豪中銀金融政策発表時のAUDJPY反応分析

本稿の過去傾向に基づく取引方針は、有用さが実績によって裏付けられています。
そのほとんどは「市場予想通りOCR変更なし」のとき、発表後少し待ってからの追撃で稼いでいます。少し待つのは発表直後に逆ヒゲを形成することが多いためです。その結果、稼げるpipsが減っても仕方ありません。それにもし「市場予想に反するOCR発表」があったら、発表直後の瞬間的な大きな跳ねで致命傷を負いかねません。

RBA声明発表に限ったことではありませんが、市場の注目度が高くて大きく動くことがある指標での取引には呼吸のようなものがあります。そのため発表後は、① 数秒~10数秒間の方向見極め、② その後1~4分に起きがちな一旦戻し、③ 発表後3~4分が過ぎてから方向の再度見極め、といった判断を順次に行うことになります。

また、そういった発表があるときは、FX会社によってはスプレッドを拡大するところもあります。利確/損切の目安をスプレッドの5倍以上とした上で、(ファンダメンタル分析によっぽど自信がある人を除いて)短時間取引の繰り返しが望ましいと思います。
但し、そういう自信がある大口参加者たちが激しい売買をするからレートが上下に跳ねまくるのです。ならばアマチュアが何の自信を持って何分もポジション保有し続けるのか考えた方が良いでしょう。

意外なことに「市場予想通りOCR変更」があったときは、直後1分足と直後11分足が反転したことが多いことも知っておいた方が良いでしょう。この場合は「利上げだからロング」「利下げだからショート」なんて思い込んではいけません。
その一方「市場予想に反してOCR変更」があったときは、直後1分足よりも直後11分足が伸びることが多くなっています。この場合には「そろそろ逆張り」なんて考えない方が良いでしょう。

※1 豪中銀発表名は「Statement on Monetary Policy金融政策に関する声明)」。


Ⅰ. 指標要点
1.1  概要
発表機関
オーストラリア準備銀行※2(Reserve Bank of Australia:RBA
発表日時
1月を除く毎月第1火曜日13:30(夏時間12:30=現地時間14:30)
発表内容
銀行間取引の翌日物貸出金利(OCR)※3発表事例※4
反応傾向

  • 注目内容=翌日物貸出金利(Official Cash Rate:OCR)変更有無
  • 反応程度=中程度(直後1分足値幅の過去平均値13.6pips)、但し市場予想に反したOCR発表時には非常に大きい(同49.4pips
  • 反応方向=一概には言えない
  • 伸長特性=市場予想通りOCR変更なしの場合、直後1分足順跳幅が14.3pips超に達したら直ちに追撃し、発表後1分を過ぎたら利確の機会を窺うべき
補足説明

  • 本稿分析結論の過去傾向に基づく取引方針の実績は、分析的中率76%取引勝率76%1発表あたり損益+12.17pips、と有用さが裏付けられているⅥ節参照)
  • 発表直後の逆ヒゲに気を付けた方が良い
  • 市場予想通りOCR変更なしの場合は小さく短時間の売買を繰り返す方が良い
  • 市場予想通りにOCR変更時は発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を窺う方が良い
  • 市場予想に反したOCR発表時は反応を伸ばし続けることが多い

※2 金融政策は、9名からなる理事会(Reserve Bank of Australia Board)の多数決によって決定される。
豪中銀には法的責務として「金融政策を通じた通貨価値の安定・最大雇用の維持・経済的繁栄と厚生の促進」が課されている。そしてそれら責務を果たすため「インフレターゲット」を掲げ、物価上昇率を年2~3%のバンドに収めることを目標としている。なお、インフレターゲット対象の基調インフレ率とは、トリム平均値と加重中央値の平均消費者物価指数を指す。

※3 下図は、価格(Price)と数量(Quantity)のグラフ上に需要(Demand)と供給(Supply)の関係を描いている。RBAは政策金利回廊(Policy interest rate corridor)の範囲内でSupplyを変化させて(国債の購入や放出でSupply線を左右に動かし)Demandとの交点を移動させる。仮にDemandとSupplyの交点が下図よりも左側にあるなら、Supplyを増やして交点を右に移動させれば、その交点はTargetの方に向かう。この交点の目標をどこに置くのかが、RBA声明におけるOCRである。
下図出典は『RBA HP「How the Reserve Bank Implements Monetary Policy(金融政策実施方法)」 )。

