豪州景気指標「Westpac消費者信頼感指数」発表前後のAUDJPY反応分析

本稿は、豪州景気指標「Westpac消費者信頼感指数※1」発表前後のAUDJPYの動きを分析し、過去傾向に基づく取引方針を纏めています。

併せて、本指標結果が豪州小売売上高の結果を事前示唆するかの検証も、本稿の目的です。

発表機関
ウエストパック(Westpac、旧Westpac Banking Corpration)※2
発表日時
当月中旬水曜09:30(夏時間08:30)
発表内容
月初めの週における消費者の家計・景気・購買意欲・貯蓄への意識の対前月変化※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=「消費者信頼感指数」の対前回乖離
  • 反応程度=かなり小さい(直後1分足値幅の過去平均値2.8pips
  • 反応方向=市場予想が見当たらないことも多々あり、前回結果との大小を予想すると良い(実態差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率81%
  • 伸長性=直後1分足順跳幅が大きいときほど、初期反応方向にそのまま伸びやすい

※1  ウエストパックの委託研究でメルボルン研究所が調査を実施か。発表資料名は「Westpac-Melbourne Institute Index of Consumer Sentiment」。本指標は、国内FX会社HPの経済指標説明で無視されがちで、現在も事前に市場予想すら案内されていない。

※2  本店所在地はシドニー。豪州4大市中銀行のひとつで、1817年設立のニューサウスウェールズ銀行(豪州で最初の銀行)を起源とする。毎月月曜に「Australia & New Zealand weekly.」を公開し、主要経済指標はもとより、政府・議会イベントへの言及があり、日本入手が難しい現地経済紙の代わりとなる。

※3  調査は、18歳以上の世代毎/地域毎/性別毎に選ばれた1200人(世帯)に対し、月始めの週に電話で行う(回答率不明)。内容は、① 昨年/現在/来年の家計、② 来年/今後5年間の経済状況、③ 家庭用品の購入計画、④ 車輌や住宅の購入計画、⑤ 貯蓄状況/計画、の5項目、について3択回答。

※4  Media releaseでは、通例、消費者信頼感指数の「当月結果と前月結果の差異」「当月結果」「前月結果」が巻頭見出し直下に文章形式で示される。


Ⅰ. 分析結論
1.1  目次と要点
Ⅰ. 分析結論
反応分析初版のため、現時点では取引実績のない机上分析に過ぎない。反応が非常に小さい指標にも関わらず、発表直後は前回結果を上回るか否かに非常に素直に反応し、条件を満たせばその後も反応を伸ばす。NAB企業信頼感指数の良し悪しは、本指標取引にあたって参考にならない。一方、本指標結果は、条件を満たせば小売売上高が前回結果を上回るか否かを示唆する。
Ⅱ. 分析対象
指標分析対象は2015年1月期集計分以降の66回。反応分析対象は2017年7月集計分以降の36回。反応程度こそ小さいものの、反応方向は指標結果の良し悪しに非常に素直で、少なくとも発表から1分間は本指標の良し悪しがチャートに影響を及ぼす。
Ⅲ. 指標分析
市場予想は見当たらないことが多く、前回結果を上回るか否か(実態差異判別式の解の符号)に素直に反応する特徴を利用して取引すべき。
Ⅳ. 反応分析
直近10回の発表に関する限り、直後1分足は直前1分足と逆方向に反応しがち。但し、長期的にはこの傾向は成立していない。また、直前10-1分足値幅が大きいときほど、直後1分足値幅方向との一致率が高くなる。そして、直後1分足順跳幅が大きいときほど、順跳幅方向にも値幅方向にもそのまま反応を伸ばしがち。
Ⅴ. 取引成績
本指標での取引実績はまだない。
1.2 結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。
データからどのような過去の傾向を見出すかは自由です。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティや本指標への注目度によって大きく異なり、事前予想できないため判定対象外。


Ⅱ. 分析対象
2.1  分析母数

指標分析の対象は、

  • 消費者信頼感指数」(以下「信頼感指数」と略記)

のみです。

2019年8月集計分以前の市場予想はありません。
また、発表結果の修正が行われたことは分析対象期間にありません。

一方、反応分析の対象は下表の通りほぼ半減します。
これは、2017年6月集計分以前のチャート記録を持っていないためです。

2017年7月集計分以降は、反応(チャート)の記録こそあれ、市場予想は2019年9月集計分以降にしかありません。
結果、2017年7月集計分~2019年8月集計分の26回は、判別式が実態差異しかないまま反応分析を行っています。


2.2  指標推移

分析対象期間における指標推移を下図に示します。

※6  このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

上図プロット値と各判別式の解の統計値を下表に示しておきます。


2.3  反応結果

分析対象期間における4本足チャート各ローソク足の各始値基準ローソク足を下図に示します。
図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(左下)・直後1分足(右上)・直後11分足(右下)となっています。

