6 定量反応分析の方法

指標発表前後にチャートが動く方向を反応方向、チャートが動く大きさを反応程度、と呼ぶことにします。
反応分析は、この反応方向を過去の実績から定量的に捉える分析です。
反応方向は再現率が高いものの、反応程度はばらつきが大きく参考にしかなりません。


6.1  反応分析

原因があってチャートが動くことを反応と呼びます。
指標発表前後は、指標の影響力が強まり、指標以外の影響力が弱まります。
よって、指標発表前後の短期間に取引を限れば、指標のことだけ考えれば済みます。

反応分析は、分析対象期間の全ての事例を扱う訳ではありません
指標間影響力比較分析の結果に基づき、対象指標が過去に他の指標と同時発表されたとき、対象指標の影響力が支配的だったと判断される場合だけを分析対象としています。

「取引に勝つため」という目的が明確な分析は、単に過去データを集計した分析とここが違います
指標Aの反応分析を行うにあたって、指標Aよりもチャートへの影響力が強い指標Bと同時発表されたときは、指標Aの分析に指標Bと同時発表されたときのデータを含むべきではないのです。
問題は、影響力の強弱を客観的に判定する方法論です。
指標間影響力比較分析の方法はこちらを参照願います。

反応分析とは、

  • 反応程度過去集計結果=4本足チャート各ローソク足の平均反応程度・過去順跳幅分布・過去値幅分布を一覧化
  • 利得分析=各判別式の解の大きさと、4本足チャート各ローソク足値幅の年平均を対比分析
  • 指標一致性分析=各判別式の解の方向と、4本足チャート各ローソク足値幅方向を対比分析
  • 反応一致性分析=4本足チャート各ローソク足同士の値幅方向を対比分析
  • 伸長性分析=指標発表後の反応の伸びを分析

を指しています。

反応分析は、指標間影響力比較分析の結果に基づき、対象指標の影響力が支配的だった事例だけで行います
以下に順に説明します。


6.2  反応程度過去集計結果

反応程度過去集計結果は、4本足チャートにおける各ローソク足の順跳幅と値幅の過去平均値と、1足内反転率と、各ローソク足の程度分布を集計しています。

事例下表をご覧ください。
下表は、米国小売売上高の2015年1月集計分~2019年8月集計分の56回のうち、米国CPI・金融関連会見時刻と同時に行われなかった43回の反応程度を集計したものです。
米国CPI・金融関連会見時刻の除外については、「定量指標分析の方法」の「指標間影響力比較分析」の項を参照願います。

順跳幅とは値幅方向の跳幅を指しています。
跳幅は、必ずしも順跳幅が逆跳幅よりも大きくなるとは限りません。
けれども、このサイトで分析している指標は全て、順跳幅が逆跳幅よりも大きくなることの方が、逆跳幅が順跳幅よりも大きくなることよりも、圧倒的に多いことがわかっています。
参考までに、分析対象期間内に逆跳幅が順跳幅よりも大きくなった比率を、1足内反転率として示しています。

分布は、過去平均値の「0.5倍以下」「0.5倍超1倍以下」「1倍超1.5倍以下」「1.5倍超2倍以下」「2倍超」の5段階に階層化しています。
分布は、利確/損切の目安としての用途があります
直後1分足順跳幅値幅直後11分足順跳幅は、予め目安を得ておいた方が良いでしょう。

ちなみに、直後1分足順跳幅と値幅・直後11分足順跳幅は、多くの指標で「0.5倍超1倍以下」の頻度が高くなりがちです。
また「2倍超」が10%を超えていることや、「1.5倍超2倍以下」と「「2倍超」の合計が30%を超えている指標は稀です。
目安は、0.5~1倍程度にしておくと良いでしょう。


6.3  利得分析

利得分析は、判別式の解の大きさの1単位当たりローソク足値幅が何pips反応したか、期間毎(1年毎と全期間)に計量する分析です
なお「利得」とはインプットに対するアウトプットの比を意味しており、投資用語ではありません。

