B5 同期/連動分析の方法

A・B・Cという3つの指標があり、指標Aの良し悪しが指標Bの良し悪しを先行示唆し、指標BとCの良し悪しが一致する、とします。
このとき、指標Aは指標BとCの「先行指標」、指標BとCは「一致指標」で指標Aの「遅行指標」、と呼びます。

先行指標が先に集計されたり発表されるとは限らないし、遅行指標が後で集計されたり発表されるとは限りません。
集計時期はだいたい同時期なら、細かなズレは論じられないようです。
指標BとCの大きなトレンド転換より先に指標Aがトレンド転換しがちだったり、指標Bがトレンド転換するとき指標Cも転換しがちだったり、まぁだいたいの話です。
きっと経済学的にはきちんと定義されているはずですが、この話はだいだいわかっていれば良いのです。

何で、そんなふわっとした理解で構わないのか。
それは、単月毎の指標発表前後の短期取引で、こんな話が役立つことがあまりないからです。
この話が役に立つなら、先行/一致/遅行指標の発表順序がどうあれ、先に発表された結果通りに後で発表された指標の良し悪しが予想できるはずです。

けれども、先行/一致/遅行指標の関係が単月毎の指標取引に役立つことは稀です。
本分析は、その稀な関係が取引に役立つ事例を見つけ出すために行います。
その方法は、以下2つの仮説を過去の実績から検証して行います。

  • 仮説1:ふたつの指標の改善や悪化が単月毎に同期したり時差をもって連動(追従)する場合がある
  • 仮説2:上記の同期や連動が起きるなら、先に発表された指標の良し悪しが、後で発表される指標への反応方向を示唆する

知りたいことは仮説2の正しさですが、もし仮説1が正しくなければ信頼度に不安が残ります。
そのために本分析では上記2つの仮説を検証します。

B5-1  問題点把握:先に発表された指標の良し悪しが取引対象指標の反応方向を示唆するような関係は稀である
B5-2  課題明確化:先に発表された指標の実態差異判別式の解の符号と取引対象指標の反応方向の一致率を調べる
B5-3  課題解決方法:不適合事例(一致しない)、適合事例(一致する)、不適有効事例(一致しないが取引には役立つ)を例示
B5-4  分析方法図説


B5-1 問題点把握

ある指標Bの良し悪しを、先に発表された指標Aの良し悪しを根拠に論じた解説記事を見たことがあるでしょう。
でも、よく読んでみましょう。
指標Bの良し悪しが、指標Aの良し悪しと「同期」や「連動」しているという根拠が示されていることは滅多にありません。

でも、根拠の示されている一部の事例では、ふたつの指標の移動平均線の連動を挙げ、その上昇や下降に転じた時差を根拠にしていることが多いようです。
けれども、指標推移の移動平均線は数か月~数年単位での変化を示すものなので、それでは当月の指標結果が改善するのか悪化するのかが50%前後しか当たらなくなってしまいます。
50%前後なら、何も分析しなくても当たります。

もっと取引に役立つように、直接的に指標Bの結果を指標Aの結果から予想することはできないのでしょうか。
何も、いつも予想できる必要なんてなく、いつも予想を当てる必要なんてありません。
このサイトの他の分析と同様に、予想できる場面を特定し、その場面で3回に2回以上勝てれば取引の役に立つのです。


B5-2 課題明確化

指標の改善や悪化は「発表結果が前回結果を上回ったか否か」で判定します。
発表結果が市場予想を上回ったか否かではありません。
そして「発表結果が前回結果を上回ったか否か」が比較する指標同士で一致したら「方向一致」と判定します。

でも、ある指標が改善したときに別の指標が改善しがちだったとしても、ここでの課題は解決しません。
方向一致しやすい指標同士を見つけたら、先に発表された指標が改善していたならロング、悪化していたならショートで取引することにします。
そうした取引方法での勝率が67%以上(2勝1敗ペースが見込める実績が)あれば、ここでの課題は解決です。


