B3 移動平均線分析の方法

移動平均線の平均回数を色々と変えてみると、きっと過去のグラフ推移に意味があったように見える移動平均線が見つかるものです。
でも、そんな「きれい」な移動平均線が見つかったときは既に手遅れ、ということも多々あります。
そこで、客観的且つ取引のタイミングを判断するために、単一の移動平均線でなく、複数の移動平均線のクロスに注目するのが移動平均線分析です。
クロスに注目すると、移動平均回数の多少の違いならタイミングのズレが許容範囲に収まやすくなります。

さて、移動平均線分析は未来予想分析の基本です。
よく見かける移動平均線分析には、日足チャートで5日・25日・75日・200日の長短移動平均線同士のクロスに注目する方法があります。
けれども本来、クロス対象となる移動平均線の選び方は自由なはずです。
おまけに、指標推移を移動平均線で予想するのは一般的でない(当たらないから)以上、大勢が同時に同方向に売買する懸念も無視できます。

でも、いまさら基本的な話を読むのが苦痛だという人は、せめて、B3-3項「不適有効事例」を一読頂ければ幸いです。

B3-1  方法論概説:指標推移が上昇中か下降中か移動平均線で判定し、指標発表直後の反応方向と対比
B3-2  不適合事例:上昇中も下降中もどっちに反応するかわからない
B3-3  不適有効事例:上昇中は陰線、下降中は陽線で反応
B3-4  適合事例:上昇中は陽線、下降中は陰線で反応


B3-1  方法論概説

どんな分析であれ、最初の一歩は「何を知りたいか」を明確にすることです。

ほとんどの指標は、発表結果が市場予想を上回れば陽線で反応しがち、下回れば陰線で反応しがちです(ほとんどの指標は、発表直後に素直に反応しがちです)。
一方、指標推移のグラフを見ていると、上昇/下降のトレンドが続きそうな気がした覚えがあるでしょう。
ならば、それは

  • (仮説)指標推移が上昇中は指標発表直後に陽線で反応しがちで、下降中は陰線で反応しがち

と言えるでしょうか。
問題は「指標推移が上昇中か下降中かをどうやって客観的に判定するか」ですが、こうした判定のためには移動平均線分析が適しています。

上記「仮説」の文章に忠実な分析手順は次の通りです。

  • 市場予想のM回移動平均線と発表結果のN回移動平均線の上下関係に注目
  • 市場予想のM回移動平均線よりも発表結果のN回移動平均線が上ならば、次の指標発表時の直後1分足は陽線と予想する
  • 市場予想のM回移動平均線よりも発表結果のN回移動平均線が下ならば、次の指標発表時の直後1分足は陰線と予想する
  • 予想通りなら「仮説に一致」と判定する
  • この判定は、市場予想のM回移動平均線と発表結果のN回移動平均線の上下関係が逆転したら、その「翌月から」「翌々月から」「3か月後から」開始する(発表結果の移動平均値が確定する「当月」は事前判定不可なので「翌月」から判定する)
  • 判定不可の月を除いて集計する
  • 本サイトでは、M=N=6、を採用

もし、ある指標の発表結果が上昇/下降トレンド中に市場予想が低め/高めになることが多ければ、この方法で指標発表直後の反応方向の予想的中率(仮説との一致率)が高くなるはずです。
けれども、この分析法の結論は仮説の一致率が50%こそ超えることこそたまにあるものの、70%を超えることは稀です
まして90%に達することなんて一例たりとも知りません。

このことを意外に感じる人が少なくないなら、この分析には意義があります。
以下、いちいち断るのが面倒なので、本サイトでの「移動平均線分析」とはここに挙げた方法・目的の分析を指すこととします。

※ 補足:クロス対象の選び方

ここでは「発表結果の長短移動平均線同士のクロス」ではなく、「市場予想と発表結果の各移動平均線のクロス」としている点が気になる方もいるでしょう。
そんなのどっちでも構いません。
それが過去の実績から仮説を検証する分析法の強みであり、仮説がよほど的外れでない限り何を対象にしても良いのです。


B3-2  不適合事例

「適合事例」でなく、まず「不適(合)事例」から説明します。
その方がこの分析の本質がわかりやすい。

指標結果の上昇/下降が続きがちな指標(トレンドを形成しがちな指標)は数多くあります。
だからと言って単純に、指標が上昇中の発表直後は陽線、下降中は陰線、と機械的に決め打ちすべきではありません。

例えば、2015年1月集計分~2019年9月集計分(57回)の米国中古住宅販売件数の市場予想と発表結果とそれらの6回移動平均線を下図に示します。

全体的に発表結果が上昇基調/下降基調のとき、発表結果の移動平均線は市場予想の移動平均線よりも上/下に位置しています。
つまり、指標推移の大きなトレンドを客観的に知ることに移動平均線は有効です。
ならば「本指標が上昇基調/下降基調で推移するとき、指標発表直後に陽線/陰線になりがちか」の検証価値があります。

ところが、発表結果が市場予想を上回る期間中だからと言って、指標発表直後の反応が陽線になりがち、とは言えません。
本指標の指標方向一致率は下図の通り、事後差異判別式(=発表結果ー市場予想)の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率が62%しかありません。
その結果、発表結果と市場予想の移動平均線の上下関係が翌月も同じに維持されても、直後1分足値幅方向がそれと一致する確率は62%未満になってしまう訳です。

つまり、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率が高くない指標は、移動平均線分析で取引に役立つ結果が得られません

