日本経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のUSDJPY反応分析

日本「四半期GDP速報値※1」は、指標発表前後1分間の反応が小さいため、狙いは直前10-1分足と発表後の反応の伸びとなります。

幸い、直前10-1分足と指標発表直後の反応方向には予兆があるため、それに従って指標発表直前にポジションを取得します。そして、直後1分足跳幅が1.6pips超になったらそのまま追撃し、それ以外の場合は解消すれば、取引回数を重ねるに従って微益を積み重ねていくことができるでしょう。

※1   内閣府統計名は「GDP一次速報」。内閣府は、四半期GDPを1次速報(欧米諸国の速報値に相当)2次速報(同改定値に相当)に分けて発表している。両者の違いは、1次速報段階では「法人企業統計」がまだ利用不可なため、民間企業設備や民間在庫変動に推計値を用いている点。

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要
発表機関
内閣府※2
発表日時
当該期終了から約1か月2週間後の08:50(ほぼ中旬月曜日に発表されている)
発表内容
当該四半期GDP※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=「前期比」「GDPデフレータ」「民間最終消費前期比」「民間非住宅投資前期比」の市場予想の総合的な前回改定値との乖離(狙いは直前10-1分足)
  • 反応程度=非常に小さい(直前10-1分足値幅の過去平均値2.1pips
  • 反応方向=素直(事前差異判別式の解の符号と直前10-1分足値幅方向の一致率74%
  • 伸長特性直後1分足順跳幅が1.6pips超に達したら、直ちに追撃を開始して直後11分足跳幅を狙って早めに利確すべき
補足説明

  • 直後1分足の1足内反転率が最も高い指標のひとつで、予めその平均順跳幅を知っておいた方が良い(2節参照:3.2pips)
  • 海外投資家日本株購入企業物価指数との同時発表時には、本指標への反応が素直でない場合が多い(3.1項参照)

※2   内閣府は、他の省庁とは独立して総理大臣や特命担当大臣を補佐する役割を担い、内閣の重要政策の立案・調整を行う。

※3  下図出典は『総務省統計局, 「世界の統計2020」, 発行日不明』に記載の2018年数値を抜粋(グラフ化は当方にて実施)。支出項目別において民間最終消費は、別名「個人消費」と英用語(Private Consumption)直訳が使われることがある。ところが、民間最終消費には、個々人の消費支出だけでなく、民間企業の消費支出も含まれる。そういう意味において「日本(米国)において個人消費はGDPの6割(7割)を占める」という言い方は、例えば「だから企業でなく個人への減税やベースアップが必要だ」という文脈で使われる場合、発言者が「個人消費」という言葉を誤用している可能性が高い。

※4  出典は内閣府HP上の『 内閣府経済社会総合研究所,「結果の概要」,  2020.11.16』。下表は同資料表2-1を抜粋し、表中を当方にて記入。但し、デフレータは同資料表2-4下部に記載されているが、ここには示さない。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※5  本表の詳細説明はこちら


Ⅱ. 分析対象

対象指標は、日本四半期GDP速報値における

  • 前期比
  • GDPデフレータ前期比(以下「GDPdef」と略記)
  • 民間最終消費支出前期比(以下「民間消費」と略記)
  • 民間企業非住宅設備前期比(以下「民間設備」と略記)

の4指数と、その発表前後のチャートの反応です。

対象期間は、2014年10-12月集計分から2020年7-9月集計分の24回の発表事例です。

2.1  指標推移と統計値

各指数の過去の推移を下図に示します。
図の配置は、前期比(上左)・GDPデフレータ(下左)・民間消費(上右)・民間設備(下右)、となっています。

※6  上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。前期比とGDPデフレータは2013年1-3月期以降、民間消費と民間設備は2014年10-12月期以降をプロット。発表結果統計値はグラフ記載範囲から計算。

日本のGDPは500兆円ぐらいです。そのうち6割弱を民間消費が占めていることから、民間消費の推移は前期比(全体)の推移と似ています。その民間消費は、コロナ禍の時期を除くと、毎期±1%前後変化します。

一方、総固定資産支出はGDPの約1/4(民間消費の半分弱)を占め、そのうち民間設備(非住宅)民間住宅の約5倍・公的固定資本形成の約3倍を占めています。概算では民間設備の約3%の変動が民間消費1%の変動に概算できます。

2.2  反応結果と統計値

対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足(以下、単に「ローソク足」と略記)を下図に示します。
図の配置は、左側に直前10-1分足(上)と直前1分足(下)を、右側に直後1分足(上)・直後11分足(下)を、それぞれ指標発表前と後とで縦軸を揃えて示しています

上図を見る限り極端に大きな反応がなく、2017年頃からは直後1分足の反応がかなり小さくなっていることがわかります。利確/損切の目安は、直前10-1分足が3pips程度、直後11分足が10pips弱付近、と捉えておけば良いでしょう。

上図各ローソク足の統計値を下表に纏めておきます。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は2.0pipsで、反応程度は非常に小さい指標です。

また、本指標は直後1分足の1足内反転率が最も高い指標のひとつです。これは、前日(前週)の米株価の影響を受けやすい東証取引を09:00に控えているため、それが本指標結果の良し悪しと矛盾する場合、本指標の影響持続時間が極端に短くなるため、と推察されます。

分布を見ると、指標発表直前直後の1分足が平均値の0.5倍以下に半数前後が収まっています。直前1分足や直後1分足での取引の半数は1pipsしか狙えないことになります。よって、本指標の狙いは直前10-1分足と直後11分足ということになります。


