豪州「雇用統計」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州「雇用統計※1発表前後のAUDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS
発表日時
原則、翌月2週目木曜10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
雇用者数や失業者数の対前月変化や、失業率や労働参加率などの雇用諸表(発表事例※2
反応傾向

  • 注目内容=「雇用者数増減」「失業率」「労働参加率」の3指数の対予想乖離
  • 反応程度=大きい(直後1分足値幅の過去平均値22.2pips
  • 反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率80%
  • 伸長性=直後1分足順跳幅よりも直後11分足順跳幅が同方向に反応を伸ばす兆候は23%の事例しかなく、追撃で安心・安定して稼ぐことは難しい

※1  ABSの公称統計名は「Labour Force」。がしかし、本稿では馴染のある「雇用統計」表記に統一する。

※2  通例、ABS発表画面巻頭の「KEY FIGURES(重要値)」の表において、 「Employed people(雇用者数)」の「前月 to 当月」の項、「Unemployment rate(失業率)」の「当月」の項、「Participation rate(労働参加率)」の「当月」の項、を参照する。但し「雇用者数」は対前月増減を表しており、本稿では「雇用者数増減」と意訳表記する。なお、発表値は前々月下旬から前月中旬末頃の集計結果に基づく季節調整済数値。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
下記成績に示す通り、本稿分析に基づく取引方針は有用。指標発表直後の反応方向を示唆する兆しが多々ある。初期反応こそ大きいものの(直後1分足順跳幅の過去平均値29.5pips)、その後も反応を伸ばし続けるとは言えない(直後11分足順跳幅が直後1分足順跳幅を超えて同方向に反応を伸ばしたことは57%)。大きく反応し、且つ、指標発表後の1足内反転率が高い指標のため、他の指標での取引のときよりも利確や損切を少し大きめに目論んで取引に臨む方が良い。
Ⅱ. 分析対象
本稿分析は、「失業率」「雇用者数増減」「労働参加率」について、2015年1月集計分以降の64事例について実施。
Ⅲ. 指標分析
同時発表指標ほぼ無く、あっても気にする必要はない。「失業率」は指標発表前後を通して影響、加えて指標発表前は「労働参加率」、指標発表直後は「雇用者数増減」が影響。指標発表直後の反応方向への寄与は、失業率の0.1%変化が雇用者数の1.5万人の増減に統計的等価値。
Ⅳ. 反応分析
移動平均線分析過大反動分析同期/連動分析指標一致性分析反応一致性分析のいずれも、反応方向を示唆する現象が見出せる。多くの兆しが見出せる結果、互いに矛盾する場合もあり、複数の兆しがある場合には過去の的中率が最も高い現象を参考に取引に臨むことになる。伸長性分析の結果、指標発表直後こそ大きく跳ねても、その後も同方向にどんどん反応を伸ばすという傾向は見出せない。
Ⅴ. 過去成績
分析適用率は60%、分析的中率は80%、実取引における分析適用時勝率は75%
1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

※3  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

分析対象は、2015年1月集計分から2020年4月集計分までの豪州雇用統計における

  • 雇用者数増減
  • 失業率
  • 労働参加率

の3項目です。

本指標の発表では、過去にしばしば前月の発表値修正が行われているものの、あまり気にする必要はありません。

一方、反応分析の対象回数も上表と同じです。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。
図の配置は、雇用者数増減(左下)・失業率(右上)・労働参加率(右下)です。

※4  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

雇用者数増減のグラフは、個々の値が読み取れるようなグラフになっていません。
がしかし、どうせ分析は数式処理した結果を示すので、無理に値を読み取る必要はありません。
そんなことより雇用者数増減のグラフからは、コロナ禍以前の市場予想の上下分布に比べて発表結果(修正結果)の上下分布が大きいことと市場予想の移動平均線よりも発表結果のそれが上になる時期が長いこと、を読み取ることが大事です。

また、失業率労働参加率のグラフからは、発表結果(修正結果)の変化より市場予想の変化が少し遅れていること、に注目しましょう。

このように各項目の推移にいくつかの傾向がある以上、① その傾向を抽出できれば発表結果が市場予想を上回りやすくなるのか否かと、② その傾向を見込んで取引すれば勝ちやすいのか否かは、後記詳述します。
①の結果だけでは何のための指標分析か不思議で、①の結果が裏付けになっている②の結果があってこそ、と思う方とは気が合うのでしょう。