上図における各ローソクの反応程度の統計値を下表に一覧します。

指標結果の良し悪しに最も素直に反応しがちな直後1分足値幅の過去平均値は2.8pipsしかなく、反応程度は非常に小さい指標です。
そして、反応程度がかなり小さいにも関わらず、全体的に1足内反転率は小さく無視できます。
かと言って、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は、後記4.2項に示すように82%と、非常に素直に反応しています。
以上のことから、本指標は反応程度こそ小さいものの、反応方向は指標結果の良し悪しに非常に素直で、少なくとも発表から1分間は本指標の良し悪しがチャートに影響を及ぼしている、と考えられます。

また、過去平均値の2倍超まで値幅が伸びることは、各ローソク足とも確率的に1年に2回程度しかありません。
取引するにせよ、本指標は1~2pipsしか狙えない指標だとわかります。


Ⅲ. 指標分析

以下の各項タイトル分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


3.1  指標間影響力比較分析

対象期間に本指標と同時発表された指標はありません


3.2  項目間影響力比較分析

分析対象が前月比だけなので、判別式は定義通りとなります。
すなわち、

事前差異判別式=前月比の(市場予想ー前回結果)
事後差異判別式=前月比の(発表結果ー市場予想)
実態差異判別式=前月比の(発表結果ー修正結果)
但し、前回結果の修正が行われなかった場合には、上式「修正結果」を「前回結果」と読み替える

です。


3.3  利得分析

分析内訳として指標差異(左上)と反応程度(左下)の期間推移と、分析結果として反応程度を指標差異で割った利得分析結果(右)を示します。
指標分析対象期間と反応分析対象期間と市場予想があったときと、それぞれが異なるため下図は歯抜け箇所が多々あります。

事後差異判別式の解1ips(Index Points)毎の直後1分足値幅は過去平均で1.1pipsです。

本指標の場合、市場予想が見当たらないことが多々あるため、別の尺度を挙げておくと、実態差異判別式の解1ips毎の直後1分足値幅は過去平均で0.9pipsの方が参考になるでしょう。


Ⅳ. 反応分析

以下、各項タイトルの分析名をクリックすると、各分析方法の詳細説明頁に移ります。


4.1  同期/連動分析
本指標結果を示唆する可能性がある指標としてNAB企業信頼感指数との対比、本指標が他の指標結果を示唆する可能性がある指標として小売売上高との対比、を行います。

(1) NAB企業信頼感指数との対比

比較対象指標は、NAB企業信頼感指数(以下、本項では「NAB」と略記)とします。
NABは企業、本指標(以下、本項では「WP」と略記)は消費者の景気認識が前月より改善したか否かを示す指標です。
この場合、どちらか一方が他方より先行している可能性があります。
がしかし、下図をご覧ください。

上図横軸は集計月で、発表月ではありません。
ちなみに、WPは集計月と同月発表、NABは集計月の翌月発表の指標です。
右端の方のコロナ禍による指数悪化がほぼ同時期なことはさておき、それ以前の両指標の上下動に同期や連動があるか否か、普通は読み取れません。
そこで次に下図をご覧ください。

上図横軸は、WPがNABより〇か月遅行/同期/先行、と読みます。
上図縦軸は、単月毎の両指標上下動の方向一致率、を表しています。

図から、両指標の単月毎の改善/悪化は高い方向一致率を示しておらず、両指標の単月毎の上下動に同期/連動関係はありません(もしあっても、それを区別して取引に役立つように抽出することはできません)。

ところで、両指標の発表日程は、NAB発表日の1~数日後に翌月集計分のWPの発表日となっています。
同月発表の両指標は、WPがNABの1か月前の集計結果、ということになります。
だからもし、WP発表時の取引で、NABの結果を参考にするなら、下表の2つのケースが考えられます。

例えば、前月発表のNABは、当月発表のWPと同時期の集計結果です。
そして、前月発表のNABの実態差異判別式の解の符号と、本指標直前10-1分足や直後1分足との方向一致率は、上表のように44%・50%でした。
同様に、当月発表のNABと当月発表のWPは、WPの方が集計時期が1か月先行しています。
これも、方向一致率は高くありません。


(2) 小売売上高前月比との対比

比較対象指標は小売売上高前月比です。
まずは下図をご覧ください。

上図横軸は集計月で、発表月ではありません。
ちなみに、WPは集計月と同月発表、小売売上高は集計月の翌々月発表の指標です。
そして、上下動を見比べやすくするため、縦軸は小売売上高の発表結果を10倍して表示しています(上図で1%の月の発表結果は0.1%)。

右端の方のコロナ禍による指数悪化が同期していることはさておき、それ以前の両指標の上下動に同期や連動があるか否か、普通は読み取れません。
そこで次に下図をご覧ください。

