豪州雇用指標「ANZ求人広告件数」発表前後のAUDJPY反応分析

ANZ求人広告件数※1は、多くのFX会社HPの経済指標解説で、重要度・注目度とも最低ランクに位置づけられています。けれども、本指標の前月比が大きく変化したときは、豪州雇用統計雇用者数増減先行示唆(時差1か月:期待的中率76%)します。このように、本指標には反応が大きい豪州雇用統計取引における不確かさを事前にひとつ減らす意義があります。

分析結果からは、直後1分足の跳ねを狙うのではなく、直前10-1分足と直後11分足の方向的中を狙いやすいことが示されています。指標発表直後の反応こそ小さくても、発表から数分かけてそこそこのpipsを狙えば良いのです。

※1  発表元統計名は「ANZ Australian Job Advertisement Series」。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア・ニュージーランド銀行 (Australia and New Zealand Banking Group Limited:ANZ※2
発表日時
翌月第1月曜か、月曜が祝日の場合は火曜の10:30(夏時間は09:30=現地時間11:30)
発表内容
首都圏主要日刊新聞とネットの求人広告数の増減※3発表事例※4)
反応傾向

  • 注目内容求人広告件数前月比対予想乖離方向
  • 反応方向=直前1分足と直後11分足の値幅方向の一致率85%(狙いは直後11分足順跳幅)
  • 反応程度=直後11分足順跳幅の過去平均値5.7pips
  • 伸長特性=直前1分足順跳幅が1.9pips超に達したら直ちに追撃し、直後11分足順跳幅を狙う
補足説明

  • 本指標が他の指標との同時発表時には、本指標で取引すべきではない3.1項参照)
  • 本指標の増減が絶対値2%超のとき、その増減方向と翌月集計分の豪州雇用統計直後1分足方向は76%方向一致する3.3項参照)

※2  豪州4大市中銀行のひとつで、本店所在地はメルボルン(同行日本法人HPこちら)。なお、ANZ日本法人は豪州経済分析結果を毎週月曜に配信しており(ANZオーストラリア経済ウィークリー日本語版)、同国の経済見通しを論じた解説記事やブログの一部には、ここからの引用と見られる記述がしばしば見受けられる。

※3 2021年1月集計分発表資料のTechnical appendixによれば、ネット広告件数はANZの指定サイトの運営者から提供された求人広告数で、集計月週毎の同じ曜日の平均値を集計。新聞広告件数は指定誌への広告掲載予約数を集計。それら件数をどう処理しているのかは不明。

※4  通例、発表資料巻頭に「全求人広告数Total job ads)」の季節調整済「件数」「前月比」「前年同月比」が示される。

1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※5 上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。本表の見方についてはこちらを参照方。


Ⅱ. 分析対象
2.1 対象範囲

分析対象は、

  • 求人広告件数前月比:首都圏主要日刊新聞とネットの季節調整済求人広告数の対前月変化率
    (以下「前月比」と略記)

と、その発表前後のチャートの反応です。対象期間及び同期間における反応分析対象数は下表の通りです。

※6 分析対象期間の発表回数と分析回数に大きく差が生じた理由(分析除外した理由)は、後記3.1項に示す通り、他の指標との同時発表時に本指標がチャートに影響を及ぼさないことが多いため。

2.2 指標推移と統計値

指標の過去推移を下図に示します。2020年のコロナ禍による急減・急増で、その他時期のグラフ変化が全く読み取れません。そのため、グラフの一部を縦軸方向に拡大しています。

※7 上グラフは分析データ開示のために載せており、本グラフを本指標発表毎に最新に更新していくことが本稿の目的ではない。但し、発表結果統計値はグラフ記載範囲全体から計算(指標統計値はデータ数が多い方が確からしさが増すため)。

