独国実態指標「鉱工業生産」発表前後のEURJPY反応分析

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要

独国鉱工業生産※1の対前月改善/悪化は、先行発表される景気指標や製造業新規受注指数と同期性が認められません。
それどころか、景気指標や新規受注が良かった半年後に本指標が前月よりも悪化しがちです。
実績データが示すこの現象に合理的な説明はできません。

取引を行う上での注意点は、指標発表前後1分間は反応が小さく、直後1分足が過去平均値を超えたときのみ追撃に適しています。
但し、そういう現象が起きる頻度は33%しかありません。
その33%の事例を待って、指標発表時刻直前にポジションを取得し、狙いが外れた場合の損切を小さくしておけば、取引を重ねるに従ってプラス収支になっていくでしょう。

※1  発表元指標表記は「Produktion im Produzierenden Gewerbe(鉱工業生産)」。

発表機関
連邦統計局※2(Statistisches Bundesamt:StBA
発表日時
当該月の翌月上旬15:00(冬時間16:00=現地時間08:00)
発表内容
従業員20名以上の製造業者による国内生産量/額の指数※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=「前月比」だけでなく「前年同月比」も含めた総合的な対予想乖離方向
  • 反応程度=非常に小さい(直後1分足値幅の過去平均値2.2pips
  • 反応方向=素直(事後差異の全体判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率70
  • 伸長特性=直後1分足順跳幅が過去平均値(7.9pips)を超える場合のみ追撃是
補足説明

  • 本稿分析は初版のため取引実績はない
  • 金融関連発表との同時発表時を除き、他の指標との同時発表は気にする必要がない(3.1項参照)
  • 過大反動を起こしにくい指標にも関わらず、指標発表前は過大反動を見こした方向に反応しがちで、指標発表後は過大反動が起きなかった方向に反応しがち4.4項参照)
  • 本指標に先立って同月集計分が発表されている製造業PMI改定値やIfo企業景況感の良し悪しは、本指標の良し悪しを示唆しない(4.5項参照)
  • 6か月前集計分の製造業新規受注の良し悪しは、本指標発表直後1分足の方向を示唆しがち(4.5.3項参照)

※2  ドイツ連邦統計局は内務省の部局で、約380の統計データの収集・処理・普及を実施。同局の統計は連邦目的統計法によって規制され、欧州統計システム(ESS)及び欧州統計行動規範に準拠している。

※3  独国鉱工業が名目GDPに占める割合は26%(参考:米国14%、日本23%、英国14%、仏国14%:2018年)で、この数字は主要先進国において最も高い。調査対象企業は20人以上の従業員を有する企業で、調査対象品目は6000種超にも達する。その結果、独国鉱工業生産額の約80%を網羅し、そのうち約10%が未回答等の推定を当てはめている。各企業による翌月の25日までの前月分報告を集計処理し、指数化は2015年を基準としている。参考資料として、独国製造業社数と付加価値の一覧を下表に示す。

※4  添付画面は『独国連邦統計局, 「Pressemitteilung Nr. 012(プレスリリース 第12号)」, 2021年1月8日』の巻頭部分を抜粋。は当方にて記入し、上に囲まれた数値が「前月比」、下に囲まれた数値が「前年同月比」。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象

対象は、独国鉱工業生産における

  • 前月比
  • 前年同月比(以下「前年比」と略記)

です。

両指数の過去推移を下図に示します。
図の配置は、前月比(上)・前年比(下)、となっています。

※6  上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。発表結果統計値はグラフ記載範囲から計算。

上図左側のの部分が分析対象です。
そして、前年比の市場予想も含めた分析は、上図右側のの部分となります。

コロナ禍の時期の急激な落ち込みと回復を除くと、前月比は±4%、前年比は±5%、に以前からだいたい収まっています。

また、その時期を除くと、前月比の市場予想はほぼ一定で、前年比の市場予想はまるで見当違いです。
このように、本指標の市場予想はエコノミストらのやる気を疑うような推移が特徴的です。

次に、対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、左側に直前10-1分足(上)と直前1分足(下)を、右側に直後1分足(上)・直後11分足(下)を、それぞれ指標発表前と後とで縦軸を揃えて示しています。

※7 上図における歯抜け箇所は、本指標よりチャートへの影響力が強い指標との同時発表月(3.1項参照)。

上図を見る限り、極端に大きな反応がないことと、直後1分足の反応が小さいことがわかります。
また、夏時間での発表は東京株式市場の終了時刻ですが、夏時間と冬時間での反応程度に違いがあるとは言えません

