B1 指標間影響力比較分析の方法

このサイトでは「市場予想よりも指標結果が改善したとき、その国の通貨が買われた」か「市場予想よりも指標結果が悪化したとき、その国の通貨が売られた」という状況を「素直な反応」と定義しています。

もし反応が素直だったり素直でなかったりしたことが半々の指標があれば、そんな指標を分析しても無意味です。
そんなときは、指標を分析して取引するのではなく、チャートの動く方向に取引するしかありません。
だから、素直に反応しがちな指標でなければ指標分析は無意味なのです。

ところで、素直でない反応が多発するのは、その指標よりチャートへの影響力が強い指標との同時発表時です。
ならば、予め指標同士の影響力が強弱を調べておき、強い指標との同時発表時はそっちの特徴に基づく取引をすれば良いのです
その逆に、影響力が弱い指標は、強い指標との過去同時発表事例を除いて分析しておくことで、強い指標との同時発表がないときの取引の参考にできます。
このように、同時発表指標の影響力の強弱を、過去の実績に基づき客観的に定量判定する方法が指標間影響力比較分析です。

以下の内容は次の通りです。

B1-1 指標の強弱:指標には強弱がある
B1-2 問題点把握:チャートは強い指標に反応する
B1-3 課題解決方法:弱い指標の分析は強い指標との同時発表事例を除いて分析する
B1-4 相対基準判断:同時発表事例が少ない指標同士の強弱比較方法

以下、本文です。


B1-1 素直な反応

素直な反応の判定方法を下表に纏めます。

いま、指標Aと指標Bが同時発表され、指標Aの発表結果が市場予想を上回り、指標Bの発表結果が市場予想を下回ったとします。
そして、このときの指標発表直後1分足が陽線で反応したとします。
この場合、指標Aに対し素直な反応をし、指標Bに対し素直な反応でなかった、ということになります。
この現象を「指標Aのチャートへの影響力が指標Bのそれより強い」と見なし、指標A>指標B、と表記することにします。

指標Aと指標Bのチャートへの影響力強弱の判定方法を下表に纏めておきます。

上表には記載省略したものの、他に直後1分足が同値終了(始値=終値)の場合があります。

同値終了の場合は、例えどれだけ一方向に大きなヒゲを形成していても「N/C(判定せず)」に統一しています。

指標A>指標B、といったチャートへの影響力の強弱は、分析対象期間を遡って指標Aと指標Bの同時発表時を全て確認して判定します。
例えば、

  • 指標Aが過去に素直な反応を4回し素直でない反応が1回(素直率80%)
  • 指標Bが過去に素直な反応を2回し素直でない反応が2回(素直率50%)

だったならば、80%>50%なので、指標A>指標B、という結論になります。
ここで、両指標の(素直な反応回数+素直でない反応回数)は、一方の指標の事後差異判別式の解が0で、一方の指標のみN/Cになることがあるので、必ずしも一致しません。

この分析は、指標毎の反応を分析する上で必須で、他の分析に先立って行う必要があります
だって、指標A>指標B、の関係があるなら、指標Aと指標Bが同時発表されるとき、指標Aの特徴を踏まえた取引を行うべきでしょう。
逆に、指標Bの反応を分析する場合、指標Aとの同時発表されたときを除いて行わないと、指標Bの特徴が抽出できなくなってしまいます。

よって、指標間影響力比較分析は「どの指標と同時発表されたときを除けば、分析対象指標の反応の分析を精度よく行えるかを、実績に基づき定量化する」が結論です。


B1-2  問題点把握

例えば、米国NY連銀製造業景気指数は2018年に12回発表されています。
けれども、そのうち6回は米国小売売上高と同時発表されています。
ならば、その6回はNY連銀製造業景気指数が単独で発表された場合と、指標発表前後の反応が同程度だったでしょうか?
そんな訳がありません。

実際は、NY連銀製造業景気指数が単独で発表されたときと、小売売上高と同時発表されたときでは、反応程度におよそ倍・半分の違いがありました。
この現象は、そのときのチャートが小売売上高の指標結果に影響を強く受けて動き、NY連銀製造業景気指数の指標結果の影響が弱かった、と解釈できます。
両指標が同時発表されるときのチャートへの影響力は、NY連銀製造業景気指数<小売売上高、とほとんどの場合になるのです。

