独国景気指数「PMI速報値」発表前後のEURJPY反応分析

Ⅰ. 分析結論
1.1  概要

本稿「PMI速報値※1」の過去傾向に基づく取引方針は、有用さが実績によって裏付けられています。

本指標は指標発表1分前から発表後3・4分で稼ぐ指標です。
指標発表直後はヒゲを残してから再び反応を伸ばすことが多いため、追撃時に高値/安値掴みと拙速に判断しない方が良いでしょう(そのヒゲが5.5pips超ならば、実は追撃チャンスです)。
特に、製造業PMI速報値の発表結果が前回改定値や市場予想を両方とも上回っていたり下回っていたときは、多少の含損を抱えても、素直な方向に反応を伸ばすまで待っても良いでしょう。

発表機関
IHS Markit※2& BME(BMEは製造業PMIに寄与)
発表日時
当月下旬16:30(冬時間17:30=現地時間09:30)
発表内容
独国企業購買担当役員による景況感※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=主に「製造業PMI速報値」の対予想乖離
  • 反応程度=小さい(直後1分足値幅の過去平均値8.2pips
  • 反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率80%
  • 伸長特性=直後1分足順跳幅が小さいときは追撃に不向き
補足説明

  • 本稿分析結論の過去傾向に基づく取引方針の実績は、分析的中率77%取引勝率68%1発表あたり損益+16.18pips、と有用さが裏付けられているⅤ節参照)
  • 金融関連(要人発言を含む)予定時刻の発表時を除き、他の主要指標との同時発表が行われたことがない
  • 同月集計分が先に発表されるZEW企業景況感調査の良し悪しは気にしなくて良い

※1  PMIPurchasing Manager’s Indexの略で、一般的に「購買担当者指数」と訳される。本指標名は「IHS Markit Flash Germany PMI」。速報値(Flash)改定値があり、本稿では速報値のみを扱う。
※2  IHS Markit社は、ロンドンに本社を置く金融情報サービス会社。同社は、G20政府の他、フォーチュン・グローバル500企業のうち85%・米国上位銀行50行のうち49行・世界上位自動車メーカー10社全て、を顧客とする。
※3  調査対象者は、製造業部門・サービス業部門のそれぞれ約400社の購買担当役員か役職者。回答は、質問項目が前月に比べて「改善/同じ/悪化」の3択で行う。例えば、製造業部門への調査は、新規受注(30%)・生産(25%)・雇用(20%)・仕入れ先納期(15%)・在庫(10%)について回答し、それらの加重平均が季節調整前の指数となる。調査期間は月後半とされているが、速報値発表段階で回答の約85%が反映されているため、速報値と改定値の差は小さい。
※4  通例、発表画面最初の「Key findings」に、「PMI Composite Output Index総合指数)」「Services PMI Activity Indexサービス業指数)」「Manufacturing Output Index(製造業生産高指数)」「Manufacturing PMI製造業指数)」が挙げられる。総合指数は、サービス業指数と製造業生産高指数(製造業指数ではない)の加重平均。

1.2  結論
次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象

対象は、2015年1月集計分から2020年12月集計分までの独国PMI速報値における

  • 製造業PMI速報値」(以下「製造業指数」もしくは単に「製造業」と略記)
  • サービス業PMI速報値」(以下「サービス業指数」もしくは単に「サービス業」と略記)
  • 総合PMI速報値」(以下「総合指数」もしくは単に「総合」と略記)

の3指数です。

各指数の過去推移を下図に示します。
図の配置は、製造業指数(左)・サービス業指数(右上)・総合指数(右下)、となっています。
なお、製造業指数のグラフには、参考のため市場予想と発表結果の6回移動平均線軌跡も載せています。

※6  上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。発表結果統計値はグラフ記載範囲から計算。

製造業指数のグラフを見ると、市場予想が発表結果より1か月程度遅れて追従しているように見えます。

サービス業指数総合指数のグラフは、2020年のコロナ禍による急落によって、他の時期の市場予想や発表結果の上下関係が読み取れません。
けれども、そんなことを気にする必要はありません。
後記3.2項に示す通り、反応方向は製造業指数の事後差異判別式の解の符号との一致率が高くサービス業指数総合指数はそれほど高い一致率になっていないからです。

