Ap.07 指標一致性分析の方法

直観的にも経験的にも「指標の良し悪しは反応程度や反応方向に影響する」と考えることは自然です。
そこで、前回結果と市場予想と発表結果(修正結果)の各差の大小が、4本足チャート各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去に遡って調べます。
これが、指標が反応と一致しているかの分析(=指標一致性分析)です。

以下、米国鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率を例に挙げて説明します。


Ap.07-1 問題点の把握

以下に例に挙げる米国鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率は、2015年1月集計分~2019年11月集計分までの59回の発表において、同時発表指標がありません。
がしかし、多くの指標は過去に他の指標と同時発表が行われています。
指標一致性分析は反応方向を調べるため、指標間影響力比較分析の結果に基づき、まず最初に分析対象指標の分析対象事例選びます。
もし、対象指標よりも影響力が強い指標との同時発表が過去N回あれば、そのN回の事例を分析事例から除きます。

次に、対象事例の各判別式の解と、各判別式に対応したローソク足の実績データを散布図にプロットし、回帰分析で相関係数を求めます。
その例を下図に示します。

上図は左から、事前差異判別式の解と直前10-1分足事後差異判別式の解と直後1分足実態差異判別式の解と直後11分足、の実績値をプロットしています。

上中図は、3図のうちでもっとも回帰式(黒線)に沿って実データ(青点)が並んでいます。
けれども、横軸範囲において△2~0の分布範囲では、縦軸方向の正負との符号相関がありません。
上左図と上右図に至っては、横軸範囲全域で縦軸方向の正負との符号相関がありません
こうした現象は、取引において売買の方向すら決められない、という点で、分析上の致命的欠陥と言えます。

ちなみに、相関係数(R^2値)というのは、回帰式と各プロットの距離がどれだけ離れているかを表しています。
もしR^2値が0.81ならば、回帰式と各プロットは縦軸方向に平均10%しか離れておらず、もしR^2値が0.64ならば平均20%しか離れていません。
けれども、実際にはR^2>0.64となる関係が成立している指標は珍しいことがわかっています。
このことは、各判別式と反応の方向と程度を回帰分析で精度高く予想することは困難です。

よって、指標一致性分析の最初に上3図を掲げる意義は、以下の分析の一次データを開示する意味しかないのです。
そして、本項テーマの問題点とは、過去の実績を多数・忠実に調べても、取引に有効な策が見出せない点です。


Ap.07-2 課題の明確化

そこで、反応程度と反応方向を予想することでなく、反応方向を予想することだけに課題を絞ります

下図の指標一致性分析では、指標方向率と指標方向一致率を求めています。

上左図の「指標方向率」は、各判別式の解がプラスかマイナスかに偏っていないかを確認するために算出しています。
きっと長期的には50%に収束すると思われるものの、分析対象期間では「これだけ偏っている」と示しています。
あまりにも偏りが大きい場合には、分析がアテにできないことを示唆しています。
だって、判別式の解が極端に偏っているなら、反応方向も極端に偏っていない限り、判別式の解と反応方向に相関がない、ということを示すことになってしまいます。
その一方、判別式の解が極端に偏っていて反応方向も極端に偏っているなら、複雑な分析なんてしなくても売買の方向は決められます。

上右図の「指標方向一致率」は、各判別式と各ローソク足の方向一致率を表しています。
例えば、実態差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)は、直前10-1分足と64%、直前1分足と54%、直後1分足と70%、直後11分足と71%、の方向一致率がある、と読みます。
逆に、直前10-1分足方向は、実態差異判別式の解の符号と64%一致しています。
このことは、多くの取引参加者が、指標発表前に発表結果が前回結果を上回るか下回るかを、過去に64%当てていたことになります。

でも、指標発表前に実態差異判別式の解の符号を64%当てても、それでは不十分です。
上右図では、実態差異判別式の解の符号と直後11分足は71%です。
ならば、直前10-1分足を見て、指標発表直前にポジションを取得したときの勝率は、0.64✕0.71+(1-0.64)✕(1ー0.71)=56% です。
ほんの少し有利な取引しかできません。

もっと掛け算を減らさないと、高い勝率が期待できる取引ができません


Ap.07-3 課題の解決方法

そこで、掛け算をなくすため、予兆現象を場合分けします。
当然、予兆現象はローソク足が形成される前に判明していなければいけません。
直前10-1分足よりも先に判明しているのは、事前差異判別式の解です。

59回の分析事例のうち、事前差異判別式の解の絶対値が過去平均の1.1超だったことは41回(頻度69%)、2.2超だったことは23回(頻度39%)、3.3超だったことは16回(頻度27%)、4.4超だったことは6回(頻度10%)、でした。
「事前差異判別式の解の絶対値」とは、解が+1でも△1でも「大きさが1」と見なすことです。

このように場合分けして指標方向一致率を調べた結果が下図です。

上図には、前項の指標方向一致率よりも多くの関係が得られます。

  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.2超で、その解の符号との方向一致率が高まります(場面発生頻度39%、期待的中率72~100%)
  • 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.2超で、その解の符号との方向不一致率が高まります(場面発生頻度39%、期待的中率77~83%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が4.4超で、その解の符号との方向不一致率が高まります(場面発生頻度10%、期待的中率83%)

といった関係です。
いずれも期待的中率が高く、それは場合分けによって掛け算を減らしたため、です。

なお、場合分けに用いた事前差異判別式の解の絶対値の階層化は、過去平均値の0倍超、0.5倍超、1倍超、1.5倍超、2倍超の5階層に決めています。


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