英国雇用統計発表前後のGBPJPY反応分析

本稿は、英国「雇用統計※1」発表前後のGBPJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

多くの指標解説記事で重要度や注目度が高く位置づけれられている「失業給付請求者数変化」は、反応方向との相関が高くありません(51%)。
実績から言えば、注目すべきは「失業率」と「平均週給前年比(含ボーナス)」の良し悪しが指標発表直後に素直な反応となっています(78%)。

※1 発表元の本指標表記は「Labour market overview労働市場概要)」。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
国家統計局(Office for National Statistics:ONS※2
発表日時
失業率は翌々月中旬の15:00(冬時間16:00:現地時間07:00
発表内容
英国の雇用・失業・給与に関わる季節調整済推定値※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目指数失業率平均週給前年比(含ボーナス)対予想乖離
  • 反応方向=かなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率78%
  • 反応程度=中程度(直後1分足値幅の平均値15.2pips
  • 伸長特性=安心して追撃できるのは、直後1分足順跳幅が41.4pipsの場合(そんなに直後1分足が跳ねることは最近起きていない)
補足説明

  • 2020年4月発表(同年2月集計分失業率)から発表時刻が現地時間07:00に変更
  • 失業給付請求者数変化は、多くの指標解説記事で重要度・注目度を高く位置づけられているものの、実績から言えば反応方向との相関が低い
  • 他の指標との同時発表は気にしなくても良い

※2 英国国家統計局(ONS)は、経済・人口・社会に関係する統計の収集と公表を業務とする議会直属組織。ONSのHPの「About us」では、内閣(政権)とは独立している点が明記されている。

※3 本指標の主な発表指数には、「Employment Rate就業率)」・「Claimant Count Change失業給付請求者数変化)」・「Employment Change 3-months3か月雇用者数変化)」・「Average Weekly Earnings, Total Pay(incl. Bonuses)平均週給前年比:含ボーナス)」・「Average Weekly Earnings, Regular Pay (excl. Bonuses)平均週給前年比:除ボーナス)」・「Unemployment Rate失業率)」等がある。

※4  通例、失業率は「3 Employment, unemployment and economic inactivity」に記載、平均週給前年比(含ボーナス)は「9  Earnings growth」に記載。
失業(者)の定義は、過去4週間以内に積極的に仕事を求めており、今後2週間以内に仕事を始めることができた仕事を持たない状態を指す。失業率は、この状態の人数と就業中の人数の合計に占める失業者数の割合を指す。
平均週給前年比(含ボーナス)は、固定賃金に臨時支給分を加えた総収入の前年比(年間伸び率)を指す。そして、多くの指標解説記事で慣例に基づき、例えば「2020年3月集計分」と表記されていても、単月集計分を指している訳ではない。実はこの場合「2020年1-3月期集計分」の年間賃金の伸び率を指している。なぜこのように表記と内容が異なるのかは不明。


1.2  結論

次節以降では、本指標での過去データにのみ基づき、本指標発表前後の反応傾向を抽出しています。
その傾向に基づく取引方針が下表です。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。本表の見方についてはこちらを参照方。


Ⅱ. 分析対象
2.1  対象範囲

本指標で分析対象とする指数は、

  • 失業率
  • 平均週給前年比:含ボーナス(以下「総平均週給」と略記)

です。

他にも失業給付請求者数変化」・「3か月雇用者数変化」・「平均週給前年比:除ボーナス(以下「固定平均週給」と略記)」等が発表されています。
がしかし、後記3.2項に記す通り、それらはチャートの動きとの相関が見出せないため分析対象外です。

指標分析の対象回数は下表の通りです。

失業率は修正されたことがなく、総平均週給は翌月発表時に前月発表結果が修正されることがしばしばあります。

次に、分析時期毎の反応分析の回数を下表に纏めておきます。
そして、下表には後記3.2項記載の判別式の解が0でない回数を纏めています。

対象期間70回の発表のうち、判別式の解が0のときは分析対象外となります。
その結果、事前差異判別式の解が0でないことは13回しかなく、指標発表前の反応方向はほぼ分析できません。

事前差異判別式は、後記3.2項記載に示す通り、ー2✕(失業率の市場予想ー前回結果)、であり、失業率の市場予想が前回結果と同じことが多いため、こうしたことが起きます。