本指標の参考数値として、コロナ禍影響前の2019年の毎月の求人広告件数を挙げると15万~17万件程度(季節調整済数値)です。つまり、本指標における1%の増減とは1500~1700件の変化を指していることになります。
なお、豪州雇用統計における毎月の雇用者数増減の平均値は数千人(コロナ禍時期も含めると平均2万人弱)です。残念ながら単月毎の求人広告数と雇用者数の間には弱い相関しかありません。

また、本指標の事前予想は2019年8月集計分以降の発表時しか入手できていません。せっかくネットを探してやっと入手した事前予想ですが、これまのところそれがまるでアテにならないことが上のグラフからわかります。これは、本指標での事前予想が特定サイト記載の値を転記しているためです(上図から「まるでアテにならない」という感想を紹介せざるを得ないため、出典は明かしません)。
注記しておきます。上グラフにプロットした事前予想は市場のコンセンサスを得ていません

本サイトで紹介しているほとんどの他の指標の市場予想はコンセンサス予想です。尤もコンセンサスとはいえ、大抵は多数のエコノミストらの予想値の平均値であって(ロイターやブルームバーグの予想値がそうです)、的中率が高い特定人物・機関の予想値ではありません。だから、コンセンサス予想もまた精度が低い場合がほとんどです。

けれども、こうした予想値は指標発表前後の織り込みと調整のために必要とされるものです。織り込みや調整といった現象がチャートで確認できても、厳密にそれらの現象を定量化できないのです。比較的定量的再現性が認められるのは、予想値から見た発表値の乖離方向にチャートが動く確率だけです。

それならば、これほど精度の悪い上グラフにプロットした予想値でも、発表値がそれを上回るか否かにチャートが素直に反応していれば有用です。本稿記述時点において、2019年8月集計分以降(他の指標と同時発表がない15事例)の数値で言えば、予想値と発表値の大小関係にチャートが素直に反応したことは67%です。
まだたった15事例での数値なので、この事前予想が役に立つレベルなのかは継続注視していきます(アテになることにもう少し自信が持てたら、この予想値の出典を明かします)。

2.3 反応結果と統計値

対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足とそれら統計値を下図・下表に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(右上)・直後1分足(左下)・直後11分足(右下)となっています。指標発表前と指標発表後でそれぞれ縦軸は揃えています。

※8 ローソク足の歯抜け箇所は、本指標よりチャートへの影響力が強い指標との同時発表が行われた月(後記3.1項参照)。本指標よりも影響力が強い指標と同時発表されたときは、本指標での取引に適さないため、本稿では反応分析対象外としている。

直後1分足値幅の過去平均値は1.3pipsで、反応程度は極めて小さい指標です。但し、1足内反転率も小さいので、指標取引に慣れているなら、予めゆっくりした取引を意識して指標発表に臨んだ方が良いでしょう。と言うのも、これほど直後1分足が小さい以上、本指標での取引は直後11分足形成中の順跳幅を狙うべきであり、チャートの小さな上下動には動揺しないことが大切になります。

なお、勝率67%のときのS損益分岐点はスプレッドの5倍です。多くのFX会社のAUDJPYのスプレッドは0.6円ぐらいなので、取引は3pips以上を狙える場面が必要です。
そうすると、上図上表から指標発表前後1分はそうした事例が少なく、狙いは直前10-1分足か直後11分足ということになります。実際、直後11分足順跳幅は、直後1分足順跳幅が過去平均値を超えると、それを超えて伸びる傾向があります(4.3項参照)。

2.4 2節まとめ

本節結論は、

  • 本指標の事前予想はコンセンサス予想ではない
  • 取引の狙いは直前10-1分足と直後11分足、但し、直後1分足順跳幅が過去平均値を超えるとその方向に直後11分足順跳幅が伸びがち

です。


Ⅲ. 指標分析

本節は、他の指標との同時発表等の実績から、本指標の分析範囲を更に絞りこみます。また、分析対象指数の反応への影響度を求めます。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

本指標での指標間影響力比較分析では、比較対象指標は事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率、本指標は実態差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率を比べています。本指標は先述の通り事前予想が得られた回数が少ないため、事後差異判別式の解の符号と比べることができなかったのです。

