豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州雇用指標「ANZ求人広告件数※1」発表前後のAUDJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

併せて、本指標結果が豪州雇用統計の雇用者数増減の結果を事前示唆するかの検証も、本稿の目的です。

発表機関
オーストラリア・ニュージーランド銀行※2 (Australia and New Zealand Banking Group Limited:ANZ
発表日時
翌月上旬月曜か、月曜が祝日の場合は火曜の10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
首都圏の主要日刊新聞とネットの求人広告数の増減(発表事例※3)
反応傾向

  • 注目内容=指標発表前のローソク足方向、指標値ではない
  • 反応程度=非常に小さい(直後1分足値幅の過去平均値1.8pips
  • 反応方向=指標結果の良し悪しと反応方向の相関はほぼ無し(実態差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率58%
  • 伸長性=初期反応方向に伸びやすい(直後1分足と直後11分足が同方向に反応に伸ばした事例は77%

※1 本指標は、多くのFX会社HPの経済指標説明で、重要度・注目度とも最低ランクに位置づけられている。

2 本店所在地はメルボルン、豪州4大市中銀行のひとつ。同行日本法人のHPこちら。なお、ANZ日本法人は豪州経済分析結果を毎週月曜に配信中(ANZオーストラリア経済ウィークリー日本語版)。同国の経済見通しを論じた解説記事やブログの一部には、ここからの引用と見られる記述がしばしば見かける。

3 通例、発表資料巻頭に「全求人広告数Total job ads)」の季節調整済「件数」「前月比」「前年同月比」が一覧表で示される。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
発表後の反応方向にそのまま伸びやすい特徴から、数pips程度ならむしろ稼ぎやすい可能性がある。また、求人広告数前月比±2.1%超の大きな変化があった翌月は、豪州雇用統計雇用者数増減が前月の求人広告数前月比の増減と同方向になりがち(一致率79%)。その場合、雇用統計発表直後1分足は、前月の求人広告数前月比の増減方向と71%の事例で一致。すなわち、本指標は豪州雇用統計雇用者数増減の先行指標であり、取引に有用な示唆を雇用統計発表前に単月毎に与える。
Ⅱ. 分析対象
本稿分析は、「求人広告数前月比」について、2015年1月集計分以降の65事例の指標分析と、2017年12月集計分以降の13事例の反応分析を実施。直前1分足と直後1分足の反応があまりに小さく、狙いは直後11分足の方向を当てることになる。
Ⅲ. 指標分析
他の指標との同時発表時は取引すべきではない。最近、見かけるようになった本指標の市場予想は、まるで見当違いのように見受けられ、取引の参考にならない。
Ⅳ. 反応分析
指標結果に素直に反応するとは言い難い。それにも関わらず、直前10-1分足値幅方向は発表後の反応方向と逆になりがちな点と、発表後の追撃成功率が高い点は、むしろ取引しやすさを示している。注目すべきは、指標発表前のローソク足の方向、ということになる。
Ⅴ. 取引成績
本稿が本指標の取引分析初稿となるため、まだ取引実績はまだない。
1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
もちろん、下表方針に限らず、データからどのような傾向を見出すかは自由です。

4 上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

指標分析の対象項目は、

  • 求人広告件数前月比」(以下「前月比」と略記)

のみです。

市場予想は2019年8月集計分以降の10回分しか見つけられませんでした。
そして、発表結果の修正はかなりの頻度で行われています(きっと、広告数の数え間違えでなく、集計期限が2段階なのでしょう)。

一方、反応分析の対象回数は、下表のようにかなり少なくなります。
これは、2017年11月集計分以前のチャートの記録がないことに加え、後記3.1項記載の通り、本指標が他の指標との同時発表時の取引に向かないためです。

この回数では反応方向への傾向を見出すのに不足です。
せめてこの倍はデータが必要で、このペースでは2022年末頃まで反応分析への信頼性は低い、と考察します。
よって、本稿における反応分析は、予めそのつもりでお読み願います。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。
2020年のコロナ禍の時期のせいで、それまでの指標推移が全く掴めないため、2020年1月集計分以前は縦軸方向に拡大しています。

5 このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

この全体及び拡大図からは、市場予想がまるで当たりゃしないことと、大きく上下に振れた翌月は逆方向への反動を起こしがちなこと、が読み取れます。

上図統計値を下表に纏めます。

市場予想が行われた回数がまだ少なく、しかもコロナ禍の時期を含んでいるため、事前差異と事後差異の判別式の解は、平均値も標準偏差も今後長期的に補正されるのを待って参考にした方が良いでしょう。

なお、コロナ禍以前の2019年の毎月の求人広告件数は15万~17万件程度です。
よって、平常時の本指標における1%の増減とは1500~1700件の変化を指しています。


2.3  反応結果

分析対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。
そして、下図の歯抜け箇所は、後記3.1項に記載した分析対象外の月です。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

上表集計の元となる対象事例はまだ13事例しかありません。
そのため、数値が落ち着くにはまだ暫く本指標に注視し続ける必要があります。

それにしても、指標発表前後1分間のpipsが小さ過ぎます
よって、本指標で取引するなら、狙いは直前10-1分足や直後11分足の方向を当てることに絞るべきでしょう。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。

