Ap.1-05 指標分析の方法

指標分析は、指標の特徴を定量的に抽出し、あわよくば市場予想と発表結果の大小関係を事前に予想するため、あるいは、あわよくば指標発表直後の反応方向を事前に予想するため、の分析です。

ここで「あわよくば」というのはとても大事な点です。
映画『MIB4』で「ピスタチオぐらいの脳みそ」というセリフがありました。
そうでなければ、予想(根拠)が成立しないときは取引を諦めることの大切さを知りましょう。

予想が成立しないとき、とは、過去に同じようなパターンが生じたときに、同じような予想の的中率が低かったとき、のことです。
教訓を活かさず直観に頼る限り、取引は上手にはなりません(と思います)。

そもそも、投資における予想というのは、我々アマチュアが直観に頼って行うものではありません。
プロフェッショナル同士で切磋琢磨して身につけた経験や知識に基づく分析のことを指しているのでしょう。
けれども、プロフェッショナルでさえ、過去のパターンの確率に偏りが生じている事実があれば、そのことは否定できません。
ならば、取引の拠り所をそうした事実だけに求め続ける限り、我々アマチュアの予想でさえプロフェッショナルにそれほど劣るものでもないでしょう。
正しい予想法ならば、誰が行うものであれ、長い目で見て的中率を高く保てるはずなのです。

指標分析は、以下の順に定型的に行います。

  • 指標分析対象=最初に、対象指標のどの項目に注目するのか示し、それら項目の市場予想・発表結果・修正結果をグラフ化します。グラフ化し、目で見てわかる傾向が読み取れるなら、何も複雑な分析を行う必要はありません。ここに挙げるグラフが最新のものか否かは大した問題じゃありません。分析対象期間に統計的に十分な標本数が含まれているか否かの方が重要です。
  • 指標間影響力比較分析=対象指標と他の指標が同時発表されたときを過去に遡って調べ、対象指標よりもチャートへの影響力が強い指標を見つけます。対象指標よりもチャートへの影響力が強い指標との同時発表時には、反応方向や反応程度が同時発表指標の方に従います。ある指標への反応を分析するためには、それより影響力が強い指標との同時発表時を除外して行うべきです。
  • 項目間影響力比較分析=過去に遡って判別式を求めます。複数の項目が反応方向に寄与する指標は、どの項目の影響力が強いかを判別式の係数で表します。当然、この分析は指標間影響力比較分析の結論に基づき、分析対象指標よりも影響力が強い指標との同時発表時を除外して行います。
  • 指標予想分析=発表結果が市場予想を上回るか否かと、その結果、指標発表直後の反応方向が期待(=予想)通りだったかを、過去の実績に基づき分析します。本サイトでは、指標予想分析の代表例として、移動平均線分析過大反動分析同期/連動分析、を行っています。

以下、各分析の概要を事例紹介します。


5-1  指標分析対象

分析に先立ち、分析対象指標の市場予想発表結果修正結果を開示し、読者自身がデータを確認できるようにするのは、レポートの基本なので外せません。

それらはグラフ化して開示しておきます。
もし、ある時点以前の指標推移のグラフを一見して、ある時点以降のグラフ推移が予想できるなら、それに越したことはありません。
見てわかる傾向があるなら、何も複雑な分析なんてやる必要ないのだから、一次データを図示しておくことは出発点です。

なお、ここに挙げるグラフが最新のものか否かは大した問題じゃありません。
分析対象期間に統計的に十分な標本数が含まれているか否かを確認する方が重要です。
十分な標本数での分析だから、分析結論の傾向が今後もしばらく適用できる、とご理解ください。


一例、2015年1月集計分~2020年2月集計分の米国中古住宅販売件数前月比の推移は下図の通りです。

」は市場予想、「」は発表結果、「青●」は修正結果を表しています。
市場予想は指標発表前に公開され、発表定時に発表結果と前回以前の修正結果がわかります。
前回の発表結果が修正されなければ、「と「青●」は重なって、「」は隠れて見えなくなります。

