英国収支指標「貿易収支」の分析

本稿は、英国収支指標「貿易収支※1」を分析しています。

本指標は、2017年1月発表(2016年11月集計分)以降、英国鉱工業生産指数製造業生産指数と同時発表され、2018年7月発表(2018年5月集計分)以降、英国月次GDP四半期GDP速報値と同時発表されています。
そして、本文3.1項に示した通り、本指標はそれらよりもチャートへの影響力が弱いことがわかっています。
ならば、本指標発表前後は、本指標でなく、それらの指標を参考にして取引すべきでしょう。

よって、本稿では反応分析を行わず、指標分析のみを実施しています。

※1 発表元の本指標表記は「Trade Balance貿易収支)」。本稿では「Trade in Goods(商品貿易)」の発表値に注目しているが、FX会社によっては「Total Balance(全収支:サービスの貿易収支も含む)」の発表値を載せているため、値が異なる場合がある。両者の違いは後記※3に記述。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
国家統計局(Office for National Statistics:ONS※2
発表日時
当該月最終日から約40日後の15:00(冬時間16:00:現地時間07:00
発表内容
英国の財(サービスを含まない)の輸出額から輸入額を引いた純輸出額※3発表事例※4
反応傾向

  • 反応方向・程度・伸長性のいずれも、英国四半期GDP速報値が同時発表されるときは、その反応傾向に参考にすべき
  • 英国四半期GDP速報値の発表が行われない月は、英国月次GDPの反応傾向を参考にすべき
補足説明

  • 2016年11月集計分(2017年1月発表分)から英国鉱工業生産指数・製造業生産指数と同時発表されるようになった
  • 2018年5月集計分(同年7月発表分)から英国月次GDP四半期GDP速報値と同時発表されるようになった
  • 2020年2月集計分(同年4月発表分)から発表時刻が現地時間06:00に変更された

※2 英国国家統計局(ONS)は、経済・人口・社会に関係する統計の収集と公表を業務とする議会直属組織。ONSのHPの「About us」では、内閣(政権)とは独立している点が明記されている。

※3 まず、国際収支の項目に経常収支があり、経常収支の項目に貿易収支がある。それらの関係は、国際収支=経常収支+資本収支+外貨準備増減経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支、がIMFの定義となっている。ところが、ONSが発表する「Trade Balance貿易収支)」には、サービス収支が含まれている。そのため、一部FX会社ホームページの英国貿易収支では、サービスを含めた収支を「貿易収支」と表記し、モノの「貿易収支」とは違う内容・数値が示されている(例えば、2020年10月時点における『Yahoo ファイナンス』では、英国貿易収支英国商品貿易収支を併記している)。他の主要国における貿易収支と同列に論じるには、この商品貿易収支を見比べなければならない。本稿に挙げた英国貿易収支とは、この商品貿易収支を指し、以下本文では単に貿易収支と記す。

※4 本指標はONSホームページのメニューで、Home>Economy>National accounts>Balance of payments>UK trade、の頁に纏められている。がしかし、その巻頭の要約文には、月次商品貿易収支が記されていないことが多い。月次商品貿易収支が記されているのは、例えば、前記頁の「9項  UK trade data(英国貿易データ)」に貼られたリンク先「UK trade: goods and services publication tables」の「1 UK TRADE IN GOODS AND SERVICES AT CURRENT MARKET PRICES (CP)」の「Monthly data」の末尾「Trade in goods」の「Balance」部分に記されている。


1.2  結論

本指標は取引対象ではありません

月次商品貿易収支額は、前月の実態差異が0.6[B GBP]以下のときと2.4[B GBP]のとき、当月の発表結果が過大反動しがちです(約2/3~4/5の割合)。
こうした傾向は、毎月の市場予想の上下動に比べて発表結果の上下動が大きい指標ではよく見かけられます。
がしかし、本指標のチャートへの影響力は弱く、こうした傾向に基づく取引は勧められません。
巻頭記したように、本指標発表時には、英国四半期GDP速報値か、英国四半期GDP速報値の発表がないときは英国月次GDPの発表前後のGBPJPYの反応傾向に基づく取引を勧めます


