1 指標取引の予備知識

経済指標(以下「指標」と略記)発表前後のチャートは、その時々の市場環境よりも、指標そのものの影響を強く受ける期間があります。
その期間は意外に短く、チャートは激しく動きます。
ただ、このチャートの激しい動きは目くらましで、個々の指標毎の影響持続期間において経済・金融・為替の理論通りの方向にチャートは向かいがちです。

本稿は、個々の指標毎の分析に基づく指標取引がどういうものか、ざっくり紹介することがテーマです。


1-1  指標取引をアマチュアに勧める理由

このサイトでは、個別の経済指標の良し悪し(原因)と、指標発表前後のチャートの動く方向(結果)を、過去のパターンの「再現率(=次の同じ指標発表時の期待的中率)」として関係付けています。
個々の指標分析記事の結論は、この期待的中率に基づく取引方針です。

厳密な言葉の定義はいずれ別の稿で詳述することとし、実際の再現率や取引結果は次の通りでした。

  • 個々の指標毎に事前に取引方針を公開しており、その方針が適用できた場面は全体の66%
  • その66%の方針適用場面で、方針記載通りの展開となったと判断できたことは全体の70%
  • その66%の方針適用場面で、実際の取引での勝率は74%

この結果の調査詳細は「こちら」に開示しています。

この成績は決して悪くありません。

何しろこの成績は、金融・経済・為替の深い専門知識の代わりに、簡単な統計・確率の知識に基づく事前分析だけで残せたから、です。
また、そのときの市場環境を踏まえた相場観の代わりに、分析のルール化と地道なデータの記録・分析作業で残した成績たから、です。
これらのことは、指標発表時の取引がやり方次第で初心者や我々アマチュアさえ勝ちやすい、ということです。

もちろん、何事であれ慣れる期間は必要です。
最初に記した通り、指標取引を行う時間は、それ以外の時間と明らかに違うやり方で取引すべきだから、です。

こうした指標取引のために、事前に知っておくべきルールは以下の3つです。
この3つのルールは、初心者やアマチュアでも一読理解できる程度の内容です。


1-2  分析期間の限定(ルール1)

チャートの動く方向に何か原因があるなら、その原因を調べてチャートの動く方向を予想できるはずです。
けれども、その原因が数多くあるなら、そんな複雑な分析・予想を行うことは現実的ではありません。
そこで、多くの事例観察結果に基づき、発表前後の経済指標の影響が、その他の影響より圧倒的に強くチャートに現れる期間だけに分析を限定します。

そういう期間は短時間ながら存在します。
個々の指標によっても異なりますが、その期間はざっくり指標発表前後10分程度です。

そんなことはないだろう、と米国雇用統計を例に挙げる人がいます。
けれども、きちんと調べてみると良いでしょう。
米国雇用統計ですら発表から時間が経つにつれ、発表直後の反応方向にそのままローソク足が伸び続けた事例は少なくなっていきます。
米国雇用統計ですらそうなのです。


1-3  結果の単純化(ルール2)

分析期間を限定しても、その期間のチャートは単調に一方向にだけ動く訳ではありません。
通常、上下動をしながら一方向に向かいます。その細かな動きは同じ指標の発表でも毎回違う形になります。
そんな再現率が低い形を覚えても、次の取引の参考になりません。

再現率が高い現象は、指標発表前後の一定期間のローソク足実体部の方向(陽線か陰線か)です。
そして、最終的な方向さえ予想できていれば、指標発表前後の取引はかなり有利に行えます。
狙った期間のローソク足の動く方向を当てることに、分析の目的を絞り込むのです。

このサイトでは、直前10-1分足直前1分足直後1分足直後11分足の4本のローソク足を分析対象にしています。
「直前10-1分足とは何だ?」とか、これら4本のローソク足の細かな定義は「こちら」を参照願います。


1-4  原因の単純化(ルール3)

分析結果をローソク足実体部の方向だけに絞って単純化した以上、原因もそれに応じて単純化すべきです

多くの事例観察結果に基づき、指標発表前後の反応は、指標が事前の想定や前回の結果よりも改善しそう/していればその国の通貨が買われがち、悪化しそう/していれば売られがち、です。
この現象は、経済・金融・為替の理論通りになりがちです。
残念ながら「理論通りになりがち」なのであって、決して「理論通り」ではありません

さて、主要国の主な指標では、指標発表以前に市場予想が示されます。
同じ指標の前回の発表結果(以下「前回結果」と略記)に比べて市場予想が改善しているか悪化しているかは、指標発表前に判明しています。
よって、前回結果と市場予想の差を事前差異と呼びます。

次に指標発表が行われると、市場予想発表結果の大小関係や、前回結果発表結果の大小関係が判明します。
市場予想と発表結果の差を事後差異と呼び、前回結果と発表結果の差を実態差異と呼びます。

各差異を数式記述すると、

  • 事前差異判別式=市場予想ー前回結果
  • 事後差異判別式=発表結果ー市場予想
  • 実態差異判別式=発表結果ー前回結果

です。

これらの式を判別式と呼ぶのは、解の値でなく、解の符号(プラスとかマイナス)に注目するからです。
これら判別式の解の符号がプラスなら陽線、マイナスなら陰線に対応する、と仮定します。
すなわち、これら判別式の解の符号を、指標発表前後の反応方向の原因、と仮定するのです。

判別式のついての詳細説明は「こちら」を参照願います。


1-5  指標取引の方法

例えば、下表は2019年1月30日22:15に発表された米国ADP雇用統計の事後検証結果を纏めた表です。

この表の細かな説明は別の稿で行うこととし、今は表下部の赤枠で囲まれた「事前方針」に注目願います。
事前方針は、指標発表前に公開し、発表後にこの書式で検証しています。

更に遡って言えば、この事前方針は、この指標の過去の原因(各差異判別式の解の符号)と結果(各ローソク足の方向)の再現率から導き出しています。

例えば、判別式の解の符号がプラスのときがその国の通貨の買い、マイナスのときが売り、と捉えます。
このとき、実際のローソク足が陽線になったか陰線になったかと照らし合わせます。
この作業を過去に遡って行い、原因(判別式の解の符号)と結果(ローソク足の方向)の再現率(=期待的中率=方向一致率)を求めます。

この方向一致率は、同じ指標の次の発表時の反応方向を予想する根拠となります。
根拠の確かさを確認するには、個々の指標毎の分析記事を参照頂ければわかります。

で、個別指標毎に過去に遡ったり今後継続してデータを纏める作業が問題です。
ならば、このサイトのデータを取引の参考にすれば良いのです。
このニーズに応えることが、このサイトの存在意義です。
浮いた時間は、自分の勉強に使いましょう。


本稿のまとめ
  • 指標発表前後の短期間は、その他の時間とチャートが違う動きをしがち
  • ある指標の事前差異・事後差異・実態差異の判別式の解の符号と、指標発表の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の方向を過去に遡って調べると、全指標平均で70%の再現率が見込める
  • 再現性を定量化でき、チャートに反応が起きる時刻が予めわかっている指標取引は、FXの知識や取引スキルが十分に身に付くまで有効な取引手法
  • 但し、個々の指標毎に地道なデータの記録を継続して、その整理と分析が面倒なことが欠点
  • この面倒を代行していることが本サイトの存在意義

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以上

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