。

さて、市場予想と発表結果が一致するか異なるかは事前にわかりません
但し、「市場予想と異なる発表結果」だった場合と「市場予想通り金利変更」の場合の直後11分足は、直前10-1分足との方向一致率が高く、直前1分足との方向一致率が低く、直後1分足との方向一致率が高いことがわかります。
一方、「市場予想通り現状維持」だった場合は、直後1分足と同方向になりがちなことしかわかりません。

本項結論は、

  • 市場予想が金利変更の場合、直前10-1分足と直前1分足が逆方向のとき、直後11分足は直前10-1分足と同方向になりがち(場面発生頻度26%、期待的中率67%超)
  • 3.2項に記した通り「市場予想と異なる発表結果」だったとき、発表時刻を跨いだポジションで反応方向を間違えると、極端に大きな損失を被ってしまうため、現実的な取引は発表後の追撃に限った方が良い

です。


3.4 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表後に一方向に反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

3.3項に示した通り、「市場予想と異なる発表結果」「市場予想通り金利変更」「市場予想通り現状維持」のいずれの場合も、直後1分足と直後11分足の方向一致率は高いことがわかっています。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
そのわからない点を、過去の傾向から探ります。

下図は、直後11分足順跳幅が直後1分足順跳幅よりも伸びたか削ったか反転したかを示しています。

次に下図は、直後11分足値幅が直後1分足値幅よりも伸びたか削ったか反転したかを示しています。

結果、

  • 本発表後は順跳幅の伸びを追いかけるのが妥当
  • 直後11分足終値は直後1分足終値に比べ、反応を伸ばすか伸ばさないか予想できない

です。


Ⅳ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
結果、分析成績・勝率・収益・取引時間のいずれも良い成績です。


関連リンク

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改訂履歴

3.0訂(2020年6月12日) 新書式反映、2020年5月集計分までを反映

以上

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