2.2  指標推移

対象期間における総平均週給(左)・失業率(右)の推移を下図に示します。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

両指数の統計値を下表に示しておきます。

そして、指数毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

失業率の市場予想は前回結果との差が0.1以内に、発表結果は市場予想との差が0.1以内に収まりがちなことがわかります。


2.3  反応結果

下図は、2014年12月期集計分以降の本指標発表前後4本足チャートの各始値基準ローソク足です。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

2015年頃は反応が大きく、最近は反応が小さくなっています。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は15.2pipsで、反応程度は中程度です。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標(比較対象指標)との影響力比較結果を下表に示します。

金融関連発表時には、内容次第で極端に大きくなることがあり得ます。
がしかし、本指標との同時発表時には、過去全て本指標結果に素直な反応となっています。
本指標結果の良し悪しはチャートへの影響力が強く、同時発表指標があっても気にする必要はないようです。


3.2  項目間影響力比較分析

本指標の主たる発表指数は、業給付請求者数変化3か月雇用者数変化・総平均週給・固定平均週給失業率、です。
それぞれの判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。
このとき、各指数の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

上表から、総平均週給失業率以外は、反応方向への影響があまりないことがわかります。

次に、全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕総平均週給の差異+B✕失業率の差異
    但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回修正結果(前回結果の修正が行われなかった場合には前回結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、先の判別式の形式と上表から、本指標の事後差異判別式は、

1✕総平均週給の(発表結果ー市場予想)ー1✕失業率の(発表結果ー市場予想)

となり、この式の解の符号と直後11分足は、過去78%の方向一致率となっています。

以上の通り各判別式の係数を決めれば、本指標発表前後の反応方向を説明しやすいのです。


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

左上図において、2020年発表分が急激に大きくなっているのは、コロナ禍による急激な落ち込みと回復が原因です。
その一方、左下図において直後1分足は小さくなっており、コロナ禍時期の本指標への反応が鈍くなっていることがわかります。

ともあれ、事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は、過去平均で79.8pipsです。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

3.2項に示した通り、事前差異判別式と実態差異判別式は失業率だけの関数です。
そして、失業率の事前差異や実態差異の判別式の解は0となることが多いことが上図からわかります。

次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に纏めておきます。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は78%の一致率で、反応方向は発表結果の市場予想との乖離方向にかなり素直です。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

結果、事前差異判別式の解の大きさに関係なく、同解の符号と直前10-1分足の方向一致率が高いことがわかります。
また、事前差異判別式の解の符号と直後1分足は、方向一致率が低いことがわかります。
繰り返しになりますが、事前差異判別式は失業率の関数なので、失業率の市場予想や発表結果次第で本指標発表前後の反応方向は決まりがち、と言えます。


4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は分布が意味を持ちません。
上右図は比例的ですが、近似式の係数が1を下回っており、直後1分足値幅に対し直後11分足値幅は平均的に2%強小さく、指標発表後の反応が伸び悩む傾向が窺えます。

そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

直後1分足と直後11分足の値幅方向の一致率は77%あるものの、直後1分足と直後11分足の始値は直前1分足終値で同一のため、それだけでは取引の根拠には不十分です。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

結果、直前10-1分足値幅が17.7pips超のとき、直後11分足値幅は直前10-1分足値幅方向と同方向になりがちなことがわかります。


4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは57%、値幅が同方向に伸びたことは50%でした。
この数字では、初期反応方向への追撃すべきか否か判断できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

安心して追撃できるのは、直後1分足順跳幅が41.4pips(過去平均値の2倍超)の場合に限られます。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。
よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での実取引勝率は76%
  • 1発表当たりの平均獲得pipsは+10.54pips、同平均取引時間は6分6秒

です。

本指標での取引を頻繁に行っていた2017年頃は、本指標への反応が大きかった時期です。
英国指標のうち、反応が大きい指標では「狙った方向が当たったら追撃、間違ったら損切」という方法さえ徹底すれば、そこそこ稼げたのです。
現在、本指標は以前のように大きく反応しなくなっているので、現在はこまめに利確/損切を繰り返す方が良いでしょう。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。


関連リンク

➡ 英国指標の目次に移動

改訂履歴

初版(2017年1月17日)
改訂(2018年7月10日)
5訂(2018年11月12日)
6訂(2020年11月26日) 2020年9月集計分までを新書式反映

以上

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