豪州物価指標「四半期消費者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州物価指数「四半期消費者物価指数(※1)発表前後のAUDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。
(※1)  ABSの公称統計名「Consumer Price Index」、以下「CPI」と略記

発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS)
発表日時
翌四半期最初の月の下旬10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
季節調整済のCPI・トリム平均CPI(※2)・加重平均CPI中央値(※3)など発表事例

(※2) (※3) トリム平均(刈込平均)は、価格上昇の激しい15%と価格下落の激しい15%の品目を除いた平均値で、トリムはトリミングと言えばイメージしやすい。加重平均中央値は品目毎の平均値に重み付けを変えたときの中央値。他の主要国中銀が重視するコアインフレ率に代えて、豪中銀はトリム平均と加重平均の単純平均を基調インフレ率と捉えて重視している。

目次太字クリックでジャンプします)。

Ⅰ. 分析結論
取引方針見直しの必要に迫られ今次改訂実施
Ⅱ. 分析対象
2013年1-3月期分以降の29事例
Ⅲ. 指標分析
同時発表指標無く、指標結果に反応は素直
Ⅳ. 反応分析
複数の反応パターン有
Ⅴ. 取引成績
分析適用率88%、分析的中率60%、分析適用時勝率64%

以下本文です。


Ⅰ. 分析結論
1.1 個別分析結論
注目内容=季節調整済の「CPI前期比(※4)」「CPIトリム平均前期比(※5)」「CPI加重平均前期比中央値(※6)」の発表結果の市場予想との乖離

反応程度=大きい(直後1分足値幅の過去平均値28.0pips)

反応方向=非常に素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率89%)

指標間影響力比較分析=過去事例は本指標単独発表しかなく、影響力持続時間は長い

項目間影響力比較分析=「前期比」と「加重平均」は指標発表後早期にチャートへの影響力を失うのに対し、「トリム平均」は影響がしばらく持続

利得分析=事後差異判別式の解10ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で6.1pips

移動平均線分析=当月発表直後の反応方向を予想できない

過大反動分析=前月実態差異判別式の解の絶対値が0.9超1.2以下のとき有効

指標一致性分析=事前差異判別式の解の絶対値が大きいと、その解の符号と直前10-1分足と直後11分足は逆方向、直前1分足と直後1分足は同方向になりがち

反応一致性分析=発表10分前から1分前までの値動きは、指標発表の直前直後1分間のチャートが動く方向を示唆しがち

伸長性分析=指標発表後の反応は、直後1分足順跳幅方向に伸び続けがち

(※4)(※5)(※6) それぞれ、ABS発表画面「Summary」下部の表の下3行の「All groups CPI, seasonally adjusted 」「Trimmed mean 」「Weighted median」の前期比の項を参照方


1.2 結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針を下表に示します。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

(※7) 上表において、期待的中率が定量化できているのは反応方向だけで(判定対象)、上記pipsは過去平均値や中央値に基づく利確や損切の参考値です。狙うべきpipsは、その時々のボラティリティや本指標への注目度によって大きく異なります。


Ⅱ. 分析対象

分析対象は、2013年1-3月集計分から2020年1-3月集計分までの豪州四半期消費者物価指数における

  • CPI前期比」(以下「前期比」と略記)
  • CPIトリム平均前期比」(以下「トリム平均」と略記)
  • CPI加重平均前期比中央値」(以下「加重平均」と略記)

の3項目です。

本指標の発表では、過去にときどき前月の発表値修正が行われているものの、気にする必要はありません。


2.1 指標推移

分析対象期間における各項目毎の推移を下図に示します。

各項目毎の統計値を下表に示します。

各項目毎の判別式の解の統計値を下表に示します。

上表最後の行の「総合」は、後記3.2項に示す判別式の解の統計値です。


2.2 反応結果

分析対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は28.0pipsで、本指標は反応が大きい指標です。

とは言え、直後1分足と直後11分足の順跳幅が平均値の1.5倍超となる頻度は20%以下で、60%弱は平均値以下しか反応していません。
よって、本指標での取引では、反応が予想外に小さくて利確の機会を逸することに注意が必要です。

