英国実態指標「生産指数(鉱工業生産指数・製造業生産指数)」発表前後のGBPJPY反応分析

本稿は、英国実態指標「生産指数(鉱工業生産指数・製造業生産指数※1」発表前後のGBPJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

英国GDPに占める鉱工業部門の割合は14%(2016年)で、本指標はGDPの先行指標としての意識されていました。
けれども、2018年7月以降(2018年5月集計分以降)は、英国月次GDPが本指標と同時発表されるようになった以上、先行するも何もありません。
実際、チャートへの影響力は月次GDP結果の方が本指標結果よりも強いため、本指標の予想や結果を見て取引するぐらいなら、月次GDPの予想や結果を見て取引すれば良いのです。

ともあれ、現在、本指標は取引対象ではありません

※1 発表元の本指標表記は「Index of Production生産指数、略称IoP)、各指数表記は「Production output鉱工業生産高)」、「Manufacturing output製造業生産高)」。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
国家統計局(Office for National Statistics:ONS※2
発表日時
当該月最終日から約40日後の15:00(冬時間16:00:現地時間07:00
発表内容
基準年に対する鉱工業の産出量・生産量・供給量の変化を表す指数※3発表事例※4
反応傾向(2018年5月集計分以前の発表時の傾向)

  • 反応方向=素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率73%
  • 反応程度=中程度(直後1分足値幅の平均値14.6pips
  • 伸長特性=指標発表から数分間は反応を伸ばしがち
補足説明

  • 2016年11月集計分(2017年1月発表分)から英国貿易収支と同時発表されるようになった
  • 2018年5月集計分(同年7月発表分)から英国月次GDPと同時発表されるようになった
  • 2020年2月集計分(同年4月発表分)から発表時刻が現地時間06:00に変更された
  • 英国月次GDP・英国四半期GDP速報値・独国CPI改定値・独国WPIとの同時発表時は、本指標での取引を控えた方が良い

※2 英国国家統計局(ONS)は、経済・人口・社会に関係する統計の収集と公表を業務とする議会直属組織。ONSのHPの「About us」では、内閣(政権)とは独立している点が明記されている。

※3 調査対象は約6,000社で、主に月間ビジネス調査(MBS)で取得したデータが用いられている。「Production output鉱工業生産高)」は英国製造業者の実質生産量の変化を表し、製造・鉱業・鉱物加工・エネルギー生産・水資源管理・廃棄物管理などの業種が含まれる。「Manufacturing output製造業生産高)」は英国製造業者で生産された商品価値の変化を表し、食品・医薬品・軽工業・金属加工などの品目が含まれている。

※4 本指標はONSホームページのメニューで、Home>Business, industry and trade >Manufacturing and production industry、に纏められている。通例、発表画面最初の項に文書形式で当該月結果の説明が行われる。キーワードは、各指数名の「Production output鉱工業生産高)」と「Manufacturing output製造業生産高)」で、その前月比(%)が挙げられている。


1.2  結論

本指標は、2018年7月以降は英国月次GDPが本指標と同時発表されるようになりました。
チャートへの影響力は月次GDPの方が本指標よりも強いため、本指標の予想や結果を見て取引するぐらいなら、月次GDPの予想や結果を見て取引することを勧めます。
つまり、現在、本指標は取引対象ではありません


Ⅱ. 分析対象
2.1  対象範囲

本指標で分析対象とする指数は、

  • 鉱工業生産指数前月比・前年比(以下「鉱工業前月比」「鉱工業前年比」と略記)
  • 製造業生産指数前月比・前年比(以下「製造業前月比」「製造業前年比」と略記)

です。

指標分析の対象範囲を下表に纏めておきます。

各指数の市場予想は毎回容易に見つかるでしょう。
発表結果は、次回発表時に修正されることが多いことがわかります。

次に、反応分析の対象範囲を下表に纏めておきます。

巻頭に述べた通り、2018年7月発表以降(本指標2018年5月集計分以降)は、月次GDPと同時発表が行われるようになったため、反応分析の対象外です。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。
図の配置は、鉱工業前月比(左上)・鉱工業前年比(左下)・製造業前月比(右上)・製造業前年比(右下)です。

※5  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

どのグラフも2020年のコロナ禍による急落によって、それ以前の細かな動きが読み取り難くなっています。
でも、そんなことをあまり気にする必要はありません。
後記3.2項に示すように、本指標への反応は個々のグラフの動きでなく、複数のグラフの動きを総合的に捉えた方が、反応方向に納得できます。
総合的に捉えるとは、3.2項記載の全体判別式を使うということです。

