豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析

ANZ求人広告件数」は、多くのFX会社HPの経済指標解説で、重要度・注目度とも最低ランクに位置づけられています。けれども、本指標の前月比が大きく変化したときは、豪州雇用統計雇用者数増減先行示唆(時差1か月:期待的中率72%)します。このように、本指標には反応が大きい豪州雇用統計取引における不確かさを事前にひとつ減らす意義があります。

分析結果からは、直後1分足の跳ねを狙うのではなく、直前10-1分足と直後11分足の方向的中を狙いやすいことが示されています。指標発表直後の反応こそ小さくても、発表から数分かけてそこそこのpipsを狙えば良いのです。

※1  発表元統計名は「ANZ Australian Job Advertisement Series」。

Ⅰ. 分析要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア・ニュージーランド銀行 (Australia and New Zealand Banking Group Limited:ANZ※2
発表日時
翌月上旬月曜か、月曜が祝日の場合は火曜の10:30(夏時間は09:30=現地時間11:30)
発表内容
首都圏主要日刊新聞とネットの求人広告数の増減(発表事例※3)
反応傾向

  • 注目内容求人広告件数前月比対前回乖離方向
  • 反応方向=直前1分足と直後11分足の値幅方向の一致率85%
  • 反応程度=直後11分足順跳幅を狙い、その過去平均値6.3pips
  • 伸長特性=直前1分足値幅方向と実態差異判別式の解の符号が一致していたなら、そのまま追撃して直後11分足順跳幅を狙う
補足説明

  • 新規分析のため、まだ取引実績はない(本稿はまだ取引実績に裏付けられた内容ではない)
  • 本指標が他の指標との同時発表時には、本指標で取引すべきではない3.1項参照)
  • 本指標の増減が絶対値2%超のとき、翌月集計分の豪州雇用統計「雇用者数増減」の前月からの増減を先行示唆(期待的中率72%)する3.3項参照)

※2  豪州4大市中銀行のひとつで、本店所在地はメルボルン(同行日本法人HPこちら)。なお、ANZ日本法人は豪州経済分析結果を毎週月曜に配信しており(ANZオーストラリア経済ウィークリー日本語版)、同国の経済見通しを論じた解説記事やブログの一部には、ここからの引用と見られる記述がしばしば見受けられる。

※3  通例、発表資料巻頭に「全求人広告数Total job ads)」の季節調整済「件数」「前月比」「前年同月比」が示される。

1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※4  本表の詳細説明はこちら


Ⅱ. 分析対象

本稿における分析対象は、

  • 求人広告件数前月比」(以下「前月比」と略記)

のみです。

2.1  指標推移と統計値

指標の過去推移を下図に示します。下図の部分が本稿の分析対象期間です。

※5  上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。発表結果統計値はグラフ記載範囲全体から計算。

上図は、2020年のコロナ禍による急減・急増で、それまでのグラフ変化が全く読み取れないため、2020年2月集計分までの縦軸を拡大しています。が、実はこうした過去の単月毎の増減をそれほど気にする必要はありません。

むしろ、取引上の役には立たなくても、コロナ禍以前の2019年の毎月の求人広告件数は15万~17万件程度、という指標の絶対数を知っておく方が本指標に興味が湧きます。絶対数が15万~17万件程度ということは、本指標における1%の増減とは1500~1700件の変化を指していることになります。

2.2  反応結果と統計値

対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足とそれら統計値を下図・下表に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

※6  ローソク足の歯抜け箇所は、本指標よりチャートへの影響力が強い指標との同時発表が行われた月(後記3.1項参照)。本指標よりも影響力が強い指標と同時発表されたときは、本指標での取引に適さないため、本稿では反応分析対象外としている。

※7  反応分析対象外の月を集計していない。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は1.6pipsで、反応程度は非常に小さい指標です。但し、1足内反転率も小さいので、他の指標での取引に慣れているなら、予めゆっくりした取引を意識して指標発表に臨んだ方が良いでしょう。これほど直後1分足が小さい以上、本指標での取引は直後11分足形成中の順跳幅を狙うべきであり、チャートの小さな上下動には動揺しないことです。


Ⅲ. 指標分析

以下の指標分析の対象範囲は下表の通りです。

※8  後記3.1項3.3項2015年1月集計分からの分析、その他の対象期間は2017年12月集計分からの分析。右端の「修正結果有」の最後は次発表まで不明なため%算出の分母が(指標発表回数ー1)となっている。

傾向を見出すため、ほぼ十分なデータ数が蓄積できています。

2019年7月集計分以前の市場予想は見つかりませんでした。そして、本指標の発表結果はかなり高い頻度で翌月発表時に修正されています。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

小売売上高と同時発表時の方向一致率は同値100%となっていますが、本指標より小売売上高の方が影響力が強いことは明らかです。本指標はどの指標と同時発表のときも影響力が弱い、が結論です。

3.2  項目間影響力比較分析

分析対象が前月比だけなので、本分析は行いません。
判別式は定義通り、

事前差異判別式=前月比の(市場予想ー前回結果)
事後差異判別式=前月比の(発表結果ー市場予想)
実態差異判別式=前月比の(発表結果ー修正結果)
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。