次に、対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)、です。

※7 上図における歯抜け箇所は、後記3.1項の指標間影響力比較分析結論による分析対象除外。

多くの主要国指標が2018年頃から反応が小さくなっていますが、本指標に関してはそんなことが起きていないように上図は見えます(実際には毎年の平均値幅は小さくなっている)。
また、直前10-1分足こそ10pipsあたりを利確/損切の目安にできますが、他のローソク足は伸びが頭打ちになるラインを読み取ることができません(直前10-1分足の10pips付近の目安も上図がそう見えるだけで、取引上の強い根拠となる訳じゃありません)。

次に、各始値基準ローソク足の統計値を下表に示します。

※8 上表では反応分析対象外の月を集計していない。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は8.2pipsで、意外なことに反応程度は小さい指標です。
たまに大きく反応したときの印象が強いためか、本指標への反応は過大評価されがちです。
例えば、過去順跳幅分布の表を見ると、反応が過去平均値の2倍超に達した割合は普通(年1・2回ぐらい)で、大きく反応したことが他の指標に比べて特に多い訳でもないのです。

全体的な分布は、順跳幅が平均値近くに多く分布し、値幅が平均値の0.5倍以下に多く分布しています。
これは、どのローソク足もヒゲを残しやすい傾向がある、ということです。


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

総合指数だけ、2015年8月集計分の市場予想が見当たりません。
本指標結果の修正とは、後日発表される改定値が本結果と異なる場合のことです。
以下3.1項は全発表事例に対し行い、それ以降は同結論を踏まえた事例90%の分析を行っています。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標との影響力比較結果を下表に示します。

7回の内訳は、スイス中銀政策金利発表2回・ECB総裁発言2回・ECB理事/委員発言2回・独国中銀総裁発言1回です。

結果は、本指標事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向が一致したことが5回で、本指標の方が上記金融関連行事よりもチャートへの影響力は強いことがわかります。
がしかし、先に示したように、本指標の直後1分足値幅平均値はたった8.2pipsです。
もし金融関連行事で何か影響が強い発言があり、それが本指標事後差異判別式の解の符号と不一致だったら、本指標事後差異判別式の解の符号と一致したときに稼いだpipsなんて一気に失ってしまいます。
よって、反応が極端に大きくなる恐れがある金融関連との同時発表時には、本指標での取引を行いません

恐れなければ、上表83%の方向一致率をアテにして取引しても良いでしょう。

3.2  項目間影響力比較分析

対象は、製造業指数・サービス業指数・総合指数、です。

それぞれの判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回改定値
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー前回改定値

です。
このとき、各判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

製造業指数は指標発表後の方向一致率が高く、サービス業指数や総合指数はどっちに反応するのかがわかりません。

次に、これら3指数による総合判別式を次のように立式します。

  • 判別式=A✕製造業指数の差異+B✕サービス業指数の差異+C✕総合指数の差異
    但し、事前差異=市場予想ー前回改定値、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回改定値

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と対応ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

以上の通り、各判別式の係数を上表のように決めると、指標発表後のローソク足方向がかなり説明できることがわかりました。

※9  例えば、先に示した全体判別式の形式と上表から、本指標全体の事後差異判別式は、3✕製造業指数の(発表結果ー市場予想)ー1✕サービス業指数の(発表結果ー市場予想)+1✕総合指数の(発表結果ー市場予想)、となる。そして、上表はこの式の解の符号と直後1分足が過去80%方向一致と読む。
※10  例えば、直後1分足は、製造業指数だけの事後差異判別式の解の符号と79%の方向一致率で、全体事後差異判別式の解の符号との方向一致率80%とほぼ同じになっている。けれども、製造業指数だけの事後差異判別式では、発表結果と市場予想が同値のときには解が0となり、符号判別ができない。そのため、上表のように全体判別式を複雑化している。

3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は、過去平均で1.6pipsです。

最近は以前に比べて各判別式の解がかなり大きくなっています。
その結果、事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の各ローソク足値幅も、最近は以前よりかなり小さくなっています。


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

4.1  指標一致性分析

判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図はコロナ禍の時期のドットがグラフ外にありますが、それどころじゃありません。
いずれも回帰分析するようなドット分布ではありません。

