独国景気指数「PMI速報値」発表前後のEURJPY反応分析

本稿は、独国景気指標「PMI速報値※1」発表前後のEURJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

発表機関
IHS Markit※2& BME(BMEは製造業PMIに寄与)
発表日時
当月下旬16:30(冬時間17:30)
発表内容
独国企業購買担当役員による景況感を集計※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=主に「製造業指数」の対予想乖離
  • 反応程度=小さい(直後1分足値幅の過去平均値8.2pips
  • 反応方向=かなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率77%
  • 伸長性=直後1分足順跳幅が小さいときは追撃に不向き

※1  PMIPurchasing Manager’s Indexの略で、一般的に「購買担当者指数」と訳される。本指標名は「IHS Markit Flash Germany PMI」。速報値(Flash)改定値があり、本稿では速報値のみを扱う。

※2 IHS Markit社は、ロンドンに本社を置く金融情報サービス会社。同社は、G20政府の他、フォーチュン・グローバル500企業のうち85%・米国上位銀行50行のうち49行・世界上位自動車メーカー10社全て、を顧客とする。

※3 調査対象者は、製造業部門・サービス業部門のそれぞれ約400社の購買担当役職者か役員。回答は、質問項目が前月に比べて「改善/同じ/悪化」の3択で行う。例えば、製造業部門への調査は、新規受注(30%)・生産(25%)・雇用(20%)・仕入れ先納期(15%)・在庫(10%)について回答し、それらの加重平均が季節調整前の指数となる。調査期間は月後半とされているが、速報値発表段階で回答の約85%が反映されているため、速報値と改定値の差は小さい。

※4  通例、発表画面最初の「Key findings」に、「PMI Composite Output Index総合指数)」「Services PMI Activity Indexサービス業指数)」「Manufacturing Output Index(製造業生産高指数)」「Manufacturing PMI製造業指数)」が挙げられる。総合指数は、サービス業指数と製造業生産高指数(製造業指数ではない)の加重平均。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
今次改訂以前は、分析的中率が高い割に実取引での勝率がいまひとつだったものの、pipsは稼げていた。
指標発表前はどちらに反応するかわからないものの、指標発表直後の反応方向は事前差異判別式の解の符号によって示唆されることが多い。追撃は難しく、指標発表直前から発表後3・4分で稼ぐ指標である。
Ⅱ. 分析対象
2015年1月集計分以降の「製造業PMI速報値」「サービス業PMI速報値」「総合PMI速報値」について、指標分析は68事例、反応分析は61事例が対象(傾向分析するには十分な事例数)。
指標推移は2017年以前が上昇基調、2018年以降が下降基調で、指標発表直後の反応方向は2017年以前は陽線が多く、2018年以前は陰線が多い。
金融関連との同時発表時は反応分析に含めていない
Ⅲ. 指標分析
指標発表後の反応方向は製造業PMI速報値の良し悪しだけに注目しても良く、サービス業PMI速報値と総合PMI速報値の影響は小さい。
Ⅳ. 反応分析
指標発表直後の反応方向は、事前差異判別式の解の絶対値が大きいほど、その解の符号と同方向になりがちという傾向が窺える。但し、直前10-1分足値幅が19.6pips超のときはその逆方向に反応しがち。
そして、初期反応の直後1分足順跳幅が大きいときは、直後11分足順跳幅・値幅とも直後1分足順跳幅・値幅を超えがちという傾向がある。
Ⅴ. 過去成績
今次改訂以前の分析適用率は79%、分析的中率は71%、実取引における分析適用時勝率は60%
1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

分析対象は、2015年1月集計分から2020年8月集計分までの独国PMI速報値における

  • 製造業PMI速報値」(以下「製造業指数」もしくは単に「製造業」と略記)
  • サービス業PMI速報値」(以下「サービス業指数」もしくは単に「サービス業」と略記)
  • 総合PMI速報値」(以下「総合指数」もしくは単に「総合」と略記)

の3指数です。

指標分析の対象範囲を下表に纏めておきます。

市場予想はほぼ毎回見つかり、発表結果はほぼ毎回改定されています。
後日、改訂値発表があるため、速報値自体が修正されることはありません(正確なIHS Markitの説明に依れば、仮に修正が行われるときは季節調整係数が修正された場合で、調査回答に基づく値の修正は行われないそうです)。

