豪州物価指標「四半期消費者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析(改訂作業中)

本稿は、豪州物価指数「四半期消費者物価指数※1発表前後のAUDJPYの過去反応を分析し、本指標での過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

 

※1  ABSの公称統計名「Consumer Price Index」、以下「CPI」と略記。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS※2
発表日時
翌四半期最初の月の下旬10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
CPI・トリム平均値・加重中央値※3など(発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=季節調整前前期比と、季節調整済トリム平均値前期比・同加重中央値前期比の対予想乖離
  • 反応程度かなり大きい(直後1分足値幅の過去平均値25.0pips
  • 反応方向かなり素直(事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率89%
  • 伸長性=指標発表後は反応を伸ばし続けがち

※2 オーストラリア政府統計局(ABS)は、オーストラリアの国家統計機関。ABSはウェブサイトを通じて統計と出版物を政府・商業・公共ユーザーに同時公開する(通常、キャンベラ時間午前11時30分)。

※3 前期比は、8つの大都市居住の8000世帯における支出割合の高い商品やサービスの価格変化(税金を含む)。トリム平均値(刈込平均値)は、価格上昇の激しい15%と価格下落の激しい15%の品目を除いた(中央70%の)平均値。トリムはトリミングと言えばイメージしやすい。一部の財やサービスの特殊事情による異常値を除外するために用いる。加重中央値は、価格上昇の激しい25%と価格下落の激しい25%の品目を除いた(中央50%の)中央値。支出割合が大きな品目には予め重み付けをして求める。
他の主要国中銀が重視するコアインフレ率に代えて、豪中銀はトリム平均と加重平均の単純平均を基調インフレ率と捉えて重視している。

※4 下図出典は『ABS HPの2021年1-3月期CPI発表画面巻頭, 「Key statistics」, 28/04/2021』の表。赤下線部が季節調整前前期比

そして、同画面を下にスクロールして最初の表「Weighted average of eight capatal cities」にトリム平均値加重中央値の記載がある。なお、ここで注目すべきは、上のCPI前期比に季節調整前値が取り上げられている点

1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。

※5 上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。本表の見方についてはこちらを参照方。


Ⅱ. 分析対象
2.1 対象範囲

注目すべき指数は、豪州「四半期消費者物価指数」における次の値です。

  • 前期比:支出割合毎に重み付けした品目毎の対前期物価変動比の平均値
  • トリム平均値前期比:価格上昇/下降の激しい各15%をトリミング(削除)した上での平均値の季節調整済前期比
    (以下「トリム平均値」と略記)
  • 加重中央値前期比:支出割合が大きい品目に重み付けした上で、価格上昇/下降の激しい各25%をトリミングした上での中央値の季節調整済前期比
    (以下「加重中央値」と略記)

これら発表前後のチャートの動きを分析(反応分析)します。分析の対象期間及び反応分析の対象回数は下表の通りです。本指標はチャートに与える影響力が強く※7、対象期間の発表全てについて反応分析を行います。

※6 後記3.1項参照方。

2.2  指標推移と統計値

まず、対象指数の過去推移を下図に示します。図の配置は、前期比(左)・トリム平均値(右上)・加重中央値(右下)です。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

まず、コロナ禍の時期を除くと、豪州物価はほぼずっと上昇し続けています。
おそらくその原因は、豪州最低賃金が毎年上昇し続けており、且つ、フルタイム雇用者よりパートタイム雇用者の最低賃金の方を高くしなければならない制度があるため、と思われます。企業の最低賃金が上昇し続ける以上、売価も定期的に上げ続けないと経営が成り立ちません。

前期比の市場予想は発表結果の上下動方向をほぼ正しく当てているように見受けられます。
コロナ禍時期を除くと、2016年1-3月期の前期比落ち込みが目立ちます。このときは自動車燃料の下落(△10.0%)を筆頭に物価安が起き、全体としては1999年以来の下落率でした。一方、2013年7-9月期の前期比上昇も目立ち、このときは自動車用燃料高騰(+7.6%)や上下水道料金値上げ(+9.9%)の影響が大きく響きました。
どの国であれ、燃料費の大きな変動は物価に影響を与えます。

2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各始値基準ローソク足とそれら統計値を下図・下表に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(右上)・直後1分足(左下)・直後11分足(右下)となっています。指標発表前と指標発表後でそれぞれ縦軸は揃えています。