上表右端の方向一致率は、比較対象指標と同時発表されたとき、本指標実態差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率を示しています。この数字が67%未満ならば、その比較対象指標との同時発表時には本指標での取引を避けた方が良いことを示しています。例え、同時発表指標よりも方向一致率が高くても、です。

結論、本指標は他の指標と同時発表のときは取引すべきでない、です。

3.2  項目間影響力比較分析

分析対象が前月比だけなので、本分析は行いません。
判別式は定義通り、

事前差異判別式=前月比の(事前予想ー前回結果)
事後差異判別式=前月比の(発表結果ー事前予想)
実態差異判別式=前月比の(発表結果ー修正結果)
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。
2019年7月集計分以前は事前予想がないため、実態差異判別式のみとなります。

3.3  同期/連動分析

 本指標の豪州雇用統計「雇用者数増減」に対する先行性有無を検証します。

分析対象指標(青●)は本指標の前月比、比較対象指標(赤●)は豪州雇用統計の雇用者数増減です。両指標の発表結果の推移を下図に示します。

コロナ禍による急激な落ち込みと回復時期を見ると、両者が同期しているように見えます。が、結論から言えば、上図期間全体としては両指標は同期はしていません。上図期間全体の両指標の増減方向の一致率(両指標の実態差異判別式の解の符号一致率)を、数式処理して求めた結果を下図に示します。

上図横軸は、本指標前月比雇用者数増減より〇か月先行/同期/遅行、と読みます。上図縦軸は、単月毎の両指標上下動の方向一致率、を表しています。そして、3本のグラフはANZ求人広告件数前月比が0%超・1%超・2%超だった事例を階層表記しています。

さて、求人広告の性質を踏まえると、何か月か同じ広告を掲載することはあっても(3か月掲載とします)、あまり古い広告は誰も見ない(3か月前までとします)と考察します。すると、上図同時から前後3か月より外側は偶然の方向一致と見なせます(緑縦線の外側)。次に、この4か月以前と4か月以降の方向一致率を偶然の一致と見なし(赤水平線の内側)、3か月以前から3か月後の間で有意な方向一致率となっている時期を見出します。

結果、ANZ求人広告件数前月比が2%超の変化が起きたとき、その1~2か月後に雇用者数増減もその方向に増減しがちなことがわかりました

次に問題は、ではANZ求人広告件数前月比が2%超の変化が起きたとき、その1~2か月後の豪州雇用統計発表前後にどっちに反応していたか、です。
下表をご覧ください。

2015年1月集計分以降、本稿執筆時点まで豪州雇用統計は66回発表されています。その1か月前のANZ求人広告件数前月比が2%超だったことは29回ありました(場面発生頻度44%)。そして、そうした事例での豪州雇用統計発表時の反応方向が前月ANZ求人広告件数前月比の変化方向と一致していたことは、直前10-1分足で55%、直後1分足で76%ありました。

本分析は本指標と豪州雇用統計の連動分析における適合事例です。

3.4 3節まとめ

本節結論は、

  • 本指標のチャートへの影響力は弱く、他の指標と同時発表があるときは取引しない方が良い
  • 他の指標との同時発表がないときは、発表後1分間ならば本指標の良し悪しと反応方向が67%一致する
  • 本指標が2%超だったときは、翌月集計分豪州雇用統計の発表直後反応方向を示唆しがち

です。


Ⅳ. 反応分析

本節は、前節で求めた各判別式の解の符号や、先に形成されたローソク足方向が、狙いとするローソク足の方向と過去どれだけ一致したかを求めます。また、指標発表後に一方向に反応を伸ばしたか否かを調べています。