※4 金融政策を決定する理事会の結論は「Monetary Policy Decision金融政策決定事項)」という声明文の公開によって行われる声明文は、概要・国際環境・国内経済/金融情勢・インフレ・経済見通し・予測、の順に定型的に構成されている。声明巻頭には今後の金融政策の維持や変更といった結論が示され、それ以下の部分でその結論に至った現状と将来の経済情勢の認識が示される。そして政策が緩和的か引締的か、あるいは、経済見通しが以前よりも改善しそうか否かに、AUD相場が反応する。
下図に政策変更時の発表事例の巻頭部分を示す。政策変更時には、赤線部のように「〇ベーシスポイント下げて(上げて)〇%に決定した」と第一段落に結論が記される。

1.2  結論

次節以降のデータに基づき、本指標での過去傾向に基づく取引方針例を下表に示します。下表は下部2項を除き、発表結果が「市場予想通りOCR変更なし」だったときの方針です。

※5  上表において、事後判定対象は反応方向のみ。参考pipsは過去の平均値や中央値やそれらの差。利確や損切の最適pipsは、その時々のボラティリティ、トレンド状態、レジスタンス/サポートとの位置関係によって大きく異なるため、事前予想できず判定対象外。本表の見方についてはこちらを参照方。


Ⅱ. 分析対象
2.1 対象範囲

かつてRBAの主たる政策目標実現手段は、

  • 翌日物貸出金利(Official Cash Rateあるいは:以下「OCR」と略記)

の設定に限られていました。OCRは先の※3で説明したCash Rate Targetです。

本稿では、下表のようにOCRを「市場予想」✕「発表結果」で分類しています。下表の背景色がは「市場予想通りOCR維持」の発表事例です。は「市場予想通りOCR変更」、は「市場予想に反したOCR発表」、は「OCR以外の政策変更」です。

※6 2020年3月19日、RBAは異例ながらこの月2度目となる会合を緊急実施し、OCRの0.50%から0.25%への引き下げと、コロナ禍対策の3年債金利の誘導目標やQE・TTFの実施を発表。この事例は、市場予想が十分に行われない緊急会合、且つ、OCR変更を伴うため「市場予想に反したOCR変更」に分類した。

なお、2020年3月、コロナ禍に対応する緊急対策として、RBAは

  • 3年債金利誘導目標(以下「3年債金利」と略記)
  • 資金供給
    • 国債・準国債購入(以下「QE」と略記):目的はイールドカーブコントロール
    • ターム資金調達ファシリティ(以下「TFF」と略記):中小企業への資金供給
    • 為替決済残高に対する金利変更

等の追加手段を講じました。これらは上表で「OCR以外の政策変更」「その他変更」でカウントしています。

これら緊急対策は、2022年2月声明で3年債金利誘導目標の撤廃とQE終了が宣言されたことで終了しました。コロナ禍対策中はOCR以外の政策変更が比較的多く(例:QEやTFFの規模や期間の変更等)、これらの政策変更がチャートに影響を与えなかったとは言えません。が、それらは既に終了した施策です。ゆえに本稿ではそれら変更時を分析対象外としています。

すなわち、本稿での分析はRBA発表のOCRに注目し、

の3通りに場合分けして行っています。

2.2 指標定量推移

対象期間におけるRBAの主要施策の推移を下図に示します。図の配置は、OCR(左)・3年債金利誘導目標(右上)・QE及びTFF(右下)となっています。
左側と右側の図は横軸期間が異なるため、その点に注意してご覧ください。前項に述べた通り、右側2図は(OCR変更と同時でない限り)本稿分析対象外ですが、参考までに示しておきます。

※8 このグラフは分析データ開示のために載せており、グラフを本指標の発表毎に最新に更新していくことが本サイトの目的ではない。

上の左図で赤〇が見えている月は、先の分類で言えば「市場予想に反したOCR発表」だった事例にあたります。一方、赤〇が見えていない月は先の分類で「市場予想通りOCR維持」と「市場予想通りOCR変更」だった事例です。これらは本稿の分析対象事例です。

そして右の2図は市場予想をプロットしていません。3年債金利誘導目標(右上図)やQE(右下図赤線)やTFF(右下図青線)についても、専門家の解説記事を読めば事前に政策変更が予想されていたこともあります。しかし、多くのFX会社の指標案内の頁にはQEやTFFの政策変更の予想が載っていません。よって、これらは一部専門家によって事前に政策変更が予想解説されていても、それが市場大勢の予想か否かを判別できません。よって、これらはOCR変更と同時に行われない限り分析対象外です。