直後1分足は小さく、狙いは直後11分足順跳幅ということになります。
基本は、指標発表時の利確/損切の目安は10pipsとし(滅多にない大きく反応するときを狙う)、発表後1分を過ぎたら直後11分足順跳幅を狙って7.8pips(過去中央値にしておけば50%の事例で引っ掛けられる)に変更すれば良いでしょう。
こうした目安があれば、あとはボラティリティが大きい時期/小さい時期を考えて微調整する訳です。

次に、上図各ローソク足統計値を示します。

※8 上表では反応分析対象外の月を集計していない。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は2.2pipsで、反応程度は非常に小さい指標です。
けれども1足内反転率は低く、長いヒゲを残して反転する可能性が低い点では取引のしやすさを示唆しています。

分布は、直後1分足順跳幅が平均値の0.5倍超1倍以下に収まることが半分あります。
ということは、利確であれ損切であれ平均2pips弱ということです。
ならば、1足内反転率が低い以上、直後1分足順跳幅で反応方向を見極めて、直後11分足順跳幅を狙う方が良いでしょう


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

反応データが入手できているのは2017年9月集計分以降です。
そして、前月比の市場予想は以前から毎回入手できるものの、前年比の市場予想は2018年10月集計分以降しか入手できていません。
発表結果は、ほぼ毎回、翌月発表時に修正されています。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

貿易収支との同時発表が多く、その場合は貿易収支の良し悪いに注目するより本指標に注目した方が良さそうです
金融関連の発表があるときは、本指標に限らず取引は控えます。

※9  2020年3月集計分発表時(2020年5月発表)がBOE金融政策発表と同時刻。

3.2  項目間影響力比較分析

対象は、前月比前年比、でした。

それぞれの判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー前回修正結果(但し、前回結果が修正されない場合は前回結果を代入)

です。

このとき、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

※10  前月比の各差異と前年比の実態差異の一致率は2017年9月集計分以降、前年比の事前差異・事後差異との一致率は2018年10月集計分以降。

判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率は良くありません。

例えば、前月比だけに関心を払っていたのでは、発表結果が市場予想よりも良かろうが悪かろうが直後1分足が素直に反応することが62%しかないのです。
そんな数字だったら、前月比の市場予想を事前に把握しておく意義があまりない、と言えるでしょう。
にも関わらず、一部のFX会社では指標案内で前月比の市場予想だけを事前に示して、前年比の市場予想を示していません。
このことが多くのアマチュア(主に初心者)をミスリードするのです。

こうした指標では、前月比だけでなく前年比の市場予想も踏まえた分析が必要です。
そこで、前月比と前年比の両方を踏まえた全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕前月比の差異+B✕前年比の差異
    但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回修正結果

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

※11  例えば、先に示した全体判別式の形式と上表から、本指標全体の事後差異判別式は、4✕前月比の(発表結果ー市場予想)ー1✕前年比の(発表結果ー市場予想)、となる。そして、上表はこの式の解の符号と直後1分足が過去70%方向一致と読む。

なお、前述の通り、2018年10月集計分までは前年比に市場予想がありません。
よって、それまでは前月比の事前差異・事後差異判別式を本指標全体の判別式として用いています。
きっと、一部のFX会社は前年比の市場予想も必要ということに気づいて案内を始めた、と推察します。

ともあれ、これで直後1分足の反応方向だけは、指標結果の良し悪しで説明できるようになりました。

参考までに、各判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は、過去平均で0.5pipsです。


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

対象期間の発表で分析対象外となっているのは、3.1項記載理由の1回です。

4.1  指標一致性分析

判別式の解と対応ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

※12  コロナ禍時期のドットは上グラフ外にある。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応程度を予想するような分布ではありません。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します(上図外にあるコロナ禍時期のデータも反映)。

上左図を見ると、対象期間には事後差異判別式の解の符号がマイナスへの偏りがあります。
また、上右図からは、事後差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率の方が、直後1分足とよりも僅かですが高くなっています74%)。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めてみます。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が4超のとき、その解の符号と一致しがち(場面発生頻度69%、期待的中率67%以上)

といった傾向がわかりました。

4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅同士の代表的な関係を下図に示します。

上3図のドット分布は、どれも回帰分析で反応程度を予想するような分布ではありません。

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。

指標発表前のローソク足方向が発表後のローソク足方向を強く示唆している兆しはありません。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、それが大きいときにはその後のローソク足方向を示唆している可能性があります
下図は、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に直前10-1分足と直前1分足・直後1分足・直後11分足の値幅方向の一致率を纏めています。

結果、直前10-1分足の大小が、その後で形成されるローソク足方向を示唆している兆しは見受けられません

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は70%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

