日本物価指標「東京都区部消費者物価指数」発表前後のUSDJPY反応分析

以前の「東京都区部消費者物価指数※1」は「全国消費者物価指数」と同時発表されていました。2018年2月集計分以降、両者は別の日に発表されるようになり、その結果、本指標結果の良し悪しがチャートに与える影響がはっきりしました。とはいえ、本指標への反応は極めて小さく、取引には不向きです。

直後11分足の反応方向は指標結果の良し悪しにかなり素直です。そして、直後1分足順跳幅が1.3pipsを超えたら直後11分足順跳幅に狙いを定め、直後1分足順跳幅が1.3pips以下だったらポジションは解消しましょう。そうすれば、本当に少しずつ微益を積み重ねていけるでしょう。

※1   発表元統計名は「東京都区部中旬速報値」。

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要
発表機関
総務省統計局※2
発表日時
毎月26日を含む週の金曜日08:30
発表内容
東京都区部の消費者物価指数※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=「季節調整前総合指数前年同月比」「季節調整前生鮮食品を除く総合指数前年同月比」「季節調整済生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数前月比」の総合的な対前回乖離(狙いは直後11分足)
  • 反応程度=極めて小さい(直後1分足直後11分足過去平均値幅は各1.0pips2.6pips
  • 反応方向=かなり素直(実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率77%
  • 伸長特性=直後1分足順跳幅が1.3pips超(過去平均値超)が追撃サイン
補足説明

  • 他の指標との同時発表は気にしなくても良い(3.1項参照:失業率・有効求人倍率よりも、本指標の影響力は強い)

※2  日本の公的統計は、各府省が所管行政と関連する統計を作成している(分散型統計機構)。そのため、各行政機関が作成する統計を横断的に調整する機関が必要となり、その機能は総務省政策統括官(統計基準担当)が担当している。

※3 東京都区部の物価指数には特徴がある。下図に全国平均(下右図における100%)に対する東京都の物価指数の大小を10大費目毎に示す。どの費目も東京都は全国平均より高いが、特に住居費目が突出して高く、次いで教育費目の高さが目立つ。なお、下表下図出典は『総務省統計局HP, 「ところ変われば物価も変わる」, 統計トピックス No.87,  平成27年3月16日』で、一部を見やすく加工実施。

※4  下図出典は『総務省統計局HP, 「2015年基準 消費者物価指数 東京都区部 2021年(令和3年)2月分(中旬速報値)」, 2021年2月26日』の巻頭部分を転載し、赤下線を当方にて記入。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

巻頭に記した通り、本指標での取引があまりに小さくpipsを狙うことになるため、取引を勧めない点に変わりありません。下表方針は、「複数の前提を満たしたとき」の取引方針の表現や実際の取引での適用性改善を研究するためのものです。こうした研究は、反応が小さい指標でこそ実施できます。

※5  本表の詳細説明はこちら


Ⅱ. 分析対象

2018年1月集計分以前の本指標は、全国消費者物価指数と同時に発表されていました。そのため、分析対象範囲は2018年2月集計分以降とします。分析対象範囲は、上記以降の

  • 季節調整前総合指数前年同月比(以下「CPI※6」と略記)
  • 季節調整前生鮮食品を除く総合指数前年同月比(以下「コアCPI」と略記)
  • 季節調整済生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数前月比(以下「コアコアCPI」と略記)

の3指数と、その発表前後のチャートの反応です。

※6  CPI=Consumer Price Index(=消費者物価指数)。日本のコアコアCPIは米国等におけるコアCPIに相当する。

そして、例年12月24日以降の発表日となる11月集計分は分析対象外とします。
過去のチャートを確認頂ければわかるように、例年12月24日以降の1分足チャートというのは窓だらけとなっています。日頃、チャートの動きを決める多数の参加者は、既にこの時期、取引に参加していないのです。当然、そんな時期の指標結果発表前後の反応も、他の時期とは異なります(本稿分析におけるノイズとなってしまいます)。

その結果、下表対象期間37回の発表事例のうち、34回の発表事例が以下の分析対象となります。

2.1  指標推移と統計値

各指数の過去の推移を下図に示します。
図の配置は、コアCPI(左)・CPI(右上)・コアコアCPI(右下)、となっています。

※7  上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。発表結果統計値はグラフ記載範囲全体から計算。

上図は、本指標の推移を俯瞰するため、分析対象期間を遡って2015年1月集計分以降を示しています。この間、コアCPIの市場予想はいつも簡単に見つかるものの、CPIとコアコアCPIは見当たらないこともよくあります。分析対象期間はより右側です。

