豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州雇用指標「ANZ求人広告件数(※1)」発表前後のAUDJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。
併せて、本指標結果が豪州雇用統計の雇用者数増減の結果を事前示唆するかの検証も、本稿目的です。

(※1) 本指標は、多くのFX会社HPの経済指標説明で、重要度・注目度とも最低ランクに位置づけられる。これは、本指標への反応が小さいためだが、豪州経済の解説では本指標結果の引用がしばしば見受けられる。そういう意味では、本指標は反応こそ小さいものの、アナリストの注目度はそこそこある、と言える。

発表機関
オーストラリア・ニュージーランド銀行(※2)(※3) (Australia and New Zealand Banking Group Limited:ANZ
発表日時
翌月上旬10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
首都圏の主要日刊新聞とネット広告の求人件数増減(※4)

(※2) 本店所在地はメルボルンで、豪州4大市中銀行のひとつ。同行日本法人(関東財務局長(登金)第622号 [加入協会]一般社団法人全国銀行協会・日本証券業協会)のHPはこちら
(※3) ANZ日本法人は、豪州経済分析結果を毎週月曜に配信中(ANZオーストラリア経済ウィークリー(日本語版))。同国の経済見通しを論じた解説記事やブログの一部には、ここからの引用と見られる記述を見受ける。
(※4) 筆者は、ANZホームページから本指標の調査対象・基準・方法などの詳細をいずれも見つけられなかった。

目次太字クリックでジャンプします)。

Ⅰ. 分析結論
ほとんど注目されない指標だが、発表後の反応方向やその後の伸びから、数pips程度ならむしろ稼ぎやすい指標の可能性がある。また、本指標結果の良し悪しが豪州雇用統計の雇用者数増減の方向を示唆することもある。
Ⅱ. 分析対象
2015年1月集計分以降の65事例の指標分析と、2017年12月集計分以降の13事例の反応分析を実施。
Ⅲ. 指標分析
チャートへの影響力が弱く市場の注目度が低いため事前予想も見当たらない場合が多い。他の指標との同時発表時は取引すべきでなく、本指標単独発表時の反応程度もかなり小さい。
Ⅳ. 反応分析
指標結果に素直に反応するとは言い難い。但し、直前10-1分足値幅方向は発表後の反応方向と逆になりがちで、発表後の追撃成功率が高い点は、取引しやすさを示唆している。
Ⅴ. 取引成績
本指標での取引実績はまだない

以下、本文です。


Ⅰ. 分析結論
1.1 個別分析結論
注目内容=「求人広告数前月比」のみ

反応程度=非常に小さい(直後1分足値幅の過去平均値1.8pips)

反応方向=指標結果の良し悪しと反応方向の相関はほぼ無し(実態差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率58%)

指標間影響力比較分析=他の指標との同時発表があるときは、本指標での取引は避けた方が良い

指標一致性分析=指標結果がどうあれ、反応方向との関係は見出せない

反応一致性分析=直前10-1分足が、その後に形成される直前1分足・直後1分足・直後11分足の方向を示唆しがち

伸長性分析=発表後の追撃成功率が高い

同期/連動分析=本指標結果が±2.1%超だった翌月集計分の豪州雇用統計の「雇用者数増減」は、前月数値と比べた増減方向が本指標結果の増減方向と一致しがち


1.2 結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

(※5) 上表において、期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記pipsは過去平均値や中央値に基づく参考値。利確や損切のpipsはその時々のボラティリティや本指標への注目度によって大きく異なるため予想できない(判定対象外)。


Ⅱ. 分析対象

指標分析の対象は、

  • 求人広告件数前月比」(以下「前月比」と略記)

のみとします。

発表結果の修正は、翌月発表時にかなりの頻度で行われます。

一方、反応分析の対象は、下表のようにかなり少なくなります。
これは、2017年11月集計分以前のチャートの記録がないことと、後記3.1項記載理由に依ります。


2.1 指標推移

分析対象期間における指標推移と統計値を下図及び下表に示します。

市場予想が行われることは稀なので、事前差異判別式と事後差異判別式の解は求めていません。

(※6) 求人広告数の絶対値は、コロナ禍以前の2019年で15万~17万件程度です。すなわち、平常時の本指標における1%の変化とは、1500~1700件の増減を指しています。