4.1 指標一致性分析

各判別式の解と対応するローソク足の関係を下図に示します。既に説明した通り、以下、事前差異判別式と事後差異判別式の解の数は少ない点を予めご承知おきください。

上3図のいずれも相関係数は低く、回帰分析によって反応程度を予想することはできません。

次に、上図から方向だけの情報を取り出します。

事前差異判別式の解の符号のマイナス率が87%と高く、市場予想は前回結果よりも高めになりがちです。但し、これはまだデータ数が少ないことによる偏りと思われます。
そして、市場予想が発表結果よりも高めになりがちだったせいで、事前差異判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向は逆になりがちです。

結果、

  • 直前10-1分足は、事前差異判別式の解の符号と逆になりがち(場面発生頻度※950%、期待的中率67%)
  • 直後1分足と直後11分足は、事後差異判別式の解の符号と同じになりがち(場面発生頻度50%、期待的中率67%)

が本分析結論です。
なお直前1分足は、実態差異判別式の解の符号との方向一致率が74%ありますが、2.3項で表に示した通りpipsが小さすぎて狙えません。

※9 事前差異判別式と事後差異判別式の解は2019年8月集計分以降の30事例で存在し、そのうち15事例が3.1項で述べた本指標単独で発表された事例。よって、それらを用いた関係の場面発生頻度は50%となる。

4.2 反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上3図のいずれも相関係数が低く、回帰分析によって反応程度を予想するには精度が悪すぎます

次に、上図から方向の情報だけを取り出します。下図は、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めています。

直前1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅方向とほぼ毎回一致しています(84%)。但し、直前1分足は取引対象外です。だからもし直前10-1分足で取引しており、そのポジションが含益を持っているなら、指標発表直前まで決済する必要がない訳です。

さらに直前11分足値幅方向は、直前1分足値幅方向との一致率が79%となっています。指標発表直前に直前1分足値幅と同方向にポジションを取得し、直後1分足が逆方向に振れても少し我慢した方が良さそうです。このポジションは、直後1分足でなく直後11分足順跳幅での利確を狙います。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります。そこで下図に、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎にその後に形成される各ローソク足の反応方向一致率を求めてみます。

結果、

  • 直後1分足は、直前10-1分足値幅が1.6pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、それと逆方向になりがち(場面発生頻度27%、期待的中率71%)
  • 直後11分足は、直前10-1分足値幅が4.8pips超(過去平均値の1.5倍超)のとき、それと逆方向になりがち(場面発生頻度9%、期待的中率67%)

です。

4.3  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は64%です。しかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは60%、値幅が同方向に伸びたことは53%でした。この数字では追撃できません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

結果、

  • 直後1分足順跳幅が1.9pips超(過去平均値超)に達したら直ちに追撃開始し、直後11分足順跳幅を狙う(場面発生頻度18%、期待的中率83%)
  • 直後1分足順跳幅が1.9pips超(過去平均値超)に達したら、直後1分足終値がつくのを待って追撃開始し、直後11分足終値がつくまでに決済する(場面発生頻度18%、期待的中率75%)

です。


Ⅴ. 結論及び成績

以上の分析結果を踏まえ、過去傾向に基づく4本足チャート各ローソク足での取引方針を下表のように策定しました。

同様分析によるこれまでの実取引成績※10は下表の通りです。まだ取引数が少ないため、上記方針の妥当性については検証途中といったところです。

※10 ここに挙げた成績は、全て別サイトの該日付ないしはその前日以前の投稿で、指標発表前に取引方針を開示している。

※11 事後の判定対象は反応方向のみ。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できないため判定対象外。実取引勝率には方針外取引の成績を含まない。


関連リンク

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改訂履歴
  • 初版(2018年12月14日):豪州雇用統計への先行性の有無のみを分析
  • 改訂(2020年6月15日):新書式反映、2017年12月~2020年5月集計分までを反映
    2.01訂(2020年7月1日):指標一致性分析と伸長性分析の誤記訂正
    2.1訂(2021年1月8日):2017年12月~2020年12月集計分までを反映
    2.2訂(2022年3月6日):2016年7月~2022年1月集計分までを反映

以上

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