英国景気指標「PMI速報値」発表前後のGBPJPY反応分析
本稿は、英国景気指標「PMI速報値※1」発表前後のGBPJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。
英国PMIは、2019年11月集計分から速報値が発表されるようになりました(総合値の速報値は同年12月集計分から)。
※1 PMIはPurchasing Manager’s Indexの略で、一般的に「購買担当者指数」と訳される。本指標名は「UK SERVICES PMI」だが、本稿では「速報値(Flash)」と呼称する。
Ⅰ. 指標要点
1.1 概要
発表機関 IHS Markit※2& CIPS※3 |
発表日時 当月20日過ぎの17:30(冬時間18:30:現地時間09:30) |
発表内容 英国の製造業とサービス業の購買担当幹部の景況感を集計※4(発表事例※5) |
反応傾向 |
補足説明
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※2 IHS Markit社は、ロンドンに本社を置く金融情報サービス会社。同社は、G20政府の他、フォーチュン・グローバル500企業のうち80%・米国上位銀行50行のうち49行・世界上位自動車メーカー10社全て、を顧客とする。
※3 CIPS(Chartered Institute of Procurement & Supply:チャータード調達供給研究所)は、英国企業の購買部門とサプライチェーン管理部門の専門家による団体で、米国におけるISMに相当する。
※4 調査対象者は、製造業とサービス業の各々の約400社の購買担当役職者か役員。調査は毎月10日過ぎから25日頃まで行われ、集計は月後半とされる。速報値は80~90%の回答に基づく。
※5 通例、発表画面最初の「Key data」に、「Flash UK Composite Output Index(英国総合PMI速報値)」「Flash UK Services Business Activity Index(英国サービス業PMI速報値)」「Flash UK Manufacturing PMI(英国製造業PMI速報値」が挙げられる。
1.2 結論
次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。
※6 上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。本表の見方についてはこちらを参照方。
Ⅱ. 分析対象
2.1 対象範囲
対象は、
- 製造業PMI速報値(以下「製造業PMI」と略記)
- サービス業PMI速報値(以下「サービス業PMI」と略記)
- 総合PMI速報値(以下「総合PMI」と略記)
です。
指標分析の対象範囲を下表に纏めておきます。
製造業PMIとサービス業PMIは2019年11月集計分から発表されていますが、総合PMIは同年12月集計分からの発表となっています。
その結果、上表のように分析回数は総合PMIより1回少なくなっています。
また、これら3指数は、毎回、後日改定値発表時に改定されています。
次に、反応分析の対象範囲を下表に纏めておきます。
分析母数がまだ少ないため、以下の各分析の一致率等はまだ誤差が大きい、と考察されます。
本稿はその点を踏まえて参考にして頂けると幸いです。
2.2 指標推移
対象期間における指標推移を下図に示します。
図の配置は、製造業PMI(左)・サービス業PMI(右上)・総合PMI(右下)です。
※6 このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。
上図赤線よりも左側は以前の月1回しか発表がなかった期間、赤線よりも右側は速報値が発表されるようになってからです。
そして、2020年のコロナ禍による急落によって、サービス業PMIと総合PMIのグラフは他の時期の市場予想や発表結果の上下関係が読み取れません。
けれども、そんなことを気にする必要はありません。
後記3.2項に示す通り、最も重要な指標発表直後の反応方向は製造業PMIの事後差異判別式の解の符号との一致率が高く、サービス業PMIや総合PMIとはそれほど高い一致率になっていないからです。
また、製造業PMIのグラフからは、市場予想が発表結果よりも1か月程度遅れて推移していることが読み取れます。
各項目毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。
上表の「全体」は、後記3.2項に示す全体判別式の解を表しています。
2.3 反応結果
下図は、2019年11月集計分以降の本指標発表前後4本足チャートの各始値基準ローソク足です。
図の配置は左から、直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足となっています。
改定値への反応を下表に纏めておきます。
指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は8.0pipsで、反応程度は小さい指標です。
Ⅲ. 指標分析
以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。
3.1 指標間影響力比較分析
3.2 項目間影響力比較分析
分析対象は製造業PMI、サービス業PMI、総合PMIでした。
それぞれの各判別式は定義通り、
