豪州物価指標「四半期生産者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州物価指数「四半期生産者物価指数※1」発表前後のAUDJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

併せて、数日先に発表される豪州物価指標「四半期消費者物価指数」の上昇/下降と、単期毎の同期性有無を検証することが目的です。

発表機関
オーストラリア政府統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS
発表日時
翌四半期の1か月後前後の火曜日10:30(現地夏時間は09:30)
発表内容
財とサービス※2が生産地を離れた時点か生産工程に入った時点のどちらかの価格の相対指数※3発表事例
反応傾向

  • 注目内容=四半期生産者物価指数の「前期比」「前年同期比」の対前回乖離
  • 反応程度=かなり小さい(直後1分足値幅の過去平均値3.3pips
  • 反応方向=指標発表後の反応方向に市場予想はあまり関係なく(事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率65%)、前回結果と今回結果の差異に対し素直に反応しがち(実態差異は別式の解の符号と直後1分足の方向一致率75%
  • 伸長性=指標発表後は反応を伸ばし続ける指標ではない

※1  ABSの公称統計名は「Producer Price Indexes」(略号「PPI」)。本指標は、多くのFX会社HPの経済指標説明で、重要度・注目度ともあまり高く評価されていない。これは、本指標発表日が消費者物価指数よりも後で発表されることが一因、と考えられる。結果、本指標は市場予想が見当たらないことすらある。

※2  生産者物価指数におけるサービスとは、例えば、電力・ガス・上下水道供給等が挙げられる。

※3  相対指数とは、基準年に対する価格変化を指す。一部分野の価格を除くと、2011/2012年の価格を100としている。指数は、2019年から2020年年初時期で110をやや上回る水準に達している。ABSによる本指標発表は、通例、巻頭にその指数の「前期比」と「前年同期比」が挙げられ、本指標での取引はこれら「前期比」と「前年同期比」の数値に対して行う。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
反応程度が小さい割には反応方向に与える影響は強いものの、他の指標と同時発表時には取引を避けた方が良い。指標発表前に市場予想が影響を与え、発表後は市場予想よりも前回結果との差異が反応方向に影響する。この傾向は、以前よりも最近になって顕著になっている。また、消費者物価指数との単期毎の同期性はないものの、同期の消費者物価指数前期比の実態差異判別式の解の符号は、本指標発表前後の反応方向と逆になりがち。
Ⅱ. 分析対象
2013年1-3月期集計分以降の発表回数29回のうち、指標分析対象は27、反応分析対象は23。指標分析は、前期比の市場予想が行われた場合が対象。反応分析の対象は、指標分析の対象から他の指標と同時発表が行われた場合を除く。
Ⅲ. 指標分析
他の指標との同時発表があるときは、本指標での取引は避けた方が良い。前年同期比は実態差異判別式のみに反映され。前年同期比0.4%の差異が前期比0.1%に相当する。
Ⅳ. 反応分析
事前差異判別式の解の符号が、直後1分足値幅方向を示唆しがち。指標発表後の反応方向は、実態差異判別式の解の符号との方向一致率が高い。本指標発表直前には発表直後の反応方向を逆向きに示唆する動きに注視すべき。反応を一方向に伸ばし続けがちな指標ではない。なぜか、数日前に発表された消費者物価指数前期比の実態差異判別式の解の符号と、本指標発表前後の反応方向は逆になりがち。消費者物価指数との単期毎の同期性はないものの、同期の消費者物価指数前期比の実態差異判別式の解の符号は、本指標発表前後の反応方向と逆になりがち。
Ⅴ. 過去成績
本指標での取引実績はない。
1.2 結論

次節以降の論拠(データ)に基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

※4  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

分析対象は、2013年1-3月期集計分から2020年1-3月期集計分までの豪州四半期生産者物価指数における

  • 前期比
  • 前年同期比」(以下「前年比」と略記)

です。

後掲する指標推移グラフに示す通り、前期比は市場予想が見当たらなかった事例が2回あります※5
その2回は指標分析の対象から除きます。

一方、反応分析の対象は下表の通り少なくなります。
これは、上記指標分析の対象事例から、後記3.1項記載理由に依ります。

※5  2015年7-9月期、2020年1-3月期。


2.2  指標推移

対象期間における指標推移を下図に示します。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

上図プロット値と3.2項記載の各判別式の解の統計値を下表に示します。

上表最後の行の「総合」は、後記3.2項に示す判別式の解の統計値です。

2017年以前の前年比の市場予想はほとんど見つかりません。
そのため、前年比は実態差異のみ判別式の解を求めています。


2.3  反応結果

対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。
そして、下図の歯抜け箇所は分析対象外の期です。

上図における各ローソクの反応程度の統計値とその分布を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は3.3pipsで、反応がかなり小さい指標です。
けれども、指標発表直後の1足内反転率は0%で、反転するときは発表から暫くしてから起きています。
反応程度が小さい割に反応方向への影響は強い、と言えるでしょう。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標と、影響力比較結果を下表に一覧します。

上表「同時発表指標」名が青太字ならば本指標の方が影響力が強く、赤太字ならば本指標の方が影響力が弱い、と判定しています。

四半期輸入物価指数前期比と本指標は、対象期間に2回同時発表され、方向一致率は同値です。
今後も同時発表が何度か行われれば、本指標の方が影響力が強いことが確かめられるかも知れません。
がしかし、本稿では慎重に判断します。

結論、

  • 本指標が小売売上高・四半期輸入物価指数と同時発表された事例を、本稿反応分析の対象から除く(その結果、本稿反応分析対象数は23事例となる)
  • このことは、本稿結論の取引方針が今後それら指標との同時発表時に適用できないことを意味する