Ⅱ. 分析対象
2.1  対象範囲

本指標で分析対象とする指標は、

  • 月次商品貿易収支額(以下、単に「貿易収支」と略記)
  • 月次非EU向け商品貿易収支額(以下、単に「非EU貿易収支」と略記)

です。

指標分析の対象範囲を下表に纏めておきます。

各指標の市場予想はほぼ毎回容易に見つかり、発表結果は次回か次々回の発表時にほぼ毎回修正されています。
先述の通り、2016年11月集計分以降は、毎回、英国鉱工業生産指数・製造業生産指数と同時発表されるようになりました。
これ以降、本指標は取引に不向きとなっています(貿易収支が改善しようが悪化しようが、反応方向との相関がなくなったように見受けられます)。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。
図の配置は、貿易収支(左)・非EU向け貿易収支(右)です。

※5  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

上ふたつのグラフから、英国貿易収支の上下動は、ほぼ非EU貿易収支に依存していることがわかります(EUとの貿易収支はあまり変化していません)。
また、グラフを均して(ならして)見ると、2019年頃までは上下動しながら貿易赤字が少しずつ大きくなり、2019年頃から大きく上下動しながら貿易赤字が少なくなっています(貿易収支が黒字の月さえあります)。

参考までに各項目毎の統計値を下表に示しておきます。

そして、項目毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

上2表の単位は[B GBP(10億ポンド)]です。

過去の貿易収支発表結果は、前回結果±4.2[B GBP]の範囲に約63%が収まっています


2.3  反応分析の省略

そもそも、貿易収支の良し悪しと反応方向の関係は、主要先進国に限れば明確ではありません。
というのも、既にほとんどの先進国では、労働集約型の生産拠点が海外に移転済です。
その結果、経済全体が消費主導になっているため、輸入拡大に伴う貿易収支の悪化が悪いこととは言えません。
英国経済は既に消費主導の国に属し、それだけに貿易収支の良し悪しが一概に経済全体にとって良い/悪いと判断できなくなっています。

なお、上記のような定性的な解説ならば、他の指標解説記事を参考にできます。
実績に基づく定量的な本稿での反応分析の省略理由は、次の指標間影響力比較分析結果を参照願います。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

上表「同時発表指標」名の赤太字は本指標の方が影響力が弱い、との判定結果です。

本指標は、2017年1月発表(2016年11月集計分)以降、英国鉱工業生産指数製造業生産指数と同時発表され、2018年7月発表(2018年5月集計分)以降、英国月次GDP四半期GDP速報値と同時発表されています。

上表から、それら指標の良し悪しに対する直後1分足の反応方向は、本指標の良し悪しに対する直後1分足の反応方向に比べ、素直です。
よって、本指標発表時には、それら指標に注目して取引する方が合理的です。
そのため、本稿では本指標への反応分析を割愛します。


3.2  項目間影響力比較分析

分析対象は、貿易収支非EU貿易収支、でした。
それぞれの各判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。


3.3  過大反動分析

貿易収支について、前月の実態差異判別式の解の絶対値の大きさ毎に過大反動分析を行った結果を下表に示します。

貿易収支発表結果は、前月の実態差異判別式の解の絶対値が0.6以下と2.4超のとき、過大反動を起こし難いことがわかります(上表「過大反動率」参照)。

過大反動を起こし難いとは、例えば、前月発表結果が前々月発表結果よりも2.4超上回るとき、当月の発表結果は市場予想を下回りにくい(上回りやすい)、ということです。


Ⅳ. 反応分析

本指標に対しては反応分析を行いません。


Ⅴ. 取引成績

本指標での取引実績はありません。


関連リンク

➡ 英国指標の目次に移動

改訂履歴

初版(2020年11月2日) 新規、2020年8月集計分までを新書式反映

以上

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