豪州「雇用統計」発表前後のAUDJPY反応分析

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要

本稿「雇用統計※1」の過去傾向に基づく取引方針は、有用さが実績によって裏付けられています。

大きく稼ぐには「指標発表時」のポジション次第ですが、着実に稼ぐには直前10-1分足と追撃・再追撃の取引方針を参照すべきでしょう。
追撃・再追撃にあたっては逆張りを避け、常に順張りの機会を窺う視点で取引に臨む方が良いでしょう
また、取引前には予め、直後11分足順跳幅が到達しそうなレジスタンスやサポート(過去平均値の0.5~1.5倍の位置)を確認しておくことを勧めます。

発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS
発表日時
原則、翌月2週目木曜10:30(夏時間は09:30=現地時間11:30)
発表内容
雇用者数や失業者数の対前月変化や、失業率や労働参加率などの雇用諸表(発表事例※2
反応傾向

  • 注目内容=「雇用者数増減」「失業率」「労働参加率」の総合的な対予想乖離
  • 反応程度=大きい(直後1分足値幅の過去平均値20.4pips
  • 反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率81%
  • 伸長特性=直後11分足は直後1分足よりも値幅を同方向に伸ばしがち(期待的中率67%
補足説明

  • 本稿分析結論の過去傾向に基づく取引方針の実績は、分析的中率75%取引勝率82%1発表あたり損益+18.23pips、と有用さが裏付けられているⅤ節参照)
  • 豪州新車販売台数との同時発表時を除き、他の指標との同時発表は気にする必要がない3.1項参照)
  • 直後1分足の1足内反転率が他の指標に比べて高い指標である

※1  ABSの公称統計名は「Labour Force」。がしかし、本稿では馴染のある「雇用統計」表記に統一する。
※2  通例、ABS発表画面巻頭の「KEY FIGURES(重要値)」の表において、 「Employed people(雇用者数)」の「前月 to 当月」の項、「Unemployment rate(失業率)」の「当月」の項、「Participation rate(労働参加率)」の「当月」の項、を参照する。但し「雇用者数」は対前月増減を表しており、本稿では「雇用者数増減」と意訳表記する。なお、発表値は前々月下旬から前月中旬末頃の集計結果に基づく季節調整済数値。

1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※3  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象

分析対象は、2015年1月集計分から2020年11月集計分までの豪州雇用統計における

  • 雇用者数増減
  • 失業率
  • 労働参加率

の3指数と、それらへの反応です。

まず、対象指数の過去推移を下図に示します。
図の配置は、雇用者数増減(左下)・失業率(右上)・労働参加率(右下)です。

※4  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。
※5 発表結果統計値は、グラフ上全プロットから計算。

次に、指標発表前後の4本足チャート各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

※6 後記3.1項記載の豪州新車販売台数との同時発表は、2015年3月集計分・2015年9月集計分・2016年6月集計分・2016年8月集計分。これら4回の反応は、下表には集計していない。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は20.4pipsで、本指標は反応が大きいことがわかります。

そして、直後1分足と直後11分足の順跳幅平均値が2倍超となる頻度は10%に達しておらず、1.5倍以下に80%超が集中しています。
つまり、この範囲のレジスタンスやサポートを取引前に予め確認しておくことが、本指標のように大きく反応する指標で取引するときの準備作業です。

指標発表後の1足内反転率が他の指標に比べて高い指標であり、不安ならば直後追撃は発表後10秒ぐらい待ってから行う方が良さそうです。


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

※7 分析対象期間の最後の発表結果の修正有無は次発表まで不明。そのため、%算出の分母は(指標発表回数ー1)となる。

雇用者数増減失業率労働参加率には市場予想が毎回見つかります。
常勤雇用者数は、RBA声明で言及されることが多いものの、市場予想は見当たりません。
そして、雇用者数増減は翌月発表時に修正がしばしば行われています。

3.1 指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

実績から言えば、豪州新車販売台数との同時発表時には、指標発表直後1分足の反応方向が素直だと言えません。
今後、同時発表回数が増えれば、本指標への反応の方向一致率が十分高くなっていく、と推察しています。
が、それにはまだかなり年数がかかりそうです。

よって、新車販売台数との同時発表時以外、本指標のチャートへの影響力は強く、他の指標との同時発表をほぼ気にする必要がない、が結論です。

3.2 項目間影響力比較分析

対象項目は、雇用者数増減・失業率・労働参加率、でした。
それらに加えに、RBA声明で言及されることが多い常勤雇用者数増減についても本分析を行います。

なお、常勤雇用者数とは正社員のことではなく「勤務時間が週35時間以上の就業者」と定義されています。

それぞれの判別式は定義通り、

事前差異判別式=市場予想ー前回結果
事後差異判別式=発表結果ー市場予想
実態差異判別式=発表結果ー修正結果
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。
このとき、各判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

結果、雇用者数増減失業率も、指標発表前の反応方向への影響力は弱く、取引参加者は市場予想が当たらないことを見越しているようです。
一方、発表結果が市場予想を上回ったか下回ったかは、反応方向に影響を及ぼしていることがわかります。
そして、雇用者数増減が指標発表後早期にチャートへの影響力を失うのに対し、失業率は影響がしばらく持続していることがわかります。