なお、毎月発表がある指標では2015年以降、四半期毎の発表がある指標や金融政策発表では2013年以降のデータを採用しています。

そして、このグラフにおける発表結果の平均値と標準偏差、最大値(含修正結果)、最小値(同左)を、下表のように纏めています。

最大値や最小値、過去平均値から標本標準偏差の2倍を超えて発表結果が乖離したときは、いつもより大きな反応程度や反応持続時間となる可能性が高まります

また、先のグラフのデータに基づき、過去から現在までの各判別式の解を求め、下表のように纏めています。

判別式の解の平均値から標本標準偏差の2倍を超えるほど発表結果が乖離したときは、いつもより大きな反応程度や反応持続時間となる可能性が高まります

すなわち、本項分析要点は、

  • 指標分析の対象範囲を図示開示すること
  • 過去の指標推移をグラフ化し、グラフを見てわかる指標推移の特徴有無を確認すること
  • 指標結果(発表結果と修正結果)や各判別式の解の統計値を求めておき、発表結果が過去の傾向からどの程度の乖離すると異常なのかを示すこと

ということになります。


5-2  指標間影響力比較分析

指標Aと指標B・C・D…が同時発表されるとき、どうすればよいでしょう。
このサイトでの分析は、最もチャートへの影響力の強い指標だけに注目し、他の指標は無視することにしています。
そして、指標のチャートへの影響力は、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率を過去に遡って調べれば定量化できます。
すなわち、分析対象指標と同時発表指標のそれぞれについて、同時発表が行われたときの事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率の大小を比較するのです。
この作業を指標間影響力比較分析と呼びます。

指標間影響力比較分析は、他の分析に先立って行う必要があります
チャートへの影響力が強い指標と弱い指標が同時発表されたとき、反応方向や反応程度は影響力が強い指標に従いがちです。
よって、分析対象指標の影響力が弱いのに、その指標よりも影響力が強い指標との同時発表時を含めた分析をしても、それは参考になりません。
だから、ある指標の分析を行うときには、他の分析に先立って指標間影響力比較分析を行い、対象指標の分析に無意味な事例を除く必要がある訳です。


一例、この分析の結果は下表のように纏めています。

上表は、2015年1月集計分から2020年2月集計分までのPCE発表時に、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率を、同時発表指標と比較しています。

各「同時発表指標」との「同時発表回数」を調べ、「同時発表指標」の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の「方向一致率」と、「本指標(PCE)」の事後差異判別式の解の符号と直後1分足の「方向一致率」を比較しています。
両「方向一致率」の大小を見比べ、「同時発表指標」名が赤太字ならばPCEの方が影響力が弱く、青太字ならばPCEの方が影響力が強い、と判定しています。

そして「同時発表指標」名が赤太字の指標との同時発表時は、PCEの反応分析を行う際に分析対象に含めないようにします。

すなわち、本項分析要点は、

  • ある指標のチャートへの影響力が強弱は、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率で定量評価できる、と仮定する
  • この仮定に従い、過去に同時発表された指標と分析対象指標の方向一致率を過去に遡って調べる
  • そして、分析対象指標よりも影響力が強い指標との同時発表時は、分析対象指標の反応分析から除外する(それがいつの発表時かは、影響力が強い指標名を開示し、記事煩雑を避けるため記載割愛する)
  • 本分析の結論は、そうして得られた分析対象指標の反応分析数のみを示す

です。


5-3  項目間影響力比較分析

ひとつの指標で複数の項目(指数)が同時発表される場合があります。
これら複数の項目それぞれのチャートへの影響力の強さを判別式で表します
但し、この分析は、先述の指標間影響力比較分析の結果に基づき、より影響力の強い他の指標と同時発表された場合を除いて行います。
この作業を項目間影響力比較分析と呼びます。