反応程度は2017年頃から小さくなったように見えます。

直後1分足値幅の過去平均値は25.0pipsで、反応はかなり大きい指標です。そして、全幅に対する逆ヒゲがほとんどありません。反応が大きいとは言え、平均値の1.5倍超に達したことは計25%(年に3度)です。拙速な決済はもったいないものの、多くの場合に過去平均値の大きさに惑わされて利確機会を逸することには注意しましょう。

直前1分足は陰線率が高いように見受けられます。

 

 

 


Ⅲ. 指標分析

本節は、他の指標との同時発表等の実績から、本指標の分析範囲を更に絞りこみます。また、分析対象3指数の反応への影響度を求めます。

3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

本指標はチャートへの影響力が強く、他の指標と同時発表があってもそれを気にする必要がありません

ただ気がかりな点は、本分析が本指標より30~90分遅れて中国指標が発表されるときの影響を踏まえていない点です。がしかし、次項に示す通り、本指標の実態差異判別式の解の符号と直後11分足値幅方向は高い一致率を示しています。このことは、本指標の影響持続時間は発表後10分以上続くことを示しており、もし本指標発表後に中国指標の発表が控えていても大して気にする必要がない、ということです。

3.2  項目間影響力比較分析

対象項目は、前期比・トリム平均値・加重中央値、でした。
そして、参考までに前年比の統計値を示していました(本改訂以前は前期比と前年比で判別式を求めていました)。

まずは上記項目毎の判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

結果、いずれの項目も、指標発表前の反応方向への影響力は弱いことがわかります。
一方、発表結果が市場予想を上回ったか下回ったかは、反応方向に影響を及ぼしていることがわかります。
そして、前期比加重中央値の良し悪しが指標発表後早期にチャートへの影響力を失うのに対し、トリム平均値は影響がしばらく持続していることがわかります。

前年比は、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が低く(不一致率が高く)、これはこれで意味があります。
がしかし、前述の通り、以前の前年比を絡めた判別式を用いた分析に基づく成績には満足していません
そのため、今次改訂では前年比を判別式から外すことにしました。

よって、前期比・トリム平均値・加重中央値の3項判別式を次のように立式します。

判別式=A✕前期比[%]の差異+B✕トリム平均値[%]の差異+C✕加重中央値[%]の差異
但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回結果(前回結果の修正が行われたときは修正結果)

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

 

例えば、先の判別式の形式と上表から、

事後差異判別式=1✕前期比の事後差異+3✕トリム平均値の事後差異+1✕加重中央値の事後差異

となります。
そして、上表のように各判別式の項目係数を決めると、指標発表後の反応が素直に記述できることがわかりました。

なお、トリム平均値加重中央値は、前期比と同じデータを変動が小さくなるように加工したものです。
そのため、例えばトリム平均値の事後差異判別式の解は、29事例のうち12事例で0となっており、判別式の解が0ではローソク足の方向が素直だったか否かを判定できません。
そこで、3項目のうち少なくとも2項目で判別式を記述するようにしました。

なお、相関のある複数の項目で重回帰すべきでない、という統計の基本に反していることは承知願います。


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

 

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で61.1pipsです。
但し、毎年の変化を見ると16.7~88.0pipsとばらつきが大きく、予想乖離幅の大きさで反応程度を見込むことはできません。


Ⅳ. 反応分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  移動平均線分析

事前差異と事後差異の総合判別式の解の移動平均線分析結果を下表に示します。

結果、仮説一致率は52~58%で、実績は仮説を棄却しています。
すなわち、3.2項で導出した総合判別式の解では、事後差異判別式と事後差異判別式の解の6回移動平均線の上下関係で直後1分足の方向を予測できません
結論、本指標は本分析の不適合事例です。

※7  上表「翌月から」の「判定回数」が23回となっているのは、分析対象事例29回の最初の6回で移動平均値が確定するため。


4.2  過大反動分析

実態差異と事後差異の総合判別式の解を用いた過大反動分析結果を下表に示します。

結果、前月実態差異判別式の解の絶対値が1.2以下のとき、過大反動が起きやすいことがわかります(上表「過大反動率」参照)。
がしかし、このとき過大反動が起きると見込んでも、実際に指標発表直後1分足がその方向に反応することは、前月実態差異判別式の解の絶対値が0.9超のときだけです(上表「仮説一致率」参照)。
本事例は本分析の有効事例です。