下表は、ここに挙げた中古住宅販売件数の実際の移動平均線分析の結果です。

判定回数」は、分析対象回数(57回)から、6回移動平均値が確定するまでの6回と、より影響力が強い指標と同時発表された回数と、直後1分足値幅が0pipsだった回数を除きます。
ほとんどの指標は、2015年1月集計分以降を分析対象期間としています。
その最初の6回分は、最初の移動平均値を確定させるため、本分析では対象期間から除く必要があります。
そして、分析対象指標がより影響力が強い指標と同時発表されたときは、分析対象指標への反応とは言えないので、分析対象から除きます。
また、結果的に直後1分足値幅が0pipsだったときは、方向判定が行えないため分析対象から除きます。
反応が0pipsのとき分析対象から除くのは、方向一致率+方向不一致率=100%、とするためです。

仮説一致数」は、仮説通りになった回数です。
仮説は「市場予想と発表結果の各移動平均線がクロス以降、直後1分足方向が各移動平均線の上下位置通りになる」です。

場面発生頻度」は、判定回数/(分析対象回数ー最初の移動平均値確定までの6回)、です。

仮説一致率」は、仮説一致数/判定回数、です。
判定を行うのが「翌月から」となっているのは、発表結果の6回移動平均値が算出された月は、既にその発表結果が判明しています。
その結果、定義文の「市場予想と発表結果の各6回移動平均線のクロス以降」とは、クロスが生じた「翌月から」の判定となります。
そして、移動平均線分析では「騙し」が多いこと知られています。
だから「翌月から」だけでなく、「翌々月から」「3か月後から」の判定も行います。


B3-3  不適有効事例

次が本稿本題の不適有効事例の紹介です。

不適有効事例とは次のような事例です。
本サイトの移動平均線分析は「指標結果の推移が上昇/下降中は発表結果が市場予想を上回る/下回ることが多いはずだから、指標発表直後の反応は素直に陽線/陰線が多くなるはず」という仮説を検証するための分析です。
ところが、なかには「この分析法では、指標発表直後に素直とは言えない方向に反応する」ことが多かった指標があります。
こうした事例も、それはそれで再現性さえ高ければ取引に有効です。
このように、仮説に対し「不適合」なものの、取引方針を見出す分析としては「有効」な事例が多数あり、それが不適有効事例です。

でも、不適有効事例となる指標も、たいていは単月毎の指標発表直後の反応が素直です。
単月毎のデータを見る限り素直に反応しがちな指標が、本サイトに挙げたような方法で分析を行うと、素直とは言えない方向に反応しがちな条件が抽出される訳です。
だから、不適有効事例の抽出こそ、この分析の効用とも言えるでしょう

例えば、2015年1月集計分~2019年9月集計分(57回)の米国新築住宅販売件数の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向は75%でした。

この一致率が高くなければならない、という前項前提は満たしています。

次に、市場予想と発表結果とそれらの6回移動平均線を下図に示します。

そして、上記対象期間の市場予想と発表結果の移動平均線の上下位置に対し、直後1分足値幅方向が一致していたことは下表の通りです。

上表右端の「仮説一致率」が50%未満だということは、不一致だったこと(反応が素直でなかったこと)の方が多いことを示しています。
でも、新築住宅販売件数は、単月毎に分析する限り、指標結果の良し悪しにかなり素直に反応する指標でした。
ならば「指標結果の推移が上昇/下降中は発表結果が市場予想を上回る/下回ることが多いはず」と考えることは自然です。
よって「指標結果の推移が上昇/下降中は指標発表直後は素直に陽線/陰線で反応することが多いはず」というのがロジカルな結論です。

ところが、実際には上表に示した通りそうなっていません。
仮説一致率32%は、仮説との不一致率68%を意味します(3回に2回以上)。
分析の意図(仮説)に反して「指標発表直後に素直とは言えない方向に反応する」という「結論」が導かれました。
こんなことは単月毎のデータを見ていてもわかりません

得られる取引方針は「過去発表結果と過去市場予想の移動平均の上下位置関係が逆転したら、その3か月後からは直後1分足値幅方向がその位置関係に対し素直でない方向になりがち(期待的中率68%以上)」です。
仮説には反した結果が得られたものの、不適有効事例は取引に有効な指針です。


3-4  適合事例

適合事例には詳しい説明が不要でしょう。

適合事例には、米国カンファレンスボード(CB)消費者信頼感指数が挙げられます。

CB消費者信頼感指数の2015年1月集計分~2019年10月集計分(58回)の事後差異判別式の解の符号と直後1分足値幅方向の一致率は80%です。
一致率が高く、本指標が素直に反応していることがわかった以上、前々項記載の前提を満たしています。

対象期間のCB消費者信頼感指数の市場予想と発表結果とそれらの6回移動平均線を下図に示します。

指標結果が上昇/下降推移している期間は、発表結果の移動平均線が市場予想の移動平均線よりも上/下になっています。
下表はその移動平均線分析の結果です。

上表から、2つの移動平均線がクロスした3か月後から、指標上昇中は陽線になりがちだったことがわかります。


本稿のまとめ
  • 適合事例は意外に少なく、直感に反しても不適有効事例は意外に多い

移動平均の回数を何回にするかなんて、些末な問題です。
何を知りたくて分析するのかを明確にすることと、知りたいことに直結する手順で分析することと、実際のデータをきちんと見ること、が何より大事です。

そして「話はわかったが、こんな面倒な手順の分析なんてできない」という人はどうすれば良いのでしょう。

  • そのために本サイトがある

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以上

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