2.2 反応結果

分析対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。
そして、下図の歯抜け箇所は、後記3.1項に記載した分析対象外の月です。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

上表集計の元となる対象事例はまだ13事例しかなく、数値はあまりアテにできません。


Ⅲ. 指標分析

反応分析対象数が少ないため、利得分析は行っていません。


3.1 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います
影響力の強さ」は、過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率によって判定しています。

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

指標名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。

小売売上高と同時発表時は、方向一致率が同値となっていますが、本指標より小売売上高の方が影響力が強いことは明らかです。
よって、本指標はどの指標と同時発表のときも影響力が弱いことがわかります。


3.2 項目間影響力比較分析

分析対象が前月比だけなので、本分析は行いません。
そして、本指標では市場予想がないことがほとんどなので、判別式は定義通りの実態差異判別式のみとなります。

実態差異判別式=前月比の(発表結果ー修正結果)
但し、修正が行われなかったときは前回結果


Ⅳ. 反応分析
本稿では分析母数が少ないため、移動平均線分析過大反動分析を行いません。

4.1 指標一致性分析

指標一致性分析は、判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

実態差異判別式の解と直後11分足の関係を下図に示します。

上図から方向だけの情報を取り出します。

実態差異がどうあれ、反応方向との関係は見出せません


4.2 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上図から、指標発表前と後とで反応方向が反転しがちなことがわかります。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前10-1分足(上図橙色)が、その後に形成されるローソク足方向を示唆しているように見えます。


4.3 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表後に一方向に反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は92%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
そのわからない点を、過去の傾向から探るのが伸長性分析です。

下図をご覧ください。

明らかに追撃向きの指標です。


4.4 同期/連動分析

同期/連動指標分析は、分析対象指標と比較対象指標の上下動の一致率が高くなる時差を求め、その一致率が取引の参考たり得るかを判断するために行います。
上下動を調べるため、同期/連動指標分析には、ふたつの指標の実態差異判別式の解の符号の一致率を調べています。

ここで、分析対象指標は本指標「前月比」、比較対象指標は豪州雇用統計の「雇用者数増減」です。
両指標の発表結果の推移を下図に示します。

コロナ禍が響いた2020年の大きな落ち込みを見ると、大きくは両指標に同期性が認められます。
がしかし、その期間を除くと、両指標の増減が同期や連動しているか、上図から読み取ることは困難です(そんなのできません)。
そこで、上図期間中の両指標の増減方向の一致率を数式処理して求めた結果を下図に示します。

上左図をご覧ください。
横軸は本指標が雇用者数増減より何か月先行/遅行しているかを示し、縦軸は増減方向一致率を示しています。
結果、本指標結果の増減は雇用者数増減(の増減)とあまり関係なさそうです。

次に、上右図をご覧ください。
上右図は、本指標結果の過去平均値0.7を基準に層別し、各層毎の雇用者数増減(の増減)と方向一致率を示しています。

ここで例えば、「0.7%超1.4%以下」という表記は「+0.7%超+1.4%以下」と「△0.7%未満△1.4%以上」の事例が対象となります。
結果、方向一致率が頭一つ抜き出ているのは、本指標結果が2.1%超となったときの1か月先行(79%)と1か月遅行(14%)の箇所です。

よって、本指標結果が±2.1%超だった翌月集計分の豪州雇用統計「雇用者数増減」の方向は、本指標結果の増減方向と79%一致していました(場面発生頻度22%)。
また、本指標結果が±2.1%超だった前月集計分の豪州雇用統計「雇用者数増減」は、本指標結果の増減方向と86%不一致でした。
がしかし、後者は既に豪州雇用統計が発表されてから本指標が発表されるため無意味です。


Ⅳ. 取引成績

本指標での取引実績はありません。



関連リンク

➡ 豪州ほか指標の目次に移動

改訂履歴

初版(2018年12月14日)
改訂(2020年7月1日) 新書式反映、2020年5月集計分までを反映

以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です