次に、上図から方向だけの情報を取り出します。

上図において、直後1分足は事後差異判別式の解の符号と80%の方向一致率となっており、本指標が非常に素直に反応することがわかります。

また、

  • 直前1分足方向は、事前差異判別式の解の符号と同じになりがち(場面発生頻度89%、期待的中率69%)
  • 直後1分足方向は、事前差異判別式の解の符号と逆になりがち(場面発生頻度89%、期待的中率67%)

といった取引上有益な情報も取り出せました。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の方向一致率を求めました。

結果、

  • 直後11分足方向は、事前差異判別式の解の絶対値が1.0超のとき、その解の符号と逆になりがち(場面発生頻度38%、期待的中率70%)

といった傾向も見出せました。

4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は回帰分析するようなドット分布ではありません。
上右図はほぼ比例的なドット分布となっているものの、回帰式を用いて直後1分足から直後11分足の大きさを求めるにはやや精度に欠けます。

次に、上図から方向だけの情報を取り出します。

直後1分足と直後11分足の方向一致率が75%である点を除けば、見るべき傾向がありません。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

結果、

  • 直後1分足方向は、直前10-1分足が7.4pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、その逆になりがち(場面発生頻度17%、期待的中率67%)

です。

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は75%でした。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは62%、値幅が同方向に伸びたことは52%でした。
この数字では初期反応方向への追撃に自信が持てません

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が5.5pips超に達したら、直ちに追撃です(場面発生頻度67%、期待的中率69%)。

次に値幅方向です。

直後1分足順跳幅が16.6pips超に達したら、直後1分足終値がついてから追撃です(場面発生頻度67%、期待的中率69%)。

結論、直後1分足順跳幅が大きいときは、直後11分足順跳幅・値幅とも直後1分足順跳幅・値幅を超えがちです。

4.4  その他分析結果

移動平均線分析過大反動分析同期/連動分析の結論は「いずれも本指標取引に役立たない」です。
そのため、それぞれ結果のみを以下に示しておきます。

4.4.1  移動平均分析結果

3.2項に示した通り、本指標発表直後の反応方向は製造業指数の良し悪しに素直なことがわかっています。
そこで、本分析は製造業指数に対して行います。

本分析は、Ⅱ節の製造業指数のグラフに記載した市場予想と発表結果の6回移動平均線に基づき、指標推移が上昇中/下降中を判断します。
そして「上昇中/下降中のときは発表前後の反応が陽線/陰線になりがち」という仮説の実績との一致率を求めます。
結果を下表に示します。

結果、前記仮説は棄却され、製造業指数が上昇/下降基調だからと言って、それを論拠に反応方向を決め打ちすべきでない、が結論です。

4.4.2  過大反動分析結果

本指標は、前々月と前月の発表結果が大きく乖離しても、当月の本指標は過大反動(市場予想を超えた反動)を起こしにくいことがわかっています。
がしかし、そのことを根拠に直前10-1分足や直後1分足を取引すべきではありません。

4.4.3  同期/連動分析結果

ZEW企業景況感調査は(以下「ZEW」と本項では記載)、本指標より先に同月集計分が発表されます。
同じ景気指標だし、気になる方も多いでしょう。

がしかし、ZEWの全体判別式(実態差異)の解の符号と、同月の本指標の直前10-1分足と直後1分足の方向一致率(下表「仮説一致率」参照)は、過去実績を調べた限り無関係です。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

成績は問題ありません。

※11  日付横に*印があるのは、3訂以降の結果。
※12 「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていない。「分析適用率」と「分析的中率」は、都度の指標発表前に取引方針を開示していたときだけの成績を集計。「取引成績」は、指標発表直前・直後におけるスプレッド拡大、スリップ多発、注文不可などの影響を考慮してもなお、本稿取引方針が有効か否かを判断するため、実取引における分析適用時勝率。ここに挙げた実績は全て別サイトにて該日付もしくはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。


関連リンク

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改訂履歴

3.1訂(2018年8月19日)
4訂(2020年7月24日) 新書式反映、2020年8月集計分までを反映
4.1訂(2021年1月18日) 事前差異・事後差異判別式を変更、2020年12月集計分までを反映

以上

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