また、指標発表直後の1足内反転率は3%しかなく、反転するときは発表から暫くしてから起きています。


Ⅲ. 指標分析
3.1 指標間影響力比較分析

指標間影響力比較分析は、本指標が他の指標と同時発表された過去事例の実績に基づき、本指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時を、本指標の反応方向に関わる分析対象から除くために行います

がしかし、対象期間に本指標と同時発表された指標はありません

気がかりな点は、本分析が本指標より30~90分遅れて中国指標が発表されるときの中国指標の影響を踏まえていない点です。
がしかし、次項に示す通り、本指標の実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向は高い一致率を示しています。
このことは、本指標の影響持続時間は発表後10分以上続くことを示しており、もし本指標発表後に中国指標の発表が控えていても大して気にする必要がない、ということです。

ともあれ、本項分析結論は「本指標のチャートへの影響力は強く、本指標での取引にあたって同時発表指標を気にする必要がない」です。


3.2 項目間影響力比較分析

項目間影響力比較分析は、ひとつの指標で複数の注目すべき指数(項目)が発表されるとき、各指数(項目)が反応方向に与える影響力の強さと方向を求めます
各指数(項目)が反応方向に与える影響力の強さは、事前差異判別式の解の符号が直前10-1分足と、事後差異判別式の解の符号が直後1分足と、実態差異判別式の解の符号が直後11分足と、方向一致率が高くなるように判別式の各係数を求めます。
判別式の係数の値の大きさと符号が、各指数(項目)が反応方向に与える影響力と見なせます。

さて、本指標の分析対象項目は、前期比・トリム平均・加重平均、でした。

先に、3.1項結論に基づく29回の過去事例について、各項目毎の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

結果、いずれの項目も、指標発表前の反応方向への影響力は弱いことがわかります。
一方、発表結果が市場予想を上回ったか下回ったかは、反応方向に影響を及ぼしていることがわかります。
そして、前期比加重平均の良し悪しが指標発表後早期にチャートへの影響力を失うのに対し、トリム平均は影響がしばらく持続していることがわかります。

以上のことから、これら3項目の各判別式を次のように立式します。

判別式=A✕雇用者数増減[万人]の差異+B✕失業率[%]の差異+C✕労働参加率[%]の差異
但し、
事前差異=市場予想ー前回結果
事後差異=発表結果ー市場予想
実態差異=発表結果ー前回結果(前回結果の修正が行われたときは修正結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、先の判別式の形式と上表から、事後差異判別式は、1✕前期比の事後差異+3✕トリム平均の事後差異+1✕加重平均の事後差異、となります。
そして、上表のように各判別式の各項目係数を決めると、指標発表後の反応が素直に記述できることがわかりました。

なお、トリム平均加重平均は、前期比と同じデータを変動が小さくなるように加工したものです。
そのため、例えばトリム平均の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は100%とは言え、29事例のうち12事例で事後差異判別式の解が0となっています。
判別式の解が0では、ローソク足の方向がどちらか判定できません。
そこで、3項目のうち少なくとも2項目で判別式を記述するようにしました。
これは、相関のある複数の項目で重回帰すべきでない、という基本に反していることは承知願います。


3.3 利得分析

利得分析は、各判別式の解の1単位当たり何pipsの反応が起きたかを、過去の実績から検証しています。

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で61.1pipsです。
但し、毎年の変化を見ると16.7~88.0pipsとばらつきが大きく、予想乖離幅の大きさで反応程度を見込むことはできません。


Ⅳ. 反応分析
4.1  移動平均線分析

移動平均線分析では、指標推移のトレンド方向を根拠にした取引の勝ちやすさを、過去の実績から定量判定します

指標推移が上昇中/下降中の判定は、市場予想と発表結果の移動平均線(各6回)の上下位置で行います。
発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上なら上昇中、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも下なら下降中、と判定します。
そして、2つの移動平均線がクロスした翌月以降に反応方向を検証します。
もし指標推移上昇中に指標発表直後の反応方向が陽線か、指標推移下降中に反応方向が陰線ならば「仮説一致」、その逆に反応していたら「仮説不一致」と判定します。
分析方法論等の詳細説明はこちらを参照願います。