こうした現象自体は直観的にも経験上も多くの人が納得できる話です。
けれども、ある指標の反応を分析するとき、その指標よりも影響力の強い指標との同時発表時を除いて分析を行うことは、かなり面倒です。
だから同時発表指標の影響を考慮しないまま、分析対象指標への反応を解説(前回もしくは過去m回の指標発表後n分間の反応pipsの掲載等)をしている資料や解説記事はかなり多いのです。

それでは、その解説を取引の参考にする読者をミスリードしてしまいます。


B1-3  課題解決方法

ある指標の分析を行うとき、その指標を「分析対象指標」と呼びます。
また、分析対象指標と過去に同時発表されたことがある指標を「比較対象指標」と呼ぶことにします。
そして、指標間影響力比較分析の手順は次の通りです。

  • 分析対象指標比較対象指標それぞれの良し悪しは、事後差異判別式の解の符号で判定
  • 反応方向は直後1分足値幅方向で判定
  • 分析対象指標と比較対象指標のそれぞれについて、事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向が一致した方向一致回数と、不一致だった方向不一致回数を過去に遡ってカウント
  • 方向一致回数/(方向一致回数+方向不一致回数)✕100=方向一致率、と定義し、分析対象指標と比較対象指標の方向一致率を比べて、一致率が高い指標を「影響力が強い」と判定

通常は、分析対象指標の方向一致率が67%未満、且つ、比較対象指標以下の方向一致率となった場合、その分析対象指標での取引は不可と判断します。
ここまでは分析対象期間における実績に基づく判断を機械的に行います

文字で読むだけではわかりにくいかも知れません。
そこで、細かな説明不足を残したまま図説します。


以下、分析シート(上)と結論シート(下)の図説です。
これらシートは、NY連銀製造業景気指数と、その同時発表指標のチャートへの影響力強弱の判定を例示しています。

上の分析シートをご覧ください。

分析対象指標の事後差異判別式の解が0なら、分析対象指標の反応が素直だったか否かは判定していません。
また、比較対象指標の事後差異判別式の解が0なら、比較対象指標の反応が素直だったか否かは判定していません。
そして、直後1分足値幅が0なら、分析対象指標も比較対象指標も反応が素直だったか否かは判定していません。
その結果、分析対象指標と比較対象指標の方向一致や方向不一致を判定する回数は、それらの同時発表回数以下となります。

次に結論シートをご覧ください。

結論シートでは、比較対象指標の指標名青太字赤太字に色分けしています。
青太字ならば(分析対象指標>比較対象指標)、赤太字ならば(分析対象指標<比較対象指標)、が結論です。
なお、この結論シートでは「相対基準判断」という方法で、方向一致率が高いNY連銀製造業景気指数よりも、方向一致率が小さいコアCPI前月比を影響力が強いと判断しています。
相対基準判断」について次項で説明します。

なお、個々の指標の分析記事では、分析シート掲載を省略し、結論シートだけを掲載しています。


B1-4  相対基準判断

相対基準判断」をざっくり説明すると、分析対象指標Aは相対基準指標Cよりも影響力が強く、その指標Cは比較対象指標Bよりも影響力が強いならば、指標Aは指標Bよりも影響力が強い、と判断することです。
記号表記すると、A>C & C>B ⇒ A>B、です。
大した話ではありません。

が、この話を順を追って正確に説明するのは、かなり面倒です。
相対基準判断については、こちらに詳説しておきます。


本稿のまとめ
  • 指標の強弱:指標にはチャートへの影響力に強弱がある
  • 問題点把握:多くの事例ではチャートは強い指標に反応するため、弱い指標の特徴は強い指標との同時発表時を除いて分析する必要がある
  • 課題解決方法:過去の同時発表時の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率を調べ、方向一致率が低い方の指標は高い方の指標との同時発表時を除いて特徴を抽出する
  • 相対基準判断:同時発表事例が少ない指標同士の強弱は、相対基準判断によって判定できる
  • こうした地道な過去実績の記録の継続・整理は面倒なので、この面倒を代行していることが本サイトの存在意義

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