事前差異判別式=市場予想ー前回改定値結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー前回改定値結果
です。
このとき、各指数の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。
製造業PMIの事後差異判別式の解の符号は、直後1分足値幅方向(跳ねた方向ではない)と91%の一致率です。
そして、サービス業PMIの実態差異判別式の解の符号は、直後11分足と73%の不一致率です。
また、総合PMIは、製造業PMIやサービス業PMIに比べると、方向一致率は中間的な値となっています。
次に、全体判別式を次のように立式します。
- 判別式=A✕製造業PMIの差違+B✕サービス業PMIの差異+C✕総合PMIの差異
但し、事前差異=市場予想ー前回改定値結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回改定値結果
上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。
例えば、先の判別式の形式と上表から、本指標の事前差異判別式は、
-1✕製造業PMIの(市場予想ー前回改定値結果)ー1✕サービス業PMIの(市場予想ー前回改定値結果)
となり、この式の解の符号と直前10-1分足は、過去64%の方向一致率となっています。
以上の通り、各判別式の係数を決めれば、速報値発表後の反応方向を説明しやすくなりました。
Ⅳ. 反応分析
以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。
4.1 指標一致性分析
各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。
まだデータが少なく、何気なく眺めても各判別式の解と反応の方向や程度はあまり関係ないように見えます。
けれども、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。
事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は91%、と極めて高くなっています。
がしかし、事後差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向は、55%まで下がっています。
そして、直後11分足との方向一致率は、実態差異判別式の解の符号と73%です。
これはどういうことでしょう。
例えば、製造業PMIの発表結果が市場予想を上回るか否かが事前に高い確度でわかっているなら、指標発表直前にその方向にポジションを取得しておくべきでしょう。
何しろ、製造業PMIの発表結果が市場予想を上回れば直後1分足は陽線、下回れば陰線、という関係は過去91%にも達しています。
次に、もし発表結果が予想通りになったら、急いで発表結果が前回改定値を上回ったか否かを確認しましょう。
ここで、3.2項の実態差異判別式を参照すると、直後11分足はサービス業PMI発表結果が前回改定値を上回れば陰線、下回れば陽線、となったことが73%に達しています。
ならば、指標発表直前から発表11分後までの方向は下表のように整理できます。
上表1行目と4行目は、指標発表から1分頃にいわゆるドテン(逆張りに転じる)で、このパターンはあまり稼げないものの、少なくとも損失を被らなくできます。
注目すべきは上表2行目と3行目で、ロングならロングのまま、ショートならショートのまま、直後11分足順跳幅が狙えます。
このときが稼ぎ時な訳です。
では、何が普通でないのか?
製造業PMIが市場予想を上回り、サービス業PMIが前回改定値を上回ったときが稼ぎ時ではありません。
製造業PMIが市場予想を上回り、サービス業PMIが前回改定値を下回ったときが稼ぎ時なのです。
あるいは、製造業PMIが市場予想を下回り、サービス業PMIが前回改定値を上回ったときが稼ぎ時です。
この結論は、まだ僅かに11回の英国PMI速報値発表時の指標一致性分析結果が根拠です。
その点には十分に注意しておきましょう。
4.2 反応一致性分析
各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。
まだデータが少ないものの、各ローソク足の方向と大きさは関係ないように見えます。
そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。
まだデータが少ないため、指標発表前は陰線率が高く、発表後は陽線率が高く、各ローソク足とも偏りが目立ちます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は64%しかなく、あまり高くありません。
4.3 伸長性分析
前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は64%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
下図をご覧ください。
直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは45%、値幅が同方向に伸びたことは45%でした。
初期反応方向に追撃すべきか逆張りすべきか、まだわかりません。
Ⅴ. 取引成績
まだ、取引実績はありません。
関連リンク
改訂履歴
初版(2020年10月11日) 新規
以上