常勤雇用者数増減は、市場予想がないため事前差異・事後差異判別式の解がありません。
そして、実態差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は56%で、反応方向に影響を与えていません。

以上のことから、常勤雇用者数増減を除いた全体判別式を次のように立式します。

  • 全体判別式=A✕「雇用者数増減」の差異[万人]+B✕「失業率」の差異[%]+C✕「労働参加率」の差異[%]
    但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回修正結果(前回結果の修正が行われなかった場合には前回結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

判別式は単位系が異なる項の一次式のため、各項代入数値の単位には注意が必要です。
雇用者数増減は[万人]が単位なので、例えば100人ならば0.01という数値にして上式に代入します。

すると、上表「事後差異(判別式)」の係数から、本指標発表直後の反応は、0.1%の失業率悪化/改善が雇用者数の1.5万人減/増に相当する、と見なせます(あくまで反応方向からの解釈で、実際の失業率と雇用者数の関係ではありません)。

なお、各判別式の解の統計値は下表の通りです。

3.3 利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で8.1pipsです。

下左図の反応程度の期間推移を見ると、2015年発表時こそ反応が大きかったものの、その後の反応はほぼ安定しています。


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

4.1  同期/連動分析

詳細な定量分析は『豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析』で行ったので、そちらを参照願います。
その結論は以下の通りです。

すなわち、

『ANZ求人広告件数前月比2%超の大きな変化があった翌月の雇用者数増減の方向(前月発表結果を上回るか下回るか)は、期待的中率72%で示唆される。但し、そのことだけを根拠に本指標で取引することは勧められない。3.2項に示した通り、本指標発表後の反応方向は、雇用者数増減よりも失業率の影響が強いため。ANZ求人広告件数雇用者数増減に対する先行性の意義は、本指標取引における不確かさを事前にひとつ減らすことに留まる

です。

次項に示す通り、本指標発表後の反応方向は、前回結果(あるいはその修正結果)との大小に強く影響します。
ANZ求人広告件数前月比が2%超の変化があった翌月の事前の予習は、失業率が前月と変化しそうか否かに注力しましょう

4.2  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図とも、図外にもドットがあり(コロナ禍の時期)、回帰線とドット分布の傾きが違って見えます。
それにしても、上左図は分布が意味を持ちません。
上中図と上右図の通り、コロナ禍の時期を除くドット分布は比較的比例的に見えます。

次に、各差異判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に纏めておきます。
下図は、上図から方向に関する情報だけを取り出したものだと言えます。

上左図から、分析対象期間の事後差異判別式の解の符号はプラス率が73%と、偏りが目立ちます。
また上右図からは、事後差異・実態差異判別式の解の符号と直後1分足・直後11分足の値幅方向は一致率が高く、発表結果が市場予想や前回結果を上回るか否かに素直に反応することがわかります。

さて、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

結果、

  • 事前差異判別式の解の絶対値が大きいほど、その符号と直前10-1分足値幅方向は一致しがち(場面発生頻度94%、期待的中率68~83%)
  • 事前差異判別式の解の絶対値が1.8超のとき、その符号と直前1分足値幅方向は逆になりがち(場面発生頻度8%、期待的中率83%)

です。

4.3  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図(横軸が直前10-1分足)は分布が意味を持ちません。
上右図は相関係数(R2値)が0.81あり、回帰式による反応の方向と程度の予想が精度良く行えることがわかります。
直後1分足終値がついたら直後1分足値幅方向に追撃し、直後11分足順跳幅での利確を狙うべきです。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前1分足は陰線率が74%、直後1分足は陽線率が72%、直後11分足は陽線率が70%と、偏りが目立ちます
また、直前1分足と直後1分足の方向一致率は32%(不一致率68%)、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%となっています。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象の67回の事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

一見して、直前10-1分足値幅が大きいとき、直後1分足や直後11分足の値幅方向が直前10-1分足値幅方向と同方向になりがち(直前10-1分足値幅が大きいとき、その方向は指標発表後の反応方向を示唆しがち)です。

4.4  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%です。
そして、下図をご覧ください。
直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは65%、値幅が同方向に伸びたことは67%です。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

上図から、直後1分足順跳幅が40pipsを超えたとき(場面発生頻度18%)、直後11分足順跳幅がそれより反応を伸ばす確率が非常に高くなっています


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

※8 日付横に*印があるのは、3訂以降の結果

※9 「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていない。「分析適用率」と「分析的中率」は、都度の指標発表前に取引方針を開示していたときだけの成績を集計。「取引成績」は、指標発表直前・直後におけるスプレッド拡大、スリップ多発、注文不可などの影響を考慮してもなお、本稿取引方針が有効か否かを判断するため、実取引における分析適用時勝率。ここに挙げた実績は全て別サイトにて該日付もしくはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。

結果、本稿分析の有用さは実績に裏付けられています


関連リンク

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改訂履歴

2訂(2019年1月8日)
3訂(2020年6月17日) 新書式反映、2020年4月集計分までを反映
3.1訂(2020年7月1日) 同期連動分析追加
3.2訂(2021年1月11日) 事前差異判別式変更、2020年11月集計分までを反映

以上

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