豪州実態指標「住宅ローン件数」発表前後のAUDJPY反応分析

本指標※1は、発表前後の反応が小さいためか、あまり注目されていません(本指標を紹介するFX会社も少ないようです)。がしかし、指標結果の良し悪しには非常に素直に反応し反応持続時間も長いため、結果的にそこそこのpipsが獲れる場合があります。だから、他の指標での取引に慣れているなら、予めゆっくりした取引を意識して指標発表に臨むべきでしょう。

指標発表後の反応方向は、発表結果の市場予想との乖離方向ではなく、前回結果(の修正結果)との乖離方向に素直になりがちです。

※1 本指標は、ABSの統計名「Lending indicators貸出指標)」に含まれる項目で、「住宅ローン件数」という名称の発表はない。この名称は、かつてABSホームページの「Housing住宅)」カテゴリーに属してときの名残りと思われる。現在は「Finance金融)」カテゴリーに属し、その「Lending indicators」発表時に「住宅ローン件数」は判明する。

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS
発表日時
翌々月上旬10:30(夏時間09:30=現地時間11:30)
発表内容
金融機関による住宅購入者への貸出承認(契約成立)件数※2発表事例
反応傾向

  • 注目内容=「自身居住用住宅ローン件数前月比」と「投資用住宅ローン件数」の対前回乖離
  • 反応程度=かなり小さい(直後11分足値幅の過去平均値4.3pips
  • 反応方向=非常に素直(実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率89%
  • 伸長特性=直後1分足順跳幅が5.4pips超のとき、直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が伸びたことは80%
補足説明

  • 他の指標との同時発表が行われる場合は、本指標での取引を避けた方が良い
  • 単純に直後1分足値幅方向に追撃すると直後11分足終値で利確できたことは、過去47%しかないことに注意

※2 金融機関には、銀行やノンバンク信用機関からの提供データに基づく。「自身居住用住宅ローン件数前月比」は、再販用や賃貸用を除いた自宅の住宅ローンのみが集計対象。それらは「投資用住宅ローン件数」で集計される。集計値は季節調整済。

※3 発表画面では、「Households個人向け融資)」と「Businesses事業向け融資)」での契約金額契約件数変化を発表している。そして、FXでは「Housing住宅ローン)」の「Owner occupier自身での居住目的)」と「Investor投資目的) 」の対前月件数変化が本指標「住宅ローン件数」に相当する。発表画面における注目すべき「Owner occupier自身居住用住宅ローン件数前月比)」と「Investor投資用住宅ローン件数)」を下図̻に示す。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

※4  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象

本稿における分析対象指標は、

  • 自身居住用住宅ローン件数前月比(以下「自宅用」と略記)」
  • 投資用住宅ローン件数前月比(以下「投資用」と略記)」

のふたつです。

両指標の過去の推移を下図に示します。下図の部分が本稿の分析対象期間で、「投資用」の図には市場予想がありません。

※5  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。

次に、対象期間における4本足チャート各ローソク足の始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

※6 上図における歯抜けとなっている月は、後記3.1項の指標間影響力比較分析結論による反応分析対象。


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

先述の通り「投資用」には、市場予想がほぼ毎月ありません。そして、本指標の発表結果はしばしば翌月発表時に修正されています。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

上表から、他の指標との同時発表が行われる場合は、本指標での取引を避けた方が良さそうです。

但し、金融関連発表との同時発表時には、本指標結果に素直に反応しています。がしかし、金融関連発表時には内容次第で極めて大きく反応しかねません。一方、後記Ⅳ節に示す通り、本指標への反応は非常に小さいことがわかっています。僅かなpipsのために大きなリスクは冒せません。よって、本指標発表が金融関連発表と同時に行わる場合、本指標で取引すべきではありません。

3.2  項目間影響力分析

分析指標は「自宅用」と「投資用」のふたつです。
それぞれの判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。
このとき、両指標の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

「投資用」には市場予想がないため、事前差異判別式と事後差異判別式はありません。

次に、全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕「自宅用」の差異+B✕「投資用」の差異
    但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回修正結果(前回結果の修正が行われなかった場合には前回結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、先の全体判別式の形式と上表から、本指標の実態差異判別式は、

1✕「自宅用」の(発表結果ー前回修正結果)ー1✕「投資用」の(発表結果ー前回修正結果)

となり、この式の解の符号と直後11分足は、過去89%の方向一致率となっています。つまり、以上の通り各判別式の係数を決めれば、本指標発表後の反応方向を説明しやすいのです。

また、主要国主要指標のほとんどは、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が最も高くなりがちです。がしかし、本指標では、実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率が最も高いことがわかります。

分析対象期間における各判別式の解の統計値を下表に纏めておきます。


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

これら21回の発表時の4本足チャート各ローソク足の反応程度統計値は下表の通りです。

直後1分足値幅平均は2.8pipsしかなく、反応程度は非常に小さい指標です。一方、3.2項結果から指標結果の良し悪しに素直に反応し、上表から直後1分足の1足内反転が起きていません。よって、本指標は反応程度こそ小さいものの、チャートには影響を与えていた、と認められます

4.1  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図はいずれも相関係数が小さく、回帰式で判別式の解から反応程度を予想することはできません。

次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に纏めておきます。

実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向は89%の一致率で、反応方向は発表結果と前回結果(その修正結果)の乖離方向に非常に素直です。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません。そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

結果、事前差異判別式の解の絶対値が大きいときは、その解の符号が直前10-1分足の方向を示唆していることがわかりました。

4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は分布が意味を持ちません。上右図は比例的ですが相関係数は小さく、直後1分足値幅を見て直後11分足値幅を予想するには精度が低そうです。

そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

指標発表後は、指標発表前と逆方向に反応しがちです。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります。対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

結果、直前10-1分足値幅が2.6pips(過去平均値)以下のとき、直後11分足は直前10-1分足値幅方向の逆になりがちです。

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は72%です。がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは57%、値幅が同方向に伸びたことは47%でした。これらの数字では、追撃すべきか逆張りすべきか判断できません。

さて、指標発表後の反応が一方向に伸びるときには、最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れる場合があることに注目します。そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に、値幅方向です。

上図から、直後1分足順跳幅が5.4pips超のとき、直後1分足順跳幅を超えて直後11分足順跳幅が反応を伸ばしていることがわかります。その他の場合は、指標発表後の反応を見てからの追撃は勧められません。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

下表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。よって、下表は事前に取引方針を開示したときの成績のみを集計しています。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示している。


関連リンク

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改訂履歴

1.1訂(2018年12月27日)
改訂(2020年12月19日) 新書式反映、2020年10月集計分までを反映

以上

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