上図では、2015年4月集計分の大きな下落が目立ちます。これは、このとき実際に物価が大きく下がったのではありません。それより1年前の2014年4月集計分から各指数にオフセット操作をしていたことを止めたことが原因です。

日銀は、2014年4月の消費税増税(5%→8%)が2014年度の消費者物価に与える影響を、前年同月比2.0%と試算していました。この試算を受けて、総務省統計局は2014年度にその影響を消費者物価に反映し、2015年度4月集計分からそれを反映しなくなったのです。結果、上図の通り、2015年4月集計分は大きな下落となりました。

そして、2019年10月には再び消費税増税(8%→10%、一部8%のまま)が行われました。増税分は同年10月集計分(一部11月集計分)から反映されています。消費者物価指数作成方法に関する国際基準においても、消費者物価指数には消費税の影響を含むことが規定されています(それなのに前記2014年度はオフセット操作をしていました)。
ところが、2019年10月の増税の影響は上図からはっきり読み取ることができません。

もともと消費者物価指数には、価格の大きく下落した品目が、① 需要も増えて相対的な支出割合も拡大した場合、② 時間経過とともに指数の水準が著しく低下した場合、などに上方バイアスが生じることが指摘されています。そのため、指数の水準を前年12月=100に「リセット」し、ウエイトも前年の支出割合を用いて更新する連鎖基準方式の指数も、上図指数とは別に参考指数として公表しています。

しかし、2012年以降の「生鮮食品を除く総合指数」の前年比を、固定基準方式の指数と連鎖基準方式の指数について比べると、両者の差があまり見られません。これは、実際には価格が下落した品目の相対的な支出割合が拡大するとは限らないことと、耐久消費財などでかつて見られた連続的な価格下落が最近は起きなくなって「リセット」の影響が小さくなっていることが原因、と総務省統計局資料での考察がありました(出典忘失)。

2019年10月の消費税増税は、こうした連鎖基準方針の指数でも影響が比較的小さく、そのため2014年のようにオフセット操作が必要なかった訳です。

2.2  反応結果と統計値

対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、左側に直前10-1分足(上)と直前1分足(下)を、右側に直後1分足(上)・直後11分足(下)を、それぞれ指標発表前と後とで縦軸を揃えて示しています。

上4図を見る限り、極端に大きな反応がないことと、指標発表前後1分間の反応が小さいこと、がわかります。よって、本指標での狙いは直前10-1分足と直後11分足ということになります。

次に、各ローソク足統計値を示します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は1.0pipsで、反応程度は極めて小さい指標です。

これほど反応が小さいにも関わらず、直後1分足の1足内反転率は6%しかありません。後記3.2項に示す通り指標結果の良し悪しに素直に反応する点と、上記1足内反転率から長いヒゲを残して反転する可能性が低い点は、本指標での取引のしやすさを示唆しています。そして、後記4.3項に示す通り、直後1分足順跳幅の大きさが追撃サインとなっています。

直後11分足に関しては、先述の狙いを絞ってpipsを伸ばすか否か、途中検証しながら取引できます

2.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

後述するように、本指標結果の良し悪しへの反応は、直後1分足でなく直後11分足ではっきりします。そして、実態差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後11分足値幅は、過去平均で5.2pipsです。


Ⅲ. 指標分析

本節は、他の指標との同時発表等の実績から、本指標の分析範囲を更に絞りこみます。また、分析対象3指数の反応への影響度を求めます。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に示します。

なお、本指標本分析では、他の指標での同種分析とは異なり、実態差異判別式の解の符号と直後11分足反応方向の一致率を、影響力を見比べるためのキー・メトリクスとしています。これは、本指標への直後1分足での反応が極めて小さいため、それが取引対象にならないためです。

上表から、本指標37回の対象期間発表事例のうち、22回も失業率・有効求人倍率と同時発表されています。そして、本指標の良し悪しの方が有効求人倍率のそれより、チャートへの影響力が強かったことがわかります。

結論、本指標取引において、他の指標との同時発表は気にする必要がない、です。

補足します。

日本の失業率は恒常的に低いため、雇用指標の失業率よりも景気敏感指標の有効求人倍率の増減の方がチャートに影響しがちです。このように、雇用指標よりも景気指標の方が影響力が強いのは、主要先進国で日本だけです。また、本分析結果は、その景気指標より本物価指標の方が影響力が強いことを示しています。これも主要先進国で日本だけです。

これはひょっとして、日銀の目的(法的責務)が物価の安定を図ることと金融システムの安定に貢献することであり、他の主要先進国のように雇用の最大化を目的にしていないこと、と関係するのかも知れません。