さて、参考までに各項目毎の統計値を下表に示しておきます。

そして、各項目毎の判別式の解の統計値を下表に示しておきます。

上表最後の行の「総合」は、後記3.2項に示す判別式の解の統計値です。


2.3  反応結果

分析対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は22.2pipsで、本指標は反応が大きいことがわかります。

そして、直後1分足と直後11分足の順跳幅平均値が2倍超となる頻度は10%に達していません。
直後1分足と直後11分足の順跳幅平均値は、0.5倍超から1.5倍以下に70%が集中しています。
この範囲付近のレジスタンスやサポートを取引前に確認しておくのが準備作業です。

また、指標発表後の1足内反転率は10%を超えているものの、この数字は本指標取引の実感よりも小さい気がします。
定量的論拠を示せない話で恐縮ながら、本指標は発表直後に逆跳幅を形成することが多い、という感触を持っています。
経験的には、本指標に限らず発表直後の逆跳幅からの戻りは、反転に1秒以内、もしくは、5~15秒を要することが多いものです。
この話は参考まで。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1 指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

かつては現在より中国指標の影響がAUDに大きく影響したような気がします。
とは言え、今でも中国指標の影響はあるので、分析対象期間中の中国指標との同時発表時の指標間影響力比較分析を行っています。
結果、上表の通り、本指標>中国物価指数、でした。

但し、気がかりは残っています。
それは、本分析が本指標より30~90分遅れて中国指標が発表されるときの中国指標の影響を踏まえていない点です。

ともあれ、本項分析結論は「本指標のチャートへの影響力は強く、本指標での取引にあたって同時発表指標を気にする必要がないです。


3.2 項目間影響力比較分析

対象項目は、雇用者数増減・失業率・労働参加率、でした。
それらに加えに、RBA(豪中銀)金融政策発表時の声明で言及されることがある常勤雇用者数増減についても本分析を行います。

なお、常勤雇用者数とは正社員のことではなく「勤務時間が週35時間以上の就業者」と定義されています。

まず先に、3.1項結論に基づく64回の過去事例について、各項目毎の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

常勤雇用者数増減は、市場予想が見当たらない事例が多く、実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率のみ算出しています。

結果、雇用者数増減失業率も、指標発表前の反応方向への影響力は弱く、取引参加者は市場予想が当たらないことを見越しているようです。
一方、発表結果が市場予想を上回ったか下回ったかは、反応方向に影響を及ぼしていることがわかります。
そして、雇用者数増減が指標発表後早期にチャートへの影響力を失うのに対し、失業率は影響がしばらく持続していることがわかります。

以上のことから、常勤雇用者数増減を除いた3項目の判別式を次のように立式します。

判別式=A✕雇用者数増減[万人]の差異+B✕失業率[%]の差異+C✕労働参加率[%]の差異
但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回結果(前回結果の修正が行われたときは修正結果)

判別式は単位系が異なる項の一次式のため、各項代入数値の単位には注意が必要です。
雇用者数増減は[万人]が単位なので、例えば100人ならば0.01という数値にして上式に代入します。

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

上表のように各判別式の各項目係数を決めると、指標発表前後の反応が素直に記述できることがわかりました。
なるべく複数の項が係数を持つようにしたいものの、実態差異(判別式)だけはAとCをどう選んでも直後11分足との方向一致率が一気に悪化するため、係数Bだけにしています。
なるべく複数の項が係数を持つようにしたいのは、失業率の判別式の解が0となる場合に備えてです。

なお、上表「事後差異(判別式)」の係数から、本指標発表直後の反応は、0.1%の失業率悪化が雇用者数の1.5万人減に相当する、と見なせます(あくまで反応方向からの解釈で、実際の失業率と雇用者数の関係ではありません)。


3.3 利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で9.0pipsです。
但し、毎年の変化を見ると6.2~12.0pipsとばらつきが大きく、予想乖離幅の大きさで反応程度を見込むことはできません。


Ⅳ. 反応分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  移動平均線分析

雇用者数増減の移動平均線分析の結果を下表に示します。

結果、仮説一致率は64~69%で、実績は仮説を支持しています。
すなわち、雇用者数増減の発表結果6回移動平均線が市場予想6回移動平均線よりも上になった翌々月からは直後1分足が陽線、下になった翌々月からは陰線の反応を期待した方が有利です(場面発生頻度88%、期待的中率67~69%)。
結論、本指標は本分析の適合事例です。