3.3  同期/連動分析

 本指標の豪州雇用統計「雇用者数増減」に対する先行性有無を検証します。

分析対象指標(青●)は本指標の前月比、比較対象指標(赤●)は豪州雇用統計の雇用者数増減です。両指標の発表結果の推移を下図に示します。

コロナ禍による急激な落ち込みと回復時期を見ると、両者が同期しているように見えます。が、結論から言えば、上図期間全体としては両指標は同期はしていません。上図期間全体の両指標の増減方向の一致率(両指標の実態差異判別式の解の符号一致率)を、数式処理して求めた結果を下図に示します。

上図横軸は、本指標前月比雇用者数増減より〇か月先行/同期/遅行、と読みます。上図縦軸は、単月毎の両指標上下動の方向一致率、を表しています。対象期間全体の時期ズレ毎の方向一致率は黒線で示しています。黒線を見る限り、どっちがどれだけ先行していると言えるほど、高い一致率は見当たりません。

けれども、前月比の絶対値が2%超だったときの雇用者数増減との方向一致率をご覧ください(青線前月比雇用者数増減より1か月先行していると解釈すれば、それら一致率が72%です。そしてこの現象は、求人が増やた翌月の雇用者数が増え、求人が減った翌月の雇用者数が減る、と解釈できます。

よって、求人広告件数の増減は実際の雇用者数の増減よりも時差1か月で先行する、と捉えることができます。

では次に、前月比の絶対値が2%超だった翌月集計分の雇用者数増減発表時の反応方向はどうなっていたか、を調べておきます。下表をご覧ください。

つまり、前月比の絶対値が2%超だった翌月の雇用統計発表時の反応方向は、本指標結果からは予見できません

結論、指標結果こそ先行性はあるものの、この先行性は雇用統計の取引に直接的な役に立たない、です。ANZ求人広告件数前月比2%超の大きな変化があった翌月の雇用者数増減の方向(前月発表結果を上回るか下回るか)は、期待的中率72%で示唆されます。

但し、そのことだけを根拠に本指標で取引することは勧められません。その原因は、雇用統計発表後の反応方向が雇用者数増減よりも失業率の影響が強いため、と考えられます。

よって、ANZ求人広告件数雇用者数増減に対する先行性は、雇用統計取引における不確かさを事前にひとつ減らす意義に留まります


Ⅳ. 反応分析

以下の反応分析の対象範囲は下表の通りです。

4.1  指標一致性分析

各判別式の解と対応するローソク足の関係を下図に示します。

上3図のいずれも相関係数は低く、回帰分析によって反応程度を予想することはできません。

次に、上図から方向だけの情報を取り出します。

事前差異・実態差異の判別式の解の符号のマイナス率は各88%75%と高く、市場予想は前回結果よりも高めになりがちで、発表結果は前回結果(その修正結果)よりも低めになりがち、です。そして、市場予想が発表結果よりも高めになりがちだったせいで、事前差異判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向は逆になりがです。

また、事後差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向の一致率は100%と極めて素直なものの、まだ分析母数が少なくて過度に信頼すべきではありません。ただ、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は63%と、あまり高くありません。このことは、直後1分足が事後差異判別式の解の符号と逆に動いても、分析対象期間には全て戻しが起きた、ということになります。

4.2  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図のいずれも相関係数が低く、回帰分析によって反応程度を予想するには精度が悪すぎます。ただ、上中図と上右図のプロット分布は比例的で、先に形成したローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆しているように見受けられます。

このことは、上図から方向に関する情報だけを取り出した下図に表れています。

直前10-1分足は陰線率が72%と高く、既に市場では本指標の市場予想が高めになりがちなことが知れわたっている可能性があります。

直前1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅方向とほぼ毎回一致しています。但し、直前1分足値幅の過去平均値は1.2pipsしかありません。だからもし直前10-1分足で取引しており、そのポジションが含益を持っているなら、指標発表直前まで決済する必要がない訳です。

直前11分足値幅方向は、直前1分足や直後1分足の値幅方向との一致率が各85%76%となっています。指標発表直前に直前1分足値幅と逆方向にポジションを取得し、直後1分足が逆方向に振れても少し我慢した方が良さそうです。このポジションは、直後1分足でなく直後11分足順跳幅での利確を狙います

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は76%です。がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。

下図をご覧ください。

直後1分足と直後11分足の順跳幅と値幅を比べた結果、順跳幅が伸び続けたことが72%、値幅が伸び続けたことが61%です。本指標は追撃向きで、直後1分足順跳幅方向に直後11分足順跳幅が反応を伸ばしがちです。


Ⅳ. 取引成績

本指標での取引実績はまだありません。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2018年12月14日) 豪州雇用統計への先行性の有無のみを分析
改訂(2020年6月15日) 新書式反映、2020年5月集計分までを反映
2.01訂(2020年7月1日) 指標一致性分析と伸長性分析の誤記訂正
2.1訂(2021年1月8日) 2020年12月集計分までを反映

以上

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