ほぼ全てのFX会社は、HPに指標カレンダーを掲載しており、その指標カレンダーには市場予想と発表結果が公開されています。
けれども、そこに掲載されていない項目の良し悪しで反応方向が決まる事例があります。
あるいは、市場が複数の項目の良し悪しを総合的に判断して反応方向が決まるのに、指標カレンダーに個々の項目の良し悪しだけ掲載され、なぜそっちに反応したのかがわからない、という事例が多々あります。
項目間影響力比較分析は、どの項目がどの程度、過去の反応方向に寄与していたのかを示しています。

この分析は、指標取引において非常に重要です。
だって、指標結果の良し悪しが計量できないのに、指標結果の良し悪しで反応方向を予想することなんてできないからです。


例えば、ある期間における米国ISM非製造業景況指数の発表事例から、同指標よりも影響力の強い指標との発表事例を除きます。
残る事例から、生産者物価指数発表時の直後1分足方向に影響を与えていた項目は「景況指数」「事業活動指数」「新規受注指数」の3項目でした。

いま、これら3項目を変数にもつ判別式を、

  • A✕景況指数の判別式+B✕事業活動指数の判別式+C✕新規受注指数の判別式

と立式します。
この判別式の解の符号と、4本足チャートの対応するローソク足の方向一致率が高くなるように係数A・B・Cを求めます。
対応ローソク足とは、事前差異判別式に対して直前10-1分足、事後差異判別式に対して直後1分足、実態差異判別式に対して直後11分足、です。

結果、下表のように上式各係数を決定すると、対応する各ローソク足との方向一致率が高くなることがわかりました。
この表が、本分析の結論となります。

例えば、この表1行目は、

  • 事前差異判別式=3✕景況指数の事前差異判別式+1✕事業活動指数の事前差異判別式

という式を表しています。

すなわち、本項分析要点は、

  • ひとつの指標で複数の項目(指数)が同時発表され、且つ、複数の項目が反応方向に影響を及ぼす場合、代表項目だけの発表結果の良し悪しだけで過去の反応方向を説明できないことがある
  • こうした場合、複数の項目で構成された判別式が必要になる
  • この判別式の各項係数は、どの項目どれだけ反応方向に影響するのかを表している
  • 本分析結論は、事前差異・事後差異・実態差異の各判別式そのものと、その解の符号と対応ローソク足値幅の方向一致率、である

です。


5-4  指標予想分析

指標予想分析は、ある指標の次の発表結果が前回結果や市場予想を上回るか下回るかを予想するために行います。

我々が目にする市場予想は、大手のニュース配信会社が複数のエコノミスト予想の平均値中央値として公開している値です。
決して、過去の予想的中率が最も高かった人の予想値を公開している訳ではありません
だから、市場予想は外れて当然です。

市場予想がアンケート結果に過ぎない以上、アンケートに起こりがちな偏り(クセ)が生じることもあります。
このクセをいくつか知っておけば、指標取引が有利に行えることがあります。

市場予想と発表結果の推移の仕方に対応した分析には、次のような方法があります。

  • 移動平均線分析=市場予想と発表結果の移動平均線を用いて、発表結果が市場予想を超えそうか否かを予想できる場合があります。がしかし、大事なことはそんなことではありません。発表結果が市場予想を超えそうか否かを予想できたとして、反応方向もその予想に素直になりがちかが、取引において大事です。詳しくはこちらを参照願います。
  • 過大反動分析=発表結果のブレが大きいとき、その翌月の発表結果は反動を起こしそうな気がします。けれども、実際に反動を起こそうが起こすまいが、そんなことはどうでも構いません。反動が起きそうなときを特定し、そのとき反動が起きるいう予想に素直に反応しがちだったか否かが、取引において大事です。詳しくはこちらを参照願います。
  • 同期/連動分析=他の指標との連動・追従関係や、指標発表前のローソク足の方向から、発表結果が市場予想を超えそうか否かを予想できる場合があります。この分析は、関連する他の指標との連動・追従関係から狙った指標の良し悪しを予想する「真っ当な予想法」だと言えます。詳しくはこちらを参照願います。

市場予想には専門家による現在の経済状況認識が踏まえられているはずだから、これらはその認識のクセを分析している、と言えるでしょう。


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以上

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