B5-3 課題解決方法
(1) 不適合事例

例えば、米国個人支出(PCE)は、小売売上高と同じ集計月の結果が後で発表されます。
そして、個人支出小売売上高の良し悪しは同期している可能性があります。
ある期間における両指標の関係を下図に示します。

横軸は、個人支出小売売上高より〇か月先行/遅行かです。
縦軸は、今回結果が前回結果よりも増減が一致した確率を表しています。

例えば、横軸で両指標が同期の箇所を見てみると、方向一致率は34%です。
一方、個人支出小売売上高よりも1か月遅行と2か月遅行の箇所は、それぞれ方向一致率が70%25%です。
結果、小売売上高に対し個人消費は、1・2か月遅行して追従している、と推察できます。
但し、2か月遅行時は、小売売上高と改善や悪化の方向が逆になっています。

ここでは、なぜ同月集計分の改善や悪化が同期せずに1・2か月遅行するのかや、なぜ2か月後は改善/悪化の方向が逆になるのか、は考えないことにします。
単に事実を受け入れ、小売売上高は個人支出の先行指標で時差1か月、を結論と考えましょう。
もしそうならば、個人支出発表時の直前10-1分足と直後1分足が、1か月前に発表された小売売上高の良し悪しに素直に反応していれば、個人支出発表時に前月の小売売上高の増減を気にする必要があります。

結果を、下表に整理しておきます。

前月の小売売上高の増減と当月の個人支出の増減は、方向が70%も一致していました。
けれども、前月の小売売上高の増減を参考にしても、当月の個人支出発表前後の反応方向は当たりません。
よって、小売売上高が個人支出の先行指標で時差1か月ということが正しくても、そんなことは取引上の役に立たず、むしろデータを見ずに解説を鵜呑みにする大多数の読者をミスリードしてしまいます


(2) 適合事例と不適有効事例

例えば、ISM非製造業景況指数以下「ismPMI」と略記ISM製造業景況指数(以下「ismNMI」と略記)の2日後に発表されることが多々あります。
そして、ある期間における両指標の毎月の実態差異判別式の解の符号の一致率を下図に示します。

両指標の指標方向一致率と、ismPMIが改善ならismNMIの直後1分足が陽線のときとismPMIが悪化ならismNMIの直後1分足が陰線のときを方向一致と見なす反応方向一致率を下表に纏めています。

結果、ismPMIとismNMIの同月集計分の実態差異判別式の解の符号は60%一致していました。
そしてこのとき、ismPMIの実態差異判別式の解の符号と、ismNMI発表時の直後1分足は、方向一致率が67%ありました。
よって、同月集計分のismPMIとismNMIは適合事例と言えます。

一方、前月集計分のismPMIと当月集計分のismNMIの実態差異判別式の解の符号は21%しか一致していません。
そしてこのとき、前月集計分のismPMIの実態差異判別式の解の符号と、ismNMI発表時の直後1分足は、方向一致率が23%でした(不一致率77%)。
よって、ismPMIに対してismNMIは時差1か月遅れた不適有効事例と言えます。


B5-4 分析方法図説


おまけ

いま、ふたつの指標の単月毎の改善や悪化が同期することが70%、という関係があったとします。
そして、指標結果が改善したり悪化したとき、素直な方向に反応することが70%、と仮定します。
このとき、ふたつの指標の単月毎の改善や悪化が同期したとき、後で発表された指標への反応方向が先に発表された指標の良し悪しと一致する確率は、70%✕70%=49%、です。
実績が49%では、そうした関係を取引の根拠にできません。
だから、取引に役立つ同期/連動関係が見つかることは稀なのです。

ちなみに、ふたつの指標の単月毎の改善や悪化が同期や連動することが70%という関係も、実は珍しいことがわかっています。


本稿のまとめ
  • ふたつの指標の改善や悪化が単月毎に同期したり時差をもって連動(追従)する場合があるものの、そういうことは稀である
  • 上記の同期や連動が起きる指標同士でも、先に発表された指標の良し悪しが、後で発表される指標の反応方向を示唆することは稀である

そして「話はわかったが、こんな面倒な手順の分析なんてできない」という人はどうすれば良いのでしょう。

  • そのために本サイトがある

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以上

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