3.2  項目間影響力分析

分析対象は、CPIコアCPIコアコアCPI、の3指数でした。

それぞれの指数毎判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー前回結果

です。
なお、分析対象の3指数のうち、コアCPIの市場予想は毎回見つかるものの、CPIとコアコアCPIの市場予想は必ずしも毎回見つかりません。そのため、CPIとコアコアCPIは実態差異判別式のみが成立します。

このとき、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

上表のどのセルを見ても、方向一致率は指標取引の参考にするレベル(33%以下もしくは67%以上)には達していません。この結果から言えることは、本指標発表前後の取引で各指数の良し悪しに個々に注目してもFX取引の役に立たない、ということです。

そこで、上記3指数を全て踏まえた全体判別式を次のように立式します。

全体判別式=A✕コアCPIの差異[%]+B✕コアコアCPIの差異[%]+C✕総合CPIの差異[%]
但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

※8  例えば、先に示した全体判別式の形式と上表から、本指標全体の実態差異判別式は、4✕コアCPIの(発表結果ー前回結果)ー1✕コアコアCPIの(発表結果ー前回結果)ー1✕総合CPIの(発表結果ー前回結果)、となる。そして上表は、この式の解の符号と直後1分足が過去77%方向一致した、と読む。

これで、少なくとも直後11分足の反応方向は、総合的な指標の良し悪しで4回に3回以上説明できるようになりました。もし係数BとCが0でコアCPIしか注目していなければ、先に示したように直後11分足方向は63%しか説明できません。
この結果は多くの人にとって意外だったのではないでしょうか(私には意外でした)。

なお、上表係数を用いた全体判別式の統計値を下表に整理しておきます。


Ⅳ. 反応分析

本節は、前節で求めた各判別式の解の符号や、先に形成されたローソク足方向が、狙いとするローソク足の方向と過去どれだけ一致したかを求めます。また、指標発表後に一方向に反応を伸ばしたか否かを調べています。

4.1  指標一致性分析

判別式の解と対応ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応程度を予想するような分布ではありません。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。

方向の情報だけを取り出しても、先の3.2項で求めた関係以上に顕著な傾向は見出せません。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません。そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めてみます。

結果、

  • 直前1分足の反応方向は、事前差異判別式の解がどうあれ、その解の符号と同じになりがち(場面発生頻度100%、期待的中率72%)
  • 直後11分足の反応方向は、事前差異判別式の解がどうあれ、その解の符号と同じになりがち(場面発生頻度100%、期待的中率78%)

です。

但し、直前1分足は過去平均値幅が0.7pipsしかありません。そして、次項に示す通り、直前1分足方向が直後1分足や直後11分足の方向を示唆している訳でもありません。スプレッドのことも踏まえると、直前1分足には取引するメリットがありません。

4.2  反応一致性分析

ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応程度を予想するような分布ではありません。
上右図は、直後1分足と直後11分足が比例的なことを示しているものの、相関係数を見ると0.41しかありません。0.41では、直後1分足値幅から直後11分足値幅を予想する精度が低すぎます。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。

方向の情報だけを取り出しても、どのローソク足同士も高い一致率になっていません。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、それが大きいときにはその後のローソク足方向を示唆している可能性があります。そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に直前10-1分足と直前1分足・直後1分足・直後11分足の値幅方向の一致率を求めてみます。

結果、

  • 直後1分足の反応方向は、直前10-1分足値幅が0.9pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、それと同じになりがち(場面発生頻度65%、期待的中率75%)

です。

とは言え、直後1分足の過去平均値幅は1.0pipsしかありません。例え反応方向を当てても、スプレッドのことを考えると取引すべきか悩みます。
そのため次の伸長性分析が大事になります。

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は70%です。がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは53%、値幅が同方向に伸びたことは47%でした。この数字では追撃できないし、逆張りするにも不安です。

さて、指標発表後の反応が一方向に伸びるときには、最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさ(伸びの強さ)に現れる場合があります。そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が1.3pips超(過去平均値超)に達したら、直ちに追撃を開始し、直後11分足跳幅を狙う(場面発生頻度35%、期待的中率75%)
  • 直後1分足順跳幅が1.3pips超(過去平均値超)に達したら、直後1分足終値がつくのを待って追撃を開始し、直後11分足終値がつくまでに解消する(場面発生頻度35%、期待的中率83%)

です。

これらの場合、直後1分足と直後11分足が反転したことはなく、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことも17%しかありません。けれども、2.2項表に示した直後1分足と直後11分足の過去平均順跳幅同士・値幅同士を見比べると、上記追撃で得られるのは2pips前後ということになります。

よって、本指標発表後の追撃は、それ以前の直後1分足方向を当ててそのまま追撃に移行する方が良いでしょう


Ⅴ. 取引成績

まだ取引実績はありません。


関連リンク

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以上

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