2.3 指標定性推移

コロナ禍対策開始以降(2020年3月)の政策変更が行われたときの声明要点を下表に纏めておきます。

本稿では先述の通り「OCRの市場予想」✕「OCRの発表結果」と「OCR以外の変更」に4通りの場合分けをしています。が、RBAに限らず中銀政策発表時の反応は、本来「OCRの市場予想」✕「OCRの発表結果」✕「次回以降の見通し」に場合分けすべきです。

ところが「次回以降の見通し」は、例え一部専門家が事前に大きな修正を予想するような解説があっても、それが市場大勢の予想か否かがわかりません。発表後に声明文を読んでも、表現が婉曲的でわからないことすらあります。とても指標発表前にそれを計数化できないのです(場合によっては指標発表後ですら計数化できません)。

よって、「次回以降の見通し」を反応分析に取り込むことはできません。上表のように「政策見通し」を声明文から読み取るか、「成長率」「インフレ率」「失業率」に絡んだ説明を読み取るしかありません。

2.4 反応統計値

2014年12月以降のRBA政策発表前後の反応を、4足チャートローソク足毎に下表に纏めました。

直後1分足値幅は平均13.6pipsと、中程度の反応しかしていません。全体を通してみればこんなものでしょう。

次に発表直後の瞬間的な動きを「市場予想通りOCR維持」「市場予想通りOCR変更」「市場予想に反したOCR発表」の各場合について見比べてみます。

※9 最下行「N.C.」は「集計していない」の意。

本指標が大きく反応するのは「市場予想に反したOCR発表」があったときで、その大きさは、市場予想に反したOCR発表時>市場予想通りOCR変更時>市場予想通りOCR変更なし、の順になっています。この順になってしまうことは何となく理解できます。

市場予想通りのOCR変更が行われたときは、直後1分足こそ瞬間的に大きく反応するものの、直後11分足となると直後1分足よりも順跳幅平均値が小さくなっています。これは、この場合に直後1分足と直後11分足が反転したことが6回のうち4回もあったからです。結果、この場合の直後11分足には直後1分足順跳幅による長い逆ヒゲを残しがちです。

市場予想通りOCR変更なしだったときも、たまに大きく反応しています。これは声明文において、次の政策変更について予告された場合や、成長率やインフレ率の見通しが従来と大きく変更された場合に起きる現象です。

2.5 2節まとめ
  • 本稿での反応分析は「市場予想通りOCR維持」「市場予想通りOCR変更」「市場予想に反したOCR発表」の3通りに場合分けして行う
  • これらへの反応は、市場予想に反したOCR発表時>市場予想通りOCR変更時>市場予想通りOCR変更なし、の順

Ⅲ. 市場予想通りOCR維持の事例

3.1 反応概要

対象期間における「市場予想通りOCR維持」だった事例は63回ありました。この63事例の4本足チャート各始値基準ローソク足を下図に示します。図の配置は、直前10-1分足(左上)・直前1分足(右上)・直後1分足(左下)・直後11分足(右下)となっています。

上図をぱっと見て、直前1分足の上下の大きなヒゲが目につきます(2015年4月・2015年11月)。また発表後はやや陽線が多いように見受けられます(直後1分足の陽線率62%、直後11分足68%)。

上記各ローソク足の統計値を下表に示します。

直前1分足の大きな2回を除いた順跳幅平均は4.4pips、値幅平均は3.0pipsです。

直後1分足の平均値幅は10.9pipsで、反応程度は中程度に留まります。今後の政策変更に繋がる文言やGDP・CPI・失業率等の予想見直しが含まれない場合、反応は小さくなりがちです。また、直後11分足値幅平均値が直後 1分足順跳幅平均値を超えています。

3.2 反応一致性分析

各ローソク足値幅の代表的な関係を下図に示します。

上左図と上中図は相関が弱いことが一目瞭然です。上右図はドットが直線状に並んでいるものの相関係数が低く、直後1分足の値から直後11分足の値を予想するには誤差が大きすぎます。よって、回帰分析で反応pipsを予想するには無理があります。

次に、4本足チャート各ローソク足毎の方向率や、ローソク足同士の値幅方向の一致率を纏めた下図をご覧ください。

直後11分足の陽線率は68%で偏りが見られます。直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%で、両者が反転することは4回に1回以下だとわかります。