※5  上表「翌月から」の「判定回数」が58回となっているのは、分析対象事例64回の最初の6回で移動平均値が確定するため。


4.2  過大反動分析

雇用者数増減の実態差異判別式の解の絶対値の大きさ毎に過大反動分析を行った結果を下表に示します。

結果、前月実態差異判別式の解の絶対値が5.2超のとき、過大反動は起きにくいことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
このとき過大反動が起きると見込んでいたら、指標発表直後1分足は25%しか見込み通りの方向になっていません(上表「仮説一致率」参照)。
ならば逆に、前月実態差異判別式の解の絶対値が5.2超のとき過大反動は起きない、と見込んでおけば良いだけです(場面発生頻度13%、期待的中率75%)。
よって、本事例は本分析の不適有効事例です。

なお、過大反動が起きないと見込む方向とは、前月実態差異判別式の解の符号と同方向です。

※6  上表「全数」の「判定回数」が63回となっているのは、分析対象事例64回の最初の1回で前月実態差異判別式の解の符号が確定するため。


4.3  同期/連動分析

分析は『豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析』で行ったので、そちらを参照願います。
その結論は以下の通りです。

求人広告数前月比が±2.1%超の大きな変化があった翌月は、雇用者数増減が前月の求人広告数前月比の増減と同方向になりがちでした(方向一致率79%)。
そして、本指標発表直後1分足は、前月の求人広告数前月比の増減方向と71%の事例で一致していました。
すなわち、雇用者数増減はANZ求人広告数前月比の遅行指標であり、且つ、ANZ求人広告数前月比は本指標取引に有用な示唆を単月毎に与えます

なお、ANZ求人広告数前月比が±2.1%を超えたことは、過去22%発生していました。


4.4  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

いずれも相関係数(R2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません

ただ、上中図は回帰線がドット分布とずれているように見えます。
これは、2020年4月の事後差異判別式の解が△59.43と、ひとつだけ大きく図外にずれて見えていないからです。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に求めます。

上左図から、分析対象期間の事後差異判別式の解の符号はプラス率が70%と、偏りが目立ちます。
また上右図からは、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は一致率が高く、発表結果が市場予想を上回るか否かに素直に反応することがわかります。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

一見して、事前差異判別式の解の絶対値が大きいほど、直後1分足や直後11分足の値幅方向は、事前差異判別式の解の符号と同方向になりがち(前回結果に対し市場予想の乖離が大きいときは、その乖離方向が指標発表後の反応方向になりがち)です。


4.5  反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図・上中図は相関係数(R2値)が低く、回帰分析の近似式によって反応の方向と程度を予想することはできません
上右図からは、直後1分足から直後11分足の値幅をそこそこ予想できるようです。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前1分足は陰線率が76%、直後1分足は陽線率が72%、直後11分足は陽線率が67%と偏りが目立ちます
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は86%となっています。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象の64回の事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

一見して、直前10-1分足値幅が大きいとき、直後1分足や直後11分足の値幅方向が直前10-1分足値幅方向と同方向になりがち(直前10-1分足値幅が大きいとき、その方向は指標発表後の反応方向を示唆しがち)です。


4.6  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は86%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは57%、値幅が同方向に伸びたことも57%でした。
手放しで初期反応方向への追撃を勧められる数字ではありません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

上図から、直後1分足順跳幅の大きさでは、その後に反応を伸ばすか否かがよくわかりません
但し、直後1分足順跳幅が40pipsを超えたとき(場面発生頻度23%)、直後11分足順跳幅がそれより反応を伸ばしがちでした(期待的中率67%)。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。
そして当然のことながら、分析時点よりも過去に遡った分析的中率には意味がありません(最新の取引方針に示した期待的中率通りになってしまいます)。

また「分析適用率」と「分析的中率」は、都度の指標発表前に取引方針を開示していたときだけの成績を集計しています。
取引成績」は、指標発表直前・直後におけるスプレッド拡大、スリップ多発、注文不可などの影響を考慮してもなお、本稿取引方針が有効か否かを判断するため、実取引における分析適用時勝率です。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率は60%
  • 方針適用時の分析的中率は80%、そのときの実取引勝率は75%
  • 1発表当たりの平均獲得pips11.2、同平均取引時間7分0秒

です。

結論、本稿分析は(少なくとも以前の分析までなら)有用です。

※7  実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。ここに挙げた実績は全て、別サイトの該日付ないしはその前日の投稿で事前に取引方針を開示しています。


関連リンク

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改訂履歴

2訂(2019年1月8日)
3訂(2020年6月17日) 新書式反映、2020年4月集計分までを反映
3.1訂(2020年7月1日) 同期連動分析追加

以上

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