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

民間消費と民間設備(非住宅投資)が2014年10-12月期以降しかデータが入手できていないため、それらの分析対象回数はそれ以降の24回となります。発表値は改定値(2次速報値)発表時にほぼ毎回修正されています。が、速報値(1次速報値)発表直前に修正されていない値は、分析に含まれていません。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

本来ならば、「海外投資家日本株購入」と「企業物価指数」は、本指標事後差異判別式の解の符号と直後1分足の一致率が67%に達しておらず、取引対象外の判定となります。がしかし、まだ同時発表数が少なく、それら指標や「マネーストックM3」も、本指標とのチャートへの影響力の強弱が判断できません。

そのため、本分析結論はあと数年様子を見てからにします。

3.2  項目間影響力分析

各指数の判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回改定値
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー前回改定値

です。

このとき、各判別式の解と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

どの指数も反応方向との相関が高くありません。

次に、全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕「前期比」の差異[%]+B✕「GDPdef」の差異[%]+C✕「民間消費」の差異[%]+D✕「民間設備」の差異[%]
    但し、事前差異=市場予想ー前回改定値、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回改定値

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、先の全体判別式の形式と上表から、本指標の事前差異判別式は、

ー4✕「前期比」の(市場予想ー前回改定値)ー1✕「GDPdef」の(市場予想ー前回改定値)ー2✕「民間消費」の(市場予想ー前回改定値)ー1✕「民間設備」の(市場予想ー前回改定値)

となり、この式の解の符号と直前10-1分足は、過去74%の方向一致率となっています。つまり、上表のように各判別式の係数を決めれば、本指標発表10分前から1分後までの反応方向を説明しやすいのです。

分析対象期間における各判別式の解の統計値を下表に纏めておきます。


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

4.1  指標一致性分析

判別式の解と対応ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応程度を予想するような分布ではありません。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。

方向の情報だけを取り出すことで、判別式の解の符号と反応方向の一部に高い一致率・不一致率が見つかりました。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません。そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各対応ローソク足の指標方向一致率を求めてみます。

事前差異判別式の解の絶対値を階層化すると、判別式の解の符号と反応方向の一部の高い一致率・不一致率に、制約があることがわかりました。

本分析結論は、

  • 直前10-1分足の反応方向は、事前差異判別式の解の符号と同じになりがち(場面発生頻度100%、期待的中率74%)
  • 直前1分足の反応方向は、事前差異判別式の解の絶対値が3.0超(過去平均値の約0.5倍超)のとき、その解の符号と逆になりがち(場面発生頻度54%、期待的中率67%)
  • 直後1分足の反応方向は、事前差異判別式の解の符号と同じになりがち(場面発生頻度100%、期待的中率67%)
  • 直前11分足の反応方向は、事前差異判別式の解の絶対値が6.0超(ほぼ過去平均値超)のとき、その解の符号と同じになりがち(場面発生頻度38%、期待的中率67%)

です。

直前1分足は反応が小さく(過去平均値幅が1.3pips)、反応方向の期待的中率が高くても取引に魅力がありません。
同様に、本指標は直後1分足も小さい(過去平均値幅が2.0pips)ものの、後記4.3項に示すように直後1分足順跳幅が1.6pips超になれば、直後11分足順跳幅がそれより伸びる傾向があります。

4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応方向・程度を予想するような分布ではありません。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。

方向の情報だけを取り出すと、一部のローソク足同士が方向一致・不一致になりがちなことがわかりました。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、それが大きいときにはその後のローソク足方向を示唆している可能性があります。下図は、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に直前10-1分足と直前1分足・直後1分足・直後11分足の値幅方向の一致率を纏めています。

直前10-1分足値幅を階層化することによって、ローソク足同士の一部の方向一致率・不一致率に制約があることがわかりました。

本稿分析結論は、

  • 直前1分足の反応方向は、直前10-1分足値幅が2.1pips超3.2pips以下(過去平均値超1.5倍以下)のとき、それと同じになりがち(場面発生頻度16%、期待的中率67%以上)
  • 直後1分足の反応方向は、直前10-1分足値幅が3.2pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、それと同じになりがち(場面発生頻度17%、期待的中率67%)

です。

直前1分足は反応が小さく(過去平均値幅が1.3pips)、反応方向の期待的中率が高くても取引に魅力がありません。

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は67%しかありません。がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは54%、値幅が同方向に伸びたことは50%でした。この数字では、追撃すべきか逆張りすべきか判断ができません。

さて、指標発表後の反応が一方向に伸びるときには、最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさ(伸びの強さ)に現れる場合があります。そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が1.6pips超(過去平均値の0.5倍超)に達したら、直ちに追撃を開始して直後11分足跳幅を狙った方が良い(場面発生頻度42%、期待的中率70%)

という傾向がありました。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

まだ取引回数が少ないため、成績へのコメントは控えます。

※7 「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていない。「分析適用率」と「分析的中率」は、都度の指標発表前に取引方針を開示していたときだけの成績を集計。「取引成績」は、指標発表直前・直後におけるスプレッド拡大、スリップ多発、注文不可などの影響を考慮してもなお、本稿取引方針が有効か否かを判断するため、実取引における分析適用時勝率。ここに挙げた実績は全て別サイトにて該日付もしくはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2017年2月12日)
改訂(2021年2月13日):新書式反映。注目項目を「前期比」「前年比」「GDPデフレータ」から「前期比」「GDPデフレータ」民間最終消費前期比」「民間非住宅投資前期比」に変更。指標間影響力比較分析の実施と、本指標より影響力が強い指標との同時発表時を分析対象から除外。

以上

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