Ap.03 指標取引のための過大反動分析

悪天候が続いたり天災によって一時的に消費や販売や生産が落ち込んでも、景気さえ良ければすぐに持ち直します。
また逆に、増税前や利上げ前に駆け込み消費が起きると、増税後や利上げ後に消費が一時的に落ち込みます。
このように指標が急激な落ち込みや跳ね上がりを起こした翌月に、その逆方向に跳ね上がったり落ち込んだりする現象を「反動」と言います。

例えば、指標発表前に「前月が〇〇で落ち込んだため、当月はその反動が予想される」といったプロフェッショナルの解説記事を見かけたことがあるでしょう。
けれども、そんなことが知りたいのではありません。

ほとんどの指標発表直後の反応方向は、市場予想と発表結果の大小関係で決まりがちです。
市場予想もまた反動を見込んでいるなら、必ずしも反動を期待した取引が有利とは限りません。
だから、知りたいことは市場予想を超えるほど大きな反動を起こすかどうか、です。

この市場予想を超えるほど大きな反動を「過大反動」と呼ぶことにします。
そして、反動が起きそうな条件と、その条件を満たしているときの取引方針を得るために行う分析が「過大反動分析」です。

Ap.03-1  方法論概説

いま、前回結果と発表結果の差が大きかったとします。
すると、翌月の市場予想はそれなりに反動を見こしているはずです。
それにも関わらず、翌月の発表結果がその市場予想を超える反動が過大反動でした。

では、

  • (1) 過大反動の予想:前月の指標結果が前々月の指標結果に比べて大きな変化をしていれば、当月はその変化と逆方向に市場予想を超える反動を起こしがちか否か
  • (2) 反応方向の予想:前月の指標結果が前々月の指標結果に比べて大きな変化をしていれば、当月は指標発表直後に陽線でなりがちか陰線になりがちか

の2文を読んで、どちらに興味があるでしょう。

知りたかったことは、(2)だったのではないでしょうか。
最初に(1)に興味を持った理由は(2)を知るための手段だった、ということなら、(2)の分析を行うべきでしょう。

ならば

  • 仮説:前月の指標結果が前々月の指標結果に比べて大きな変化をしていれば、当月の指標発表直後の反応が過大反動を起こした方向になる

について、過去の実績に基づく検証を行いましょう。

なお、前月の指標結果の前々月の指標結果に対する変化とは、前月の実態差異判別式の解のことです。
そして過大反動とは、前月の実態差異判別式の解の符号と当月の事後差異判別式の解の符号が不一致になることです。
でも、分析の目的は、前月の実態差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向が一致しがちか否かを明らかにすることです。

分析は2段階で行うことにします。
最初に過大反動の判定を行います。

  • 前月の実態差異判別式の解の符号と当月の事後差異判別式の解の符号が不一致ならば、過大反動を起こした判定する
  • 前月の実態差異判別式の解の絶対値を階層化し、階層毎に過大反動を起こした回数を集計する

この判定は参考です。
実際には過大反動が起きようが起きまいが、過大反動が起きることを見込むと、当月の直後1分足は前月の実態差異判別式の解の符号と逆になるべき(仮説)です。
よって、

  • 前月の実態差異判別式の解の符号と当月の直後1分足値幅方向が不一致ならば、仮説と一致と判定する
  • 前月の実態差異判別式の解の絶対値を階層化し、階層毎に仮説と一致した回数を集計する

が、本サイトでの「過大反動分析」です。

Ap.03-2  不適合事例

過大反動分析の適合事例より先に不適合事例を説明します。
その順番の方が本稿論旨がわかりやすいでしょう。

そもそも指標結果の急減・急増が起きた翌月に、その逆方向に急増・急減することはよく見かけます。
だからと言って単純に、指標結果が急減した翌月の発表直後は陽線、急増した翌月は陰線、と機械的に決め打ちすべきではありません。

例えば、2015年1月集計分から2019年9月集計分までの米国中古住宅販売件数前月比の前回結果(修正結果)と市場予想と発表結果を下図に示します。

全体的に急増(急減)した翌月は、発表結果が市場予想を上回っている(下回っている)ように見受けられます。
これは、市場予想が「やる気あるのか」というぐらい毎月ほぼ一定で、その市場予想に比べて本指標の上下動が大きいためです。
ならば「前月の発表結果(修正結果)と当月の発表結果の落差が大きいとき、翌月の発表結果はその落差の方向と反対側に大きく動いて、その動いた方向に素直に反応しがちか」の検証価値があるでしょう(と私は思います)。

