B7 指標一致性分析の方法

指標結果の良し悪しが反応程度や反応方向に影響する」と考えることは自然です。
そこで、前回結果と市場予想と発表結果(修正結果)の各差異の符号や大小が、4本足チャート各ローソク足の大きさや方向を示唆していないかを、過去に遡って調べます。
いわば、指標と反応がどのぐらい一致するのかを検証しており、これを本サイトでは「指標一致性分析」と呼んでいます。

指標一致性分析は、次の3ステップで行います。

  • ステップ1
    分析対象指標の各判別式の解(横軸)と、それに対応した4本足チャート各ローソク足値幅(縦軸)を、散布図にプロットして回帰分析で相関係数を求めます。このステップは、以下の分析における一次データ開示の役割があります。そして、一次データをそのまま見るだけでは、ほとんどの指標で横軸と縦軸の相関が弱いことが把握できます。
  • ステップ2
    次に、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を求めます。前ステップの散布図は、横軸と縦軸の「方向」と「大きさ」という2つの情報が含まれていました。このステップでは、各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅の方向一致率だけに分析対象を絞ります。一部の指標では、分析を「方向」だけに絞ることで、取引に有益な高い一致率や不一致率が得られます
  • ステップ3
    最後に、事前差異判別式の解の絶対値を階層化し、その階層毎に各判別式の解の符号と4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を求めます。「事前差異判別式の解の絶対値の階層化」とは、要するに「市場予想が前回結果からどれだけ乖離しているかの場合分け」です。一部の指標では、市場予想が前回結果から大きく乖離しているほど、前記の一致率や不一致率が高くなったり低くなったりする指標があります

以下に上記ステップを例示し、個々の指標分析記事では計算過程を省略しているので、最後に簡単に図説例示しておきます。

B7-1  問題点把握:ステップ1の説明
B7-2  課題明確化:ステップ2の説明
B7-3  課題解決方法:ステップ3の説明
B7-4  集計図説


B7-1 問題点把握

指標一致性分析は反応方向を調べるため、指標間影響力比較分析の結果に基づき、まず最初に分析対象指標の分析対象事例選びます。
もし、対象指標よりも影響力が強い指標との同時発表が過去N回あれば、そのN回の事例を分析事例から除きます。

次に、対象事例の各判別式の解と、各判別式に対応したローソク足の実績データを散布図にプロットし、回帰分析で相関係数を求めます。
エクセルで散布図を作成すれば、回帰分析はそのメニューに沿って行えます。
その例を下図に示します。

上図は左から、事前差異判別式の解と直前10-1分足事後差異判別式の解と直後1分足実態差異判別式の解と直後11分足、の実績値をプロットしています。

上中図は、3図のうちでもっとも回帰式(黒線)に沿って実データ(青点)が並んでいます。
けれども、横軸範囲において△2~0の分布範囲では、縦軸方向の正負との符号相関がありません。
上左図と上右図に至っては、横軸範囲全域で縦軸方向の正負との符号相関がありません
こうした現象は、取引において売買の方向すら決められない、という点で、分析上の致命的欠陥と言えます。

ちなみに、相関係数(R2値)というのは、回帰線と各ドットの平均的な距離がどれだけ近いかを表しています。
もしR2値が0.81ならば、回帰式と各ドットは縦軸方向に平均10%しか離れておらず、もしR2値が0.64ならば平均20%しか離れていません。
けれども、実際にはR2>0.64となる関係が成立している指標は珍しいことがわかっています。
このことは、各判別式と反応の方向と程度を回帰分析で精度高く予想することは困難なことを示しています。

よって、指標一致性分析の最初に上3図を掲げる意義は、以下の分析の一次データを開示することでしかないのです。
そして、問題点とは、過去の実績を多数・忠実に調べても、取引に有効な策が見出せない点です。