さて、直前10-1分足は、指標発表前にローソク足が完成しており、その後のローソク足方向を示唆している可能性があります。分析対象事例について、直前10-1分足値幅を階層化し、その階層毎に反応方向一致性分析を行った結果を下図に示します。

以上の反応一致性分析の結果、

  • 直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%
  • 直前10-1分足が3.0pips超(過去平均値超)のとき、直後11分足はそれと逆になりがち(場面発生頻度35%、期待的中率74%)

が結論です。

3.3 伸長性分析

前項に示した通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%です。しかし、直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばすか削るのかはわかっていません。
下図をご覧ください。

直後1分足よりも直後11分足の順跳幅が同方向に伸びたことは65%、値幅が同方向に伸びたことは58%でした。

さて、指標発表によって一方向に反応が伸びるときには、経験から言って最初の兆しは直後1分足順跳幅の大きさに現れがちです。そこで、直後1分足順跳幅を階層化し、階層毎に直後1分足よりも直後11分足が反応を伸ばしがちか否かを検証します。

まずは順跳幅方向です。

直後1分足順跳幅が大きいほど、反転率が低下しています。

次に値幅方向です。

順跳幅・値幅方向とも直後1分足順跳幅に応じた変化が小さく、どこを区切りに追撃するか否か判断に迷います。仕方がないので、67%(3回に2回)を区切りに取引方針を纏めます。すなわち、

  • 直後1分足順跳幅が14.3pips超(過去平均値超)に達したら直ちに追撃開始する(場面発生頻度30%、期待的中率71%)
  • 直後1分足順跳幅が28.6pips超(過去平均値の2倍超)に達したら、同終値がつくのを待って追撃する(場面発生頻度11%、期待的中率67%)

です。


Ⅳ. 市場予想通りOCR変更事例

当該事例は下表の通り対象期間に6回ありました。この6回は全て利下げです。

上記6事例における4本足チャートを下図に示します。

統計的に処理するには事例数が少なすぎます。ただ、

  • 市場予想通りにOCRが変更されても、直後1分足の平均的な反応は中程度しか起きないことが多い
  • 一足内反転率こそ低いものの、声明発表直後は大きな逆ヒゲを形成することが多い
  • 全て利下げにも関わらず、発表直後1分の反応は陽線だったことの方が多い
  • 直後1分足終値よりも直後11分足終値が同方向に伸びたことは1度もなく、それどころか直後1分足と直後11分足が反転していること多い

といったことが読み取れます。


Ⅴ. 市場予想に反したOCR発表

当該事例は下表の通り対象期間に5回ありました。

上記5事例における4本足チャートを下図に示します。

統計的に処理するには事例数が少なすぎます。

  • 市場予想に反した場合、OCR変更の有無に関わらず、直後1分足の平均的な反応は非常に大きくなる
  • 非常に大きな逆ヒゲを形成することがある
  • 直後1分足終値よりも直後11分足終値が同方向に伸びたことが多い

といったことが読み取れます。


Ⅵ.取引成績

分析記事は不定期に見直しを行っており、過去の分析成績と取引成績を検証します。

本稿分析の有用さは実績によって裏付けられています取引成績には損切もあるものの、それでもかなり高い勝率です。発表時刻を過ぎて逆ヒゲを見極め、追撃か逆張りのタイミングを窺うだけです。

※10 上表日付欄に*印は今次改訂以降の取引。

※11 「分析成績」は、取引方針の反応方向についてのみ判定を行い、反応程度についての判定は行っていない。「分析適用率」と「分析的中率」は、都度の指標発表前に取引方針を開示していたときだけの成績を集計。「取引成績」は、指標発表直前・直後におけるスプレッド拡大、スリップ多発、注文不可などの影響を考慮してもなお、本稿取引方針が有効か否かを判断するため、実取引における分析適用時勝率。ここに挙げた実績は全て別サイトにて該日付もしくはその前日の投稿で事前に取引方針を開示。


関連リンク

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改訂履歴
  • 初稿(2016年12月5日):2014年12月~2016年11月までを分析。
  • 改訂(2017年7月31日):2017年7月まで分析期間延長。分析対象を市場予想通り現状維持だった場合に限定。
  • 2.1訂(2019年2月4日):2018年12月まで分析期間延長。指標発表後の取引だけに限定。
  • 3訂(2021年1月1日):新書式反映、2020年12月発表分までを反映。
    3.1訂(2022年2月26日):2021年12月発表分までを反映。

以上

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