利得分析の事例を、前項と同様に、米国小売売上高の2015年1月集計分~2019年8月集計分の56回のうち、米国CPI・金融関連会見時刻と同時に行われなかった43回の事例で以下に紹介します。

まずは、各判別式の解の大きさの毎年の平均推移は下図の通りです。

次に、各ローソク足値幅の毎年の平均推移は下図の通りです。

これら2図を集計し、下表「利得分析」の結論を得ます。
系列1は(直前10-1分足値幅/事前差異判別式の解の大きさ)、系列2は(直後1分足値幅/事後差異判別式の解の大きさ)、系列3は(直後11分足/実態差異判別式の解の大きさ)で、数値の単位は[pips/差異]です。

利得分析は、他の指標と対比しても無意味です。
計算過程に含まれる判別式は、個々の指標毎に大きさが異なるためです。
この分析は、その指標がどれだけ敏感に反応するのかを、過去と最近で比べるために行います


6.4  指標一致性分析

主な指標は、発表前に市場予想を公開しています。
そして、指標毎の発表対象期間の週・月・四半期の指標結果を発表しています。
一部の指標では、前回の発表対象期間の指標結果の修正値が、今回の発表前か同時に発表されます。

これら市場予想・発表結果・修正結果を、事前差異・事後差異・実態差異の各差異判別式に代入して、それぞれの解を得ます。
それらの解と、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足を散布図形式でプロットした例を下図に示します。
この例は、米国新築住宅販売件数の2015年1月集計分~2019年6月集計分のデータを用いています。

どの図も回帰線が右上がりな一方、相関係数(R^2値)が低いことがわかります。
このことは、符号相関(方向の相関)が強いものの、定量相関(程度の相関)が弱いことを示しています。
また、相関係数が、左図<中図>右図の大小関係となっていることは、この指標の影響持続時間が短いことを示唆しています。

思いきって、定量相関分析(各差異判別式の解の大きさと各ローソク足の大きさの関係の分析)を諦め、符号相関分析(各差異判別式の解の符号と各ローソク足方向の関係の分析)だけにしてみましょう。
結果を下図に示します。

この図には先の図で示した、事前差異・事後差異・実態差異の各判別式の解の符号と、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の各ローソク足値幅方向の方向一致率が含まれています。

この事例では、直前10-1分足は事前差異と同じ方向にポジションをオーダーすれば、勝率71%が期待できます。

また、直後1分足と実態差異の方向一致率が85%なので、事前に前回結果と市場予想と発表結果の大小関係を的確に予想できれば、指標発表直前にポジションをオーダーできます。
直後1分足との方向一致率が高いのが実態差異で、事後差異(市場予想と発表結果の大小関係)ではない点が、この指標の特徴です(ほとんどの指標は事後差異との一致率が高くなります)。

そして、直後11分足は事後差異との方向一致率が69%です。
直後11分足は、事後差異の方向一致率の方が実態差異との方向一致率よりも高くなる指標が多くなります。

このように、各判別式の解の符号と各ローソク足値幅方向の一致率を、過去に遡って調べた結果が指標一致性分析です。


6.5  反応一致性分析

4本足チャートにおいて、直前10-1分足と直前1分足は指標発表前、直後1分足と直後11分足は指標発表後、のローソク足です。
指標によっては、市場予想なんか関係なく、指標発表前のローソク足方向が指標発表後のローソク足方向を示唆しがちなものがあります。

このような現象が生じる理由は、プロフェッショナルを始めとする取引参加者が、早くから指標結果の良し悪しを見込んで売買を開始して、指標発表前に取引を止めることが多いため、と思われます。
よって、この現象は先に発表された他の指標などで、予め多くの人が指標結果の良し悪しを予想しやすいときに生じがち、という感触を得ています。