上図横軸は、小売売上高がWPより〇か月遅行/同期/先行、と読みます。
上図縦軸は、単月毎の両指標上下動の方向一致率、を表しています。
図中、灰色線は小売売上高の方がWPよりも先行している場合で、本稿ではこの区間の分布を偶然の一致/不一致の範囲(誤差範囲)と考えます。

上図赤太線は、両指標全数の時期ズレ毎の方向一致率比較結果です。
方向一致率は時期をずらしても50%から大きく外れておらず、誤差範囲内にも収まっています。

次に、同じことをWP発表結果を階層化して上図に重ねてプロットしてみます。
すると、青太線(WP発表値の全体値が4%超の場合)のように、同期と3か月遅行のとき、先に仮定した誤差範囲を超えることがありました。
こうした関係を上図からいちいち読み取ることは面倒なため、下表に関連情報を含めて纏めておきます。

例えば、両指標が同じ集計月で、WP発表結果の絶対値が4%超のとき、両指標の実態差異判別式の解の符号が73%一致、と読みます。
そしてそのとき、小売売上高発表時の直前10-1分足値幅方向は、同月集計分のWP実態差異判別式の解の符号と57%一致、と読みます。

結論は、

  • 小売売上高前月比の改善/悪化は、WPと同期もしくはWPより3か月遅行連動している可能性がある
  • 但し、その同期や連動は、WP発表結果の絶対値が大きいときだけ顕在化する
  • 小売売上高発表時の反応方向は、集計月が3か月前のWP実態差異判別式の解の符号と逆になりがち

です。

なお、本分析では次の場合が分析対象外となります。
どちらかの指標の実態差異判別式の解が0のときは、符号判定できないので分析対象外です。
小売売上高発表時の反応程度が0pipsのときは、ローソク足方向を判定できないので分析対象外です。
小売売上高がそれより影響力の強い他の指標と同時発表されたときは分析対象外です。
これらの場合を除いた上表の場面発生頻度を下表に纏めておきます。


4.2  指標一致性分析

各判別式の解とローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図はまだデータが少なく、回帰分析が有効とは言えません。
上右図はドット数こそ多いものの相関係数R2が低く、実態差異判別式の解から直後11分足の反応を予想することはできません。

次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

驚いたことに、判別式の解の符号とローソク足方向については、極めて高い一致率や不一致率が認められます

但し、事前差異と事後差異は、市場予想が行われた直近10回分のデータに基づいており、長期的にはアテになりません
例えば、上図では、直前10-1分足値幅方向と事後差異判別式の解の符号の一致率が13%です。
一方、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は90%です。
ならば、直前1分足と直後1分足の方向不一致率は、(1-0.13)✕0.9+0.13✕(1-0.9)=80%、となるはずです。
がしかし、次項に示す通り、実際の直前1分足と直後1分足の方向不一致率は53%と、中途半端な数字です。

なお、本指標では市場予想が10回しか確認できていないため、指標一致性分析の階層化分析は行いません。


4.3  反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

相関係数(R2値)を読むまでもなく、いずれも相関が弱いことは一目瞭然です。
そして、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

4本足チャート各ローソク足同士の値幅方向の一致率は、取引に有益なほど高くも低くもありません

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります
分析対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

信頼度が高い傾向は、階層の変化方向に応じて方向一致率が変化しているパターンです。
例えば、直前10-1分足値幅が大きいときほど、直後1分足値幅方向との一致率が上昇しています。


4.4  伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は64%です。
そして、過去平均反応程度は、直後1分足に比べ直後11分足は2倍弱も反応があります。
がしかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばした回数の方が多いか、削ったり反転した回数が多いのかはわかっていません。
その点を過去の傾向から探ります。

下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは56%、値幅が同方向に伸びたことは47%でした。
この数字ではとても追撃を勧められません。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです
そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

次に値幅方向です。

順跳幅方向にも値幅方向にも、直後1分足順跳幅が大きいほど、そのまま反応を伸ばすことが多くなっています。
特に、順跳幅方向は、直後1分足順跳幅1.9pips超(過去平均値の0.5倍超)のとき、直ちに追撃開始する根拠たり得ます。
また、値幅方向へは、直後1分足順跳幅3.8pips超(過去平均値超)のとき、直後1分足終値より直後11分足終値が同方向に反応を伸ばしています。


Ⅴ. 取引成績

本記事は本指標分析初版のため、事前方針に基づく取引実績はありません。


関連リンク

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改訂履歴

初版(2018年12月15日) 小売売上高前月比との同期/連動分析のみ
改訂(2020年7月14日) 新書式反映
2.1訂(2020年7月24日) 同期/連動分析に小売売上高との対比を追加

以上

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