B7-2 課題明確化

そこで、反応程度と反応方向を予想することでなく、反応方向を予想することだけに課題を絞ります

下図の指標一致性分析では、指標方向率と指標方向一致率を求めています。

上左図の「指標方向率」は、各判別式の解がプラスかマイナスかに偏っていないかを確認するために算出しています。
きっと長期的には50%に収束すると思われるものの、分析対象期間では「これだけ偏っている」と示しています。
あまりにも偏りが大きい場合には、分析がアテにできないことを示唆しています。
だって、判別式の解が極端に偏っているなら、反応方向も極端に偏っていない限り、判別式の解と反応方向に相関がない、ということを示していることになってしまいます。
その一方、判別式の解が極端に偏っていて反応方向も極端に偏っているなら、複雑な分析なんてしなくても売買の方向は決められます。

上右図の「指標方向一致率」は、各判別式と各ローソク足の方向一致率を表しています。
例えば、実態差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)は、直前10-1分足と64%、直前1分足と54%、直後1分足と70%、直後11分足と71%、の方向一致率がある、と読みます。
逆に、直前10-1分足方向は、実態差異判別式の解の符号と64%一致しています。
このことは、多くの取引参加者が、指標発表前に発表結果が前回結果を上回るか下回るかを、過去に64%当てていたことになります。

でも、指標発表前に実態差異判別式の解の符号を64%当てても、それでは不十分です。
上右図では、実態差異判別式の解の符号と直後11分足は71%です。
ならば、直前10-1分足を見て、指標発表直前にポジションを取得したときの勝率は、0.64✕0.71+(1-0.64)✕(1ー0.71)=56% です。
ほんの少し有利な取引しかできません。

もっと掛け算を減らさないと、高い勝率が期待できる取引ができません


B7-3 課題解決方法

そこで、掛け算をなくすため、予兆現象を場合分け(階層化)します。
当然、予兆現象はローソク足が形成される前に判明していなければいけません。
直前10-1分足よりも先に判明しているのは、事前差異判別式の解です。

階層化した指標方向一致率を調べた結果が下図です。
「事前差異判別式の解の大きさ」とは絶対値のことで、解が+1でも△1でも「大きさが1」と見なします。

上図には、前項の指標方向一致率よりも多くの関係が得られます。

  • 直前1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.2超で、その解の符号との方向一致率が高まります(場面発生頻度39%、期待的中率72~100%)
  • 直後1分足は、事前差異判別式の解の絶対値が2.2超で、その解の符号との方向不一致率が高まります(場面発生頻度39%、期待的中率77~83%)
  • 直後11分足は、事前差異判別式の解の絶対値が4.4超で、その解の符号との方向不一致率が高まります(場面発生頻度10%、期待的中率83%)

といった関係です。
いずれも期待的中率が高く、それは階層化によって掛け算を減らしたため、です。


事前差異判別式の解の絶対値の階層化は、特別の事情がない限り、過去平均値の0倍超、0.5倍超、1倍超、1.5倍超、2倍超の5階層に決めています。

但し、過去平均値より大きな階層ほど過去発生事例が少なくなり、過去発生事例が少なすぎると信頼度の低い確率値と捉えるべきです。
そのため、場面発生頻度が年1・2回(8~17%)未満しか起きない階層は、記載省略することにしています。
そうした階層まで図表記載すると、読者が調査母数の少なさに気づかないまま、取引の参考にしてしまうかもしれないからです。

また、特別な事情とは、例えばコロナ禍の時期です。
2020年2月頃~5月頃にかけて、市場予想も発表結果も修正結果もグラフにプロットすると、通常時に比べて極端に大きな跳値となりました。
極端に大きな跳値を除いて統計処理することは一般的です。
但し、その場合はその旨を該当記載箇所付近に注記するように配慮しています。


B7-4  集計図説

 


本稿のまとめ
  • 本分析は、指標方向率と指標方向一致率からなる
  • 指標方向率は、長期的に50%付近に収束するため、ある期間(例えば、中銀が緩和政策を継続期間中や、景気指標が中立点を上回っている期間中)毎に集計するのが望ましい
  • 指標方向一致率は、各判別式の解の符号と指標発表前後のローソク足の方向一致率を求めており、年単位や複数年単位での数値再現性が高い
  • 本分析では、判別式の解とローソク足値幅のどちらかが0だった事例を除いて行う

そして「話はわかったが、こんな面倒な手順の分析なんてできない」という人はどうすれば良いのでしょう。

  • そのために本サイトがある

 

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