なお、過大反動が起きると見込む方向とは、前月実態差異判別式の解の符号と逆方向です。

※8  上表「全数」の「判定回数」が27回となっているのは、分析対象事例29回の最初の1回で前月実態差異判別式の解の符号が確定するため最初の1回を除くのと、判別式の解が0だったことが1回あったため。


4.3  同期/連動分析
(1)  四半期生産者物価指数との対比

分析対象指標を本指標前期比、比較対象指標を四半期生産者物価指数前期比、としたときの同期/連動分析は『豪州物価指数「四半期生産者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析』の稿に記載しています。
結論は、生産者物価指数と消費者物価指数の前期比同士が同期/連動している兆しは見出せない、です。

(2) MIインフレ期待との対比

MIインフレ期待」は、メルボルン研究所(Melbourne Institute)の月次調査指標です。
この指標は、標準世帯による消費者物価指数の1年後の上昇を予想比率を表しています。
月次指数のため、ここでは該当3か月の発表値を平均して四半期の値と見なすことにします。

いま、分析対象指標を本指標前年比、比較対象指標をMIインフレ期待の3か月平均値として、両者推移を下図に示します。

両指標の値はさておき、上昇/下降のタイミングを見比べてください。
何か偶然にしてはタイミングが合い過ぎているように見えます。

そこで、両指標同士の実態差異判別式の解の符号の一致率(単期毎の増減方向の一致率)と、MIインフレ期待平均の実態差異判別式の解の符号と本指標発表前後のローソク足方向の一致率を、下表に求めておきました。

結果、いずれの一致率も取引の根拠にするには不足しています。

結論、MIインフレ期待を参照にして本指標での取引することは勧められません


4.4  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、上左図と上右図は相関が弱く上中図は相関が強いことは一目瞭然です。
がしかし、いくら上中図のように相関が強くても、事前に判別式の解を予想できない限り、取引には使えません。

そこで、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を下図に求めます。

 

上右図から、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向

は一致率が高く、発表結果が市場予想を上回るか否かに素直に反応することがわかります。

そして、指標発表前に判別式の解がわかっているのは事前差異しかありません
そこで下図に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に事前差異判別式の解の符号と各ローソク足の指標方向一致率を求めました。

事前差異判別式の解の絶対値が大きいと、その解の符号と直前10-1分足と直後11分足は逆方向、直前1分足と直後1分足は同方向になりがちです。
ポジションの取得にあたってどの程度の方向一致率をアテにするかが判断どころです。


4.5  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、上左図と上中図は相関が弱く上右図の相関が高いことは一目瞭然です。
そして、上右図の回帰式では、直後1分足値幅よりも直後11足値幅は平均16%伸びると予想できます。

次に、4本足チャート各ローソク足同士の方向一致率を下図に求めます。

直前1分足は陰線率が80%と、偏りが目立ちます
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%となっています。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象の29回の事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

直前1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅が小さいときはその逆方向、大きいときはそれと同方向になりがちです。
そして、直後1分足値幅方向は、直前10-1分足値幅が大きくなければ、それと逆方向になりがちです。

指標発表の10分前から1分前までの値動きは、指標発表の直前直後1分間のチャートが動く方向を示唆しがちです。


4.6  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は83%です。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは79%、値幅が同方向に伸びたことも79%でした。
初期反応方向への追撃は5回に4回、成功しそうです。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れることがあります
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証しておきます。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

です。

指標発表後の反応は、直後1分足順跳幅方向に伸び続けがちです。


Ⅴ. 取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績は下表の通りです。

上表「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていません。

結果、

  • 狙った発表事例(指標発表前に取引方針を開示)での方針適用率88%
  • 方針適用時の分析的中率60%、そのときの実取引勝率64%
  • 1発表当たりの平均獲得pips△6.62、同平均取引時間1分29秒

です。

従来は分析的中率が低く、そのための今次改訂です。

(※10) 実取引勝率には方針外取引の成績を含まない


関連リンク

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改訂履歴

3訂(2019年1月26日)
4訂(2020年6月22日) 新書式反映、2020年1-3月集計分までを反映。判別式から前年比を除き、トリム平均値と加重中央値を加えた。
4.1訂(2020年7月20日) 3.2項誤記訂正、同期/連動分析追加。

4.2訂(2022年3月17日):事前差異判別式係数を変更。2021年10-12月期集計分まで反映。

以上

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