Ap.02 項目間影響力分析の方法

指標発表時には、発表項目毎の前回結果市場予想発表結果前回結果の修正結果(以下、単に「修正結果」と略記します)が数値化されます。
これらの大小関係はチャートの動きに影響を与えるため、判別式を用いて把握します。

判別式についてはこちらを参照願います。


ところが、ひとつの指標でも発表項目は複数あることが普通です。
そして、複数の発表項目のうち、代表項目のみが反応方向に影響している場合は問題ありません。
例えば、米国NY連銀製造業景気指数は発表項目が22項目あります。
けれども、NY連銀製造業景気指数発表時の直後1分足値幅方向は、「現在の事業環境」の事後差異判別式の解の符号で、83%の事例を説明できます(2015年1月集計分~2019年9月集計分)。

一方、代表項目だけでは過去の反応方向がうまく説明できないことがあります。
このような場合、代表項目だけでなく、影響力が強い他の発表項目を差異判別式の変数に加えると、過去の反応方向の多くが説明できる場合があります。
本稿は、こうした複数の項目が反応方向に影響を与える指標での差異判別式について説明します。


Ap.02-1 分析の流れ

例えば、米国生産者物価指数は、2015年2月~2019年8月まで55回発表されています。
但し、そのうち15回は米国小売売上高と同時発表、1回は米国耐久財受注、1回はFRB議長会見開始時刻と同時発表されています。
指標間影響力比較分析の結果、これら同時発表が行われた場合、生産者物価指数の影響力は強くありません。
よって、生産者物価指数の項目間影響力比較分析は、それらと同時発表されなかった40回の事例が対象です。

この40回の生産者物価指数発表時の「前月比」「前年比」「コア前月比」「コア前年比」のそれぞれの各判別式と各ローソク足の方向一致率は下表の通りでした。

ここで判別式を、

  • A✕前月比の判別式+B✕前年比の判別式+C✕コア前月比の判別式+D✕コア前年比の判別式

と立式し、この判別式の解の符号と対応するローソク方向の一致率が高くなるように係数A・B・C・Dを求めます。
結果、下表のように各係数を決定すると、対応する各ローソク足との方向一致率が高くなることがわかりました。

例えば、この表1行目は、

  • 事前差異判別式=1✕前月比の事前差異判別式+2✕前年比の事前差異判別式+1✕コア前月比の事前差異判別式ー4✕コア前年比の事前差異判別式

という判別式を表しています。
そして、この判別式の解の符号と直前10-1分足は、方向一致率が70%です。

同様に、事後差異判別式の解の符号と直後1分足は93%の方向一致率、実態差異判別式の解の符号と直後11分足は72%の方向一致率、となっており、悪い方向一致率ではありません。

これで、コア前月比の判別式の解が0でも、他の項目の良し悪しに応じて、各ローソク足の方向の説明がつきます。


Ap.02-2 本分析手順が含む恣意的操作

前項の分析手順を整理しておきます。

  • 分析対象指標の指標間影響力比較分析の結果を踏まえ、分析対象を特定
  • 主な項目毎に各判別式と各ローソク足の方向一致率を集計
  • 主な項目を変数とした各判別式を立式、但し、本サイトでは変数を4項目以下としている
  • 事前差異判別式は、その解の符号と直前10-1分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択
  • 事後差異判別式は、その解の符号と直後1分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択
  • 実態差異判別式は、その解の符号と直後11分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択

この手順におけるポイントは、例えば、事後差異判別式の係数が「事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率がほぼ最大化」するように選択されていることです。
直後11分足との方向一致率ではありません。
このように各判別式の係数はそれぞれ対応するローソク足を決めつけており、この点において恣意的です(客観的ではありません)。
が、これまでのところ、これで不都合はありません

そして「ほぼ最大化できるように係数を選択」の「ほぼ」とは、「最大化できる係数を選択しているとは限らない」点で恣意的です。
最大化できる係数を選んだ結果、係数を少し変化して方向一致率が大きく変化してしまう場合、その係数を採用していません。
そのような感度の高い係数を採用した判別式は、経験的に長期に亘って採用できないことがわかっています。
例え方向一致率が最大化できても感度の高い係数は選ばず、例え方向一致率が下がっても感度の低い係数を選んでいます。
が、これまでのところ、これで不都合はありません


関連リンク

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以上

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