例えば、米国GDP確定値は、先に速報値・改定値が発表されており、改定値発表以降の経済実態指標も踏まえて発表されています。
その結果、それらデータを踏まえたポジションを早くから持っている取引参加者が増えるのもわかります。
下図は、その4本足チャートの各ローソク足の方向一致率を纏めたものです(2013年1-3月期集計分~2018年10-12月期集計分)。

直前1分足は、直前10-1分足との方向一致率が25%(不一致率75%)しかありません。
次に、直後1分足は、直前10-1分足との方向一致率が67%、直前1分足との方向一致率が25%(不一致率75%)です。直後11分足は、直前1分足との方向一致率が20%(不一致率80%)です。

例えば、確定値が改定値よりも改善しそうなら、早くからロングを持つ人が増えます。
その結果、指標発表前までにUSDが買われると、指標発表時刻を跨いでポジションを持ってリスクを冒さなくても、指標発表前に十分に利益ができて利確が増えます。
GDPだけではありません。
同じ月の集計結果が改定される指標では、改定時にこうした現象が起きやすい気がします。

もし、こういった場合にこれと同様の現象が起きやすいという感覚が正しければ、それは指標取引を事前研究して行っている参加者が多数派というです。
それなのに、勘に基づくで取引を繰り返しても、指標取引で長期的に勝てるはずなんてありません。

ともあれ、反応一致性分析は、このように先に形成されたローソク足方向が、後で形成されるローソク足方向を示唆していないかを集計する分析です。


6-6  伸長性分析(旧「反応性分析」)

伸長性分析は、指標発表後の反応が一方向に伸び続ける確率を過去の実績から求めた分析です。

下図は、米国小売売上高の2015年1月集計分~2019年8月集計分までの直後1分足値幅に対する直後11分足値幅の散布図です。

回帰線の係数が1.10で1を超えており、相関係数(R^2値)が0.68となっています。
直後1分足値幅方向に高い精度で反応を伸ばしがちなことがわかります。
このとき、直後1分足終値時点から直後11分足終値時点まで直後1分足値幅方向に追撃すれば、直後1分足値幅の10%程度のpipsが平均的に利確できそうです。

次に、下図は上記例と同じ小売売上高の反応が一方向に伸びる時期と確率を示しています。

この図は、本指標の調査対象期間の指標発表後の反応が次の通りだったことを示しています。

  • 直後1分足値幅方向と直後11分足値幅方向が一致していたことが83%、不一致だったことが17%でした。
  • 直後1分足値幅方向と直後11分足値幅方向が一致した83%の事例では、直後11分足順跳幅が直後1分足跳幅を超えていたことが100%でした。
  • 直後1分足値幅方向と直後11分足値幅方向が一致した83%の事例では、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしていたことが71%でした。
  • この71%は、直後1分足値幅方向と直後11分足値幅方向が不一致だったときも含めると、60%ということになります。
  • 直後1分足値幅方向と直後11分足値幅方向が一致したものの、直後1分足終値よりも直後11分足終値が値幅を削っていたことが24%でした。

本稿まとめ
  • 反応分析は、その指標が単独で発表されたときと、指標間影響力比較分析の結果に基づく対象指標の影響力が強いときが分析対象
  • 反応程度過去集計結果は、4本足チャート各ローソク足の平均反応程度・過去順跳幅分布・過去値幅分布を一覧化し、各差異判別式を導出
  • 利得分析は、各判別式の解の大きさと、4本足チャート各ローソク足値幅の年平均を対比分析し、指標のブレにどれだけ敏感に反応するのかを示す
  • 指標一致性分析は、各判別式の解の符号(方向)と、4本足チャート各ローソク足値幅方向の一致率を求めている
  • 反応一致性分析は、4本足チャート各ローソク足同士の値幅方向の一致率を求めている
  • 伸長性分析は、指標発表後の反応の伸びを分析

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以上

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