小売売上高と同時発表時は、方向一致率が同値となっていますが、本指標より小売売上高の方が影響力が強いことは明らかです。
ここで、小売売上高のように影響力が強い指標は、発表前にチャートへの織り込みが進みがちなため、この結果は不思議でない、という考えもあります。
がしかし、それならそういう傾向は、小売売上高の反応分析に現れるので、そんな懸念は必要ありません。

よって、本指標はどの指標と同時発表のときも影響力が弱い、が結論です。


3.2  項目間影響力比較分析

分析対象が前月比だけなので、本分析は行いません。
判別式は定義通り、

事前差異判別式=前月比の(市場予想ー前回結果)
事後差異判別式=前月比の(発表結果ー市場予想)
実態差異判別式=前月比の(発表結果ー修正結果)
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。
指標分析対象期間と反応分析対象期間が異なり、また市場予想があった時期が異なるため、下図には歯抜け箇所があります。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で1.5pipsです。

本指標の場合、市場予想が見当たらないことが多々あるため、別の尺度を挙げておくと、実態差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で3.9pipsです。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  同期/連動分析

分析対象指標は本指標の「前月比」、比較対象指標は豪州雇用統計の雇用者数増減」です。
両指標の発表結果の推移を下図に示します。

上図は、両指標の増減方向がわかりやすいように、一部を拡大しています。
けれどもいくら拡大したって、両指標の増減方向が同期しがちとか、ましてや一方が他方に〇か月遅れて追従しがちとか、ふつうはこの図から読み取れる訳ありません。
そこで、上図期間中の両指標の増減方向の一致率を数式処理して求めます。

上図横軸は、本指標「前月比」が雇用統計「雇用者数増減」より〇か月遅行/同期/先行、と読みます。
上図縦軸は、単月毎の両指標上下動の方向一致率、を表しています。

対象期間全体の時期ズレ毎の方向一致率は赤線で示しています。
赤線を見る限り、どっちがどれだけ先行していると言えるほど、高い一致率は見当たりません。

けれども、「前月比」の絶対値が2.1%超だったときの「雇用者数増減」との方向一致率をご覧ください(青線
前月比」が「雇用者数増減」より1か月先行していると解釈すれば、それら一致率が79%に達しています。
そしてこの現象は、求人が増やた翌月の雇用者数が増える、求人が減った翌月の雇用者数が減る、という常識に適った現象です。
よって、求人広告件数増減は雇用者数増減よりも時差1か月で先行する、と捉えるべきでしょう。

また、「前月比」が「雇用者数増減」より1か月遅行している場合も常識に適っています。
雇用者数」が増えた翌月は新たな求人を控える、従業員が辞めた翌月は新人を募集する、という解釈が成り立ちます。
よって、「前月比」は「雇用者数増減」よりも時差1か月で遅行する、というのも起こり得ます。
けれども、後記4.2項に示す通り、「前月比」が前月より増えたか減ったかは、反応方向との一致率が54%しかありません。
それでは「前月比」が「雇用者数増減」の遅行指標という側面も併せ持っていたとして、取引上は何ら役に立ちません。

では次に、本指標「前月比」の絶対値が2.1%超だった翌月の雇用統計「雇用者数増減」発表時の反応方向はどうなっていたか、です。
下表をご覧ください。

本指標「前月比」の絶対値が2.1%超だった翌月の豪州雇用統計発表時の直後1分足方向は、本指標実態差異判別式の解の符号と同じになりがち、です。

お、本指標「前月比」の絶対値が2.1%超だったことは、残念ながら対象事例の22%しかありません(場面発生頻度22%)。


4.2  指標一致性分析

各判別式の解と対応するローソク足の関係を下図に示します。

市場予想が行われ、且つ、影響力の強い他の指標との同時発表がなかったとき、上左図と上中図のプロットは僅か3点です。
上右図の実態差異判別式の解と直後11分足の関係は、一見、何も相関がないように見受けられます。

上図から方向だけの情報を取り出します。

実態差異判別式の解の符号と各ローソク足の方向に相関は見出せません
事後差異判別式や事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の関係は、僅か3点の方向一致率を示しており、分析母数が少なすぎてアテにはできません。


4.3  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上図から、指標発表前と後とで反応方向が反転しがちなことがわかります。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前10-1分足(上図橙色)が、その後に形成されるローソク足方向を示唆しているように見えます。


4.4  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は92%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅を比べた結果、順跳幅が伸び続けたことが85%、値幅が伸び続けたことが77%です。
そして、直後1分足と直後11分足が反転したことは8%しかありません。

本指標は明らかに追撃向きです。


Ⅳ. 取引成績

本指標での取引実績はまだありません。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2018年12月14日) 豪州雇用統計への先行性の有無のみを分析
改訂(2020年6月15日) 新書式反映、2020年5月集計分までを反映
2.1訂(2020年7月1日) 利得分析追加、指標一致性分析と伸長性分析の誤記訂正

以上

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