次に、反応分析の対象回数は、下表の通り61回に減少します。

反応分析は、後記3.1項に示す通り、金融関連発表との同時発表時の集計分を除いています。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。
図の配置は、製造業指数(左)・サービス業指数(右上)・総合指数(右下)となっています。
製造業指数のグラフには、参考のため、市場予想と発表結果の6回移動平均線軌跡も載せています。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

2020年のコロナ禍による急落によって、サービス業指数総合指数のグラフは他の時期の市場予想や発表結果の上下関係が読み取れません。
けれども、そんなことを気にする必要はありません。
後記3.2項に示す通り、反応方向は製造業指数の事後差異判別式の解の符号との一致率が高くサービス業指数総合指数はそれほど高い一致率になっていないからです。

製造業指数のグラフからは、市場予想が発表結果よりも1か月程度遅れて推移していることが読み取れます。

さて、参考までに各指数毎の統計値を下表に示しておきます。

そして、各項目毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

上表から、例えば

製造業指数の過去発表結果=前回結果(改定値)+0.1±1.6(△1.5~+1.7)

の範囲に70%弱が収まっています。


2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

右上の直後1分足の反応を見ると、2017年以前は陽線に、2018年以降は陰線に偏りが見られます。
これは前項の製造業指数のグラフが、2017年以前は上昇基調、2018年以降は下降基調だったことと関係している、と考えられます。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は8.2pipsで、反応程度は小さい指標です。
たまに大きく反応したときの印象が強いためか、本指標への反応は過大評価されがちです。
がしかし、過去順跳幅分布の表を見ると、反応が過去平均値の2倍超に達した割合は普通(年1回ぐらい)で、大きく反応したことが多い指標ではありません。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に示します。

7回の内訳は、スイス中銀政策金利発表2回・ECB総裁発言2回・ECB理事/委員発言2回・独国中銀総裁発言1回です。

結果は、本指標事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向が一致したことが5回で、本指標の方が上記金融関連行事よりもチャートへの影響力は強いことがわかります。
がしかし、2.3項に示したように、本指標の直後1分足値幅平均値はたった8.2pipsです。
もし金融関連行事で何か影響が強い発言があり、それが本指標事後差異判別式の解の符号と不一致だったら、本指標事後差異判別式の解の符号と一致したときに稼いだpipsなんて一気に失ってしまうでしょう。
よって、反応が極端に大きくなる恐れがある金融関連との同時発表時には、本指標での取引を行いません

恐れない人は、上表83%の方向一致率をアテにして取引しても良いでしょう。


3.2  項目間影響力比較分析

対象項目は、製造業指数・サービス業指数・総合指数の3指数でした。
まずは上記指数毎の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

製造業指数は、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が高いものの、サービス業指数や総合指数はどっちに反応するのかがわかりません。

次に、これら3指数による総合判別式を次のように立式します。

  • 判別式=A✕製造業指数の差異+B✕サービス業指数の差異+C✕総合指数の差異
    但し、事前差異=市場予想ー改定値、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー改定値

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

以上の通り、各判別式の係数を上表のように決めると、指標発表前のローソク足方向はわからないものの、指標発表後のローソク足方向はそこそこ解釈できることがわかりました。


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

最近は以前に比べて各判別式の解がかなり大きくなっています。
その結果、事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の各ローソク足値幅も、最近は以前よりかなり小さくなっています。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  移動平均線分析

製造業指数の移動平均線分析結果を下表に示します。

仮説一致率は46~51%で、実績は仮説を棄却しています。
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

なお、上表において「翌月から」の「判定回数」が52回となっています。
その理由を下表に整理しておきます。


4.2  過大反動分析

製造業指数の前月の実態差異判別式の解の絶対値の大きさ毎に過大反動分析を行った結果を下表に示します。

結果、本指標は過大反動を起こしにくいことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
そして、前月の実態差異判別式の解の絶対値がどうあれ、指標発表直後の反応方向はわかりません(上表「仮説一致率」参照)。
本指標は本分析の不適合事例です。