ところが、過大反動が起きそうなとき、指標発表直前に発表直後の反応方向を決め打ちしても、本指標では良い勝率が得らません。
下表をご覧ください。

この表は次のように読みます。

判定数」は、分析対象回数(57回)から最初の1回と、より影響力が強い指標と同時発表された回数と、直後1分足値幅が0pipsだった回数を除きます。
ほとんどの指標は、2015年1月集計分以降を分析対象期間としています。
その最初の1回は、前月の実態差異判別式が対象期間外となります。
そして、分析対象指標がより影響力が強い指標と同時発表されたときは、分析対象指標への反応とは言えないので、分析対象から除きます。
また、結果的に直後1分足値幅が0pipsだったときは、方向判定が行えないため分析対象から除きます。
反応が0pipsのとき分析対象から除くのは、方向一致率+方向不一致率=100%、とするためです。

過大反動数」は、判定した集計回数のうち過大反動を起こした回数です。

仮説一致数」は仮説通りになった回数です。
仮説は「前月の実態差異判別式の解の符号と当月の直後1分足値幅方向が逆になる」です。

場面発生頻度」は、判定数/(分析対象回数ー最初の判定までの1回)、です。

仮説一致率」は、仮説一致数/判定数、です。

この事例では、前月の実態差異判別式が大きくなるほど過大反動が起きにくくなり、且つ、そうした見込みに基づく取引では指標発表時刻を跨ぐポジションでの勝率を高くできる見込みがありません。
過大反動が起き難く、しかも取引の参考にもできないのだから、二重の不適事例と言えるでしょう。

Ap.03-3  不適有効事例

次が本稿本題の不適有効事例の紹介です。

過大反動分析における不適有効事例とは次のような事例です。
本サイトの過大反動分析は「前月の実態差異判別式の解の絶対値が大きいとき、その符号と当月の事後差異判別式の解の符号が不一致となること(過大反動を起こすこと)を見越して取引すれば良い」という仮説を検証するための分析です。
けれども、実際に分析をしてみたら、過大反動が取引の役に立つのではないけれど、取引に役立つ結果が得られることが多数あります。
このように、仮説の対し「不適合」な結果となるものの、取引方針を見出すためには「有効」な事例があり、それが「不適有効事例」です。

この不適有効事例の代表には、米国新築住宅販売件数が挙げられます。

下図は、対象期間の新築住宅販売件数前月比の前回結果(修正結果)と市場予想と発表結果です。

全体的に急増(急減)した翌月は、発表結果が市場予想を上回っている(下回っている)ように見受けられます。
これは、市場予想が「やる気あるのか」というぐらい毎月ほぼ一定で、その市場予想に比べて本指標の上下動が大きいためです。
ならば「前月の発表結果(修正結果)と当月の発表結果の落差が大きいとき、翌月の発表結果はその落差の方向と反対側に大きく動いて、その動いた方向に素直に反応しがちか」の検証価値があるでしょう(と私は思います)。

ところが、実際にはそうではありません。
下表をご覧ください。

実際には、前月の実態差異判別式の解の絶対値が大きくなるほど、過大反動が起きる確率(過大反動率)が低下しています。
そして、前月の実態差異判別式の解の絶対値が20超のとき、過大反動を起こすと見込んで取引すれば、その方向に直後1分足が反応したことは33%でした。
ならば、前月の実態差異判別式の解の絶対値が20超のとき、過大反動率を起こさないと見込んで取引すれば、その方向に直後1分足が反応したことは67%の一致率となります。

これが、仮説に対し不適合なのに、取引方針としては有効な結果となった不適有効事例です。

Ap.03-4  適合事例

直観にも論理にも沿っている適合事例は紹介不要でしょう。

但し、こうした適合事例は意外に少ないことを覚えておきましょう
適合事例が多ければ、誰もが勝ててしまうのです。
そして、適合事例が意外に少ないことを知らないことが、初心者やアマチュアが指標取引で勝ちにくい一因です。

また、指標発表前のネット記事では、指標そのものの解説論拠がしっかりしているものほど、指標発表直後の反応方向の分析が大甘なことが多いことを知っておきましょう。
おそらく、そうした解説記事を依頼される執筆者たちの大半は、金融と経済の専門家で大金の長期運用益を狙うプロフェッショナルたちなのでしょう。
期間が著しく異なる取引は、例え反動を起こすか否かが当たる予想があっても、それをアテにした取引はできません
それを混同しがちな初心者やアマチュアも指標取引で勝ちにくいのです。


関連リンク

➡ 補足資料の目次に移動

以上

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です