そもそも複数のグラフの上下動を発表直後に一瞬で総合的に理解するのは至難の業です(そんなことはできません)。
それなら仕方がありません。
指標発表直後は鉱工業前月比の良し悪しに反応しがち、と覚えておきましょう。

さて、参考までに各項目毎の統計値を下表に示しておきます。

そして、各項目毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

上表「全体」とは、後記3.2項で示す全体判別式の解の統計値です。


2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各ローソク足を始値基準で下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

※6  2018年6月集計分以降は、後記3.1項結論に依り、反応分析対象外のため記載なし。

さて、対象期間における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧しておきます。

繰り返しになりますが、この集計に2018年6月集計分以降の発表時反応は含んでいません。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

上表「比較対象指標」名が赤太字の指標は、本指標への反応がアテにできない、と判定しています。

英国月次GDPとは、2018年7月発表以降、毎回同時発表されています。
問題は、英国月次GDPが本指標よりもチャートへの影響力が強いことです。
結果、本指標への反応分析は、2018年7月発表以前しか意味がありません


3.2  項目間影響力比較分析

分析対象は、鉱工業前月比・鉱工業前年比・製造業前月比・製造業前年比、の4指数でした。
それぞれの各判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。

さて、2018年5月集計分以降、本指標は毎回月次GDPと同時発表されています。
そして、本指標は、それ以前の発表においても貿易収支との同時発表が多いのです。

いま、2015年1月集計分以降・2018年5月集計分以前において、貿易収支との同時発表が行われなかったことは17回ありました。
この17回について、各指数の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

製造業前月比・前年比は、反応方向への寄与が小さいように見受けられます。
でも、本指標発表前後の反応方向に納得するためには、製造業前月比・前年比を無視すべきではありません。
というのも、いま全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕鉱工業前月比の差異+B✕鉱工業前年比の差異+C✕製造業前月比の差異+D✕製造業前年比の差異
    但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回修正結果(前回結果の修正が行われなかった場合には前回結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

直前10-1分足や直後11分足の方向を理解するためには、製造業前月比・前年比を無視すべきではないのです。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。

前節までの分析で、月次GDPとの同時発表が続く限り、本指標での取引を行うことはなくなりました。
それでも、いずれ本指標か月次GDPの発表日が変更される可能性はあります。
以下は、そのための分析です。


4.1  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上図からわかることは、いずれも相関係数R2値が低く、回帰式による予想はアテにできません

ただ、上中図は、第一象限(グラフの右上1/4)と第三象限(左下1/4)のドットが、第二象限(右下1/4)と第四象限(左上1/4)のドットよりも多いように見受けられます。
このことは、本指標がどれだけ反応するのかがわからなくても、どっちに反応しがちかを示しています。
それを定量的に表すため、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に纏めておきました。

上右図は、発表結果が市場予想を上回るか下回るかによって、直後1分足や直後11分足が過去73%素直に反応していたことを示しています。
そして、3.2項で示した全体判別式の係数を見る限り、この方向はほぼ鉱工業前月比の対予想乖離方向となっていたことがわかります。


4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は分布が意味を持ちません。
上右図は比例的で、直後1分足値幅に対し直後11分足値幅は平均的に19.8%伸び、その誤差の平均値は20%弱です。

そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

直後1分足と直後11分足の値幅方向の一致率は76%あるものの、直後1分足と直後11分足の始値は直前1分足終値で同一のため、それだけでは取引の根拠には不十分です。


4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は76%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは68%、値幅が同方向に伸びたことは51%でした。
指標発表から数分間は反応を伸ばすことが多い、と言えます。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。
よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率は90%
  • 方針適用時の分析的中率は66%、そのときの実取引勝率は66%
  • 1発表当たりの平均獲得pipsは+14.12pips、同平均取引時間は9分10秒

です。

本指標での取引を毎回行っていた2017年は、本指標への反応が大きかった時期です。
英国指標のうち、反応が大きい指標では「当たったら追撃、間違ったら損切」という方法さえ徹底すれば、そこそこ稼げたのです。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。


関連リンク

➡ 英国指標の目次に移動

改訂履歴

初版(2017年1月8日)
改訂(2017年5月8日)
3訂(2018年6月10日)
4訂(2020年10月22日)2020年8月集計分までを新書式反映

以上

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