結果を下表に示します。

結果、仮説一致率は52~58%で、実績は仮説を棄却しています。
すなわち、3.2項で導出した判別式の解では、発表結果6回移動平均線と市場予想6回移動平均線の上下関係で直後1分足の方向を予測できません
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

(※8) 上表「翌月から」の「判定回数」が23回となっているのは、分析対象事例64回の最初の6回で移動平均値が確定するため


4.2 過大反動分析

過大反動分析では、過大反動を見込んだ取引の勝ちやすさを、過去の実績から定量判定します

例えば、前月と前々月の指標発表結果に大きな差があったとき、当月はその差と逆方向に反動を起こすという予想がしっくりきます。
けれども、当月の市場予想にはこの反動が見込まれているため、その反動が市場予想を超えるほど大きな反動になるか否かが問題です。
この「市場予想を超えるほど大きな反動」を「過大反動」と呼び、指標発表直後の反応方向が過大反動を見込んだ方向と一致していたら「仮説一致」と判定しています。
分析方法論等の詳細説明はこちらを参照願います。

結果を下表に示します。

結果、前月実態差異判別式の解の絶対値が1.2以下のとき、過大反動が起きやすいことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
がしかし、このとき過大反動が起きると見込んでも、実際に指標発表直後1分足がその方向に反応することは、前月実態差異判別式の解の絶対値が0.9超のときだけです(上表「仮説一致率」参照)。
本事例は本分析の有効事例です。

なお、過大反動が起きると見込む方向とは、前月実態差異判別式の解の符号と逆方向です。

(※9) 上表「全数」の「判定回数」が27回となっているのは、分析対象事例29回の最初の1回で前月実態差異判別式の解の符号が確定するため最初の1回を除くのと、判別式の解が0だったことが1回あったため


4.3 指標一致性分析

指標一致性分析は、差異判別式の解がローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、上左図と上右図は相関が弱く上中図は相関が強いことは一目瞭然です。
がしかし、いくら上中図のように相関が強くても、事前に判別式の解を予想できない限り、取引には使えません。

そこで、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に求めます。

上右図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は一致率が高く、発表結果が市場予想を上回るか否かに素直に反応することがわかります。

そして、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

事前差異判別式の解の絶対値が大きいと、その解の符号と直前10-1分足と直後11分足は逆方向、直前1分足と直後1分足は同方向になりがちです。
ポジションの取得にあたってどの程度の方向一致率をアテにするかが判断どころです。


4.4 反応一致性分析

反応一致性分析は、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の大きさや方向を示唆していないかを定量分析しています。

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、上左図と上中図は相関が弱く上右図の相関が高いことは一目瞭然です。
そして、上右図の回帰式では、直後1分足値幅よりも直後11足値幅は平均16%伸びると予想できます。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前1分足は陰線率が80%と、偏りが目立ちます
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%となっています。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象の29回の事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

直前1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅が小さいときはその逆方向、大きいときはそれと同方向になりがちです。
そして、直後1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅が大きくなければ、それと逆方向になりがちです。

指標発表の10分前から1分前までの値動きは、指標発表の直前直後1分間のチャートが動く方向を示唆しがちです。


4.5 伸長性分析

伸長性分析は、指標発表後に一方向に反応を伸ばしがちだったか否かを定量分析しています。

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
そのわからない点を、過去の傾向から探るのが伸長性分析です。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは79%、値幅が同方向に伸びたことも79%でした。
初期反応方向への追撃は5回に4回、成功しそうです。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証しておきます。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

です。

指標発表後の反応は、直後1分足順跳幅方向に伸び続けがちです。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率88%
  • 方針適用時の分析的中率60%、そのときの実取引勝率64%
  • 1発表当たりの平均獲得pips△6.62、同平均取引時間1分29秒

です。

従来は分析的中率が低く、そのための今次改訂です。

(※10) 実取引勝率には方針外取引の成績を含まない


関連リンク

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改訂履歴

3訂(2019年1月26日)
4訂(2020年6月22日) 新書式反映、2020年1-3月集計分までを反映

以上

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