豪州収支指標「貿易収支」発表前後のAUDJPY反応分析

豪州の貿易関連統計値を下表に整理しておきます。

豪州は経済規模が小さく資源輸出国のイメージがあるものの、同国経済の輸出依存度※1 16.7%しかありません。
但し、主要貿易相手国は中国で、中国への貿易依存度9.8%にも達しっています(2018年)。

その豪中関係について、近年の主要トピックスを以下に纏めておきます。

2014年、両国トップが「包括的な戦略的パートナーシップ」を宣言
2015年、自由貿易協定(FTA)発効
2016年、中国による豪政治への干渉懸念が浮上
2018年、5G通信整備事業で中国企業の参入を禁止
2020年、豪州はWHOによる武漢コロナ発生源調査を求め、中国は豪製品への実質的輸入制限(関税引き上げや通関事務遅滞など)を開始

2016年を境に、両国はあまり良い関係とは言えなくなりました。
がしかし、後記2.2項のグラフに示す通り、2020年末時点で豪州の貿易収支が悪化した様子はまだ見受けられません。

以下本稿は、豪州収支指標「貿易収支※2」発表前後のAUDJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

※1 輸出依存度は輸出額を名目GDPで割った比率。貿易依存度は輸出入額を名目GDPで割った比率。
※2 ABS統計名は「International Trade in Goods and Services

Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS※3
発表日時
翌々月第1週木曜10:30(夏時間 09:30、現地時間11:30)
発表内容
商品・サービスの季節調整済貿易収支(発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=「貿易収支額」の対予想乖離
  • 反応程度=小さい(直後1分足値幅の過去平均値6.1pips
  • 反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率84%
  • 伸長特性=初期反応方向に短期追撃するが、発表後1分を過ぎたら逆張りの機会を窺うべき
補足説明

  • 豪州小売売上高と同時発表時には、本指標での取引を避けた方が良い
  • 直後1分足が指標結果の良し悪しに素直な一方、発表後11分後には直後1分足値幅を削ったり反転したことが多く、本指標の影響持続時間は1分強しかない

※3 オーストラリア政府統計局(ABS)は、オーストラリアの国家統計機関。ABSはウェブサイトを通じて統計と出版物を政府・商業・公共ユーザーに同時公開する(通常、キャンベラ時間午前11時30分)。
※4 通常、巻頭の「Key statistics(主要統計)」に「季節調整済貿易収支額」「輸出額」「輸入額」がテキスト形式で示される。それらは、3か月前の20日頃から前々月の20日頃の集計値が用いられている。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  対象範囲

本指標での分析対象指数は、

  • 貿易収支額(以下「貿易収支」と略記)

で、分析対象範囲は下表の通りです。

発表結果は翌月や翌々月に修正されがちで(83%)、上表には翌月に修正された回数を示しています。
翌々月の修正結果が反応方向に影響した兆しは見受けられません。

反応分析は、後記3.1項及び3.2項の結論に基づき本指標結果が反応方向に影響しない事例を除いて行います。
すると、分析対象期間の48回の発表事例のうち33回しか、分析を行う意味がありません。

2.2  指標推移

指標推移を下図に示します。
赤線より右側が本稿分析対象範囲です。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。MAは移動平均線を表す。

上図の赤線より右側の統計値を下表に示します。

そして、後記3.2項に示す判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

上表から、もし発表結果と市場予想の差が正規分布状なら、当月の貿易収支の発表結果は、市場予想+0.19±1.48[B AUD]の範囲に70%弱が収まる、と見込まれます。

2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各ローソク足の始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。
下図において歯抜けとなっている月は、反応分析対象外の月です。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は 6.1pipsで、反応は小さな指標です。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

豪州小売売上高と同時発表される場合を除けば、本指標での取引に問題ありません。

3.2  項目間影響力比較分析

分析対象が貿易収支だけなので、判別式は定義通り

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、修正が行われなかった場合は、修正結果の代わりに前回結果を用いる

となります。

3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

左上図において、2020年発表分が急激に大きくなっているのは、コロナ禍による急激な落ち込みと回復が原因です。
その一方、左下図において反応は小さくなっており、コロナ禍時期の本指標への反応が鈍くなっていることがわかります。

ともあれ、事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は、過去平均で5.1pipsです。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。

4.1  移動平均線分析

2.2項の指標推移グラフを参照願います。
同グラフには、市場予想と発表結果の3回移動平均線が描かれています。

いま、

  • 発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線より上ならば、その翌月の発表結果は市場予想や前回発表結果を上回る
  • 発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線より下ならば、その翌月の発表結果は市場予想や前回発表結果を下回る

と仮定します。

この仮定の正否を下表に纏めておきます。

上表は、前月の移動平均線の上下関係がどうあれ(指標推移が上昇基調であれ下降基調であれ)、当月の発表結果が市場予想や前回結果を上回るか下回るかはわからない、が結論です。

ところが、次に下表をご覧ください。

前月の移動平均線の上下関係(指標推移が上昇基調か下降基調か)は、当月の指標発表直後の反応方向と相関が高いことがわかります。
この現象は、貿易収支が好調/不調の時期には豪州経済全体が好調/不調と見なされている場合が多いことが原因、と推察されます。

なお、上表「翌月から」の「直後1分足」は、判定回数が30回となっています。
下表にその理由を纏めておきます。

4.2  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図はいずれも相関係数が小さく、回帰式で判別式の解から反応程度を予想することはできないことがわかります。

次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に纏めておきます。

事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は84%の一致率で、反応方向は発表結果の市場予想との乖離方向に非常に素直です。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

結果、事前差異判別式の解の絶対値が大きいときは、その解の符号が直前10-1分足や直前1分足の方向を示唆していることがわかりました。

4.3  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は分布が意味を持ちません。
上右図は比例的ですが、近似式の係数が1を下回っており、直後1分足値幅に対し直後11分足値幅は平均的に2%強小さく、指標発表後の反応が伸び悩む傾向が窺えます。

そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

2.2項に示した通り、分析対象期間の貿易収支が黒字で推移しているせいか、直後1分足は陽線率が74%と高くなっています。
しかしながら、直後1分足と直後11分足の値幅方向の一致率は65%しかなく、この数字は主要国主要指標で最も小さい部類に属します。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

結果、直前10-1分足値幅が大きくなると、直前1分足はその逆方向になりがちで、直後1分足と直後11分足はそれと同方向になりがち、です。

4.4  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は65%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは61%、値幅が同方向に伸びたことは27%でした。
発表から1分を過ぎたら逆張りすべきです。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

上図から、直後1分足が指標結果の良し悪しに素直な一方、発表後11分後には直後1分足値幅を削ったり反転したことが多いことがわかります。
本指標の影響持続時間は1分強しかない、ということでしょう。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。
よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示している。


関連リンク

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改訂履歴

1.1訂(2018年12月31日)
改訂(2020年12月13日) 新書式反映、2020年10月集計分までを反映

以上

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