です。


3.2 項目間影響力比較分析

本指標の分析対象項目は前期比前年比でした。
まず先に、3.1項結論に基づく23事例について、各項目毎の判別式の解の符号と対応ローソク足の方向一致率を下表に纏めておきます。

次に、2つの項目を踏まえた各判別式を次のように立式します。

判別式=A✕前月比の差異+B✕前年比の差異
但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回結果、とおく

上式において、各判別式の係数と、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を下表に纏めておきます。

例えば、先の判別式と上表係数から本指標実態差異判別式は、

実態差異判別式=4✕前月比の実態差異ー1✕前年比の実態差異
但し、前月比の実態差異=前月比の(発表結果ー前回結果)、前年比の実態差異=前年比の(発表結果ー前回結果)

と表します。

残念ながら、上表係数の各判別式は対応ローソク足との方向一致率があまり高くありません。
がしかし、この式の真価は後記4.2項に示されます


3.3 利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で2.4pipsです。
そして、注目すべき点は最近になって利得が大きくなっていることです。


Ⅳ. 反応分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  同期/連動分析

物価は上流から下流に伝搬する、と言われます。
そこで、生産者物価指数(分析対象指標)は消費者物価指数(比較対象指標)よりも先行するのか、を検証します。

対象期間における両指標前期比の推移を下図に示します。

次に、両指標前期比の増減方向の一致率を時期ズレも想定して求めます。

上図横軸は、生産者物価指数前期比が消費者物価指数前期比よりも〇か月先行/同期/遅行、と読みます。
上図縦軸は、両指標の増減方向の一致率を表します。

同期と1か月遅行の間にある灰色線より右側は、生産者物価指数前期比が消費者物価指数前期比よりも遅行しており、もし定説通りに物価が上流から下流に伝搬するのなら、その流れに逆行しています。
定説に反する逆行は起きない、と考えると、灰色線より右側の方向一致率は偶然の一致率を表していることになります。

一方、灰色線より左側が、物価が上流から下流に伝搬しているときの方向一致率を示します(同期は数日とか1か月以内の先行を含むことになります)。
灰色線の左側の方向一致率が右側の方向一致率を超えることはなく、これでは生産者物価指数前期比が消費者物価指数前期比より先行している兆しがあっても、ノイズ(偶然の一致)に埋もれてわからないはずです。

結論、生産者物価指数と消費者物価指数の前期比同士が同期/連動している兆しは見出せない、です

さて、生産者物価指数は消費者物価指数よりも数日後で発表されます。
そこで次は、先に発表された消費者物価指数前期比の改善や悪化が、後で発表される生産者物価指数発表前後の反応方向に影響しているか否かを検証しておきます。
下表をご覧ください。

両指標の同期/連動性が見出せないにも関わらず、消費者物価指数前期比の実態差異判別式の解の符号と、数日後に発表される生産者物価指数発表前後のローソク足値幅方向は、逆になりがちです。
その理由なんてわからないので、単なる偶然という可能性があります。

なお、上表の場面発生率は、左から59%・61%・52%・65%、です。
100%(指標発表毎に毎回)でない理由は、比較対象のどちらか一方でも0のときは集計しない、というこのサイトのルールに従っています。
これは、比較対象の実態差異判別式の解が0か、ローソク足値幅が0のとき、No Count(スプレッド分はさておき損得なし)と判定するためです。


4.2  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、いずれも相関が弱いことは一目瞭然です。
がしかし、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

本指標への反応方向は、多くの主要国主要指標のように、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が最も高い訳ではありません。
まず、指標発表以前に判明している事前差異判別式の解の符号が、直後1分足値幅方向と最も高い確率で一致しています。
また、指標発表後の反応方向は、事後差異判別式の解の符号でなく、実態差異判別式の解の符号との方向一致率が高くなっています。
これらは非常に珍しい傾向です。


4.3  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、いずれも相関が弱いことは一目瞭然です。
がしかし、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

直前1分足は陰線率が68%と偏りが見受けられるとともに、直後1分足の反応方向と逆になりがちです。
だからと言って、直前10-1分足は陽線率が高い訳でも直後1分足との方向一致率が高い訳でもありません。
よって、指標発表直前には発表直後の反応方向を逆向きに示唆する動きに注意しましょう
目立たない指標ですが、一部の大口か多数の取引参加者は、本指標直後の反応方向を的確に予想しています(期待的中率70%)。

また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は80%です。
そして、2.2項の過去平均反応程度を参照すると、直後1分足に比べ直後11分足は2倍弱の反応となっています。
がしかし、指標発表直後の反応方向を当てたら早めに利確すべきで、暫く反応が伸びるのを待つことは薦めません
その理由は次項を参照ください。


4.4  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は80%です。
そして、過去平均反応程度は、直後1分足に比べ直後11分足は2倍弱も反応があります。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばした回数の方が多いか、削ったり反転した回数が多いのかはわかっていません。
その点を過去の傾向から探ります。

下図をご覧ください。

これでは、初期反応方向への追撃を勧めることはできません

また、もし直後1分足の方向を当てても、その後に更に反応を伸ばすことを期待するには心もとない数字です。
たまに大きく勝つより負けを少なくし、地道に勝率でpipsを稼ぐという点からは、追撃を勧められません。


Ⅴ. 取引成績

本指標発表前に事前分析を開示したことは1度、取引記録はありません。

気の長い話ですが、本稿分析結論の取引方針の妥当性は、今後数年かけて検証することになる訳です。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2017年1月27日)
改訂(2020年6月21日) 新書式反映、2020年1-3月期集計分までを反映。その後、小さな文言修正等。
2.1訂(2020年7月19日) 同期/連動分析を追加。

以上

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