B2 項目間影響力分析の方法

指標発表時には、発表項目毎の前回結果市場予想発表結果前回結果の修正結果(以下、単に「修正結果」と略記します)が数値化されます。
これらの大小関係はチャートの動きに影響を与えるため、判別式を用いて把握します。


ところが、ひとつの指標でも発表項目は複数あることが普通です。
そして、複数の発表項目のうち、代表項目のみが反応方向に影響している場合は問題ありません。
例えば、米国NY連銀製造業景気指数は発表項目が22項目あります。
けれども、NY連銀製造業景気指数発表時の直後1分足値幅方向は、「現在の事業環境」の事後差異判別式の解の符号で、指標発表直後1分足の方向の83%の過去事例が説明できます。

一方、代表項目だけでは過去の反応方向がうまく説明できないことがあります。
このような場合、代表項目だけでなく、影響力が強い他の発表項目を差異判別式の変数に加えると、過去の反応方向の多くが説明できる場合があります。
本稿は、こうした複数の項目が反応方向に影響を与える指標での判別式について説明します。

B2-1 分析事例:複数の発表項目の結果によって反応方向が決まる事例がある
B2-2 計数方法図説:その分析事例を図説
B2-3 手順整理と客観性毀損リスク:本分析結果は客観的とは言えない点がある


B2-1 分析事例

例えば、米国輸入・輸出物価指数(以下、本項では「本指標」と略記)は、あまり重視されていない指標のせいか、反応が小さく影響力も弱い指標です。
指標間影響力比較分析の結果、他の指標との同時発表時には、ほとんどの場合において取引を避けた方が良いことがわかっています。
そこで、本指標が他の影響力が強い指標と同時発表されなかった事例だけで、項目間影響力分析を行います

項目間影響力比較分析は、本指標の多岐に亘る発表項目のうち、輸入物価指数前月比・輸入物価指数前年比・輸出物価指数前月比・輸出物価指数前年比、の4項目について行います。
過去(分析対象期間において)、各項目毎の各判別式の解の符号とローソク足値幅方向の一致率は、下表に通りでした。

但し、上表「判別式」の事前差異は市場予想ー前回結果、事後差異は発表結果ー市場予想、実態差異は発表結果ー修正結果(修正がなければ前回結果)、をそれぞれ指しています。

例えば、1列目1行目は「輸入物価指数前月比」における「事前差異(判別式の解の符号)」と「直前10-1分足(値幅方向)」の一致率が過去「55%」だった、と読みます。
ここで、「判別式の解の符号がプラスでローソク足が陽線」あるいは「判別式の解の符号がマイナスでローソク足が陰線」のとき、方向一致と判定します。

次に、各判別式を

判別式=A✕輸入物価指数前月比の差異+B✕輸入物価指数前年比の差異+C✕輸出物価指数前月比の差異+D✕輸出物価指数前年比の差異
但し、事前差異=市場予想ー前回結果、事後差異=発表結果ー市場予想、実態差異=発表結果ー前回結果、とおく

と立式します。
そして、事前差異判別式の解の符号と直前10-1分足、事後差異判別式の解の符号と直後1分足、実態差異判別式の解の符号と直後11分足、の方向一致率が高くなるように上式係数A・B・C・Dを決めます。
このとき、各判別式の係数と各方向一致率は下表のようになります。

上表「方向一致率」をご覧ください。
判別式係数」を上表のように決めることで、各判別式の解の符号が各ローソク足とが高い方向一致率となったことがわかります(と言うより、高い方向一致率となるように判別式係数を決めたから)。
特に、実態差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は大きく改善しました。

さてここで、係数A・B・C・Dは、各ローソク足の方向決定にどれだけ各項の差異が寄与度を表しています。
この項目毎の反応方向への寄与度(すなわち各判別式そのもの)の導出が、項目間影響力分析の結論です。

本サイトでは、項目毎の判別式を「項目毎判別式」と呼び、例えば「輸入物価指数前月比の事前差異判別式」のように呼称します。
そして、上記A・B・C・Dといった係数を含む判別式を「全体判別式」と呼んでいます。


B2-2 計数方法図説


B2-3 手順整理と客観性毀損リスク

本分析手順を整理しておきます。

  • 分析対象指標の指標間影響力比較分析の結果を踏まえ、分析対象を特定
  • 項目毎判別式と対応ローソク足の方向一致率を集計
  • 主な項目を変数とした全体別式を立式、但し、本サイトでは変数を4項目以下としている
  • 事前差異判別式は、その解の符号と直前10-1分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択
  • 事後差異判別式は、その解の符号と直後1分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択
  • 実態差異判別式は、その解の符号と直後11分足の方向一致率がほぼ最大化できるように係数を選択

この手順におけるポイントは、例えば、事後差異判別式の係数が「事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率がほぼ最大化」するように選択されていることです。
直後11分足との方向一致率ではありません。
このように各判別式はそれぞれ対応するローソク足を決めつけており、この点において恣意的です(客観的ではありません)。
が、これまでのところ、これで不都合はありません

そして「ほぼ最大化できるように係数を選択」の「ほぼ」とは、「最大化できる係数を選択しているとは限らない」点で恣意的です。
最大化できる係数を選んだ結果、係数を少し変化して方向一致率が大きく変化してしまう場合、その係数を採用していません。
そのような感度の高い係数を採用した判別式は、経験的に長期に亘って採用できません。
例え方向一致率が最大化できても感度の高い係数は選ばず、例え方向一致率が少し下がっても感度の低い係数を選んでいます。
が、これまでのところ、これで不都合はありません


本稿のまとめ
  • 複数の項目の発表結果を総合的に良否判断し、反応方向が決まっていると見られる指標がある
  • そうした指標は、過去の実績を踏まえて導いた判別式を使えば、今後の取引で反応方向の予測や解釈に役立つ
  • この判別式を導く分析を項目間影響力分析といい、判別式の係数は対応ローソク足の反応方向への寄与度を表す
  • そんな面倒な分析を代行しているのが本サイトの存在意義

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以上

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