結果、直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは63%、値幅が同方向に伸びたことは58%でした。
この数字では、直後1分足を見て追撃すべきかを判断できません。

さて、指標発表後の反応が一方向に伸びるときには、最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさ(伸びの強さ)に現れる場合があります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が7.9pips超(過去平均値超)に達したら、直ちに追撃した方が良い(場面発生頻度33%、期待的中率85%以上)
  • 直後1分足順跳幅が7.9pips超(過去平均値超)のとき、直後1分足終値がついたら追撃した方が良い(場面発生頻度33%、期待的中率69%以上)

です。

4.4  過大反動分析

本分析は全体判別式の解に対して行います。
なお、全体判別式の形式は3.2項に記した通りです。

2節指標推移のグラフから、前月比は発表結果の上下動に比して市場予想はほぼ一定です。
こうした指標では、市場予想を上回った翌月は市場予想を下回りそうな気がするものです。

前月の実態差異判別式の解の絶対値の大きさ毎に、当月の事後差異判別式の解の過大反動分析を行った結果を下表に示します。

※12  前月発表結果が前々回のそれより大きく乖離したとき、その逆方向に市場予想を超えて当月発表結果が反動を起こすことを「過大反動」と定義。データ処理は、前月の実態差異判別式の解の絶対値毎に、当月の事後差異判別式の解の符号が前月と反転したか否かを判定。

上表仮説一致率を見ると、全体的には本指標が過大反動を起こにくいことがわかります(仮説一致率が50%未満)。
特に、前月実態差異判別式の解の絶対値が24超(平均値の約2倍)のときは、3回に1回しか過大反動を起こしていません。

次に、前月実態差異判別式の解の絶対値の階層毎に当月の直前10-1分足と直後1分足の反応方向を検証しておきます。

結果、

  • 直前10-1分足は、前月の実態差異判別式の解の絶対値が6超のとき、過大反動を起こすと見込んだ方向に反応しがち(場面発生頻度20%、期待的中率71%以上)
  • 直後1分足は、前月の実態差異判別式の解の絶対値が24超のとき、過大反動を起こさないと見込んだ方向に反応しがち(場面発生頻度6%、期待的中率75%)

といった傾向がありました。

※13  当月の反応方向が前月実態差異判別式の解の符号と逆方向のときが「過大反動を起こすと見込んだ方向」。

なお、上表「全数」の「直後1分足」「判定回数」が23回となっています。
その理由を下表に整理しておきます。

4.5  同期/連動分析

本分析は、本指標と比較対象指標が単月毎の増減方向の同期や追従の有無を検証しています。

4.5.1  独国製造業PMI改定値と本指標前月比の対比

対比は単月毎の増減方向について行います。

両指標の推移を下図に示します。
なお、本指標前月比の数値には50を加えてプロットしています。

両指数の意味が異なるため、同じグラフ上に推移をプロットしても増減方向の一致/不一致がわかりにくくなっています。
そこで、数式処理して単月毎の増減一致率を求め、それを下図に示します。

上図横軸は「製造業PMI改定値よりも本指標前月比が〇か月遅行/同期/先行」と読み、縦軸は「単月毎の増減方向一致率」を表しています。
そして、景気指標のPMIが本指標よりも遅行している上図左半分の一致率は、偶然の一致のばらつき範囲を示している、と考えられます。
そうすると、製造業PMIは本指標よりも6か月先行して増減方向が逆になりがち、と解釈します。

そこで、製造業PMI改定値の半年後の本指標発表前後の反応方向を調べておきました。

本分析に示した過去実績に基づけば、景気指標より6か月遅れて実態指標の増減方向が逆になる、ということでした。
がしかし、そのことを合理的に説明することは難しい、というのが正直なところです。

4.5.2  独国Ifo企業景況指数と本指標前月比の対比

次に、Ifo景況指数本指標前月比単月毎の増減方向について対比します。

説明内容は前項と同じため、結果の図表のみを以下に示します。
結論は、PMI改定値との対比と同様に、Ifo景況指数との対比でも景気指標より6か月遅れて実態指標の増減方向が逆になる、というものでした。

4.5.3  製造業新規受注との対比

次に、製造業新規受注前月比本指標前月比単月毎の増減方向について対比します。

説明内容は前項と同じため、結果の図表のみを以下に示します。
がしかし、結論は少し違います。

景気指標と同様に、製造業新規受注より6か月遅れて本指標の増減方向は逆になる、というものでした。
がしかし、製造業新規受注の6か月後の本指標発表前後の反応方向は、6か月前の受注増減の影響を受けている可能性があります


Ⅴ. 取引成績

本指標の取引実績はまだありません。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2020年2月7日)

以上

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