上表「全数」の「判定回数」が54回となっています。
その理由を下表に整理しておきます。


4.3  同期/連動分析
(1) ZEW企業景況感指数・Ifo企業景況指数の現況指数と本指標製造業指数の対比

それぞれ『欧州・独国景気指標「ZEW企業景況感調査(金融市場調査)」発表前後のEURJPY反応分析』・『独国景気指標「Ifo企業景況指数」発表前後のEURJPY反応分析』を参照願います。

結論を要約すると、本指標製造業指数の改善/悪化は、独国ZEW現況指数やIfo現況指数の改善/悪化より1か月先行しがちです(各76%67%)。
こうして他の景気指標の改善/悪化を1か月先行して示唆する点では本指標は有用です。
がしかし、他の指標発表前後の取引の参考にはあまり活用できません(前月のPMI速報値の良し悪しが、ZEWやIfo発表直後の反応方向を高い確率で示唆するとは言えません)。

さて、各指標の調査時期は、ZEWが前月下旬~当月上旬・PMIが当月後半・Ifoが当月上旬~中旬、です。
つまり、調査時期から言えば、ZEW→Ifo→PMIの順となり、PMIの改善/悪化が最も先行するのは不思議かも知れません。

その理由は、各指標の回答者属性と質問内容にある、と考察できます。
というのも、各指標回答者は、ZEWが主に金融・証券会社の財務関係者・製造業PMIが製造業購買担当役職者、Ifoが幅広い業種の企業経営幹部、です。
そして、質問は前月に比べ当月の状況が「良い/同じ/悪い」に答えます。
このとき、製造業の購買担当役職者だけは生産のためのリードタイム(1~3か月)を踏まえた回答になります。
よって、製造業PMIが最も先行性が高くなることは理に適っているのです。


(2) 鉱工業生産との対比

後日追記します。


4.4  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

但し、回帰分析を行う都合から、ここでは2020年3月~6月集計分のデータを除いています。
判別式の解の値が極端に大きすぎたそれらデータを含めない方が、通常時を表す回帰式となる、と考えたからです。

いずれの図も相関係数(R2値)が低く、回帰式は意味を持ちません。

次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。
ここからは2020年3月~6月集計分のデータも含めます。

上図において、直後1分足(緑)は、事前差異・事後差異判別式の解の符号との方向一致率が高くなっており、指標発表10分前から1分後までは素直に反応していることがわかります。
がしかし、実態差異判別式の解の符号との一致率は高くありません。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

経験的に信頼度が高い傾向は、階層の変化方向に応じて方向一致率が変化しているパターンです。
上図では、直前10-1分足を除く他のローソク足にそうした傾向が窺えます。

直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.0超のとき、その解の符号と不一致率が高まっています
指標発表後は、事前差異判別式の解の絶対値が大きいほど、その解の符号と直後1分足や直後11分足との方向一致率が高まる傾向が窺えます

結論、本指標の事前差異判別式の解の絶対値が大きいときは、4本足チャート各ローソク足の方向を示唆しがちです


4.5  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

各図の相関係数(R2値)を読むまでもなく相関が弱いことは一目瞭然です。

次に、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

直後1分足と直後11分足の方向一致率が73%である点を除けば、見るべき傾向がありません。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

経験的に信頼度が高い傾向は、階層の変化方向に応じて方向一致率が変化しているパターンです。
例えば、直前10-1分足値幅が19.6pips超のとき、直後1分足値幅方向はその逆方向になりがちです。


4.6  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は73%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは62%、値幅が同方向に伸びたことは51%でした。
この数字では初期反応方向への追撃を勧める訳にはいきません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が5.6pips超に達したら、直ちに追撃しても良さそうです。

次に値幅方向です。

直後1分足順跳幅が16.7pips超に達したら、直後1分足終値がついたら追撃しても良さそうです。

結論、直後1分足順跳幅が大きいときは、直後11分足順跳幅・値幅とも直後1分足順跳幅・値幅を超えがちです。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。
よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率は79%
  • 方針適用時の分析的中率は71%、そのときの実取引勝率は60%
  • 1発表当たりの平均獲得pipsは+12.88pips、同平均取引時間は6分48秒

です。

この結果は、分析的中率が高い割に実取引勝率が高いとは言えません
がしかし、1発表あたり平均獲得pipsを見る限り悪い成績ではありません。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示しています。


関連リンク

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改訂履歴

3.1訂(2018年8月19日)
4訂(2020年7月24日) 新書式反映、2020年8月集計分までを反映

以上

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